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3時間

 2007年9月28日
 午前9:13

 背後から迫り来る白煙をふりきるように、口にタオルを当てたまま脱出。
 家の外では、私よりも先に避難していたムスメと2匹の猫が、車中にて待機。

 最初の小1時間は、大好きなパズルを解いているうちにあっけなく過ぎた。
 日が高くなってくる。
 車中温度もどんどん高くなっていく。
 予め用意していた保冷バッグから、凍らせた保冷剤を2つ取り出し、
 タオルにくるんで首に巻く。頸動脈を冷やして体温の上昇を抑えるためだ。

b0080718_17322471.jpg

 窓を少し開ける。
 車を覆っていた影が
 徐々に移動。
 車内に陽光が
 射し込んでくる。
 
 暑さに強い2匹の猫は、
 すっかり車に慣れた。
 前に後ろに
 狭い空間を移動する。

 大きい猫が、ハンドルを挟み
 運転席の私の前に鎮座する。

 読書をしていたムスメ(←学校行事の振替休日)が、だるそうに言う。
 「あぢぃ~~。今何時? そろそろ本屋に行きたい…」
 仕方ない。車を発進させる。真夏のような陽射しを浴びながら、県道を走る。
 車が動き出したことに猫たちが一斉抗議。小さい方は早くも車に酔ったのか、生唾をしきりに飲み込む。頼む。吐かないでくれ。
 大きい方の猫は自らキャリーバッグに入った。小さい方は運転席のシート下で丸まっている。チャンスとばかりにムスメが車から降りる。

 時計を見る。脱出してからちょうど2時間半が経過。
 ムスメが本屋から戻ってきた。
 ゆっくり家に戻る。
 路地の木陰で車ごと待機。
 12:13──ようやく規定の3時間が経過。

 よし!

 強盗のように顔をタオルで覆い、私だけ家に突入。
 窓を開放し、換気扇をつける。

 5分後。ムスメと猫を招き入れる。

 我家は古いのだが、幸いゴキブリを見ない。だが、年に一度だけ、現れる。県道の並びにある食料品を扱う会社か、同じくその先のイタリアンレストランかが害虫駆除を行ったりすると、たちまち近隣の民家に被害が及ぶ。避難所にされた我家で家族を増やされてはたまらない。
 アースレッドの類を1階に3個、2階に3個しかけ、ゴッキー&ダニーの壊滅作戦、無事修了。
 やれやれ・・・。
 
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by vitaminminc | 2007-09-28 16:35 | Comments(4)

思い込みュニケーション

 「オレ、一年生くらいまで、天気予報って、お天気お姉さんやお天気おじさんが自分で予想したことを言うのかと思ってた」
 昨日、ムスコが告白した。
 そう言えば、ムスコが幼稚園児だった頃、天気予報を見て、
 「え~! 明日雨なのぉ?」
 と私が嘆くと、すかさずムスコがテレビのチャンネルを切り替えようとすることがあった。そのたびに、「気温も知りたいからまだチャンネルを替えるな」と止めたものだが、今思えばムスコはほかの人の意見も聞いてみようと思ったのかもしれない。つまり、ママが喜ぶような天気を言ってくれる人が、一人くらいはいるんじゃないかって。

 「え゛!? バナナのたたき売りって、バナナを叩くわけじゃないんだ・・・」
 今朝、テレビでバナナの実演販売を見ていたムスメが、驚きを隠せない表情で言った。それを聞いた私の方こそ驚きを隠せなかった。そんなことをしたらバナナが潰れて売り物にならなくなる。何を考えているのか。いや、何も考えてなどおらんのだろ。え? どーなんだ、コラ。
 バナナの陳列台よりもムスメの前のテーブルをバンバン叩きたくなった。

 思い込みというのは人それぞれで、たいてい当人は大真面目に勘違いしているだけに、傍で聞いていると妙におかしい。
 かくいう私も「思い込み」名人である。


 1.【だまし屋】・・・・・・子ども相手にチクロ(←死語だな)とか、合成着色料とか、身体に有害なもんばかり入ったお菓子を売る、いけないお店のこと。

 2.【ココナツのハワイ】・・・・・・ハワイは太陽がいっぱい。ココ椰子の実なんかもたくさんなるから、こう呼ばれている。


 1.「駄菓子や」のことだと気づいたのは小学校高学年になってから(遅!!)
 2・旅行会社のパンフで「常夏のハワイ」という文字を見て初めて間違いに気づいたのは、なんと高校卒業後(恥!!)。

 ほかにもまだまだあるはずなのに、残念ながら思い出せない。幼少の頃母に隠れて身体に悪いお菓子をアタマいっぱい食べたせいかもしれない。

 ♪うさぎ 美味しい の山  小鮒釣り師 の川・・・・こんなにも野蛮でやぶ蚊まみれの山、そしてボウフラがうごめく川の近くにゃ住みたくねー!と思いながら歌ったあの頃に帰りたい・・・☆
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by vitaminminc | 2007-09-27 16:43 | Comments(2)

♪チャンつきOKさ~

 最近読んだ感動小説「青い鳥」(重松清/作)の中に、こんなシーンがあった。

 主人公の青年が非行に走っていた中学3年の3学期、その臨時教員はやってきた。そして少年に聞いたのである。

 「松本くんは、下の名前で呼ばれたことはあるのか?」

 その先生は、人間というのは大人になる前に、たくさん下の名前で呼ばれなくてはいけないと考えていた。そして、下の名前で呼んでくれる人がそばにいない孤独な少年に、「てっちゃん」と呼んでやることを約束する。
 少年は「松本でいいですよ」と断わるが、先生は「いままで呼ばれてこなかったぶんを、いまから取り戻すんだ」と言って、約束どおり少年のことを「てっちゃん」と呼んだ。同級生よりも先に社会に出て、先におとなになってしまう少年が、中学を卒業するまでの短い間、ずっと。

 
 小学校に入学したとき、担任の先生は私の期待を裏切って、私のことを「みんこちゃん」と呼んだ。
 私は孤独でもなかったし、自分のことを下の名前で呼んでくれる家族や幼なじみがたくさんいた。だから、苗字で呼ばれることに憧れていたのだ。
 ほかの級友の殆どが、「○○さん」や「××くん」と上の名前で呼ばれる中、どうして自分だけ「みんこちゃん」と呼ばれるのか理解できなかった。母に愚痴ったら、
 「そう呼びやすいからじゃないの?」と笑うだけだったが、その顔は明らかに嬉しそうであった。けれども私としては、何だか半人前扱いされているようで─小学校にあがったのに、先生は自分のことを幼稚園扱いしているのかなあ?─あまり嬉しくなかった。 

 今なら、先生が半ば無意識に、親しみを込めてそう呼んでくださっていたのだろうと想像できる。大人になってから変わった。特に姓が変わってからだ。下の名前で呼ばれると、何かに属している私ではなく、私個人に対する呼びかけのように感じられ、身構えがなくなる。最も心が開くのが、「みーちゃん」とか「みんちゃん」とか「みんこちゃん」とか、チャンづけで下の名前を呼んでもらった瞬間だ。
 それでいてムスコがカーチャンと呼んだときには「二度とそう呼ぶな!」と文句を言い、 「ママちゃんならいいョ♪」と強要。最近のおばあちゃんたちのように、将来孫が出来たら「おばあちゃん」ではなく「みーちゃん」と呼ばせるババアバになるに違いない。

 「下の名前+チャン」──うん、コレに限る。

 あ。でも病院の待合室では「上の名+下の名前、チャン抜き、サンづけ」でお願い。(←超わがママちゃん)
 
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by vitaminminc | 2007-09-25 10:41 | Comments(4)

運動カイニシクス(*)

 「いい?─おまえは村はずれに住んでいる。あいにく家には電話がない。(「携帯も?」というムスメの横槍を無視)なのにママが倒れた。町まで走って医者を呼びに行かなくてはならない。(「自転車は?」というムスメの横槍を無視)一刻を争う。さあ、どうする?」
 「え~~?」とムスコが片頬で笑った。「ソレ想像して走るの?」
 「そう。ママが大変。必死に走れ」
 「去年は確か、ライオンに追われているって─」
 「・・・・・?」(←自分で言ったことを忘れている)

 ↑↑↑22日の朝。合戦に出陣するムスコと私との会話である。「がんばるからね!」ではなく、「はぁ・・・ビリになったらどうしよう」と溜息ついてばかりいるから、とっておきの暗示をかけてやれと思いつき、‘倒れる役’まで買って出た。が、去年すでに猛獣に追われる役を演じてイマイチだったのか、ムスコの反応は、母を救う気ゼロだった。
 そう、昨日は『日本の一般家庭にビデオカメラを普及させ、その小型化や手ぶれ防止等の新機能の開発を推し進めさせてきた学校行事。但し、「見たくもない他人の子ども映像」公害の主たる発生源でもある(「はてなダイアリー」より)』運動会。校庭のバックネットの網の目の一つにビデオカメラのレンズを突っ込み、真正面から町医者目指して走ってくるムスコを待つ。
 グリコのマークのように、両手をあげて嬉しそうにテープを切るトップ・アスリートたち。気持ちいいだろうなあ。親が駿足でないばかりに、ムスコにはかわいそうなことをしたなあ。(←すでに過去形)
──と思っていたら、レンズの中のムスコが満面に笑みを浮かべてゴールした。一着ではない。8人の大連隊中5位だったのだが、笑顔のゴールインだった。医者を呼びに行く走りには見えなかった。ビリを回避できたことがよほど嬉しかったらしい。

 そもそも倒れそうにもない母は、一等賞のムスコが見たかったわけではない。後でビデオを見直してみて、それがよくわかった。
 ムスコのゴールインの場面には、ムスコの笑顔と、私自身の嬉しそうな笑い声が一緒に記録されていた。
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   *カイニシクス=身振りや手振りと意思伝達の関係を研究する学問。
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by vitaminminc | 2007-09-23 04:43 | Comments(6)

うとましい日本のエキショー

 ★アクオスのCM無料動画はコチラをクリック→AQUOS

b0080718_8123116.jpg ひまわりの黄色は、何の色?

 燃え尽きるように散ったゴッホの
 魂の色でしょう。

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 名画のように壁掛けに。

b0080718_8151795.jpg 液晶アクオス。

 美しい日本の液晶。


 シャープのフルスペック・ハイビジョンテレビAQUOSの名画シリーズ第7弾は、ゴッホが愛した‘光’の色=黄色の魅力を伝えている。
 筆のタッチが太陽の光のようにギラギラしているゴッホの絵も素晴らしいが、ひまわりの中に佇む和服姿の小百合さん・・・楚々として、かつ眩しいくらいに輝いている。この人はもう、日本女性の誇りである。

 アクオスのCMは、点描画の巨匠スーラの「グランド・ジャッド島の日曜日」ほか、ダヴィンチ、セザンヌ、北斎など世界的名画を同時に鑑賞でき、私のお気に入りCMの一つだ。

b0080718_9265768.jpg ところがドッコイ! 今朝はゴッホのひまわりの絵の横に掛かっているアクオスの中で、オッパッピー(Ocean Pacific Peace─ 太平洋に平和を!)の小島よしおが踊っていたのである。そして、
「でもそんなの関係ねー!」と叫んでいた。

 もちろん幻覚なのだが、‘名画アクオス’も見る番組を選ばないと、
疎ましい日本のエキサイティング・ショーになってしまうなぁ・・・とひとりで片頬笑いした。
 ハイ、オッパッピー♪ ちんとんしゃんてんとん・・・

 ★タダでオッパッピーな気分に浸りたい方はコチラをクリック→小島よしお
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by vitaminminc | 2007-09-19 09:21 | Comments(4)

夜長月

b0080718_16543997.jpg 昼は夏、夜は秋。一日に2つの季節を体感できる今日この頃。昼間どんなに太陽が照りつけても、夜ともなれば涼しげな虫の音色が秋を思わせる、夜長月。

 私は旧暦の月の名が好きだ。1、2、3・・・と数えていく月よりも、情緒があってはるかに美しい。それぞれの月にはちゃんと意味が込められ、その月にふさわしい名で呼ばれていた。
 ご存じのとおり、旧暦9月(新暦10月上旬~11月上旬)は長月。 この由来は、日に日に夜が長くなっていくことから、「夜長月(よながつき)」の略であるとする説が最有力のようだ。ほかには、雨が多く降ることから「長雨月(ながめつき)」が転じたものとする説、「稲刈月(いねかりづき)」→「ねかづき」→「ながつき」となったという説など。いずれの語源であっても、その時季ならではの情景がしっとりと浮かんでくる。
 一月から順に、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走・・・目に美しい。むつき、きさらぎ、やよい、うづき、さつき、みなづき、ふみづき、はづき、ながつき、かんなづき、しもつき、しわす・・・耳にも心地よい。
 こうした旧暦月の呼び名は、現在でも新暦月の別称として用いられはするものの、公式認定名称とは違う。囚人ではないのだから、月の名称は番号ではなく、旧暦名称のまま生かしておいてほしかった。

 何の実績も残せぬまま身の置き場を国会から病院に移された安倍元総理。せめて旧暦月の名称だけでも復活させてくれていたら、「美しい国、日本」の政権スローガンの意味を、少なくとも国民の一人(私だ)は、ちょっぴり理解したかもしれませんよ。
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by vitaminminc | 2007-09-16 18:04 | Comments(4)

泣き笑い面に蜂

b0080718_104085.jpg 昨日の夕方、人跡未踏のジャングルと化した我家の庭で、このような造形物を発見! 紫木蓮の枝にひっついているコレ。大きさは─そう、ひしゃげたテニスボール大。色は明るいライトベージュ。等間隔に直径1cmくらいの真ん丸い穴が開いている。チビトトロが忘れていったオカリナか? いいえ、そうではない・・・泣けた。

 最初はスズメバチの巣の初期段階なのではとパニクった。HPで調べたところ、わが町の行政機関、高い住民税をとっているくせに、蜂の巣駆除を行っていない。田舎のくせにバッキャローと頭にきた私は、ドラッグストアに車を走らせ武器を調達してきた。10メートル離れた場所から強力噴射で巣を撃退するという、ガンタイプの蜂アブ駆除スプレー「マグナムジェット」。
 しかし、相手はスズメバチだ。‘二度刺されたら死ぬ’─ハッと我に返った。お次はタウンページを手に取り神頼み。「スズメバチの巣駆除」を項目に掲げている便利屋を何件かピックアップしているうちに、すっかり日が暮れ夜になっていた。
 
 さて翌朝。少しはリフレッシュできた頭で考えたことは、「そもそもアレは本当にスズメバチの巣なのだろうか?」ということ。巣は発見したものの、家族の誰もまだその成虫が庭先で飛んでいる姿を目撃していない。
 「スズメバチの巣の初期段階ではなく、これが巣の完成品なのかもしれない」
 ムスコと2人、朝からパソコンとにらめっこ。ありとあらゆる情報・画像をつなぎ合わせ、我々が得た結論は、ドロバチの巣であった。そして肝心の「危険性」については、下記のとおり。

 1.ドロバチさんは、とってもおとなしくてやさしい蜂よ。単独行動で生きる自立した蜂さんなの。だからスズメバチのようにグレて・・・ぃぇ群れて生活したり、集団で襲ってくることはないのよ。
 2.巣はもっぱら育児室としてのみ機能していて、成虫のドロバチさんが棲むことはないの。巣には赤ちゃんのほかに、尺取虫などのイモムシさんが数匹入っているわ。イモムシさんは、赤ちゃんの遊び相手として、親蜂が捕獲。仲良く遊べるようにと仮死状態処理を施してあるんですって。だから赤ちゃんはいつだって新鮮なイモムシさんを食べちゃいたいほど可愛がることができるのよ。素敵。
 3.ドロバチさんの成虫は、お肉が好物の赤ちゃんと違って、お花の蜜も吸ったりするんですって。うふ♪
 4.巣に開いている穴の数だけ幼虫が巣立っていったことを意味するらしいのね。なぜ既存の穴から巣立っていかないのかしら? これこそが単独行動する自立した蜂の習性、アナーキストの原点ともいうべき穴かもしれないわ。

 以上は私が勝手にドロバチの‘いいとこ’ばかりを抜粋し、自分に都合のよい解釈を加えた。学術的にはきれいさっぱり聞き流した方がよい。

 「ならさぁ、巣はあのままにしておいてあげようよ」
 「そうだね、そうしよう」
 
 かくして私とムスコは謎の造形物には一切手を出さないことに決めた。
 わけあって、このプチ・ジャングルも秋のうちには潰される運命にある。森林伐採の重機が入る前の束の間の自然。この手で壊さずに済んでよかった。本当によかった。福沢諭吉が便利屋さんの懐に飛んでいくのを見送るよりは、巣立ったドロバチが庭先を飛んでいく姿を眺める方がずっといい。よかった、よかった。何より無用な殺生をせずに済んで、本当によかった。
 あとはあの巣が永遠にあの色&あのサイズのままであるように、決してマーブル模様が入ったり人の頭くらいに巨大化したりスズメバチが出入りする様子を見ずに済むよう祈りさえすれば、もうこっちのものだ。ふはは。ふはははは。
 ♪ぶんぶんぶん、ドロ蜂が飛ぶ~~~・・・笑える。

  
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by vitaminminc | 2007-09-15 11:44 | Comments(4)

友情の架けハシ

 その日の給食の時間、ムスメ(中3)と同じ班のDくんは言った。
 「ゆうべは疲れちゃって弁当作らなかった。オレ一足先に学園祭のモニュメント作りに行ってるよ」

 Dくんはいつも自分でお弁当を作ってくる。たいてい前の晩に下ごしらえをしておいて、朝それを温めて持ってくるらしい。だからその日のお弁当の出来栄えは、食べてみるまでわからない。弁当箱のフタを開けながら、
 「今回の味はどうかな~? うまくいったかな~?」
 と、自分でもすごく楽しみにしている様子なのだという。
 「今日のチャーハンは、ご飯のパラパラ感が足りずイマイチだったなぁ」
 自分に対する評価はなかなか辛口のようだ。

 そんな話をムスメから聞いて、思わず胸がいっぱいになった。Dくんは、父子家庭なのだろうか?
 「お母さんはちゃんといるよ。Dくんていうのはほら、獣医の・・・」
 ムスメの説明で思い出した。入学間もない頃に学校で書かされた『将来の夢』に、「獣医になりたい」と書いている男子がいたことを。彼は獣医である自分の父のことをとても尊敬していた。おそらく、将来の目標がこれほどはっきり定まっている生徒は、彼をおいてほかにいないのではないか。
 Dくんの家は、どうぶつのお医者さんである。だからDくんのお母さんはものすごく忙しいに違いない。入院している重症の犬や猫から目を離すわけにはいかない。そんな家庭環境が「自分のことは自分でやる」という教育方針を生み出したのだろう。それを甘受して弁当作りに励むDくんのことを、私は褒めに褒めた。
 「Dくんみたいなダンナさんはいいよ~♪」
 「女子もみんな褒めてる」とムスメは肯定した。「でも‘Dくん、いいお父さんになれるよー’とか‘Dくんみたいなお父さんが欲しい’とかばかりで誰も‘夫に欲しい’とは言わないの。だから、Dくんも‘なんでお父さんなんだよ’って─ハハハ」

 ところで、ムスメの中学は高校と同じ敷地内にあるので、売店へ行けばパンやお弁当も買えないことはないのだが、その日Dくんは昼食抜きで済ませようとしたらしい。ここからが感動秘話。
 「いいよいいよ」と恐縮して断わるDくんの横で、男子の一人が素早く自分の弁当箱のフタにご飯を分け入れ始めると、別の男子が「オレ、コレ一つやる!」とおかずを一品盛り、また別の男子が「オレも!」とおかずを一つ分ける。
 その様子を見守っていた女子の一人が、
 「野菜が不足しているわね」
 と自分のおかずから青物をつまんで添える。
 少々引っ込み思案なところがあるムスメ。そんな様子をただ見ていただけなのだろうか──ムスメの話を聞きながら、母はわが子の‘出番’をひたすら待ちわびた。
 「で、Dくんがみんなにお礼を言って、ワンちゃんみたいに食べようとしたから・・・」 
 おぉ! 「犬食い」とはさすが獣医の息子。
 「‘箸ならあるよ’って、アレを提供してあげた」

 アレというのは、割箸のことである。箸を入れ忘れた時のために、保冷バッグの底に私が予備用として入れておいた。班のみんなは‘なんでそんなの持ってんだ?’と不思議そうな顔をしながらも「お~!」と歓声を上げた。
 Dくんは感激し、「どーもどーも、すいません、すいません」と何度もみんなに礼を言いながら、嬉しそうにお弁当を食べたそうだ。

 ムスメに予備の割箸を持たせるようになったわけは、私が何回も弁当袋に箸を入れ忘れたからである。箸を忘れるたびに先生から割箸をもらっていたムスメ。5月のある日、先生が3膳目の割箸をムスメに渡しながら、ポツンとおっしゃった。
 「ムスメくん。誰かが箸を忘れたときのためにと用意しておいた割箸ですが、殆どムスメくん一人で使ってしまいそうですね・・・」
 この話をムスメから聞いて、予備の割箸を常備させることにしたわけだ。思わぬ場面で役に立って、本当に嬉しかった。
 
 以上がムスメから聞いた、美しき「友情の架け」物語。
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by vitaminminc | 2007-09-07 16:46 | 子ども | Comments(2)

マン・ヒアリング

 電車に乗った。午前中の新宿湘南ラインに乗った。途中で座れたので、頭を垂れて聞き耳を立てた。眠ったふりして、マン・ヒアリング開始。
 マン・ウォッチングも楽しいけれど、電車に揺られながら他人の会話に耳を傾けるというのがこれまた面白い。特に、若い男女のカップルの会話がおススメ。時折自分も会話に参加して、サイレントで突っ込みを入れたりなんかして。

★カップルAの会話
「まーた昨日も猫にすり寄って来られたよ」
「いいじゃん、猫に好かれて」
「いや、違うね。オレはただの金づる・・・つーかエサづる? 一度喰いもんやったら、アパートに戻るたんびにどこからともなく猫が寄ってくるという、ね。猫は人につかない。家につくっていうじゃん」
「猫にもよるよ。きっとヒロシは猫に好かれるタイプなんだよ」
私(猫ひろしか)
「確かにな。アヤも猫タイプだもんな。だからつい、かまっちゃうのかな」
「やーだー、もう」
私(・・・けっ)
「そういや、あいつらどうなった? まだ付き合ってんの?」
「マスゾエ君たち? 続いてるよ。変だよね、あの子たち。だってどう考えてもカオリンてマスゾエ君のタイプじゃないでしょ」
「あれってカオルちゃんの押しの強さに負けたの?」
「てゆーか、カオリンも本気じゃないようなこと言ってるんだよね」
「でも、続いてんだ」
「うん。マスゾエ君・・・飲み会のあと、気づいたらカオリンのカレになっていた、みたいで」
私(‘マキゾエ君’に改名すべきだな)

★カップルBの会話
「・・・でさぁ、でさぁ、結局塾の先生ってみんなイイ人ばっかなんだよ。ムコウがコピーしてるとこにオレが行くと、にこにこして先にコピーさせてくれたりとかさぁ」
私(そりゃ塾の先生にとって、キミは生徒である前にお客様だからに決まってんだろ)
「・・・じゃあしんちゃんは(予備校は)続けてもいいって思ってるんだぁ」
「う~ん・・・親もさぁ、多分期待してるっていうのとは違うんだろうけどね。オレなんかどんなに頑張ったところでせいぜい○○大が精一杯だからなぁ。せめてメロディに頑張ってもらわないと」
私(メロディって誰やねん!)
「そんなぁ無理無理」
私(このカノジョが‘メロディ’ちゃん・・・?)
「ここはユウちゃんの血に期待して・・・」
私(ユウちゃんて誰?)
「ハハハ、兄貴は特別だからな」
私(しんちゃんの兄貴は優秀なんかい、ユウちゃんなだけに)
「でもそっちのお父さん、いいとこ出てるんじゃなかったっけ?」
「嘘、嘘、うちのお父さん大したことないよ。あ、でもお父さんのお父さんは頭良かったらしい」
私(うちも母の伯父にあたる人が東京帝国大学を出てましてね・・・)
「そうなの?」
私(母が『みんこにも帝大の血が流れているはずなんだけど・・・』って逆接のまま語尾を濁して話を終えましたョ)
「たぶん曾おばあちゃんが嫁いできたあたりから崩れたみたい」
「ま、いいよ。‘メロディ’はオレたちの血で十分」
私(ん? オレたちの血? するとメロディちゃんはこのカノジョのことではなく・・・まさかカノジョのおなかに・・・しんちゃん、あなたどう考えても浪人生・・・生まれてくる子の遺伝子の心配より生活のことを心配した方が─)
「あと5年? 6年くらいしたらメロディに会えるかな」
「だいたいそのくらいでいいんじゃない?」
私(未来のお子ちゃまに名前つけてんですか。三段跳びカップルめ)
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by vitaminminc | 2007-09-05 18:29 | Comments(2)

探し物は何ですか

♪探しものは何ですか
 ええ、それがちょっと・・・
♪見つけにくいものですか
 いえ、それほどでも・・・
♪鞄の中も
 うん、探した
♪机の中も
 いや、机はない
♪探したけれど見つからないのに
 そう、見つからない
♪まだまだ探す気ですか
 そうですよ、ないと家を留守にできない
♪それより僕と踊りませんか
 エライこっちゃ エライこっちゃ、よいよいよいよ・・・よいはずないだろーッ!

 ↑朝からこんなやり取りが節つきで頭の中を旋回し、私は家中探し回っていた。何を? 
 そう、鍵を。家の鍵が見つからなくて、仕事に出るにも出られない。いっそ‘病気’になって一日中家の中を探し回るか。いやいやソレをやってしまったら堕天使どころか堕悪魔になってしまう。今日は人が足りなくて、こんな自分でも戦力としてカウントされる。休むわけにはいかない、それもこんな理由で。
 
 鍵を探し始める前に、私はすでに鍵を発見していた。
 「なんだ、こんなところに潜っていたのか。コレじゃ~見つかるわけがない」
 見つけたくせに奇妙な理由をつけて、その鍵をもっとわかりやすい場所へ移した・・・と、ココまではハッキリ覚えているのに、肝心の移し場所が記憶にない。元々本来家の鍵は、『玄関の下駄箱の上の金魚の水槽の上のトレイの中』と決めてある。しかし最近ネコがそこを荒らすものだから、大事な鍵はバッグに入れるようにしていた。ところが、鍵が一発で出て来ないことがあって、時々「ここじゃないのか」と錯覚してしまう。正確にいうと、バッグの内ポケットなら絶対になくならず安全なのだが、異常に出しにくい構造になっており、時々その姿(鍵の)だけでなく手応えまで感じ取れないことがあって、入っているのかいないのか判別しかねるという、安全なのに不安がつきまとうバッグなのである。(←どんなバッグじゃ)
 そこで、忙しい朝にもうこれ以上行方不明にならないようにと、鍵を『より安全でよりわかりやすい場所』に移したのであった。ああ、ややこしい。キー!!

♪探しものは何ですか
 探さなくて済むような場所を探して、そこに移した鍵です
♪見つけにくいものですか
 夏休みに、宿泊用品を詰め込んだ大きなボストンバッグを探し回った(←このうちはカオ巣か)ときよりは見つけにくいかも
♪這いつくばって這いつくばって一体何を探しているのか
 だから鍵! 鍵といっても鍵束。家の玄関キーでしょ、勝手口のキー、自動車のサブ・キーに、自転車のキー、それから「御守キー」─これは父が生きていたときの実家の鍵ね。玄関ドアをリフォームしてしまった今となっては、この鍵を差し込めるドアは天国にしかなくて─
♪それより僕と踊りませんか~ふふっふ~さあ~
 ふふっふ~そう~、振ればジャラジャラ音がするからわかりそうなものなのに

 バッグを振ってみたが、ジャラジャラいわない。
 しょーがない! とりあえず身支度だけでも済ませるか。2階への階段を上がり始めると、下から7段目に、それはジャラリと光っていた。
 何でこんなところに???
 朝食の食器を洗い終えたら必ず着替えに2階に行く。私の中のもう一人の私はそのことを考慮して、『必ず通っていちばん目につく場所』として階段の途中を選んだらしい。思い起こせば在りし日の父も、毎日最低1回は家の中で探し物をしていた。どうしてこういうとこばかり似ちゃうんだろう?

 私の日常から「探し物」を抜き取ったらどうなるか。きっと感覚的には一日25時間になるようなものだろう。探し物に費やす時間がなくなって、一年間でおよそ365時間得することになる。365時間も今より時間を有効活用できるとしたら・・・おぉっといけない、こんな空想も一種の「探し物」かもしれないな。
 ええと、ところで鍵は今・・・なんでマウスの横にあるの???
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by vitaminminc | 2007-09-03 17:00 | Comments(4)


日々の暮らしに「ん?」を発見


by みん子

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