こんぺいとう物語~チャラ胆~

5泊6日の入院生活が終わり、自宅静養すること今日で3日。
3泊以上家を空けるのなんて、新婚旅行でオーストラリアに行って以来。25年ぶり。
もう明日から職場に復帰。
できることならずっとこのまま家にいたい。
生粋のインドア派なのだ。独りで家にいることがまったく苦にならない。
ストレスフリー万歳。何時間でも引きこもっていられる。
でも、働かないといけない。しぶしぶ明日から出勤するけど021.gif



先月半ばに、家族立ち会いのもと(といってもムスメonly)手術に関する詳しい説明を受けた。
私の正式病名は、「胆嚢結石症」である。

b0080718_07574444.png

造影剤を使った最新鋭CTディスカバリー提供のカラー画像を示しながら、主治医のM先生が胆嚢の上の管をスティックで指した。
土中の芋的なものに根が生えてるような画像である。
これが自分の体内だなんて信じられない。他人事のように覗き込む。

031.gif「これがちょっと、厄介っちゃあ厄介かな」

胆石は、尿道結石のように溶かしたり砕いたりといった治療はほとんど無効であるらしい。
それに、石ができてしまう時点で胆嚢自体が正常に機能していないので、石だけ摘出するという選択肢はない。摘出するなら袋(胆嚢)ごと、というのが通例らしい。
b0080718_07495499.png

031.gif「胆嚢上部の肝臓とつながってるこの胆管、普通はY字になってるんですよ。Y字の下の一本をカットすればいいわけだけど、これね、なんか三叉路みたいに、胆嚢にもう一本の管もくっついて見えるんですよ」
確かに、Yが横たわっているように見える。胆嚢に、接点が二か所できてしまっているように。
008.gif「あの、それはつまり──」
私の不安を押しやるように、赤ら顔のM先生が、なぜか上機嫌で見解をまくしたてる。
031.gif「胆管切るときに、ほかの切らなくていい管を切っちゃったり、それこそ癒着なんかが見られた場合はちょっと厄介なことになる可能性はあるけれど(笑)──まあ、だからといって(腹腔鏡手術から)開腹に切り替えたところで、現物を見たってよくわからないんですよ。血だらけで、実際何がどうなっているかなんて判断できないんだけどね(笑)」
008.gif「・・・」(笑えるかぃ。つまりつまり、胆管が奇怪な形状をしている私の手術は、結局どうなるわけざんす?)
031.gif「ただ、チャラ胆(笑)、簡単な(胆嚢摘出)手術のことですけど、チャラ胆のがミスが多いくらいなんですよ、舐めてかかるから。難しいケースの方が連中(←研修医のことらしい)も気合入れてやるからかえって上手くいったりします」

チャラ胆? 横に腰かけているムスメを見た。
案の定、顔面蒼白。今にも失神しそうではないか。
さっきから何度ももぞもぞ体を動かしていたのは、トイレを我慢しているからではない。
臓器、血管、神経、癒着、大量出血といった単語にめっぽう弱いからである。
目を開いたまま、耳は閉じているに違いない。

031.gif「ま、たぶん内視鏡でイケると思いますよ」
008.gif「あの、私の手術はM先生が執刀してくださるんですか?」
031.gif「いや、オブザーバーとして手術室内にはいますけど、若いもん(←研修医のことらしい)がやります」

え”ぇ~~~~!? 難解なケースっぽいのにィ~~~!? チャラ胆じゃないのにィ~~~!?
しかし、もう後へは引けないのである。
なぜだかわからないけど、もう手術を受けるしかないと感じ、気づいたら同意書にサインしていた。

赤ら顔のM先生、むやみにに明るくチャラそうだったにも関わらず、説明にはたっぷり40分時間をかけてくれた。
おかげで診察室を出るころには、ムスメの顔はほぼ白紙の状態だった。
それでも、100%耳を貸さなかったわけではなかったらしい。
「ねぇ、私の聞き間違いじゃなかったら、M先生、もしかして≪チャラ胆≫て言ってた?」
私が訊くと、
「ああ。言ってたね」
ムスメが頷いた。

かくして私は、至極計画的に手術に臨んだのである。
自覚症状がない胆石症であれば、経過観察という選択肢もある。
が、私の場合は少し違った。
下手したら二十年前から、風邪の引き始めには必ずといっていいほどみぞおちの辺りが張って痛くなるのだった。
6月に人間ドックを受けたのだって、胃に問題があるのではないかと密かに気に病んでいたからだ。
でも検査の結果、胃はまったくきれい。その代わりに胆石が複数個発見されたわけ。
たとえ自覚症状がなくたって、何十年も胆石を放っておくのはよくない。
あれこれ調べた。胆のう癌になる確率が高くなることも知っている。
採れるうちに採っておくに越したことはない。
疝痛と呼ばれる発作でも起こして、救急搬送されることになったら大変だ。
それこそ周囲に迷惑をかけてしまう──考えた末の決断。

しかし、「外科医は明るい」とはよく言ったものである。
単に明るいのではなく、「明るいオタク」だ。間違いない。

(つづく)


名前
URL
画像認証
削除用パスワード
by vitaminminc | 2016-11-16 22:04 | 健康 | Comments(0)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by み茶ママ