2007年 02月 21日
ドシ~!!
ムスコが林檎のほっぺをして学校から帰ってきた。
「クラクラする・・・」
額に触れてみると、恋の病にかかったわけでもないのに、妙に熱っぽい。目にも眼力がない。泳いでいるというよりも、瞳が浮いてしまっている。ビューフォート風力階級4もあれば、へなっと倒れそうである。
熱を測ったら37.5℃あった。うちのデジタル体温計はいまいち信用できない。表示する数値が異常に低い。うちの子たちの平均体温は35℃ということになる。爬虫類か。
そんなわけで、38.0℃以上あるに違いないとみた私は、すぐに医者に連れていった。
「38℃? いや、これはもっとありそうですよ。ちょっと、熱測ってみて」
と医師が看護師に指示を出した。
「5時間目くらいからクラクラしてきたの? 5時間目っていうと・・・?」
と医師が聞く。
「お昼を食べたあとくらいだと思います」
と、すでに思考停止状態になっているムスコに代わって私が答える。
「そうか。インフルエンザの検査をするには時間的に早すぎるなぁ。あまり早く検査しても菌が検出されないんですよ」
P-!P-!P-!(体温計の音)
「熱、何度あった?」と医師が聞く。
「39.4℃・・・!」と看護師が口に手をやる。
私も思わず息を吸い込んだ。ドシ~!39・4℃~!
「高いですね。夜になるともっと上がるでしょう。今から3時間以内に節々の痛みを訴えるようなことがあったら電話してください。検査をして、インフルエンザだったらタミフルを出します。咳なんかが出ていたってことだから、おそらく違うとは思いますがね」
そう言って医師が処方してくれたのは、クラリスという抗生剤だった。
その晩は(当然のことながら)食欲がなく、夕飯も食べずに寝込んだムスコ。学校から帰ってきたムスメが、弟の容体を聞くやいなやマスクを装着した。半月ほど前、自分が風邪をひいて咳をしていたときは、「迷惑だからマスクをしろ!」と何度言っても言うことをきかなかったくせに、自分がうつされる側に回ったら即行防御態勢に入った。
「だって39.4℃なんて、冗談じゃない」
そうだ。確かに冗談じゃない。10年以上前になるが、38℃熱が出たとき、私は腰が抜けた。立てなくなって、床を蛇のように這ってキッチンに辿り着いた。そして遠退いていこうとする意識を必死に保ちながら、冷蔵庫を開けた。はぁはぁはぁ、そしてドアにしがみつくようにして、ズズズ・・・と解熱剤(←座薬)を取り出し、そのまま薬が効いてくるまで床にくの字になって倒れていた。熱が下がるとすぐに立つことができたが、38℃で死にかけたのだ。39℃なんて、完全にイッてしまう。
もちろん私も立体マスクをした。カラス天狗の嘴のようである。‘いまさら’という気がしないでもないが、嗽と手洗いを頻繁に行った。それでいて、夜はムスコの横に寝た。
ポカリスエットと熱冷まシートと抗生剤。この3種の神器の力により、翌朝には少し元気になって階段をおりてきた。
「お腹空いた」
これが子どもの回復力、生命力なのか。
それでもまだ微熱少年であることに変わりはない。昨日に引き続き、今日も学校を休ませた。
発熱した月曜の晩、近くのスーパーに買い物にいったら、ムスコと通学班が一緒の男の子にあった。母親のお手伝いで、店にもやしを買いにきていた。私と挨拶を交わした後も、チラッチラッとこちらを見ていた。
もやし売り場を案内する店のお姉さんの後を歩きながらチラッ。
「もやしはココです」と教えてもらいながらチラッ。
私は寄っていって、再び声をかけた。ムスコが高熱を出したから明日学校を休むことを伝えると、
「やっぱり?」ともやし少年は言った。「ムスコ(←ムスコの名前)ね、今日学校の帰りに何度もしゃがみこんじゃったんだよ」
チラッチラッと私を見ていたのは、そんなムスコを心配して、様子を知りたがってくれていたからだ。
「○○くんも風邪に気をつけてね」
もやし少年とスーパーで別れ、家に向かいながらムスコの‘成長’を実感した。ほんの1年前までは、大したことでもないのにしょっちゅう保健室にいっては絆創膏を貼ってもらったり、熱もないのに迎えの電話を寄越していたムスコ。38℃以上も熱を出しながら、30分の通学コースを歩いて帰ってくるとは。途中でぶっ倒れてアスファルトに後頭部でも打ち付けたらどうするつもりなのか。こんなときはいくらでも呼び出してくれて構わないのに。嬉しいような、悲しいような。
今日も念のためムスコを医者に連れていった。もしかしたら検査をするかもしれない。だがすでに熱は下がってきている。
「インフルエンザではないですよ」と断言された。「インフルエンザの熱は、こんなもんじゃない」
残っている抗生剤を飲みきったあとで服用するために、咳止めの漢方薬をもらってきた。
「寝るのに飽きた~」と嘆いていたムスコ。今日の午後は、ベッドの上の陽だまりで、「がんばれヘンリーくん」シリーズを読み直している。ヘンリーくんが、野良犬アバラーを家に連れて帰りたい一心で手に入れたダンボール箱。ドラッグストアでもらったその箱に書かれた文字にウケていた。
「何度読んでも笑える・・・『もう誰からもハゲ呼ばわりされることはありません』だって!ひゃひゃひゃ・・・」
育毛剤を笑ってられるのも、今のうちだけかもしれない・・・。高熱を出して毛根に損傷を来たしてなければ良いが。
by vitaminminc
| 2007-02-21 15:43
| 発熱
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