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デトックスペシャル

デトックスといえば、ご存じのとおり、老廃物の排泄・解毒を促し、体内を浄化させる健康法。ダイエット用語として認知された感がある。
今回は、すでに15年近い年月が経つというのに、いまだにムスメとの間で語り種いうか、笑い種になっている、究極のデトックスについて語りたいと思う。

あれは、ムスメがまだ3才になるかならないかという春のこと。
前日まで雨が降っていたせいで、朝から庭で洗濯物を干すのに忙しかった。
すぐ横では愛犬ぽぽが、尾を振り振り、何度も前脚を踏ん張って、でも決して吠えたりせずに訴えていた。
「おかーさん、なんかいつもよりお散歩の時間が遅くはない? ほんと、もう漏れそうなんだけど・・・」
「ごめんね、もうちょっとだからね」

最後の一枚を干し終えると、急いで家の中に戻って幼いムスメに言い聞かせた。
「ぽぽちゃんを急いで散歩に連れてってあげないとならないから、ママが戻るまでこのままテレビ見ててくれる?」
「うん」
「絶対に玄関を開けちゃダメだからね」
「うん」

私はムスメの頭を撫でると、NHKの制作意図を無視し、「おかあさんといっしょ」という番組にムスメを託し、家を出た。
普段はもちろんムスメも連れていく。だが、ムスメはまだ小さい。一緒に連れて歩けば、押し寄せる生理現象を極限まで耐えているぽぽに、更なる我慢を強いることになる。
暖房をつけているわけでもない。火元となるような危険はない。玄関のドアも、「おおかみと七匹のこやぎ」を読み聞かせているムスメなら、絶対開けたりしないだろう。

雨あがりの道を、私はぽぽと一緒に飛ぶように走った。
15分ほどの散歩でスッキリと生理現象を解消させたぽぽと足早に家へ戻ると、玄関の中からムスメの泣き叫ぶ声が聞こえた。
びっくりしてドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、玄関ホールにへたり込むように座って泣いているムスメの姿だった。
ムスメは、水溜りの上に座っていた。一瞬、自分の涙でおぼれそうになる、不思議の国のアリスを見た気がした。

ムスメは、自分自身も水分になりそうな勢いで泣いていた。
額から汗、目から泪、鼻から洟、口から涎。
そしてよく見ると、水溜りは薄っすらとレモン色をしていた。
「あらあら、どうしちゃった?」

トイレトレーニングはとうに卒業していたはず。幼いムスメ独りに留守番させた(←お国が違っていたら幼児虐待で逮捕されている)罪。不安になっておもらししてしまったのだろう。
「ごめんね、ママがいなくて怖くなっちゃった?」
しかしムスメは号泣しながら首を振り、玄関ホールの突き当たりにあるトイレを指差した。
「あ、開かないっ・・・ぅえっ、ぅえっ・・・」しゃくりあげながらも健気に説明しようとする。
ふと空気中に違和感を覚え、居間へと続く廊下を振り返ると、そこには思案の果ての落とし物があった。ようやく真相が解明。

ムスメはおかあさんと一緒ではなく独りで「おかあさんといっしょ」を見ているうちに、便意を催した。
居間でパンツを脱いで、意気揚々とトイレに向かったことだろう。
「ひとりでできるもん♪」
しかし、当時の建替前の家は、築25年以上経っていて、全体に歪みが生じていた。
雨が降ったりすると、木製のドアが水分を含んで膨張し、床にひっかかって重くなるのだった。
「そっかぁ。トイレのドアが開かなかったかぁ」
「ぅえっ、ぅえっ・・・ぅわあぁん」

ムスメは、きっとママが帰ってきたら、こう言うつもりだったに違いない。
「ひとりでトイレでウン○できたョ!」
なのに、肝心のトイレが開かない。
パニくった。
脱糞した。
号泣した。
放尿した。
そして、何より、プライドが傷ついた。

ふだんはお人形のメルちゃんみたいに可愛い(←親の強欲目)ムスメが、泣き崩れ顔も崩れた。
ほとんど楳図かずおの「赤んぼ少女」タマミと化していた。
汗、涙、洟、ヨダレ、糞尿・・・。
血液以外全部出トックスふうのムスメを抱き上げ居間にいく。
部屋には、ムスメが脱ぎ捨てた、小さなパンツが一つ。
いじらしくていじらしくて、私は タマミ ムスメをひしと抱きしめた。
「おかあさんといっしょ」は別の番組に変わっていた。

     *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

「まったく、アレこそ究極のデトックスだったよね(笑)」
「出すもん全部出しましたからね」

こんな下ネタを披露すると、ムスメのプライドをさらに傷つけやしないかと心配されるかもしれない。
だが、ムスメは下ネタに関しては、実にケツの穴が大きい おおらかなのである。

デトックスペシャル_b0080718_12293146.jpg

←デトックス前デトックスペシャル_b0080718_12305662.jpg

←デトックス後
Commented by ビリーママ at 2011-02-22 14:19 x
トイレの戸が開かなかったときの落胆
幼心にパニくったでしょうねー

かわいいというか、かわいそうというか
記憶にふかーく刻み込まれてるのね?
一生かかっても忘れないでしょうね。

Commented by のぐっち at 2011-02-22 21:01 x
タマミをご存じない方のためにとは言えど、これ↑もってきましたかぁ。やるなぁ…み茶ママ…
そんな、タマミちゃんいえメルちゃんもJK卒業ですねぇ。(我が家のチンピラムスメと同い年でしたよね)
あの時こんなだった。あんなだった。最近そんな話で盛り上がります。
「想い出話が盛り上がるって、アタシも齢とったわ~」っていう奴…
↓私も処方された薬がドラッグストア3軒の在庫の寄せ集めだったことがあります。
まあ、珍しいものだったらしいんだけど…処方箋って期限があるからあせりました。
2軒目で数がまだ足りない旨の会話を聞いた時「勘弁して下さいよぅ!」って言っちゃいましたわ。
Commented by vitaminminc at 2011-02-23 20:02
❤ビリーママさま❤
三つ子の魂百までといいますからね(笑)。
まだ3才前の出来事なんですが、当人もよーく覚えてまして。、ハイ。
救いは笑い話にできてるところでしょうか。実際話題になるたび爆笑。
もしかして、ムスメが下ネタに対してオープンすぎるのは、
この過去のデトックス事件が原因か・・・だとしたら真犯人は
この私ですな。だれか私を逮捕してくださいぃぃ~!
Commented by vitaminminc at 2011-02-23 20:14
❤のぐっちさま❤
「けけけけけ」ですよ、「けけけけけ」(笑)
ムスメはつい最近、自動車教習所に通い始めました。
もちろん、母のお抱え運ちゃんになってくれるな? という投資♪
この春休み中に卒検合格までいってくれると助かるんですが。

えええ~~!? お薬の話、そんなことってあるんですねぇ。
保険薬局も、近隣の病院がどんな薬を処方するかは、
病院に出入りしている製薬会社のセールスマンから、
バッチリ情報得ていると思うんですけどねぇ。
希少薬も、在庫の確保だけはしっかりやってほしいですよね。
病院で待たされた上に薬局巡礼では、
時間がいくらあっても足りませんからのぉ~~~。

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by vitaminminc | 2011-02-22 12:34 | Comments(4)