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家具や悲鳴

同僚の1人に、竹を割ったような性格のかぐや姫がいる。
昔から、家具を衝動買いしてしまうというのだからスゴイ。
ふつう家具選びで最も重要なことといやー、まずはサイズの測定。
服選びなら、骨格さえ入りゃー好みを最優先させよーが何とかなる。死ぬ気になりゃー1サイズ下の服に身体を合わせることだって可能だ(ハイ。着れるようになりたい服がクロゼットでこやしになってますです)。
しかし、設置する場所に関してはそうもいかない。土地の問題、費用の問題。簡単に増築できるわけがない。ましてや集合住宅となれば、そんなことは99.9%許されないのである。
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かぐや姫は笑って話す。
まだ新婚だった時、家具売り場でL字型のソファーに一目ぼれしちゃったの。ほら、展示場って広いじゃない? 目の錯覚で、そんなに大きく感じなかったのよ。ああ、これならうちの居間にちょうどいいかなって。
で、運ばれてきたヤツを見て、一瞬で固まったわよぉ。異常に大きいの! それにその頃済んでたマンションのリビング、結構細長い造りだったのね。
業者は黙々と運び入れていたけど、心ン中じゃー、(チッ、こーんなでかいもん入れちゃってどーする気だ?)くらいに思ってたとおもうのよ。だってL字の短いほうの一辺の幅と部屋の短いほうの幅がほぼ同じ。ソファーだけで居間がいっぱいになっちゃって、もともと居間にあったテーブルも置けない状態? 
まるでスナックよ。もうこりゃ絶対旦那に怒られると思ったから──

皆の声「えー! ご主人に相談しないで買ったのぉ?」

──うん。だから速攻で家具やに電話したの、送料はもちろんコッチでもちますからって。でも一度搬入したものは未使用でも引き取ってもらえないのね──

皆の声「当たり前じゃん!」

──うん。仕方ないから次にリサイクルショップに電話して急いで来てもらったわけ。その日の日付の入ったレシートを見せて、搬出手数料込みで9万円で引き取ってもらえたけど──

皆の声「そりゃまたずいぶん高値で・・・」
   「ちょっと待って。元はいくらしたの? そのソファー」

──18万したから、半分に叩かれちゃったけどね──

皆の声「そんな高い買い物するのに下調べなしって・・・」
   「旦那が帰るまでに間に合ったの?」
   「買うのも早いけど、尻拭いも早いね」

──バッチリ、証拠隠滅。いまだに知らないよ、うちの旦那♪

かぐや姫は懲りることを知らない。
お次はテレビショッピングで紹介していた「回転ハンガー」に一目ぼれしたそうだ。
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かぐや姫は笑って話す。

畳半畳分のスペースとかいいながら高さが異常にでかくて、天井まで届きそうなくらいあるのよ。とにかく圧迫感がすごくて、これは旦那には怒られなかったんだけど、帰って一目見るなり、
イリュージョンかって嫌味いわれて──

皆、爆笑

──もう、一刻も早く処分したくて、またリサイクルショップに電話したの──

皆の笑い声

──寸法を聞かれて、それじゃ運べないから、もう一度箱に入っていた状態まで分解してくださいって言われたの。でもアレ組み立てるの、すっごい大変だったのよ。旦那が仕事に行ってる間に汗だくになって組立てたんだから。仕方ないからまた大汗かいて分解してみたけど、ネジを固く締めすぎたのかしら、どうしても支柱が箱に入るサイズまでには小さくできなくて、結局自分で車に積んで市の粗大ごみに運んで、お金払って置いてきた。

皆の声「あ~~ぁ」
   「あんなもん あのようなものを買う ヤツ 人いるんだろーかと思ったら、こんな身近に・・・(ボソッ)」

かぐや姫の目下の悩みは、古き良き時代を求めて購入した囲炉裏テーブル。
「真中が開いていて使い勝手が悪いから、家族に不評」なんだそーだ。
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by vitaminminc | 2010-10-24 10:48 | Comments(4)

バナナフィッ臭

先週のことだ。
なんとなく家中に、香ばしい空気が流れ始めた。
それは日増しにはっきりとしてきた。外から帰って玄関に入ると、猫の眠眠と一緒にわ~っと出迎えてくるほどになった。
悪臭ではない。
揚げ物の匂い。
それも、チキンでもとんかつでもなく、
白身魚のフライの香りなんである。
おいしそうな匂いではあるけれど、その香りはだんだん私を不安にさせた。
それもそうである。白身魚のフライなんてずっと作っちゃいないのだから。

学校から帰ってきたムスメが、若くて鋭敏な嗅覚を駆使して、徐々に匂いの源を突き止めていった。
「うん。やっぱキッチンからだ」
「それも、いい? この線からコッチ」
「でもって、この高さよりは上だな」

キッチンキャビネットの上か!?
私は、キャビネットの上にいつのまにか無造作に載せていたハンドタオルをどけた。
するとそこには、ビニール袋に入った物体が。中には、うっすらと黒っぽいブツ。
手に取った瞬間の、ぐにゃっとしなる感触は、生魚そのものだ。
「やっちまった!」
生の魚を買ってきて、冷蔵庫に入れ忘れていたのかあぁぁぁ~。
大急ぎで袋ごと別のビニール袋に入れ、厳重に口を縛ってゴミ箱へ捨てた。

でも、買った覚えなどないぃぃぃ~。
じゃあ何? さっき私がつかんだブツは何なんだ?

チラッと見ただけだが、残像を脳内スクリーンに映し出してみる。
身体に斑点模様があった。
川魚のヤマメ?
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いやいやいや、たまに買って塩焼きすると旨いけど、最近は買ってなんかいないぃぃぃ~。
しかも、1尾2尾じゃなかった・・・。

あ。
思い出した。
バナナだ。
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何日か前に買ったはずなのに見当たらないから(←どんな手抜きの探し方だ)、きっと気のせいだったんだと自分を納得させた。
結局買い直したけど、やっぱり買ってあったのかあぁぁぁ~。
ムスメが苦笑いして言うには、
「その上に置いたの、あたしなんですョ。奥さんに頼まれて、買って来たものを仕分けして冷蔵庫とか戸棚に仕舞ったんだけど、バナナだけはどこに置いていいかわからなかったから──」

しかし。
ブツを処分したにもかかわらず、相変わらず白身魚のフライの匂いが居間にまで漂流。
ブツのすぐ横に置いてあった鍋つかみが怪しい。
手に取ると、しっとりと湿っているではないか。ひぃぃぃ~。
くたびれ果てたバナナ様ご一行が粗相をし、鍋つかみがそれを吸い取り始末したらしい。

ありがとう、鍋つかみ。
洗濯機でリフレッシュさせた鍋つかみも、なぜかたまたま魚類。

サリンジャーの短編に「バナナフィッシュにうってつけの日」という作品がある。
そう、バナナは、時に魚に変身する。(←小説の内容とは無関係)
そんな怪奇現象が起こり得ることを、このたび鍋つかみが教えてくれた。
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↑↑↑23年前にニューヨークで買ってきた、これ以上ないほど悪趣味な鍋つかみ

あ、そうそう。ひとつ忠告を。
バナナはやはりフィッシュになる前に、果物としておいしくいただくのがよろしいようでemoticon-0139-bow.gif
by vitaminminc | 2010-10-21 22:17 | Comments(0)

半生をかけた反省

「恥の多い生涯を送ってきました」──この科白は、太宰治よりも自分に似つかわしい。

 来月になれば、ちょうど半世紀生きた計算になる。人生の折り返し地点は(たぶん)知らない間に通り過ぎている。今は、更年期障害と秋花粉による体調不良で、仕事に出る以外は暇さえあえば床に伏せっている日々。
 これが50年という人生の節目を迎える者の姿なのか? 自分でも情けなくなるのだが、どっこい「情け」だけは日に日に増殖しているような気がする。
 というのも、ふとした折に‘なぜ今頃になって?’というような、非常にメンタルな記憶が蘇り、私に「悔い改めよ」と訴えるからだ。

 たとえば、こんなことがあった。ムスコの中学で部活見学があって、オカンたちは開催時刻前に学校へ行き、廃品回収の手伝いをした。古新聞や段ボールをトラックに積んでいる最中、瞼の裏で、おじいさんが笑った。

 リサイクル運動が浸透している現在では、学校や自治会が設ける集積所に、みんなが古紙などを持ち寄り、それをトラックが集めに来るというのが一般的だが、昔は違った。
 「屑屋」と呼ばれるおじさんが、リヤカーを引きながら一軒一軒まわっては古新聞やボロ布などを集め、ちり紙と交換していた。
 私の家の方をまわっていたおじさんは、「おじさん」と呼ぶにはだいぶ齢を取り過ぎていて、顔はアニメの「ポパイ」にちょっと似ていた。
 おじさんが玄関先に声をかけ、当時小学3年だった兄が「おかあさ~ん、屑屋が来た~」と母を呼んだ。急いで父が、外に聞こえないように兄を叱ったのを覚えている。
「屑屋‘さん’と言いなさい」
 父は、人種や職業で人を差別する言葉遣いをことのほか嫌う人だった。
「ごめんなさいねぇ」と母はおじさんに言った。「今日は古新聞、こんだけしかなくて」
 おじさんは、交換するだけの古新聞がないと見るや、ちり紙の代わりにきれいな端切れを取り出した。
「これどう? お嬢ちゃんに」
 そう言って、母の後ろに隠れていた7歳の私に、A4サイズくらいの小さな布切れを数枚くれた。
「お人形さんの服でも作るといいよ」
 私は嬉しくて、いっぺんでおじさんのことが好きになった。
 不器用な手つきでバービー人形の洋服を縫った。次におじさんがまわって来ると、ハンドメイドの服を着たバービーを見せた。
「上手だねぇ」 
 おじさんは、原始人かというくらいひどい仕立ての服を着せられた人形を褒めてくれた。
 私はキャーキャーはしゃいでおじさんについてまわり、リヤカーを押したりもした。おじさんの白い下着は、汗で汚れて鼠色になっていて、おじさんの顔や腕は日に焼けて飴色になっていた。
「かわいいねぇ」とおじさんは目を細くして笑っていた。
「あんまりかわいいから、おじちゃん、みん子ちゃんを連れて帰っちゃおかな」
 おじさんが冗談を言うと、母は複雑な表情になった。後になって私にこっそり、「あんまり遠くまでついて行っちゃダメよ」と注意した。
 その後も私とおじさんの交流は続いた。おじさんは新しい端切れが入るたびに、私だけでなく一緒に遊んでいた私の幼馴染にも無償で分けてくれた。だから、その頃私たちの間では、人形の洋服を縫うというのがちょっとしたブームでもあった。
 おじさんはどんどんおじいさんになっていき、私は学年が上がっていくに連れて、おじさんについてまわることはなくなった。おじさんが家に古新聞を取りに来ているのがわかっても、わざわざ玄関まで出ていくことはなくなった。
 小学校高学年になっていたある日のこと。クラスの友達と一緒に下校していたら、道路の向こうからおじさんがリヤカーを引いて来るのが見えた。おじさんは、だいぶしんどそうだった。
 それでも、ふと顔を上げて私の姿を見つけたおじさんは、にっこり笑って「みん子ちゃん!」と呼んでくれた。
 その時私は、笑顔の代わりに困ったような顔を見せたのだと思う。
「あの人、知り合い?」と友達に聞かれ、「うちの方に来る屑屋さん」とだけ答えたのだから。
 何かを察したように、おじさんは私たちの横を通り過ぎる時、何も言わなかった。私の顔も見なかった。
 おじさんを傷つけてしまった。──小さくなっていくおじさんを背中で感じながら、泣きたいような気持になった。友達の話もほとんど上の空で聞いていたと思う。

 なんであの時、おじさんのことを疎ましく感じてしまったんだろう。
 屑の山を積んだリヤカーを汗水流して引いている老人とトモダチであることを知られたくなかった。思春期特有の人見知りもあったろうが、いやったらしいカッコつけしいでしかなかった。父の大嫌いな「差別」をやらかしたのだ、このバカ娘は。
 自分のことをあんなに可愛がってくれた老人に対して、なんと愚かしく冷たい態度をとってしまったことだろう。しばらく鳩尾あたりに泥を溜めていた私は、やがて、まわってくる屑屋さんが別の人に替わっことを知った。あのおじさんはどうしたのだろうと心配するのと同時に、ほっとしている自分がいたのも確かだ。

 あの頃おじさんが60歳だったとしても、生きていればすでに100歳を超えている。おじさんは、きっとずっと前に天国に行っただろう。
 おじさんが引退する前に、可愛げのかけらもない少女に成長した姿を見せてしまった。本当は、いつまでもおじさんにまとわりつく、無邪気なおチビでいたかったのに。
 あの日、おじさんが「他人」のふりをしてくれた胸中を思うと堪らない。笑顔を返せなかった自分が許せない。あの時間を自分の記憶の中から切り取ってしまえたらどんなにいいか。
 口を結んで、私と目を合わせないように通り過ぎていったおじいさんの気持ちが、齢を重ねるごとにリアルにわかる。
 これからの半生をかけて、少しずつでもおじさんの親友でいられた7歳当時の心を取り戻したい。そして、清い心となって、雲の上でおじさんと再会し、リヤカーを押すのだ。
by vitaminminc | 2010-10-20 04:09 | Comments(4)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by み茶ママ