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ドリームランドセル

ドリームランドセル_b0080718_231486.jpg安全帽に尻を隠し昼寝する猫
     

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 私は物を捨てるのが苦手だ。ボケたらきっと、「ゴミ屋敷」の主として、ニュース番組の特集で取り上げられるに違いない。どうも物に対する思い入れが、人よりも強いようだ。
 生身の人間は案外スパスパ切り捨てるくせに、物言わぬ物に対しては、なかなか想いを断ち切れない。家の中が常に混沌としているのは、そのせいだ。

 ムスメが小学校を卒業してからしばらくの間、私を悩ませたのが、ランドセル。捨てるに捨てられず、かといって押入れにしまっておくには嵩張り過ぎた。ムスメが自分の思い出にとっておきたいと言うのであれば、ミニチュアサイズに加工してもらうことも考えた。ところが、当のムスメはドライなもので、「処分していい」ときたもんだ。
 卒業式が終了し、ムスメたち卒業生が体育館から退場していく姿を見送っている時、私は確かに見たのだ。6年前のムスメの姿を。それは、入学式の後、担任の先生に引率されて、はにかんだ表情で退場していくムスメの姿だった。ピンクのスーツを着て歩く、小さなムスメの姿。大きな卒業生の列に見え隠れするのを、瞬きするたびに確かに見た。その時の幻影が、ランドセルに詰まっているような気がして、とても捨てられないのだった。
 さあ困った、どうしようと思いながら、ズルズルと半年が過ぎた頃、ムスメが中学校から手紙を一枚持ち帰ってきた。「思い出のランドセル募金」──アフガニスタンの子どもたちに送るために、不要となったランドセルの提供にご協力ください──との呼びかけだった。涙が出るほど感激した。捨てることはできなくても、誰かに使ってもらえるならば、こんな嬉しいことはない。それはまさに、私が最も望んでいたランドセルとの別れのカタチだった。
 物を大切に扱うムスメの赤いランドセルは、6年間使用したとは思えないくらいきれいだった。1年足らずしか使っていない弟のランドセルよりも遥かにきれいだった。早速皮革製品用のクリームを塗り、柔らかい布でせっせと磨いた。パッと見は新品に近くなり、このランドセルを手にした子どもの笑顔が目に浮かんできた。ランドセルの中に、新品の鉛筆や消しゴム、メモ帳なども入れて、指定日に学校に持っていくと、係のおかあさんにも驚かれた。
 「あら、いいんですか? こんなきれいなランドセルを」
 「6年間毎日使っていたものです。どうぞよろしくお願いします」
 年が明けて今年の2月。(財)ジョイセフから、ムスメ宛に礼状が届いた。
 『「思い出のランドセル募金」にご協力をいただき、ありがとうございます。心より感謝いたします。皆様のご支援により贈られるランドセルは、アフガニスタンの村の小学生や戦争で親を失っても頑張って小学校に通っている子どもたちの手に届けられます。これからも皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。』
 
 上の左の写真は、日本から贈られたランドセルを背負う、アフガニスタンの子どもたちだ。かつてムスメの背中で6年間揺れていたランドセル。海を越えて、遠くアフガンの空の下、今はどんな子どもの背中で、どんな夢を乗せて揺れているのだろう。ジーンとなる。ランドセルを生かせることが出来て、本当に嬉しかった。

 ところで、ランドセルと共にムスメが毎日身に着けていた黄色い安全帽──これまた処分できないまま、ムスメを6年間安全に登下校させてくれた守り神の象徴として、家の中に奉られている。というより、猫相手に余生を送っている。
 現在ムスメは自転車通学。毎日着用しているあの白ヘルも、近い将来は家の中のオブジェの1つになるのだろう。いや、私がボケたら起床とともに頭にかぶせるよう、今からムスメに頼んでおくべきか。安全に徘徊できるように。
 
Commented by sarasa at 2006-06-08 08:46 x
我が家も来年子供が小学校卒業します。いいことを聞きました。うちもぜひ寄付させていただこうと思います。思い出がたくさんつまっていても、納戸の肥しになるよりは、大切に使ってくれる方が数倍いいですね。
Commented by どんまま at 2006-06-15 12:50 x
私は何でも見事に捨てられる雑な性分なので、捨てられなくて困ったら呼んでくれればいつでもばっさり捨てに行きますぜ。うちには、子どもの制服もランドセルも小さい頃の絵も作文も、さっぱり何もありませんの。通知表すら保存期間は3年! うわっはっはっ
Commented by vitaminminc at 2006-06-15 17:21
sarasaさん、ランドセルにもぜひ第二の人生(鞄生か)を! 物余り大国日本国民の、これは使命であります。政府が善人面していくら大金を注ぎ込んでも、どこかで吸い取られてしまい、本当に援助を必要とする人々の手には行き届かないのが現状。お金などではなく、途中で「ピンはね」される心配の少ない「物資」を送るべきとの声も聞かれます。どうかお子さんのランドセルも海を渡らせてください。
Commented by vitaminminc at 2006-06-15 17:54
どんままさん、その竹を割ったような性格、好きです。見習おうとしても、きっと私は割った竹の中にそうめんなんか入れてちゅるちゅるやってしまうんだろうなぁ。それから、うちの息子がもしもどんままJr.のような通知表を持ち帰ったりなんかしたら大変!3年どころか家宝として末代まで受け継がれることでしょう。ちなみに私自身の通知表はいつのまにか自然消滅したようです。うわっはっはっ
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by vitaminminc | 2006-06-03 23:03 | ランドセル | Comments(4)