人気ブログランキング | 話題のタグを見る

甘露茶

今月初頭、満92チャイを迎える誕生祝いに、母を秩父の温泉に連れて行った。
道中、母といろんな話をした。
「こないだね、お父さんが夢に出てきたの」
と母が言った。
私は動揺を悟られないように明るく訊いた。
「へー、珍しいね。お父さん、機嫌よかった?」
「それがね、お父さんと二人でただ黙ってお茶を飲んでるだけなんだけど、そのお茶が、すっごく!」 
「ぅわ…」
狭い車内、耳が遠い母に大音声をあげられ、私は耳の奥がキーンとなった。
「(あらごめんなさい)すっごく、すっごく、美味しかったのよ。あれは美味しいお茶だったわねぇ」
父は16年程前に他界した。こっちの水は甘いぞと蛍を呼び寄せるように、母を呼んでる気がした。
私は縮まる鼓膜と速まる鼓動をなだめながら、平静を装った。
「いい夢でよかったね」
「そうなのよ。いつも怖い夢ばかり覚えてるのに。お父さんが夢に出てくるなんて、今まで一、二度あるかないかよ。久し振りにいい夢だった。あのお茶、もう一度飲みたいわぁ」
母は亡夫よりお茶との再会を望んでいるようだった。
父は昔気質を絵に描いたようなスーパー頑固なカミナリ親父で、怒ると本当に恐かった。気に入らないことがあるとブチ切れ、母によく手をあげた。
アニメ『巨人の星』で、星一徹が卓袱台をひっくり返すたび、私はそこに父を見ていた。
おとーさん。
今だったらパワハラ&モラハラといわれてもおかしくないです。
おとーさんに、10年以上無期限の天国謹慎を申し渡します。
だからまだ待機です。
旅館の夕食の数えきれない料理にも、スタバの「ベジタブルロール」にも舌鼓を打って可愛い笑顔を見せてくれた母。
おかーさんには、百を超えるまで長生きしてもらいたいのです。
甘露茶_b0080718_09401164.png









名前
URL
削除用パスワード
by vitaminminc | 2018-04-11 09:17 | 人間 | Comments(0)