「ちょっと奥さ~ん!」とムスコが私を呼びました。
「なに?」
「今日学校で配られた紙──埼玉県推奨図書に、「がんばれヘンリーくん」が載ってる!」
「え!? それって比較的新しい本が選ばれるんじゃないの?」
「わかんないけど、表紙の絵もうちにある本と同じだし・・・(←紹介のあらすじを読んでいる)ぅん間違いない、うちにあるのと同じヘンリーくんだよ」
「へーぇ! やるじゃん!」
 私はたいへん誇らしい気持ちになりました。何しろヘンリーくんとの出会いは小学校低学年のとき。すでに40年近い付き合いです。私の中では外国の本の主人公なんて意識は超越し、殆ど幼なじみと申せましょう。
 あぁ、あのヘンリーが、時を超え海を越え、ニッポンの「埼玉県推奨図書」に名を連ねるなんて・・・これも縁ね(じぃ~~~ん)。

b0080718_17255920.jpg では、埼玉県民が選んだ平成20年度「埼玉県推奨図書」小学校5・6年生向け5冊の中の一冊、「がんばれヘンリーくん」の紹介文を引用させていただきます。

 ヘンリーくんは小学三年生。ある日、街角でやせこけた犬を拾いアバラーと名づけるが、その日から次々と愉快な事件がおこります。アバラーとの生活を通してヘンリーが成長していく物語。少年たちの夢や冒険心いっぱいのごく普通の生活が、ユーモアたっぷりに描かれています。  学習研究社 1,260円

 1,260円ですか・・・。うちにある本のウラを見たら、
420円となっていました。ひぃぃ! それも四六判のハードカバーで。昭和が懐かしいぃぃ!
 学研の初版は昭和43年となっておりますが、実際にこの作品が発表されたのは1950年だそうです。今読んでもちっとも古い感じがしないのは、いつの時代にも変わらない「子どもの目線」で描かれているせいでしょう。むしろ新鮮さを覚えるから不思議です。

 ヘンリーくんが小学3年生だからって、決して侮ってはいけません。オトナになっても絶対愉しめる本です。コメンテーターのお1人=chin子ちゃんも、私がヘンリー・フリークなものだから(?)、とうとうブックフェアでめっけて読んでくれちゃいました。それもシリーズで。

 私は声を犬にして吠えます! とくに犬好きのみなさん! 表紙絵をご覧ください! 
 アバラーは雑種犬です。かわいい子犬の盛りを過ぎた年齢不詳の成犬野良公として登場します。
 痩せこけていてあばら骨が浮き出ていたから、8才の少年ヘンリーは思いつきで「アバラー(まぁこれは翻訳の妙ですが)」と名づけます。
 ドラッグストア前のバス停でバスを待っている間に、ヘンリーはすっかりアバラーのことが好きになってしまいました。
 「この犬、飼えないかなあ!」
 アノ手コノ手で、何とかしてアバラーを自分の家に連れ帰ろうと奮闘するヘンリー。表紙絵でヘンリーがアバラーを入れて抱えているダンボールの箱には「もうみんなに、はげよばわりされることはありません」と書かれています。これはヘンリーが、ドラッグストアの店員にもらったヘア・トニックの空き箱なんですね。うちのムスコは「もうみんなに、はげよばわりされることはありません」の箇所がお気に入りで、何度も読み返しては独りで笑い崩れていました。

 それに、アバラーが実に魅力的なのです。決して名犬というわけではなく、
 犬らしい犬です。家の人や近所の人に叱られることもたびたびです。でもヘンリーはいつだってそんなアバラーの最良の理解者、強い味方です。
「おまえはいいやつだよな」といいながらアバラーをなでるヘンリーの姿が、今思えば私にとって‘理想の男性像’第一号だったのかもしれません。

 ずっとヘンリーのことが大好きでしたので、小説の中のヘンリーが小学5年生になったのを追うように、自分も小5の時に両親の勧めで保健所から雑種犬を譲り受けました。わんことの心の交流は、‘ヘンリーくんとアバラー’の世界に溶け込めたように快いものでした。

 そんなわけで、私の幼なじみのヘンリーくんは今もがんばっています!
by vitaminminc | 2008-10-31 18:46 | Comments(2)

クラインの「ボツ」

 先週の土曜日に婦人科へ行った。子宮を超音波検査してもらうためだ。
「エコーを受ける前は、膀胱に尿を溜めた状態にしておいてくださいね」
 と言われてはいたのだが、私は意識的に加減しておいた。膀胱パンパンの状態で下腹部にローラーの圧力がかかってみい。想像するだけで恐ろしい。
 また、前日には仕事仲間からこんなことを言われ、脅されていた。
「みん子さん、そりゃ万が一失禁しちゃったとしても、表面上は医師も看護師も‘気にすることないですよ’とは言うでしょうけど、陰じゃ絶対舌打ちですよ」
 絶対粗相はしたくない。大体なんで膀胱をパンパンにしておかないとあかんのじゃ。
b0080718_18561578.jpg


「う~~~ん」と女医はうなった。「こうして見たところ・・・」
 モニターには自分の子宮の中が映し出されている。自分の体内を巡る画像──それはなぜかクラインの壺を連想させた。有り難いことに、壺の中は白黒画像である。

 女医がローラーを転がすたびに、子宮の中の映像がめまぐるしく変わり、私は私の子宮の中で危うく目を回しそうになった。
「ここに映っている限りではァ、目に見えるほどの筋腫などは見当たりませんがァ──」と言って女医はローラーを転がす手をピタッと止めた。
「ここの黒く見える部分がァ、膀胱です。頑張って尿を溜めてくださっていますけどもォ、まだ足りませんね。ここでもうちょっと膀胱が膨らんでくれていてェ、手前の子宮を押し出すカタチになりますとォ、子宮のもっと奥の方までせり上がってェ、ハッキリ映るようになるんですがァ」

 そうか。膀胱を膨らませて臨まねばならん真の理由はソコにあったのか!!
 理由があるからこそそうした指示が出るという基本的医療体制を無視し、私は自己判断に基づいて膀胱の8割しか満たしていなかったのである。何を? 尿を。何故か? お漏らしを避けるため。

「となりますとォ」と女医は不吉な前置きを口にした後、カルテにサラサラと横文字を並べながら、やんわりと続きを言った。
「次回もう一度エコーを撮りますからァ、今日よりさらに尿を溜めてきてくださいね」

「はぃ・・・」私は軽い尿モレのような声で返事をするしかなかった。 
by vitaminminc | 2008-10-29 19:25 | Comments(10)

ド根性あさがお

b0080718_9543088.jpgぃゃビックリ。
ココはカナダとアメリカの国境かというくらいの昨夕の豪雨。
ナイアガラで滝修業を終えた庭の朝顔が、こうして今朝も花を咲かせました。
10月28日、晩秋です。朝露だってふるえるほどの涼しさです。桜の葉もだいぶ散りました。
「健気」という言葉がもつイメージを、今朝は朝顔に教わりました。
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by vitaminminc | 2008-10-28 10:08 | Comments(0)

出所の歌

 人から「ソラミミストだったよね」と指摘されて、ふと思い出した歌がある。
 北島三郎の「函館の女」。

  はるばるきたぜ 函館へ

  さかまく波を のりこえて

  あとは追うなと 云いながら

  うしろ姿で 泣いてた君を

  おもいだすたび 逢いたくて

  とても我慢が できなかったよ


 私は↑↑↑の歌を、ある短い時期勝手に出所したての男の心情を歌い上げた慰問曲と勘違いしていた。それも「網走刑務所」向けの。

 なぜかというと、歌詞の「あとは追うなと 云いながら」の部分が、私の耳には──

 あとは女と 云いながら

──に変換されて聞こえていたからである。
 いくらムショ暮らしが長かったとはいえ、なんとガツガツと精気みなぎる歌であろう。「女に餓えている」というポテンシャルが、さかまく波を乗り越え全面的に露出している。
 函館も網走も地続きの北の大地なので、「さかまく波」というのは実際の海ではなく、感情の度合いを表しているのだと一方的に解釈していた。

 そして、サブちゃんが鼻の穴を一際大きくおっぴろげて叫ぶ──

 とても我慢が できなかったよ

──という魂の叫びによって、私の解釈が正しいことが毎回証明されたのであった。
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by vitaminminc | 2008-10-22 18:10 | Comments(8)

動物は好きですか?

「婿タローくんに、一つ言っておきたいことがあるんですがね」と亡父は言ったものだ。「みん子は動物が大好きでしてね、それは長所である一方、ちょっとばかし困った面でもある。そこのところを承知の上で、どうかよろしく頼みます」
 公儀お墨付き(×印のな)の出戻り娘を嫁にしたいと申し出た奇特な青年に、父は真っ向から「条件」を付けた。本来ならばその変人の気がかわらないうちにと熨斗をつけてくれてやるべき場面でだ。
「大丈夫ですから」と変人は答えた。確かにそう断言したので、父娘は心底ほっとした。もっとも、父に引き合わせるより先に、私自身、相手には予め確認をとっていた。
「私とケッコンしたら、モレなく犬猫がついてきます。それでもいいですか?」
 その時も変人は、シャーシャーと音が出るほど澄んだ眼で答えていた。
「平気だよ。動物は好きだから」
 だが、こんな確認事項などあってないに等しかった。新婚旅行先のオーストラリアで、すでに嫌~な予感はしていた。コアラを抱っこする時、ダンナの腰は尋常でないくらい引けていた。係員は「怖がることないですよ」とダンナをなだめ、私をお手本と認定しながら言った。「こうして奥さんみたいに、しっかりコアラのお尻を支えてあげてください」
 今ならわかる。この時ダンナはもちろんコアラを恐れていたのではない。汚がっていただけだ。
 私の父が「よろしく頼む」と言ったのは、娘の動物好きな性質もすべてひっくるめて受け入れてやってくださいよ、という意味だったに違いない。が、ダンナの方は違っていた。「コントロールします」という意味で受け入れたにすぎない。
 一戸建てを購入して実家から犬と猫を引き取りたいと言ったとき、ダンナは「信じられない」という目で私を見た。自分たちはもう高齢だから、犬猫の世話がしんどくなった、早く一戸建てに移り住んで引き取ってくれないか──私の両親は、犬猫引き取りを条件に住宅の頭金を出してくれたのだが、ダンナも負けじと条件を付けてきた。
 ①犬は外につないで飼う
 ②猫は一つの部屋から出さない
「動物は好きだって、前に言ったよね?」と聞く私に、ダンナはシャーシャーと音の出そうな視線を投げかけこう言った。
「(犬や猫が)何か悪い病気を持っていたらマズイだろ」
 そんなことがあるかいなと反論したかったが、おなかに第二子(ムスコ)を抱えていたこともあり、やむを得ずダンナの言うことに従った。ダンナの機嫌を損ねることは、胎教にいいわけがない。
 しかし、ダンナの言動は矛盾していた。私のおなかがせり出してきても、ダンナが犬の散歩を代わってくれることはなかった。 おとなしい犬だったので、散歩程度ならかえっていい運動になるはずだったが、ムスメが生まれたあと二度も自然流産していた身。おなかが張る日は安静にしているしかなかった。
 散歩にも連れ出してあげられず犬にすまないという思いとダンナに対する不満とで、イライラは頂点に達していた。犬猫そのものによる悪影響など微塵もなかったが、こうした精神的ストレスの方が余程身体にこたえた。
 まだ4歳だったムスメが散歩に行ってあげると言ってくれたが、途中どんなハプニングがあるともわからない。結局、犬は鎖につながれたまま庭の花壇をトイレにするしかなかった。本当にかわいそうなことをした。

 ある日、犬の前足の毛が抜け落ち、禿げていることに気づいた私は、びっくりして獣医に連れて行った。先生は他の動物病院のように皮膚の組織を採って顕微鏡で診ることもせず、患部を一目見るなりこう言った。
「利口な犬だね。態度でわかる。これは心的なものだから、塗薬じゃ治らないよ」
「心的な?」
「あのね、ダニなんかの皮膚病は、尾の裏や内股には出るけど、手の甲にはまず出ない。これは舐めたことが原因による禿げ。なぜ禿げたかわかりますか?」
「・・・」
「ふふ、心当たりあるでしょう。寂しくて舐めたんですよ。今こうして(飼い主のあなたを)見ると、おなかも大きくてだいぶしんどそうだから、おそらく散歩の回数も減っているでしょうし。せめて声だけでもいいから、いっぱい話しかけてあげて」
 先生はそんなようなことを言って苦笑すると、診察代は一切受け取らずに私と犬を帰した。

 毎日二回連れ出していた散歩が日に一回になり、しまいにはまったく連れ出してあげられない日も。とにかく身体がきつく、話しかける機会も激減していた。不自由な身体でムスメの世話に追われ、犬に向き合う余裕がなくなっていた。実家から引き取ったことで、かえって犬にはさみしい思いをさせてしまっていた。 うんと話しかけて、うんと撫でた。すると10日もしないうちに犬の前足にうっすらと毛が生えた。ひと月過ぎる頃には、どこが禿げていたのかわからなくなった。

 犬と猫を引き取ったら、家の中で放して飼う(というより一緒に暮らす)のが私の夢だった。児童書「がんばれヘンリーくん」でヘンリーくんが犬と同じ部屋で寝起きしている生活を知って以来の夢だった。 でも、今でもダンナは動物が大キライ。最近は私の前だとわざとらしく猫を抱っこしてみせたりもするが、見ていないところでは足蹴にしている。私はちゃんと知っているんである。先日も、私が見ていないと思ってか、自分の部屋に入り込んだ猫を蹴って部屋の外に追い出した。
 私はキッチンから飛び出すと、すぐに猫を抱きあげた。
「ごめんね、ママは動物が好きだっていう人と結婚したはずなのに・・・」
 恨み節のように言うと、ダンナはシャーシャーと音の出そうな目つきで言い返した。
「猫はゲロ吐くからダメなんだよっ」
 こんなことを言ってのける野郎の、いったいどこが「動物好き」なのか?

 ふと想像する。オータム・ジャンボに当たったら、あるいは庭の花壇で石油を掘り当てたら、犬と猫と暮らしてやる。ダンナは庭師に雇ってやるか。でも、私の犬と猫には触れさせない。「だって、ニンゲン臭いんですもの」

 子どもたちには訓示を与えてある。
「もしも相手が本当に動物好きかどうかを見極めたかったら、その人の母親が、動物好きかどうかを必ず調べなさい」
 ダンナの母上は、ヒトにはやさしいが動物が大嫌いである。母親によるこうした刷り込みはバックボーンとなり、たいへん影響力がでかい。
「でなけりゃ一緒に動物園に行って、ふれあい広場で相手の動物との接し方をよーく観察すること」 
 家族に一人でも動物が嫌いな人がいると、利口であれば利口であるほど、そのペットは心身ともに傷つく。
 猫の茶尾プーが病気になっても、死んでしまったときですら、ダンナは一度も茶尾の様子を確認しようとはしなかった。狭い家の中で、何が起きているか十分知っていたというのに。

「ペットは家族の一員だ」
 せめて私に似て動物好きの子どもたちには、そう思ってくれる相手と一緒になってほしい。

 でないとおちおち病に伏せってられんのだよ、ペットが心配で。
by vitaminminc | 2008-10-21 12:04 | Comments(4)

A子のQ日

 私の名前は、銀波(ぎんば)A子(←フィールド・ネーム)。
 日曜出勤したオフィスで、バナナに対する持論を熱く語った。
 他の果物には糖度や酸味の点で、個体差というのだろうか、どうしても(箱入りはともかく袋入りの場合)味に当たりハズレがある。が、バナナには殆どハズレがない。適度に熟してさえいれば、ほぼ100%「おいしい」。ボケたリンゴや味のない梨、甘さの足りないメロンに当たってしまった時のような失望を、バナナに与えられたためしがない。バナナの味は常に安定している。そう、 
 バナナは裏切らない。
 すると2つ離れた席のB子さんが、
「A子さん、バナナの味は一定でないって知ってた?」とやんわり反論してきた。
 品種によって、ものすごーくおいしいバナナがあるというのだ。
「そりゃ値段が高くなればそれなりにおいしい品種はあるだろうけど、バナナなんて普通のでも十分おいしいョ」と私は牽制した。
「それが全然違うのよ」とB子さんは熱弁する。「もうアレを食べちゃったらアタシが今まで食べてきたバナナは何だったの?ってくらい、味に差があるのよ。濃厚で、ほっぺたが落ちるっていうのはまさにアレのことよ」
 値段を聞いたら、私が毎朝ダイエット用に購入しているバナナの軽く2.5倍はしている。なまじそんな贅沢な味に目覚めてしまうと、「安くおいしく痩せられる」という朝バナナ・ダイエットの根幹が崩れそうなので、少なくとも今は食べるべきではないと心に誓った。

仕事を終えて帰る途中に寄ったいつものスーパーでは、いつものバナナが売り切れていた。バナナに裏切られた気分になった。
 遅い昼食を済ませた後、恐るべき睡魔に襲われた。自室にこもって爆睡。夕方、ムスコに「バドミントンをやろう」と起こされるまで、2時間以上眠り続けていた。

「私の名前は、銀波A子。どんな球にも食らいつく!」
 自分で自分を実行中継しながら、ムスコの方向うんちなサーブにたかる。銀蠅のごときしつこさで、快音あげて打ち返す。カキンッ、コキンッ。 枠に当てて打ち返すのは、ネットに当てるよりもテクニックが要る。でなけりゃ単に下手なのである。
 サーブの時、ラケットを持つ手を背中に回し、開いた足の間から打ってみた。
「あっははは」とムスコが笑い崩れる。「バカみたい」
 確かにバカみたいである。こんな母によく付き合ってくれるもんだと感心する。

 風邪気味なのか声変わりしかかってるのか。最近ムスコはハスキー・ボイスだ。声がひっくり返ってばかりいる。本当にこのまま声変わりしてしまうのなら、もっと子どもらしい声をいっぱいDVDに残しておけばよかった。 

「そろそろ帰ろうか」 日が落ちて、球がよく見えなくなってきた。
 本当は朝バナナなんかより、こうして子どもとバドミントンをやる方が健康的に痩せられるんだけどね、とA子は思う。いつまで母親相手にバドミントンに付き合ってくれるか、それが問題、としんみり思うのであった。 
by vitaminminc | 2008-10-19 22:14 | Comments(0)

容疑者Xの「変身」

 職場で気の合う者同士=3人で「容疑者Xの献身」を観に行ってきた。
 3人のうちの1人=Aさんが福山雅治ファンというのがきっかけだったが、原作が東野圭吾の直木賞作品であることから、私も「観てみたい」と言い出し、Bさんが「ならみんなで観に行こう」と話をまとめた。

 3人のうちでは私が一番最後に原作を読み終えた。原作のイメージがまだ脳裏に濃厚に焼き付いているところに、Bさんが「原作とは結構違うかもしれないね」と映画の情報を教えてくれた。
 映画では、原作にはないシーンが出てくるとのことだったが、それよりも「容疑者X」役を堤真一がやると知って、思わず「え~!!」と叫んでしまった。
 堤真一は大好きな俳優の一人だが、容疑者Xとは程遠いイメージでもあった。「地下鉄に乗って」の堤真一は、容疑者Xにしては姿が良すぎるし、「ALWAYS 三丁目の夕日」で駱駝の股引を穿いた尻を浮かせて放屁する堤真一は、これまた容疑者Xにしては健康的すぎる。

 堤真一じゃあ「容疑者Xの献身」が「容疑者Xの変身」になってしまうではないか。私の個人的イメージでは、やはり大好きな俳優の一人=香川照之こそが容疑者Xのイメージに最も近いのだった。

 しかし今日、私は思い知らされることとなる。

 堤真一が真の役者であるということを。

 「容疑者X」に変身できるのは、堤真一をおいてほかにないということを。

 ありがとう、堤真一。ますます好きになりました。
by vitaminminc | 2008-10-15 18:13 | Comments(4)

つむじで茶をわかす

 職場のAさんが、婦人科での受診をしきりに勧めるので、先日とうとう行ってきた。
 Aさんは私よりも6才ほど若い。4、5年前というから──37才前後で生理が止まってしまったという。いくら何でも更年期にはまだ早い。原因を調べるために血液検査を受けたところ、女性ホルモンの分泌が抑制されていることがわかった。理由は謎だが、脳が勝手に「授乳期」と判断し、妊娠を避けるために女性ホルモンをコントロールしていたらしい。それ以降Aさんは2ヵ月に一度病院の婦人科へ通って女性ホルモン剤を処方してもらっているそうだ。
「そりゃ毎月生理なんてもうない方が面倒臭くなくていいことはいいんですけどね」と彼女は言った。「ただホルモンのバランスが崩れると、どうしても鬱っぽくなるっていうか、精神的に結構しんどかったもんだから、絶対(婦人科へは)行っといた方がいいです」
「けどねぇ」と私は苦笑交じりに言った。「私の場合、年齢的にも多分妥当な時期に差し掛かっているから、ここで無理に(女性ホルモンの分泌を)復活させる必要があるのかって話になると思うのよね~」
「え~、だってまだそんな齢じゃないでしょう?」
「人間、見た目じゃないからね。実際そんな齢だから。血液検査だけして、ハイ、あなたからはもはや女性ホルモンはまったく検出されませんでした、でも更年期だから仕方ないですね、って言われるのがオチなんじゃあ、ただでさえオヤジ系なのを自覚しているのに、医者から太鼓判を押されるようなもんざます」
「ま~たまたまた、そんなこと言ってぇ」
「あ。でものぼせは辛いから、やっぱり一度相談して薬を処方してもらおうかな」
「私ものぼせるんですよ」
「やっぱり?」
 私とAさんはどちらからともなくデスクの本立てからそれぞれのマイ団扇を引っ張り出しすと、二人でパタパタ煽ぎ出した。
「これじゃコウネンキーズって感じですね」
「うん。やっぱり行ってくる。このまま冬を迎えるわけにはいかないわ!」
「冬?」
「外気が冷えてきたら、絶対ワタシ頭から湯気が出る」
「あはは、いくら何でもそんなことは・・・」
「いや、絶対出る」外に干した洗濯物から白い水蒸気があがる冬の朝の光景を思い浮かべながら私は確信した。「今のままでは、つむじから湯気を立ち昇らせて自転車をこぐことになる。そんなことは絶対阻止せねばっ!」
「みん子さん、湯気じゃない、のぼせに効く薬が出たら私にも教えてくださいね」
「ああ、任せておいてくれたまえ」

 予約時間の11時を2時間15分もオーバーしたころ、ようやく名前を呼ばれた。婦人科の診察は一人当たりの所要時間がどうしても長くなりがちなので、待つであろうことは予測していたが、まさか135分間も待たされるとは。
「月経が来なくなってから約1年ですか・・・」
 カルテを見ながら独り言のように女医が口にした。私を振り返った目がやけにやさしい。
「45才から55才くらいまでのぉ、いわゆる閉経はぁ、正常の範囲と言われておりますね。みん子さんの場合ぃ、まあ平均50才と考えればぁ、幾分早め・・・ということにはなりますけれどもぉ、それでも正常と思っていただいてぇ結構ですよぉ」
 昔はかなり美人だったろうと容易に想像できる50代後半の女医は、語尾に独特の抑揚をつけながらやさしく説いた。
「のぼせがだいぶおツライようですねぇ?」
「ハイ」
「考え方は幾通りかありますよぉ。まず第一にぃ、検査の結果ほかに何も異常がなかった場合ですけれどもぉ、年齢的なものとして受け止めて、そういった諸症状が自然に治まるの待つという考え方ぁ、次にぃ、のぼせなどは漢方でよいお薬がございますからぁ、それを試してみようという考え方ぁ、対処療法ということになりますがぁ、第3にぃ、女性ホルモンを投与することによって閉経を遅らせる方法・・・まぁこれは考えないでいいでしょう」
「?」
「いかがいたしますかぁ? 漢方薬を試してみましょうかぁ?」
「ハイ、お願いします」
 
 触診及び尿検査では異常のなかった私には、のぼせに効くという漢方薬が出ることになった。
「お薬が身体に合わない場合もありますのでぇ、テストしますよぉ」
 看護師さんが私の舌の先に顆粒状の漢方薬を少し載せた。
「このまま5分我慢してくださいね」

「大丈夫でしたか?舌がビリビリしたりしませんでしたか?」
「ハイ。おいしくいただきました❤」
「漢方なのですぐに効くというわけにはいかないでしょうけどもぉ、これで2週間ほど様子をみてみましょう。次回はぁ、お薬がなくなる頃に予約をとっていただきましてぇ、今回の組織検査の結果の説明とぉ、それからエコーを撮りますねぇ」
 エコー・・・超音波断層検査は、より画像を鮮明に映し出すため膀胱を水分で満たしたのち、下腹部にギューギュー押しつけるようにしてローラーを転がされるのである。4,5年前にも一度受けたことがあるが、ただでさえ破裂しそうな膀胱の上を何度も何度も力いっぱいローラーを転がされるので、本当に、冗談抜きで失禁寸前だったのである。あれから数年・・・私の膀胱をつかさどっている筋力は一段と衰えを増している。クシャミ一発でも胸を撫でおろしているというのに、パンパンの膀胱の周辺をローリングなどされてみぃ、もう確実に失禁することまつがいなす。

 次回は老人用紙おむつサルバ持参で行くべきか。

 ところで、のぼせ用に出された薬は、ツムラの「加味逍遙散」という漢方薬だった。服用3日目なので、まだまったく変化はない。というよりここ2日ほど蒸し暑いせいか、かえってのぼせが激しくなった気さえする。
 ツムラといえば温泉入浴剤。何だかつむじで茶でも温泉でも沸かせそうな予感である。

 Aさんに報告したら、「なんで血液検査やってもらえなかったんでしょうね」と不思議がられた。そりゃもちろん、女医が「不要」と判断したからに違いない。‘この様子なら閉経ブルーの心配なし’。
 ただ、次回の検診で失禁しちゃったら、さすがの私もライトブルーになると思う。そうになったら、つむじから白い蒸気をたなびかせながら自転車を走らせよう。更年期機関車みたいで楽しくなるかもしれない(なるかッ!)。その前に膀胱を鍛えるとするか(しかしどうやって?)。
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by vitaminminc | 2008-10-11 15:41 | Comments(6)

座敷童猫?

 今日10月7日はミステリー記念日なのだそうだ。史上初の推理小説と評されている「モルグ街の殺人」(1841年発表)の作者、エドガー・アラン・ポーの命日にちなんで設けられたとのこと。

 ところで、わが家のミステリー現象は、まだ終わってはいなかった。
 1階のPCが置いてある部屋で、謎の物音がするという怪現象。お盆の頃から始まって、愛猫茶尾ぷーの病気が発覚してからおさまったかのようにみえた。そのため、以前飼っていた猫=マイの霊が、茶尾ぷーの危機を知らせようとして物音を立てていたのでは?と思っていた。
 
 しかし、茶尾ぷーが病死して以降、またしても謎の物音が聞こえるようになったのである。それも私は昼夜の区別なく結構ひんぱんに聞いていたので、いちいち子どもたちに報告せずにいた。
 すると昨夜、2階の私の部屋のドアを開けながら、不可解な表情のままムスメが入ってきて一言。
 「音がした・・・」と言うのだ。
 前に私やムスコ、猫の眠眠が何度か耳にした音に、ムスメはたまたま関わらずにいたのだが、今回はムスメの耳にも謎の音が聞こえたという。
 「ぴゅんッて音。短く口笛を吹いたような、ぴゅんッて」
 ムスメは聞いたままを声で表わした。ゲームの効果音のようでもあり、弦楽器の音のようでもあり、動物の溜め息のようでもある。ちょっと可愛らしい音だったので、思わずぷっと噴き出してしまった。
 「ゾッとした?」と聞いてみた。
 「いや、ゾッとはしなかったけど、眠眠は横で爆睡していたし、何も誰も、ほかに音を立てるような状態じゃないのに聞こえたから・・・」
 「少なくとも人に何か危害を加えるような種類のものじゃないと思うよ」と私は話した。「霊に敏感なはずの猫がすぐそばで平気で寝てられるんだから、恐ろしい魔物がいるわけじゃないと思うよ」
 それから、音がしたときの状況をムスメからさらに詳しく聞いた。音がした方向は、やはり同じ。4段の引き出し付きの小さな収納家具。ほかには洋服掛けと除湿機以外何もない。
 「家鳴りとかいうのとは絶対違うョ」とムスメは断言した。
 家鳴りというのは、建築素材が温度差や湿度差によって収縮するときに立てる音のことだ。
 「ママやムスコが聞いた音は、大型犬よりは小さくて、ネズミよりは大きいくらいの何かが家具に飛び乗ったような音だったんだよね。結構大きな音なんだけど、不思議とビクッとはしなかったし、ゾッともしなかった」
 猫の眠眠は、PCルーム(別名とーちゃん部屋)に入って寝るのが大好きである。魔物が潜んでいたら、近づいたりはしないだろう。
 「きっと座敷童の猫版みたいのがいるんだよ」と私は結論づけた。
by vitaminminc | 2008-10-07 16:41 | Comments(0)

母とムスコの性会話教室

b0080718_16392136.jpg ベッドに寝転んで本を読んでいると、ムスコが神妙な顔をして部屋に入ってきた。
ム「ねぇ奥さん(←いつも私をこう呼んでいる)、
ゲッケーって何のこと?」
 お。ついにこの時が来たか。
マ「植物の?」
 一呼吸置くために、私はわざととぼけて聞いた。
ム「違う、ヒトの」
 そう答えるムスコの黒目に、泳ぐ気配はない。真面目に知りたがって、かしこまって正座している。私は読んでいた本をさり気なく閉じると、寝転んだまま確認した。
マ「もう学校で習った?」
ム「まだ。でも教科書に載ってたから」
マ「女の子が成長してだんだんオトナに近づいていくとねぇ、赤ちゃんを産むための準備ができるようになるのね」
ム「うん」
マ「ほら、鶏なんかもそうだけど、雄鶏がいなくて雌鳥だけでも、卵は産めるわけよ」
ム「あぁ知ってる、無精卵でしょ」
マ「そうそう。人間の女の人も同じ。結婚もしてなくて、赤ちゃんを産むわけじゃなくても、体の中の卵巣と呼ばれるところで、常に卵はつくられてるの」
ム「へーぇ」
マ「でも、赤ちゃんを産まない場合、その卵は無駄になって、血液と一緒に体の外に排出されるんだな、大体ひと月に一回くらいの割合で」
ム「うん」
マ「だから月経というのは、わかりやすく言えば、無精卵排出のこと」
ム「ふぅ~~ん」
マ「でもさ、血液と一緒に流れ出るわけだから、月経っていうのは女の子にとって結構キツイんだよ。おなかが痛くなったり身体がだるかったり・・・。それも毎月毎月なんだから、大変なの。だから男の子は女の子にやさしくしてあげないといけないよ」
ム「ふぅ~~ん。ならオトコにもあるの?」
マ「何が?」
ム「オンナの人の月経に相当するようなやつ」
マ「ないね。ないけど、初めての月経──初潮と呼ぶんだけど──に匹敵するものとしては、夢精かな? これはオトコの子がだんだんオトナに近づいていくに連れ、精子を出す準備が整ってくるんだけど、まだ身体がそれをうまくコントロールできないうちは、寝ている間に無意識に射精することを言うんだね」
ム「それって自分でわかるの?」
マ「夢精したってこと?」
ム「うん」
マ「そりゃわかるよ。おパンツが濡れるもの。一瞬オレはこの齢で寝小便をしたのかとうろたえるかもしれないけど、よく見ると明らかに小便ではないことに自分で気づく」
ム「ははは・・」
マ「そして傍目には、ある朝洗濯機の中にムスコのおパンツが一丁入っていることからわかる」
ム「あはは・・・でも、え? なら赤ちゃんを産まなくなるとどうなんの? 奥さん、月経は?」
マ「(ーー;)私のことはいいの。ぼちぼちでんな、ということで(るせーな、いちいち)」
ム「じゃあさ、結婚して、赤ちゃんを産みたくなったらどうすんの?」
マ「アニマル・プラネットとかでよく見るじゃん? 昆虫や動物と同じく、交尾するんだね」
ム「ひょ~ッ!」
マ「鮭はメスが産みつけた卵の上にオスが精子をかけるけど、哺乳類の場合は直接メスの体内にオスが精子を送り込むのだよ」
ム「(便器に流れないまま置き去りにされた大便を見るような目つきで)ひぃ~ッ!! そんなぁ、嘘でしょ、そんなのイヤだョ」
マ「なんで? 赤ちゃんが欲しいなぁという純粋な気持ちから生まれる自然の行為なのに。何がイヤなのか言ってみ?」
ム「だって精子を出すとこって、ちんこじゃん?」
マ「まあ、そうだけど?」
ム「ソレを口の中に入れるなんて、オレ信じらんねーよ」
マ「はぁ? 一体その情報どこから仕入れたの? 誰が口から赤ん坊を産む? エイリアンか」
ム「それもそうか・・・なら一体どこ?」
マ「うんちが出るとこでも、おしっこが出るとこでもありまっしぇん。お股の間に第三の穴がちゃんとあるんです、オンナの人には(小便も精子も同じ配管のオトコとは、違うんだからぬえぇぇ)」
ム「え゛ーッ!! その穴、なんて名前?」
マ「えぇと・・・何だっけ(←マジでド忘れ)子宮じゃなくて、えぇと・・・あぁ、膣だ、膣(私の中ではすでに死語なのか?)」
ム「ふ~~~む・・・(←感慨深げ)」
マ「見て見て、鮭の受精。オスが卵に精子かけてるとこ~♪(ピクピク)」
ム「(苦笑)」 

 どこの世界に鮭(しかも♂)の物真似(しかも射精の)をする母親がいるだろうか。
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by vitaminminc | 2008-10-03 17:50 | Comments(6)

日々の暮らしに「ん?」を発見