2014年 07月 23日
夢中お見舞い申し上げます
太陽の季節、そして体温の季節。今日も35℃は超えそうだ。
私は壺を持っていない。だから壺の代わりに、頭蓋骨の中に大魔王とあくびちゃんを閉じ込めている。
現金なものである。たっぷり寝ていても、仕事中は何度となくあくびちゃんを噛み殺す。ごめんよ、あくびちゃん。
その癖、夢中になれることがあったりすると、覚せい剤でも打ったんかいというぐらい、頭が冴える。もちろんこの冴えは、もっぱらフィクションに対してのみ活かされ、決して仕事や勉強など現実的側面ではまったく役に立たない。ネバー。100%、役に立たない。
それを裏付けてみよう。そもそも私が夢中になれる対象は、この世に存在しないのである。私を夢中にさせてくれるのは、いつだってフィクションなのだ。非現実的世界に存在するもの、非現実的世界で起こる事象、あるいはそういった非現実的夢の世界そのもの。だからこそ夢中になれる。
話がくどくなってしまったが、私はつくりものが好きなのだ。映画だったり、小説だったり。要するに、現実から逃避することが好きなだけである。
その日私は、CATVで放映された「ゴールデンスランバー」という映画を鑑賞した。堺雅人主演の映画で、なかなか面白かった。またいつか観てみたくなるような、息の長いタイプの作品だったので、ああ、予約録画しておいて良かったなぁとしみじみ思った。
次に私は、その同名の原作(伊坂幸太郎/著)をネットで取り寄せた。半分まで読んだところで、予想通り、映画をしのぐ面白さだったので、会社の同僚相手に大絶賛。その同僚とは読書仲間で、私が持っている万木目学作品と、同僚が持っている伊坂幸太郎作品を交換し合うのが常だった。
ここにきて、逆転現象が起きたわけだ。いつもなら、同僚のほうから貸すよといってくるはずの伊坂幸太郎作品を、私のほうが先に読んで貸す。もとより伊坂好きだった彼女は、当然のことのように言った。
「貸して」
紹介して、貸すとまで言った以上、「いやぁ、実はまだ半分までしか読んでなくて」と待たせるのも忍びない。ちょうど脂がのって来たところだ。物語も俄然面白くなっている。分厚い長編ゆえ、残り半分といっても、通常の文庫本1冊以上のヴォリュームはあったが、私はふた晩で読み終える決心で臨んだ。
ところが、面白すぎて止まらなくなった。気づいたら、夜が白々と明けつつある。えらいこっちゃ! 今日も仕事なのに、もう若くもないのに、ほぼ徹夜で出勤とは!
4時半に読破するやいなや、意地でも寝てやるとばかり、ギリギリまで仮眠をとって、しっかりお勤めを果たした。
人間、やる時ゃやるものである。睡眠不足にはからきし弱く、本来であれば「仕事にならない」状態に陥っても不思議じゃなかった。それこそ小説のタイトルどおり、黄金のまどろみを享受してこその自分、のはずだった。
朝一で、バトン(小説)を無事同僚に渡し終えた私は、若干いつもより無駄口が少なく、若干いつもより品位を保ち、若干いつもより真面目に仕事ができた。
私の頭蓋骨の中の魔王は、睡魔界の魔王だ。フィクション大魔王だけあって、面白い小説が大好物。小説を読んでいる間中、その見返りとして、私に上質な眠り(ゴールデンスランバー)を与えてくれたらしい。
ふつう睡眠不足の翌日は、疲労ハイでどうにかもっても、翌々日には絶対ガタが来る。それが今回、まったくなかった。
そう、私は目を開けたまま眠ることも得意だが、目を開けて活字を追いながら、本当に夢を見る─つまり眠る─に等しい優れワザを体得したのである。
何度もいうが、このゴールデンスランバーは、退屈でわけのわからない学術書の活字を目で追いながら、≪寝落ち≫するのとは全く違う。
脳は、現実(いつも)以上に、覚醒していた!
余談ではあるが、映画版のキャストについて。
堺雅人は、原作の人物描写が、まさに堺雅人の風貌を指しているとしか思えないくらいだったので別格としても、主人公の元カノ役の竹内結子も良かった。彼女以外、元カノ役は不可能だと思わせるくらい、ハマリ役だった。話し方も、声さえも。だから小説を読んでいると竹内結子の声に変換されるので、すごく愉しかった。
まだ「ゴールデンスランバー」を読んだり観たりしていないみなさんへ。本作品の場合は、先にヴィジュアル(映画版)から入っていくことをお勧めします。
映画を観て、ストーリーがわかったあとでも、いや、わかっていれば尚更、小説が愉しく読めます。見事なキャスティングのおかげで、台詞すべてが、映画の出演者の声で再現されるのですョ
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by vitaminminc
| 2014-07-23 15:11
| 趣味
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