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某男子校における、日常の、カケラ

 その日、ムスコが通う高校に、校内放送が流れたという。
 何でも電力会社との取り決めで、冷房温度が26℃以下に出来ないよう設定されていたにも関わらず、勝手に低くしていたことが判明。1センマンエンの罰金だか追徴金だかが課せられる事態となった云々…。
 要するに、全校生徒に向けた厳重注意であった。
 「ィィィ、イッチェンマン~!?」
 そんな大金があったら、わが家のローンが限りなく完済に近くなる、楽になれるというのに。
 「勝手に下げちゃったの? ムスコはそのこと知ってたの?」
 「知ってたよ」複雑なニタリ顔でいう。「有名だもん。ふだんは26℃以下に出来ないようになってるんだけど、誰か裏技を編み出した奴がいて、一旦‘試運転’の状態に戻すかして設定を解除できる方法を発見したらしい。で、それができるなら、やっぱ(生徒間で)バーッて広まるじゃん?(先生たちに)バレないように、どの教室でも採用したんじゃね?」
 いきなり電気使用量が増えりゃー当然電気代だって跳ね上がりますわな。バレるのは時間の問題だったわけですわな。
 「でも、28℃くらいでも結構涼しいだろうに」
 授業中下敷きを団扇代わりにしていた昭和っ子の言葉に、地球温暖化の申し子が反論。
 「あっちーよ、学校は。ズボン脱いじゃって、ワイシャツの下パンツで授業受けてる奴もいる」
 「アーッハッハッ」笑った笑った。「男子校だからねぇ。自由すぎる。先生、注意しないの?」
 「一応机で見えないようにはなってる」
 「指名されたらどーすんの? 立ったらパンツなんでしょ、その子(笑)」
 「うちのガッコー、基本あんましいちいち注意しない。それに指されてもいちいち立たない」
 「え! 座ったまま答えるの?」
 「そんな非効率的な授業の進め方しないって。立ったり座ったり時間の無駄でしょ。指されて立つのは小学校までだよ」
 「えー! 私たちの時代は中学高校まで、指されたらちゃんと立って答えてたよ」
 土曜も授業があった時代は、遠くなりにけり。公立の小中に引き続き、私立のくせに土曜に授業がないムスコの高校。下半身パンツ姿の生徒がいようがいまいが、淡々と、厳かに、授業は進行するようである。
 設定温度の下げ方を発見しちゃったり、それに便乗しちゃったり、ワイシャツの下がパンツというスタイルで授業を受けちゃったり。
 そ~んなことはやってねえよ、とムスコはいう。その割に、なぜだ? 内進生(幼稚園から、及び中学受験からの進学生)たちにまで、内進生と間違われるというのは。どんだけ自由にハイスクール・ライフをエンジョイしているのか。

 そういえば・・・・と母は思うのであった。ケーブルTVの番組を録画する方法がわからなくて、3年も辛抱していたが、つい先日、遂に我慢の限界を超えたムスコが快挙を成し遂げた。
 ケーブルTVで放映される番組を録画する方法は、ネットでも多数指南されているが、ハイビジョンレコーダー(東芝)とTV(日立)のメーカーが違うため、どの方法にも当てはまらず、苦戦を強いられること1時間以上。
 3種類の取説に独自の判断を加えて試行錯誤を繰り返した結果、ケーブル、レコーダー、TVの3つのリモコンを駆使し、実に22工程の作業が必要なことがわかった。
 ムスメはこの工程のうち13工程までで「完了」とした結果、録画に失敗した苦い過去がある。
 14工程以降の「仕上げ」作業が要ることを、いったいどのように理解したものか皆目理解できないが、とにかくムスコは解明した。新しいレコーダーを購入してから、3年の歳月が流れていた。
 実際に私にやらせながら、工程の1から22までを丁寧に伝授してくれたムスコ。一度じゃ忘れてしまうから、いちいち書き留めていったら、B4サイズの紙が文字で埋め尽くされた。

 ど~りでケーブルTVを設置した業者も、レコーダーを設置した業者も、ひどく曖昧なやり方──「チャンネル自体を登録することはできないので、その番組を放映している時間を登録、設定するようになりますかね」──しか教えてくれなかったわけである。全メーカー全機種が頭に入っているはずがない。オレ様の仕事はコードを繋げて映るようにするところまでなの。そ~んな複数のメーカーを使っているような相手に、具体的な説明なんか求められても困るんだよねぇ。

 帰って来たムスメにムスコの手柄を伝えたら、「ヤッター!」と大喜び。パンツ一丁&6分割腹筋で頑張ったムスコもまんざらではない顔をしていた。

 翌朝。何かが引っ掛かって、ムスコに再確認した。
 「もしかして、パンツで授業を受けてる奴って、自分のことじゃないでしょうね?」
 「・・・・・・」(←含み笑い)
 「内進生にまで内進生って間違われる理由って、パンツしか思い浮かばないんだけど」
 「(笑)」
 「まさかパンツの子、あんた1人じゃないでしょうね!」
 「ほかにもいるよ」
 「やっぱり!!!」内心ホッとしていることをひた隠しにして、なおも訊く。「冷房の設定温度を下げられるようにしたのも!?」
 「いや、さすがにそこまでは。頭が良すぎる3年がやらかしたらしい」
 「頭なんか良くない! 使用量ですぐバレるようなことして。今さえ涼しければイイと思ったのかね」
 「いいと思ったんじゃね? 確信犯てことだよ。次年度設備費が見直しされる頃には卒業してるし」
 「!!! なんつ~・・・・・・」

 幸い(←どこが)うちの倅はパンツを穿いたサルにこそなりはしましたが、冷房には手を出していないようです。だからこそのパンツなんですね──って、喜べるかーーーッ!!
 
入学式の日、確か理事長あたりが祝辞の中でいっていた。
 「―当校の制服を着ている以上、その立ち居振る舞いには、一定以上のものが求められます。すなわち言葉遣いであったり、たしなみといったものに──そうですね、
‘スマートさ’とでもいいましょうか。そういったものが求められる、あるいは期待されるということを十分認識し、学校の外での行いには責任をもって云々…」

 ぅわわ、『スマートさ』だって。体型以外うちのムスコに最も欠けてますです、そもそも我が家の辞書に存在しないのでございます──そう感じたあの日の嫌~な予感が、現実のものに・・・(涙)
 ムスコには男子校が合っている。私の目に狂いはなかったと思っていた。撤回だ、撤回! 
 ここまでスマートさとかけ離れてprimitiveなら、動物園のほうがよっぽど合っている。ウホホ。ぃぇ、トホホ・・・。
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by vitaminminc | 2013-07-14 11:35 | 子ども | Comments(0)