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大型乗合自動車譚

多分、敵はヒノキだろう。
花粉症といっても主に喉しかやられなかった私だが、4月の中旬以降、ポケットティッシュが手放せない。
晴天でも花粉は常に降り注いでいるわけで、職場への往復はもっぱらバス。

先日、仕事帰りにバスに乗っていたら、私が降りるバス停より2つ手前で1人の年配女性が降車ボタンを押した。
停留所に着くと、女性はヨッコラショといった動作で席を立ち、エッチラオッチラ降り口まで歩いた。
そして、シルバーパスなるものが使えない事情でもあるのか、料金口にそれはそれはもどかしい手つきで小銭を1つ1つ投入した。
最後に、女性は一段一段恨みを込めるようにステップを降りて路上に着地した。
たった1人で6~7人が降りたくらいの時間を要したわけだ。

駅へ向かうバスではなく、‘帰り’のバスだったので、おそらくイライラする乗客など1人もいなくて、みんな温かい目で老女を見守っていたように思う。

齢をとるというのは、実に皮肉なものだ。老いる時間はやたらスピーディーなのに、老いてからの動作の一つ一つにかかる時間はやたらスローなのだから。

私もいつかああなるんだろうな・・・なんて考えていたら、自分の降りる停留所が近づいていた。
慌てて降車ボタンを押し、バスが停まる。
さっきのおばあさんに費やした時間を挽回するがごとく、私は素早く席を立ち、すでに左手に握り締めていたスイカのカードを右手に持ちかえ、読み取り部にタッチするやいなやステップを降りた。
所要時間3秒? 

しかし、まさに歩き出そうとした瞬間、バスの運転手に呼び止められた。
「お客さま、お客さま、料金が不足しています!」

なに!?
大急ぎでバスに戻ると、不足分が表示されていた。
20円!?

テンパッた。
財布に小銭はあった老化?
あった。(ホッ)
10円玉2枚、あった老化?
あった。(ホッ)

ところが、焦りまくりなので手元が狂う。
取りィ出しましたる小銭は、10円玉1枚と5円玉1枚。
違ーぅ! おまえじゃねーッ!
5円玉だけ戻せばいいものを、何しろ焦っている。
2枚とも小銭軍団の中に戻してしまった。

再び茶色いもんを2枚ゲット。
今度こそはと確かめると、10円玉1枚と5円玉1枚。
なんでまた、おまえなんだーッ!

三度目の正直で、ようやく10円玉を2枚取り出せた。
どこにどこにどこに入れればいいんでしたっけーけっけ?
「ココに入れればイイですか?」

「もう一度ココにカードをピッ!して、それからソコにお金を入れてください」
「ハィ・・・」

ヨロヨロとステップを降りた私は、浦島太郎の末裔以外のナニモノでもなかった。
さっきのおばあさんと同じどころか、それ以上に時間がかかってしまった。
おばあさんと私。2人で30人くらいの団体が乗り降りしたようなロスを生んだのである。

運転手は女性。いつかの緊急事態発生時のドライバーだった。

<バス会社さんへ>
彼女が運転するとき、たま~にバスが大幅に遅れることがあるかと思います。
彼女に落ち度はまったくありません。100%我々乗客により生じた遅れです。
運転は男性ドライバーより丁寧。乗り心地バツグン。素晴らしい運転手です。
ばーちゃんになっても、できることなら彼女が運転するバスに乗りたいです053.gif

大型乗合自動車譚_b0080718_11444490.jpg

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by vitaminminc | 2011-04-27 11:56 | Comments(0)