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バッテン効果

 朝起きたらポストの中から朝刊を取ってくる──これはムスコのシゴトだ。なのに、毎度毎度忘れる。前にも述べたが、頭がおかしいんじゃないかと思うくらい、スコンスコン忘れる。私が注意しても、私より怖いダンナが叱っても、一向に改善される気配が無かった。

 月曜(15日)の朝も忘れていた。よくもまあ、毎日毎日見事に忘れられるものだ・・・と100%呆れた。何食わぬ顔で朝ごはんを食っているムスコを眺めながら、私はほんの思いつきで言ってみた。
「今日から記録を残すことにしましょう」
 ムシャムシャごはんを食べながら、ムスコが「?」という顔になった。
「し・ん・ぶ・・・」
 と私が言い終わらないうちに、ムスコが「ひょー」と息を吸い込んで席を立った。廊下に走り出ていったムスコと入れ替わりに、ダンナが起きて居間に入ってきた。そこにムスコがすかさず新聞を差し出す。
「お、サンキュ」
 ムスコは事なきを得たような顔をして、再び食卓についた。私はその様子を見届けてから、緑色の油性ペンを握り締め、トイレに急行した。そして、便座の前の壁に吊るしてあるカレンダーに、きゅるきゅる摩擦音を立てながら、文字を書き込んだ。

         ×・・・新聞を入れ忘れた日(1/15スタート)

「1月」の横に、↑のような注意書きを大きく書き、15日の数字の上にでっかくバッテンを記入した。後ほどトイレに入ったダンナは、嫌でも自分のムスコの実態を目にすることになる。当然ムスコは、ダンナから説教されることになる。
 それほど期待していたわけではないが、効果はテキメンだった。昨日と今日。ムスコは自分から新聞を取りに行った。朝起きたら、まずはトイレで放尿──この習性を持つムスコには、トイレの掲示が最も威力を発揮した。慣れっこになっているから、ダンナの説教が怖いわけではないはずだ。便器に座って真っ先に目に飛び込んでくる、月曜日の「×」がムスコを変えたのだ。自分の評価を×で表わされ、屈辱を感じたに違いない。
 ‘新聞を入れることが出来た日’として、日にちを○で囲んでやる方法もあるが、私はそこまで甘くない。割り当てられたシゴトは、出来て当たり前なのだ。やらねばならんのだ。出来なかった日を×にする。これが正しい教育である。まるでワンコの調教レベルだ。
 とはいえ、忘れずに入れられるようになってから、まだたったの二日目。それでも、忘れずに入れることが二日と続かなかったことを思えば、大きな進歩である。はたしてダンナが出張で留守のときでも、この「×無し記録」は更新されていくであろうか。×は○より効果的ってことを信じ、期待したい。
 楽しみである。しかし、もしもこの先、×が書かれても平気の平左になり下がるとしたら、私は相当落ち込むだろう。期待するというより、もう祈るしかない。

      南無阿弥陀罰・・・南無阿弥陀バツ・・・南無阿弥陀×・・・
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by vitaminminc | 2007-01-17 16:20 | Comments(0)