カテゴリ:健康( 14 )

─恥の多い生涯を送って来ました。

ご存じ、太宰治『人間失格』の有名な出だしである。
そしてムスコのマイブームでもある。
何が気に入ったのか、日に最低一回は冒頭の一節を口にする。

言っちゃなんだけど、私は過去形に出来ない。
絶賛人間失格中なんである。

先月下旬、久しぶりに手持ちの1day コンタクトを装着しようとしたら、ペリッと剥がすアルミの蓋が、ペリッと剥がれなかった。
もんのすごい圧着力。文字通りバカぢからでペペペッリリリッと力任せに引き剥がしたら、大失敗した。
普通はアルミの蓋と共にきれいに剥がれるから、完全に気配を消しているが、実はプラ容器とアルミの蓋の間には、更に半透明の薄~い膜のごときフィルムがある。
そいつだけが剥がれずに、圧倒的存在感を放ちながら、完璧に残っていたのである。
柔らかいから始末に負えない。ぴんと張ってる割には押しただけへこむし、かといって引っ張るだけの余地もない。暖簾に腕押し、いや、指押し状態。
ムカムカしながら、思い切り爪を食い込ませて破壊したら、顔面に塩水を浴び、レンズは破損。
2個目も同様。5個試して5個とも蓋がイカレていた。
なんじゃこりゃ! 
昨年暮れに買ったばかりだというのに、蓋がきれいに剥がれないなんて。不良品ではないか。
早速、コンタクトレンズを購入した店に箱ごと持ち込んだ。
でも、おかしなクレーマーと思われたくなかったので、可能な限り下手に出た。
─蓋がまともに剥がれないんです。フィルムみたいのが残ってしまって、爪やカッターで無理矢理開けたらレンズが傷ついてしまって。不衛生ですし、とても困ってます。
女性スタッフが箱を受け取り、何やら調べ始めた。
現物を開けてみようともしない。
私は、彼女がコンタクトの1つを手に取って、実際に蓋が開かないのを確認して、『あら、これはいけませんね』と納得してくれる様子を妄想していた。
だが、彼女はPCのキーを叩きながら、しきりにメモをとっている。
やけに待たされるなと時間を気にし始めた頃、ようやく彼女がカウンターの内側から出てきた。
私が持ち込んだ箱と、写真つきのコンタクトの一覧表を2種類を携えて。
「お客様にお持ちいただいたのは、こちらのレンズでございます。こちらは2009年に発売されたものですが、2013年にメーカーの方でリニューアルされていますので、現在こちらと同じタイプのものは取扱い終了となっております」
「ひゃ!」
彼女は神妙な顔つきで、もう1つの一覧表を示した。
「お客様が昨年購入されましたのは、こちらのメーカーの、このタイプですので、おそらくご自宅にあるのではないかと…」
「使わないまま古くなりすぎたから買い替えたのに、私、そんな何年も前のレンズを目に入れちゃったんですね」
そう、無理矢理破ってレンズを取り出し、目に入れたら激痛が走り、レンズが破損していることに気づいたわけで。
「家に帰って探してみます!」
「お取り寄せでしたが、12月○○日に佐川急便でお届けしております、白地にオレンジの箱です…」
「わかりました、家に帰って探してみます!」
私は心の底から女性スタッフに詫びた。丁重に詫びた。
50年も生きているとわかることがある。
あの接着剤の頑固さ。あれは、一定の時を優に超えた状態を意味してるってこと。
それが頭の片隅にあったから、今回私は慎重だった。万が一に備えて、下手に下手に出て正解だった。

子どもらにカミングアウトした。
ムスメには、「なんで買おうと思った時点で古いの捨てちゃわなかったの」と呆れられた。
ムスコには、「あー、俺、恥ずかしい、そんな人、引くわー」と真顔で言われた。

暮れに購入した箱は、洗面所のキャビネットの中にしまってあった。店に持ち込んだ年代もののコンタクトも同じ場所にあった。せめて新しいのが届いた時点で、きちんと交換して捨てていれば。いや、ムスメが言うように、新しく買い直すことを決めた瞬間、破棄しなきゃいけなかったのだ。
猛省。 

来月初旬、脳ドックを受けることにした。
本気なので、予約も入れた。
期間限定とやらで、18,000円台で受けられる。
格安ながら、ごく基本的コース。もちろん、MRI。

結果が怖い気がする。

by vitaminminc | 2017-03-08 22:32 | 健康 | Comments(0)
5泊6日の入院生活が終わり、自宅静養すること今日で3日。
3泊以上家を空けるのなんて、新婚旅行でオーストラリアに行って以来。25年ぶり。
もう明日から職場に復帰。
できることならずっとこのまま家にいたい。
生粋のインドア派なのだ。独りで家にいることがまったく苦にならない。
ストレスフリー万歳。何時間でも引きこもっていられる。
でも、働かないといけない。しぶしぶ明日から出勤するけど021.gif



先月半ばに、家族立ち会いのもと(といってもムスメonly)手術に関する詳しい説明を受けた。
私の正式病名は、「胆嚢結石症」である。

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造影剤を使った最新鋭CTディスカバリー提供のカラー画像を示しながら、主治医のM先生が胆嚢の上の管をスティックで指した。
土中の芋的なものに根が生えてるような画像である。
これが自分の体内だなんて信じられない。他人事のように覗き込む。

031.gif「これがちょっと、厄介っちゃあ厄介かな」

胆石は、尿道結石のように溶かしたり砕いたりといった治療はほとんど無効であるらしい。
それに、石ができてしまう時点で胆嚢自体が正常に機能していないので、石だけ摘出するという選択肢はない。摘出するなら袋(胆嚢)ごと、というのが通例らしい。
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031.gif「胆嚢上部の肝臓とつながってるこの胆管、普通はY字になってるんですよ。Y字の下の一本をカットすればいいわけだけど、これね、なんか三叉路みたいに、胆嚢にもう一本の管もくっついて見えるんですよ」
確かに、Yが横たわっているように見える。胆嚢に、接点が二か所できてしまっているように。
008.gif「あの、それはつまり──」
私の不安を押しやるように、赤ら顔のM先生が、なぜか上機嫌で見解をまくしたてる。
031.gif「胆管切るときに、ほかの切らなくていい管を切っちゃったり、それこそ癒着なんかが見られた場合はちょっと厄介なことになる可能性はあるけれど(笑)──まあ、だからといって(腹腔鏡手術から)開腹に切り替えたところで、現物を見たってよくわからないんですよ。血だらけで、実際何がどうなっているかなんて判断できないんだけどね(笑)」
008.gif「・・・」(笑えるかぃ。つまりつまり、胆管が奇怪な形状をしている私の手術は、結局どうなるわけざんす?)
031.gif「ただ、チャラ胆(笑)、簡単な(胆嚢摘出)手術のことですけど、チャラ胆のがミスが多いくらいなんですよ、舐めてかかるから。難しいケースの方が連中(←研修医のことらしい)も気合入れてやるからかえって上手くいったりします」

チャラ胆? 横に腰かけているムスメを見た。
案の定、顔面蒼白。今にも失神しそうではないか。
さっきから何度ももぞもぞ体を動かしていたのは、トイレを我慢しているからではない。
臓器、血管、神経、癒着、大量出血といった単語にめっぽう弱いからである。
目を開いたまま、耳は閉じているに違いない。

031.gif「ま、たぶん内視鏡でイケると思いますよ」
008.gif「あの、私の手術はM先生が執刀してくださるんですか?」
031.gif「いや、オブザーバーとして手術室内にはいますけど、若いもん(←研修医のことらしい)がやります」

え”ぇ~~~~!? 難解なケースっぽいのにィ~~~!? チャラ胆じゃないのにィ~~~!?
しかし、もう後へは引けないのである。
なぜだかわからないけど、もう手術を受けるしかないと感じ、気づいたら同意書にサインしていた。

赤ら顔のM先生、むやみにに明るくチャラそうだったにも関わらず、説明にはたっぷり40分時間をかけてくれた。
おかげで診察室を出るころには、ムスメの顔はほぼ白紙の状態だった。
それでも、100%耳を貸さなかったわけではなかったらしい。
「ねぇ、私の聞き間違いじゃなかったら、M先生、もしかして≪チャラ胆≫て言ってた?」
私が訊くと、
「ああ。言ってたね」
ムスメが頷いた。

かくして私は、至極計画的に手術に臨んだのである。
自覚症状がない胆石症であれば、経過観察という選択肢もある。
が、私の場合は少し違った。
下手したら二十年前から、風邪の引き始めには必ずといっていいほどみぞおちの辺りが張って痛くなるのだった。
6月に人間ドックを受けたのだって、胃に問題があるのではないかと密かに気に病んでいたからだ。
でも検査の結果、胃はまったくきれい。その代わりに胆石が複数個発見されたわけ。
たとえ自覚症状がなくたって、何十年も胆石を放っておくのはよくない。
あれこれ調べた。胆のう癌になる確率が高くなることも知っている。
採れるうちに採っておくに越したことはない。
疝痛と呼ばれる発作でも起こして、救急搬送されることになったら大変だ。
それこそ周囲に迷惑をかけてしまう──考えた末の決断。

しかし、「外科医は明るい」とはよく言ったものである。
単に明るいのではなく、「明るいオタク」だ。間違いない。

(つづく)


by vitaminminc | 2016-11-16 22:04 | 健康 | Comments(0)

体験談

私はよく自分が体験したことを子どもに話す。
18才のムスコがかなりウケた話をしよう。
「こないだ私、人間ドックに行ったじゃない?
で、お腹のエコー撮る前に、先生がこーやって
(左手をパーにして腹にあてがい、右手人差し指、
中指、薬指を左手の甲の上でトントン叩く仕草)
触診というか、張り具合を診たわけよ。そしたら
あり得ないくらい、診察室にいい響いちゃって」
「ひゃっは!!(笑)」
「そばにいた看護師(♂)もドン引き―」
「どんな音だよ(笑)」
「腹鼓? 結構水っぽい音」
「わっは!!(笑)」

健康診断は、結構しんどい。

by vitaminminc | 2016-07-21 00:58 | 健康 | Comments(0)

怪奇・蜘蛛女

生まれて初めて受けた人間ドック。
いろいろな体験をしました。

オット存命中はオットの会社が加入している健康保険組合で、
毎年無料の主婦健診を受けていました。
項目は、いわゆる特定健康診断に準じた内容。

なので、それより一歩も二歩も踏み込んだ検査は初体験。
採尿⇒体重・身長測定⇒血圧測定⇒採血⇒心電図
ここまでは、これまでも受けていた項目──
と、いいたいところですが、どでかい違いがありました。

これまで受けていた主婦健診は、当然主婦が対象。
女性に配慮してでしょう、内科医は別として、
直接測定するスタッフ全員が女性でした。

しかし、今年からは普通の病院で受けます。
世の中には女性看護師の方が男性より多いはずですが、
この病院はナースマン。
フジテレビの軽部アナ似のナースマンでした。
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非常に親切で、優秀な看護師でした。
しかし、心電図はご存じの通り、
お胸をべろんちょりせねばなりません。
毎年受けていたからわかりきっていたことですが、
悪あがきして尋ねました。
「どの程度(検査着を上に)上げればよいですか?」
ビーチクが見えるところまで上げて、
両腕を身体の脇に下ろすように言われました。
ここで恥ずかしがるとかえってご迷惑。
平気なババァのふりをして従いました。

以上が最初の関門でした。

心電図の次はおなかのエコー。
エコーと胃カメラは医師が担当するとのこと。

軽部氏が呼びにいって登場したのは、
医師というより芸術家っぽいジョージ・ハリスン似の先生。
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ここでいったん軽部氏退室。

先生は、念入りに私のおなかをエコーで調べてくれました。
そして、私に何かの生物の卵のような映像を示しました。
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無論この画像はイメージ。
実際は白黒でした。
植木鉢のようなシルエットをした空洞の底に、
白くて丸い卵が、3つほど見えました。
「胆石がありますね」
と先生が言いました。
これまで医師との会話で出てきた「たんせき」は、
痰と咳のみ。
胆石ですとぉ~!?
先生は何度もローラーを転がしパソコンを操作。
あらゆる角度から見た結果、
「すくなくとも4つありますね」
およそ6.5mm~10mm近いサイズだそうです。
胆石は取り除かなくてはいけないのかという問いに、
先生は特に症状がなければこのままでいい的な回答。

「では、次は胃カメラですね。いろいろ準備があるので─」
ここで先生いったん退室。

軽部氏再登場。
「胆石があるって言われました・・・」
トホホな声で訴えると、
「ああ、それで(時間が)長かったんだ」
「4つもあるって・・・」
「胆石がある人って結構多いみたいですよ」
慰めになっているのかいないのか。

先生が言っていた「準備」というのは、鼻麻酔などのこと。
これらはすべて軽部氏が担当してくれました。

最初に胃の中の泡を取り除く「消泡剤」15cc。
これは口から飲みました。
それほど不味くはないです。

続いて、細長い金属製のスポイトのようなもので、
鼻のむくみを抑える薬剤を鼻に注入。
確か、左右に3回ずつ、シューコ、シューコ、シューコ。

息を止めていないと気管に入って苦しいということを
ネットで予習していてよかったです。

続いて麻酔薬も同様に3回ずつ。
息を止めていたけど、少し気管に吸い込んでしまいました。
むせました。ゲホゲホゲーッホゲッホ。

間もなくしてハリスン先生登場。
私は観念して横臥姿勢になりました。
「あ、逆向きです、カメラあちらですから」
と注意され、左に向き直りました。

ネットでは、鼻からぎゅうぎゅう中は、唾は飲み込まずに
ティッシュに出し続けろと教えていました。
予習しておいて、本当によかったです。
始まる前からむせていたくらいですから、
胃カメラが通っている状態でむせたらエライこっちゃ。

軽部氏の言っていた通り、ハリスン先生の腕は確かでした。
一番の難所らしい、鼻から入ってすぐのところも
案外スムーズに通過。
身体の中を管が通っているのがわかります。

友達に、目はつぶらず開いていた方が
体が硬くならないでいいと教わりました。
なので大きく目を見開いてたのですが、
瞬きを忘れていたのか、大粒の涙がぽろぽろ。
痛いわけではないけれど、なぜか涙がぽ~ろぽろ。

鼻からカメラが入ると同時に、
軽部氏がずっと背中をやさしくトントン。
途中、軽部氏が管に流す潤滑ゼリーの補充を取りにいくため
席を離れた途端、にわかに不安に襲われました。
背中トントンの威力、侮りがたし!

「見やすくするために、少し風を送りますね」
胃の中に空気が入れられたもよう。
職場の同僚が話していたのは、これのことか。
その人(←すごい美人)胃カメラ後の画像診断中、
先生の顔面に思い切りゲップの波動砲をお見舞いしたとか。
ゲフーッ!!
「もう、ごめんなさいとしか言いようが──(笑)」

軽部氏戻ってトントン再開(ほっ)。
カメラの通りもスムーズに。
食道も、胃も、十二指腸も、ほぼ問題なしと言われました。

けれど、私の胆嚢にゃ「卵」がある。
あれは何の卵なのか。

そういえば、唾を拭くために、
私はいったい何枚ティッシュを使ってるんだ?

先生が「終了です」と言って、
丁寧に胃カメラを引き上げました。
異物が身体から抜け出るや否や、
待ってましたとばかりに
さらにあり得ないくらい大量の唾液。
まるで白血球が集結したかの如く、
濃密で粘着質のヨーダが絶え間なく出るのです。

軽部氏が、ティッシュをここに捨てるようにと
ゴミ箱を差し出してくれました。

捨てられません。
ヨーダが、切れないのです。
ティッシュを口から離そうとすると、強靭な糸がビロ~~~ン。

これは果たして「唾」なのか?
蜘蛛の糸ではないのか?
もはや自分が人間とは思えなくなりました。

親切な軽部氏も、蜘蛛女の奇ッ怪な姿に
ドン引きしたのでしょう。
「ここに置いときます」とゴミ箱を手放し、
そそくさと去っていきました(笑)


そう、上の卵の写真は、タランチュラの卵。
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そしてこれ☝はタランチュラのぬいぐるみちゃん
実際のタランチュラは、足の先から糸を出すみたい。

先生は、胆石(私の場合はコレステロールによる胆嚢結石)は
必ずしも除去する必要はないと言いました。
けれど調べてみたら、取り除くに越したことはないようです。

1:結石ができる時点で胆嚢が殆ど機能していない。
2:結石を放置しておくと癌になる確率が高まる。
3:肩こりや腰痛、みぞおち辺りの鈍痛など症状多数あり。

緊急性はないけれど、3はすでに自覚症状があります。
出来れば年内に手術を受けてしまいたい。

胆嚢結石の一般的治療は、胆嚢摘出だそうです。
石だけ取り除いても意味がない(再発する)からです。
袋ごと取り除いてしまえば、
少なくとも胆嚢癌になる可能性はゼロになる。

人間ドックを受けて良かったと思うことにしましょう。
だって、胆石による疝痛発作って、
陣痛並みに苦しく痛いそうなんですよ。
突然そんなのに見舞われて、
救急車で不本意な病院にぶちこまれるよりずっといい。

余談ですが、私は家に現れる蜘蛛を殺さずに
生け捕って、屋外に放す達人です。
95%の確率で、殺生することなくリリースできます。

もしかしたら、本当に蜘蛛女なのかもしれません──。















by vitaminminc | 2016-07-09 23:07 | 健康 | Comments(0)

新世紀ガングリオン

「なんじゃその、エヴァンゲリオンみたいな名まえは!?」
 ムスメに笑われた。
 わが身に起きた症状の正体を、ネットで突き止めた瞬間である。
 下記の画像は、大阪の古東整形外科さんが、「患者さんのための病気の参考資料」としてHPに載せているものを拝借。まさに今、私の左手首は、位置といいサイズといい、↓↓↓こんな状態。
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 これは「ガングリオン」と呼ばれる、良性腫の一つだそうだ。とはいえ、ネット相談者の大半が「骨が突き出てきた!」と勘違いしているように、ちっともブヨブヨなんかしていない。結構硬くて、骨が変形して飛び出てきたんじゃないかという恐怖におののいてしまう。
 先の整形外科さんによれば、ガングリオンは「放置」が望ましいという。注射器で内容物を吸い出したり、外科的手術で除去しても、再発することが多く、放っておくと自然消滅することもあるからだそうだ。
 異様な手首の正体がわかるまでは、「私なんか骨まで出して頑張っているのに」と報われない主婦業をぼやくのに使ったりもしたが、本音は恐ろしい難病─進行性骨化性線維異形成症(筋肉が骨に変わっていく病気FOP)に対する恐怖をごまかしていたのである。
 気づいたのが土曜の午後だったので、すぐに医者に行けなかった私は、丸一日無駄に恐怖と闘い、無駄に憂鬱であった。
 でも、ガングリオンという、原因不明ながらも恐れるほどでもない症状とわかった以上、もう平チャラ。月曜になったって整形外科になんか行かなかった。
 案の定、ムスメに叱られた。
 「安心するのは、専門医に診てもらってからでしょう?」
 どっちが親だかわかりゃしない。で、仕方なく火曜日に受診。
Dr.「これは、いつから? 最近じゃないよね?」
ワタシ「それが、いつからかはわからないんですけど、気づいたのは土曜の午後です」
Dr.「あれ? ちょっと待てよ(と脈をとる仕草をしたまま)。コレ脈打ってるな」
ワタシ「???」
Dr.「コレのちょうど下あたりを動脈が通ってるんだけど、コレが血管に食い込んでたら厄介だ──」
ワタシ「!!!」
Dr.「ちょっと!(看護師さんに向かって)ほらあれ! 超音波用意して!」

 超音波断層カメラで念入りに調べてもらった結果、私の突起物は動脈を避けるようにつくられており、悪性腫瘍の特徴はまったく見られなかった。そして、「水ぶくれのようなもの」と診断された。
 私は自分で調べた病名を、間違えないように気をつけながら、おずおずと口にした。ゲングリオンでもガングリゲンでも、もちろんエヴァンゲリオンでもなく──
 「これはあの、ガングリオン、ですか?」
 「ああ、そう、ガングリオン」東北大医学部出身の気さくなセンセイは、素人が知ったような口をきくのにも寛容で、すんなり肯定。
 ガングリオンと認めてもらった以上、私は断固として『放置』を望むものである。もしもセンセイがやれ吸い出すの、やれ切開するのと言い出したら、「今週海に行くのです。帰ってからお願いしたいのです」とウソをついて永遠にバックレる準備も万端。
 「このままでいいでしょ?」むしろセンセイの口から、望み通りの言葉が。「たぶん自然に治っちゃうと思うから」
 「ハイ056.gif
 「どうしてもね、主婦は結構手をつかうからね」とセンセイが原因らしいことに触れるのにつられ、私はつい言わなくてもいいようなことを口にしていた。
 「コレに気づく前の日に、すごく重いレジ袋を、左の手首にかけてしまったんですけど──」
 「それは、無い」みなまで言わせず否定された。そんなことでいきなり飛び出たりはしないらしい。
 ま、20代~40代の女性に多い症状だというし、私もまだ若いってことか。ふはははは。
 
 人騒がせだな、ガングリオン。
 
 
    


 

by vitaminminc | 2014-08-02 19:21 | 健康 | Comments(0)

100-70=30

 ムスコが、高校で採血有りの健康診断を受けたのが、今年4月の第一週。
 「なんかオレ、血液引っ掛かったらしい」とムスコから報告を受けたのが、5月の第一週。
 「明日放課後、校医のところに行くよう、今日担任から言われた」
 不安に駆られた我々両親は、「ラーメンばっかり喰ってるからだ」とムスコのラーメン大好き小池さん的嗜好をなじった。ラーメンと白血球の数とどう関係があるんだと反論するムスコに、「食生活を甘く見るんじゃない」と我々両親は口々に説教した。
 「塩分・脂肪分の摂りすぎは栄養バランスを崩し、免疫力にだって影響するのだ」
 「おまえの将来は確実にメタボだ」
 翌日、校医から渡された手紙を読んだ我々両親は、益々不安に駆られた。「要再検査項目」として、「白血球数」の値が基準値をオーバーしている旨、記されていたからである。
 毎年会社で受ける健康診断の説明書を取り出して、オットが言った。
 「これによると、成人男性の場合になるけど、9500くらいまでだな、基準値の上限は」
 ムスコの数値は13800だった。
 「あ、でもまだ未成年だし、白血球の数って風邪をひいただけでも結構高くなるんだよね」とさり気なくなだめる私とは対照的に、オットはムスコに追い打ちをかけた。
 「ラーメンばっか喰ってるからだ!」

 私は一刻も早く再検査を受けさせたかったが、ムスコが頑なに拒んだ。
 「大体そんなに深刻な事態だったら、オレなんか介さずいきなり親に連絡がいくはずだ」と、やれ部活(大会含む)だ、親戚の結婚式はいたしかたないとして、やれ定期テストだ、と先延ばしにすることおよそ三週間。
 それまでは自覚症状がなかったものの、5月の半ばからは変な咳まで出る始末。
 結局ムスコを医者に連行することができたのは、5月も下旬にさしかかろうという頃だった。
 「咳が出ているうちは正しい白血球数は出ないよ。微熱もあるし。風邪引いてると白血球数、上がるから」
 「でも先生、このような咳が、もう二週間近く続いているんです。風邪なんでしょうか」
  そりゃ百日咳かマイコプラズマか、咳の原因を特定する必要がある、血液検査せにゃならん、ということで、この日は検査結果が出るまで7日分の抗生剤や鎮咳薬が処方された。
 微熱まであったなんて・・・。ムスコには、ラーメン禁止が言い渡され、代わりに免疫力を上げるために、やたら乳酸菌がふるまわれることとなった。
 一週間後、医師に検査結果を見せてもらった。幸い白血球数は基準値に戻り、熱も平熱に下がっていた。ただ、ゲホゲホ、コホコホというスタッカートな咳だけが続いていた。
 「この赤字で示された2項目、PT(百日咳毒素)とFHA(線維状赤血球凝集素)の数値だけが高いのわかる? まず百日咳で間違いないね」医師が太鼓判を押す。
 「おそらく三種混合は受けてるはずだから──受けてるよね?」
 「受けてます」と私。そうかそうか、三種混合って、ジフテリアと破傷風はすぐ思い出せるんだけど、あと一つがいつも不確かで──それが百日咳、おまえだったのか。
 「その免疫力が切れたか、型が違ったかして、もらっちゃったんだろうね」と医師。
 「え? まだムスコ16ですけど、もう免疫、切れちゃうものなんですか?」
 「うん、人によっては。白血球の数値が高くなってたのが、4月の頭? てことは、もう2ヵ月は罹ってるか。100-60=40(笑)あと1、2ヵ月は続くと思うよ。長いんだ、百日咳というだけあって」
 「はぁ」苦笑するムスコ。
 「先生、やはり周囲の方にうつしたりしますよね」念のためムスコにマスクをさせてはいたが、それでも心配になって私は訊いた。
 「う~ん。誰か周りで咳が出るようになった子、いる?」
 「いや、誰も」とムスコが答える。実際、咳を撒き散らされたにも関わらず、我が家は皆無事。
 「乳幼児がいたら気をつけてあげないといけないけど、基本的にキミたちくらいの子はみんな三種混合受けてるからね、罹りにくいといっちゃ罹りにくいんだよ、大人よりは」

 家に帰って母子手帳を確認。やはり第Ⅰ期3回、追加で1回、計4回接種している。
 ネットでも調べた。ワクチン接種による免疫の持続期間は、4年~12年。だいぶ開きがある。ムスコが4回目を受けたのは、平成12年の10月。今から14年程前? ゲゲッ! とっくに有効期間、切れてるやんけ~!
 国立感染症研究所の調べによると、2001年には百日咳で成人の占める割合が、わずか2.8%だったのに、10年後の2010年には56%に達し、以降増加の一途を辿っているという。これは世界的にも同様で、ワクチン接種により患者数が減ったことで、自然罹患による追加免疫を得られない世代が増えたことが、成人の感染者が増加している理由らしい。
 今回感染したムスコは、「自然罹患による追加免疫を得られた」ことになるのだろうか。
 それにしても、体力ある。私なんかこれだけ咳が続いたら、もう消耗し切って寝込んでいるに違いない。
 ムスコは違った。体力測定で1500m走るわ、部活での筋トレ、走り込みは当たり前にこなすわ、恐るべき10代パワーである。
 身近に乳幼児がいなかったのが何よりだった。現在百日咳の特効薬がないことから、相変わらず咳を鎮める薬だけ飲み続けてはいるが、ムスコの咳もだいぶ減ってきた。
 100-70=30、あと三十日咳。
ムスコはまた週一の割で「ラーメンを食わせろ」とうるさい。咳よりずっとうるさい。

 


by vitaminminc | 2014-06-12 19:49 | 健康 | Comments(2)

照れポート

 一昨日の晩のことだ。
 忙しさにかまけて、つい母に電話を入れるのを忘れてしまった。電話をしよう、電話をしようと思いながら、一日一日と先延ばしになっていただけに、寝床に入ってからさすがに自己嫌悪に陥った。
 別に用があったわけではない。なんだかんだと一週間以上声を聞いていなかったので、朝の時点では、仕事から戻ったら母に電話するつもりでいたのだ。
 どうして忘れられるんだろう?
 職場にシフト表を提出するたび、母に電話を入れ、翌月中旬以降の予定を確認してきた。コーラスや話し方教室、さらに整形外科や眼科にも通っている母のスケジュールに合わせ、仕事の休みをいれるためだ。
 そうしたところで、必ず母に会いに行けるわけではない。母と同じ日に休みがとれたにも関わらず、家でたまりにたまった家事と格闘したり、たまりにたまった疲れを消化するため爆睡してしまうことの方がむしろ多い。
 休みを確認しておきながら、実際には会いに行けないまま2ヵ月が過ぎたせいだろうか。性懲りもなく母の休みの日を確認した次の日、今度は母の方から電話が入った。
「あのね、いつも私の休みに合わせてくれているけれど・・・」と母は申し訳なさそうにいった。
「こちらは趣味とボケ防止でやっていることなんだし、これからはみん子ちゃんの休みに合わせてもらえばいいから。お仕事のほうがずっと大事でしょ?」
 それまでは、私が仕事で休みをとりにくい曜日に限って母のオフであることが多かった。合唱コンクールや話し方の発表を控えている時などは、何週間も前であっても母は休みたくないと主張した。私ももちろん母の趣味を大切に考えていたので、自然いつも自分のほうで調整するかたちになっていた。
「どうしたの? 急に。こっちは予め休みを決められるんだから、お母さんの習い事を優先してくれて構わないのに」
 2ヵ月も高齢の母を放っておいた後ろめたさに小突かれるように、私は母に訊いた。
「なんだかね、私も会える時に会ってもらわないといけない齢になってきたし・・・」
 そう。母は間違いなく高齢者。今年の4月で満88歳、米寿を迎えた。見た目が若いから、つい忘れたくなるが、去年あたりから耳もだいぶ遠くなってきた。体調が比較的よいときと、そうでないときとの差が、かなり精神面に影響を及ぼすことにも気づいている。
 頻繁に会えないのなら、せめて毎日電話の1本くらいかけてあげればよいものを、それすらも忘れてしまう自分に嫌気がさす。
 こちらもこちらで自分の子どもの世話(ムスコが4月の健康診断に引っ掛かり、再検査のため二度医者に連行)に追われていたというのが、今回の親不孝の言い訳の一つ。

 昨日は、電話を入れるタイミングを逃す前に、しっかり電話を入れた。
 母はなぜかいつもより元気な声だった。
「あら~、ゆうべ来てくれたと思ったら、今日は電話までくれて」
「え?」
 私は母の元へ行っていない。一瞬で蒼褪める。
「ゆうべね、お布団に入ってから、しばらく寝つけないでいたら、みん子ちゃんが私のベッドの足もとにちょこんと座ってたのよ」
 母はおかしそうに、そして嬉しそうに話す。
「夢で見たの?」
「それが、夢じゃないのよ。『あら、わざわざ来てくれたのね』って私、話しかけたんだから」
「確かに私だったの?」
「うん。みん子ちゃん」
「私、生きてますけど、枕元に立ちました?」
「ベッドの足もとに、座ってた(笑)」
「でも私、まだ生きてますけど?」
 母はなおも嬉しそうに続ける。
「それで私、このままじゃ暗いわね、と思って部屋の電気をつけたのよ」
「うんうん」──なんだかドキドキする。
「そうしたら」
「そうしたら?」
「誰もいないの、不思議なことに」
「何かを見間違えたんじゃないの?」
「確かにみん子ちゃんだったわ」
「会話したの?」
「う~~~ん、眠れないなぁと思っていたらすぐそこに気配がして、振り返ったらみん子ちゃんが座っていたのよ。だから『あらぁ~、わざわざ来てくれたのね』って」
 少し泣きそうになった。
「お母さんが見たもの、なんかお化けみたいじゃなかった? ゾッとするとかなかった?」
「全然。きれいなお着物きてたわよ」
「えぇ!! きもの!?」
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「いえ、洋服。赤くて、いろ~んな柄の入った、きれいな服──」
「よかった~、みすぼらしいなりしてなくて」(って、そういう問題かい)

 母には、ちょうど昨晩母のことを考えていたから、私の意識がそちらに飛んだのだろうと話しておいた。元気にしてるかなぁとか、足は痛くないかなぁとか、そういう気持ちの現れだろうと。
 瞬間移動(テレポート)とか幽体離脱とか、レビー小体認知症(症状の一つに幻覚が見られる認知症)とかが頭をかすめた。が、母は今のところ、自分が見たものが、限りなく現実に近いであったことを自認している。さらに、その不思議な体験を楽しんでもいる。いきなり医者に連れていくのは時期尚早だろう。
 ここはこまめに電話を入れ、母の言動を注意深く見守っていかねば。今月下旬には実父の十三回忌も控えている。おとーさん、どうか母の正気をお守りくださいぃぃぃ!

「また近いうちに、きれいなベベ着てお邪魔しますね、お母さんの枕元に」
 私が冗談をいうと、母も明るく応じた。
「いつでもいらしてね041.gif
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by vitaminminc | 2014-06-04 11:28 | 健康 | Comments(4)

ギッ来る腰

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 イデデ…アダダ・・・今の私は、ミレーの「落ち穂拾い」を観ただけでも腰に電流が走りますです。

 まだです。まだ来ちゃいません。来る一歩手前です。

 数日前の、まるで夏の終わりのような涼しさは、やはり錯覚でしかなかったのでしょうか。気づけば湿度に覆われた、亜熱帯ジャングルの日々。
 わたしゃ今朝からギックリ腰の一歩手前の腰痛に泣いております。
 寝ても起きても、座っても歩いても痛い。いってんだよぉぉぉ。
 この痛さ、あともう一押しされたら完全にズレますぜ、という紙一重の危うさ。なんとも気色の悪い、つかみどころのない痛みです。

 特につらいのが、椅子から立ち上がって歩き出した時。その間およそ5メートル。客観的に見たら笑わずにはいられない、「小股」かつ「擦り足」歩き。
 痛いので、5度の傾斜角の前傾姿勢。俯いた私は、半ば目を閉じ、半ば歯を食いしばるようにして歩いております(←婆さんか)。出産直後、産院でこんな歩き方をしていたような・・・。痛むあまり、職場のトイレで、腰痛コルセットを最大締め上げました。結果、ウエストが10cm細くなりました。
 嬉しくなどありません。ズリ下がらんとするズボンを、「下げてなるものか」と、上着の上から鷲掴み。両手で掴むと目立ち過ぎ。片手で掴むョ職場の秩序。情けないこと、この上なしで。イデデ、イデデデ・・・。

 腰痛の原因としては、思い当る腰が、ぃゃ、節がございますです。昨日盛りだくさんの買い物をしてしまったこと。有り得ない量の品々を、5枚もらったレジ袋に分け入れ、カートからおろした時がヤバかった。
 それらを両腕にぶら下げて、店の外の駐車場に出て──自動車だったら、車の横までカートに載せて運びゃー済む話ですが、自転車で寄っちまったんですね、仕事帰りに。その愛チャリが待つ場所まで歩いて運ぶしかなかったのです。

 重くて、痛い。痛くて、思い。気が遠くなりかけました(←真実)。何の修行なのかと思いました。
 あ、参考までに、主なる購入品として、2リットル入りポカリ系飲料4本(ムスコの部活用)、1リットル入り牛乳2本、トマトの缶詰、ツナ缶3個パック、瓶入りドレッシング、瓶入りオリーブオイル、7リットル入り猫砂・・・などなど、ざっと見積もっても16kg以上。ええ、莫迦なんです。

 それらの中から一番重い袋を自転車の前かごに入れ(←上にあげるだけで肩が外れかけた)、両ハンドルに2~3個ずつぶら下げました。愛チャリが倒れないよう、必死に腰で支えながら。
 重くてバランスがとれず、乗った瞬間倒れそうな予感がしたので、結局自転車には乗らないで、腰を入れて押して帰りました。ええ、莫迦なんです。
 この、ポイント3倍デーを待って、狂ったように買い漁った結果、私の身体のプレート(骨格)がズレたものと思われまイデデで…すから、夏バテというよりは、自ら招いた体調不良と申せましょう。

 できることなら、治るまでずっと、
 塩湖に浮かんでいたい。。。
by vitaminminc | 2013-07-26 20:18 | 健康 | Comments(6)

成長と老化

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11月はじめに受けた健康診断の結果が届いた。


成長

   ★身長・・・・・・去年より3mm伸びた

   ★体重・・・・・・去年より400g増えた

   ★視力・・・・・・右目⇒去年より0.3良くなった
            左目⇒去年より0.4良くなった

   ★メタボリックシンドローム・・・・・・非該当



老化  

   ★B判定(僅かに所見有もほぼ正常)・・・・血小板数
                              心電図(心室内伝導障害完全右脚ブロック)
                              乳腺のう胞症

★F判定(継続治療を要します)・・・・・・・・・高脂血症


だからどーしたというツッコミが聞こえてきそうでありますです。

ちなみにムスメは、身長が3mm伸びた件について、骨は考えられない、脂肪だと言っていますです。
わたしもそう思いますです。

 
by vitaminminc | 2011-12-01 23:21 | 健康 | Comments(0)

三つ目がとおる

 b0080718_1615526.jpgついに第三の目が開眼。
 といっても千里眼ではない。「老眼」である。私の目玉は、近視、乱視、そしてついに老眼を抱え込んだ。40代で、老眼とは・・・。去年の今頃、パソコンとにらめっこする仕事を始めたのが、目の老化を早めた原因だろう。

 近視はたいへん度が強く、裸眼ではまともに生活できないほどなのだが、結構面白いこともある。裸眼のまま光をうまく取り込めば、自分の目前にピントが合って、普段は見ることが出来ない画像を捉えることもできる。
 信じてもらえないかもしれないが、私は自分の睫毛のキューティクルも、目の表面を流れる涙のベールも見たことがある。電子顕微鏡かと思うような画像であった。
 また、遠くのものに関しては、たとえそれがどんなにバッチイものであっても、都合よく美しいものに見間違えることも出来る。単なる紙くずが、地上に舞い降りた小さな天使に見えて、心が躍ったこともある。目の悪さは眼鏡やコンタクトレンズで矯正できるが、逆に目のいい人がこうしたものを見たいと思っても、そう簡単に見られるものではない。だから、ある意味得した気分だ。
 そうでも思わないことにはやってられない。中2の時から今日まで、いったいいくつの眼鏡をつくり、何枚コンタクトレンズを購入してきたことか。「老眼」なんてオマケまでついて、今度は遠近両用眼鏡が必要になるのだろうか。こ~んな金食い虫の目玉と、この先もガンガン付き合っていくしかないのなら、目いっぱい自慢するしかない。
 20代の時に、強度の近視なら必ずなるという「飛蚊症」を発症して、しばらく眼科に通ったことがある。飛蚊症というのは、目の前に小さな虫が飛んでいるように見える現象のことだ。原因として一番多いのは、通常ぴったりとくっついているべき硝子体(ゼリー状)とその奥にある網膜が、老化や近視等により剥離し、もとの接着部分が硝子体混濁(影)となって見える状態。20代だったので老化ではない。近視によって硝子体を酷使しすぎたせいだ。この場合の飛蚊症は、進行しても身体に影響はない。よって治療の対象にもならない。ちょうど顔にできたシミやソバカスのように、最初のうちは多少気になっても、時間の経過と共に気にならなくなる──その程度のレベルらしい。
 だが、「網膜裂孔」や「網膜剥離」といった怖い病気の前兆として発症する場合もあるため、月に一度眼底検査を受けに行っていた。
 林家こんぺい似の先生とバーバラ寺岡似の看護師さんは、私の目玉を妙にかわいがってくれた。目玉を診せに行く度に、必ず「きれいな目だねぇ」と絶賛してくれたものだが、眼科でいう‘きれいな目’とは、水晶体とか硝子体を指すわけで、別に私の目の色がエメラルドグリーンだったわけではない。眼科の待合室は、いつもおじいちゃん、おばあちゃんで賑わい、老人サロンと化していたから、若い目玉がよほど新鮮に見えたのだろう。
 眼底検査は点眼薬で瞳孔を開いて行う。そのため、終わってから2時間くらいは瞳孔が開きっ放し。普通の光が眩しくて仕方ない。検査を終えてからサングラスをかけて会社に向かう。蛍光灯の光さえも眩しい。オフィスでもずっとサングラス。そんなことが煩わしくなり、いつしか検査に行くこともなくなってしまった。
 
 あれから早○○年。先生が可愛がってくださった私の目玉も、今では立派な「老眼」になりました。
 『近視は老眼になったときに、いくらか中和されますか?』
 そう私が尋ねると、先生はプッと笑い、首を横に振りました。今、身をもってその意味を実感しています。
 老眼になっていいことなど、一つもありません。遠くを見るにも近くを見るにも、目いっぱい不自由しています。

 これからは、心の目を磨いていくしかなさそうだ。乱視も乱心にならねばよいが。
by vitaminminc | 2006-10-26 15:58 | 健康 | Comments(0)

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