人気ブログランキング | 話題のタグを見る

茶碗と箸

 ニッポン人に生まれて良かった─実家に帰るたび出番を待ちわびている茶碗と箸を見た瞬間、いつもそんなことを感じる。それは私が嫁ぐまでの間、私の手に慣れ親しんだ食器だった。結婚するときにそれらを持参する人もいるだろうが、私は半ば無意識に置いていった。だから実家に帰ったとき、客用の茶碗ではなく自分が愛用していた茶碗と箸が出迎えてくれる(まあ自分で用意するんだけど。料理つくるのも私だし)と、なんとも言えずホッとした気分になる。

 ところで、湯呑み。コレがない。ひどいもので、自分が使っていたものがどんなものだったか思い出せない。実家を出るときに持って出たのか否かすら覚えていない。だから湯呑みだけは毎回客用の中から1つ取り出して使っていた。大きさもデザインも好みではないから、茶の味もよくわからない。ってんで、今回帰省先のイトーヨーカドーで自分専用のカップを買ってしまった。下手にムスメを同行していったものだから、本当に欲しかった品は手に入らなかった。自分で選んだ和風の湯呑みは却下され、代わりに大きなマグカップに決定されてしまった。自分で使うのだから、こういう時こそ「我」を通したいのに、かわいいムスメに「ママにはこっちのが似合うよ」なんて言われると、グリコのポッキーみたいに簡単に折れてしまう。
 そんなわけで、ヒヨコとネコの絵の入ったバカでかくて幼稚なマグカップを買って帰ったところ、母に嘆かれた。
 「あらぁ~、客用のじゃ小さかったの? 言ってくれれば出したのに」(←帰るたびに、もう何年も言い続けていたんですけど)
 母が戸棚の奥をゴソゴソ探って取り出したのは、客用の湯呑みよりはるかにセンスの悪いシロモノだった。期待はしていなかったが、これほどまでとは思わなかった。中途半端なサイズの石灰色した変なカップは、ムスコのミルクカップとして採用させてもらうことにした。ふはは。

 しかし─嫁いでから早15年余り。波乱万丈の独身時代の最終章に付き合ってくれた茶碗と箸。いまだ健在で、私の帰省を待っていてくれる。いい。実にいい。
 嗚呼、ニッポン人で良かった。皿はまぁいいとして、コレがフォークとナイフであってみぃ。怖くて仕方ない。
 
名前
URL
削除用パスワード
by vitaminminc | 2007-01-05 09:45 | Comments(0)