昭和空き地公園

職場で同僚が嘆いていた。 
中学生の息子さんが、小学校の校庭で野球をしていて、校舎のガラスを割ってしまったとのこと。

中学校の校庭は常に部活で使われている。そこで、小学校の恩師の言葉「いつでも遊びにおいで」を思い出し、懐かしのグラウンドで野球をしたらしい。 

中学の校長に呼ばれて謝り、「今日は仕事が終わったら、小学校まで謝りに行かなくちゃならない」何度も頭を下げて、まるでヤマタノオロチみたいだと嘆いていた。 

中学校の校長と、ガラスを割った生徒と、その母親とで頭を下げたら、まるでキングギドラだなと思いつつ、私も、小中学校の児童が遊ぶための空間があまりにも少ないことを嘆かずにはいられなかった。 

一般の公園では、ボールを使った遊びが禁じられている。小さな子どもにとって、飛び道具は危ない。かといって、市営グラウンドを借りるには手続きが要る。子どもたちがぽっと出かけてぽっと遊べるもんでもない。 

空き地さえあれば。
そう、空き地さえあれば、それほどお金をかけなくたって、とびきり楽しい空間が生まれるのに。 

私が子どもの頃というのは、宅地造成で次々と空き地が失われていった時代である。
でも、その造成にかかるまでの一定期間が、子どもたちにとってはすごく魅力的なものだった。 
トラックで運ばれて来た土砂は築山となり、尻の下にダンボールを敷いて滑ったり、自転車で駆け上っては坂を下るスリルを味わったり。 
トンネルのように大きな土管は、ちょっとした秘密基地にもなった。 

特別な遊具など要らない。
自転車で駆け抜けられるほどの広い土地に、土管と築山さえあれば、小学生以上の子どもはいくらでも遊べた。 

もしも私が公園を造るとしたら、こんな公園を造りたい。

b0080718_21465891.jpg土管ゾーン。

上に登ればジャイアンのステージに、

中へ入れば雨の日は捨て猫に捨て犬はもちろん・・・・・・


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カネゴンだってかくまえる。


b0080718_21515189.jpg築山ゾーン。

滑り台代わりのアップダウンが、

子どもたちの足腰を鍛える。


b0080718_21551378.jpgシロツメクサゾーン。

目に優しい緑が、

子どもたちの情緒を安定させる。


b0080718_21565558.jpg水溜りゾーン。

青空が映る水溜りをバシャバシャ歩くことで、

子どもなりにストレスを発散。


でも、現実はあまりにも非現実的。

そんな贅沢な土地もなければ、部活や塾に忙しくて、遊ぶ子どもたちがいない。

これが現実。 
by vitaminminc | 2011-07-31 22:06 | Comments(2)

アリギリスが見た悪夢

 先日、遺失物法第32条つまり「所有権を取得する権利」に基づき、ムスコと一緒に警察署に出向いた。

 部活の帰り道、りんごを一口齧ったマークつきの80GBの携帯用音響機器をムスコが拾ったのは、今から半年前。親のしつけがよろしいようで、正直に交番に届けたという。交番へは1人で行けたものの、警察署に1人で行く勇気はなかったようだ。

 どういうわけか、キリギリス的ムスコは、自分では何の苦労もせずに音響機器を手に入れる才能に長けている。
 アリ的ムスメがお年玉を貯めて購入したCDプレーヤーを我が物顔に使用し、毎度のように中身を違うケースに戻したといっちゃー姉に怒られても右から左。
 また、アリが毎月の小遣いをせっせと貯めて××podを購入した翌年には、キリギリスもまんまと携帯用音楽プレーヤーMP3をゲット。友だちのおとーさんが、たまたまクレーンゲームの達人で、MP3を立て続けに獲った現場に居合わせた、ただそれだけの理由で。

  扱いが乱暴なせいか、アリの××podより新しいはずのキリギリスのMP3、この春頃とうとうダメになった。でも彼は音響機器には不自由しないで済む星の下に生まれている。それから数ヵ月も経たないうちに、ちょうど先の80GBお引き取りの運びとなった次第。

 「80GBっていったら、第5.5世代だからね」とアリが苦笑した。彼女の××podは20GB。キリギリスの弟は、その4倍もオツムのいいヤツを1円も払わず手に入れたわけだ。
 参考までに、ネットで価格を調べたら、中古でも1万7000円以上するシロモノだった。いいのだろうか、こんな調子で。

 「エ~!?」とキリギリスが80GBをいじりながら小さく叫んだ。「警察ってこういうの初期化しないまま渡すんだね」
 見ると、80GBは音楽以外に画像も取り込めるのだが、音楽はもちろん、元の持ち主関係とおぼしき人物の画像がごっそり残ったままだった。ひえぇぇ~。個人情報もへったくれもあったもんじゃない。

 アリとキリギリスの母アリギリスは、見たこともないそれら人物の画像をチラ見して、複雑な心境になった。 「こういう結果になるんだから、絶対そこらに落とさないでよ!」

 その晩、恐ろしい夢を見た。
 ムスコが拾った××podは、実は密輸組織のメンバーの所有物で、中には知られてはまずい数々の情報が詰まっていた。GPS機能を使ってすぐに落とした現場へ戻ろうとしたものの、最悪なことに、それが警察署へ渡っていることを知る。
 警察に保管されている以上、手出しは出来ない。が、ついにチャンスが巡ってきた。半年経って、それが移動したことを感知したメンバーは、××podの新しい持ち主となったキリギリスの家を突き止める。
 あとは、口封じのためキリギリスが独りになるチャンスを窺うのみ・・・・・・。  

 翌朝、この恐るべき予知夢を語ったら、キリギリスばかりかアリにまで笑われた。
 「私には楽しそうな飲み会にしか見えなかったけど?(笑)」
 
 アリギリスの目には、ギガおそろしい麻薬パーティーに映ったんである。

【お詫びと訂正】
 え~~~。念のためキリギリスに確認したところ、友だちのおとーさんがクレーンゲームで立て続けに獲ったものは「イヤホン」で、1つをムスコに譲って下さったそうで。
 でもってMP3は、UFOキャッチャーに500円投資の末、ムスコが自ら獲得したんだそうで。ケッ!

 どっちにしても、UFOキャッチャー自体が遊び。遊んで手に入れるところが、キリギリスだっつの。
 コツコツ型の姉に比べて、一攫千金的なところが母は心配。怖い夢も見るっつの。
        
by vitaminminc | 2011-07-30 16:00 | 子ども | Comments(0)

ムスメの立ち位置

もしもバブル末期に娘盛り(←って古いな)を迎えていたとしても、ムスメは決してジュリアナ東京のお立ち台で踊るようなタイプではなかっただろう。

ムスメには、立つのにふさわしい場所がほかにある。

昨日ムスメは、大学で試験の1つを片付けて地元の駅まで戻ってくると、いつものように駅中の書店に立ち寄った。
かねてよりネット検索で新刊が出たことを知り、読みたい読みたいと焦がれていた夢枕獏の「陰陽師」シリーズ最新刊が並んでいないかどうか確かめるためだ。

地元や大学の図書館にリクエストする手もあったが、取り寄せてもらうのがもどかしい。

この日、ようやく出会えた!

レジの真ん前に、平積みされていた。

自分がまだ試験期間中の身であることも忘れて、本を手にするやいなやムスメは早速その場で読み始めた。

レジの真ん前ということは、店員の目の前ということである。

1時間で読破した、面白かったと満足そうに語る。

店員の目に、ムスメの背中はどう映っていただろうか。

おそらく没頭というすごいオーラを放っていて、何も言えない状況をつくり出していたに違いない。

文庫本を蒐集しているムスメに、高価な単行本を買うつもりなどない。
読み逃げの確信犯、てーした心臓だ。私には真似できない。

近い将来、駅の立ち食いそばやでオッサンたちに挟まってズルズルやる日も近いだろう。
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by vitaminminc | 2011-07-25 00:31 | Comments(2)

時を避(さ)ける老女

母は今年4月で85歳になった。
黙ってじっとしていれば、マイナス15歳に見える。
見た目は若くても大正15年生まれが膝に出ている。歩くとだいぶしんどそうだ。

「アバラ骨を折っちゃったの」
メインディッシュとなる話題のデザートとして事後報告を受けたのは、先月はじめ。
「えぇ~~~!? 転んじゃったのォ!?」
「それが違うのよ。ベッドから落ちちゃったの」
何でも大変恐ろしい悪人の登場する夢を見たらしい。
母はその悪人から逃れようと身をかわしたと同時にベッドから落ちた。
ベッドから落ちるなんて、身の軽い幼児かエネルギーの有り余っている思春期少年としか思えない。

3日間続いた鈍痛を《打ち身》と解釈。市販の湿布薬を貼って凌いだ。
が、4日目。
梅雨の晴れ間を逃すまいと洗濯機を回し、陽の射すベランダで洗濯物を干そうと両手を挙げた瞬間、激痛が走った。
あとはもう、だましだまし呼吸をしなければばならないほど、じっとしていても痛くてたまらない。
さすがの母も、これは湿布薬で治るレベルではないと感じた。

タクシーを呼べばいいものを、徒歩5分ほどの距離にあるバス停まで推定15分かけて歩き、バスの振動に怯えながら最寄駅に着くと、今度は電車の振動と闘いながらひと駅先にある評判の良い整形外科に辿り着いた。
右側の肋骨が1本、ボキッと折れていた。
二段ベッドではない。普通のベッドだ。高さがあるわけではないが、落ち方がまずかったのだろう。
鎮痛剤が処方され、さらしを巻かれて帰宅したという。

「よかったわよ、まだ梅雨が明ける前で」
と母は言った。「梅雨が明けてからさらしを巻いていたんじゃ暑くてたまらなかったものねぇ」

「危ないから床にマットレスを敷くとか用心しないとダメだョ」
「ぅふふ、座布団は元々敷いてあったのよ。前にも落ちたから」
「前にも!! 夢遊病なんじゃないのォ?」
「今回はちょうど座布団がないところに落ちちゃったの。だからもっと大きなマットレスを敷くことにしたのよ」
「・・・・・・」

私を打ちのめしたのは、そのあとの母の一言だった。
「お兄ちゃんには言わないどいてね」
「なんで!!  話してないのォ!?」
「だって、言ったってしょうがないから・・・・・・」
母は二階に同居している兄夫婦に、アバラ骨が折れたことを秘密にしていたのである。

「ごめんねぇ。近くに住んでいたら車で病院に連れてってあげられたのに──」
「いいのよ、もう痛みも取れてるんだし」

何もしてあげられなかったことが歯がゆくて、猛烈に親孝行がしたくなった。
母を落語に連れて行こう。母が動けるうちに。
ネットで調べたら、運のイイことに、7月2日に大宮ソニックシティで『噺家ひとすじ六十年 桂歌丸特撰落語会』なる公演を発見。
一度も落語を見に行ったことのない私にも親しみやすい、笑点大喜利でお馴染みの顔ぶれ─桂歌丸、三遊亭円楽、三遊亭小遊三、林家たい平─の落語を堪能できるではないか。

本当は2日間に分けたいところだったが、あいにく仕事が忙しい。
やむを得ず、一日で母を泣かせ、笑わせる過密スケジュールを組んだ。

b0080718_10433779.jpg朝早く車で母を迎えに行き、午前中に映画を1本鑑賞。
西田敏行の『星守る犬』を観て、母よりも自分が号泣。
秋田犬ハッピーの健気さにハンカチがベチョベチョ。


和食レストランでランチを済ませた後、大宮へ。時間的には余裕がありすぎるくらいだったのに、渋滞と駐車場が満車という事態が立ちはだかり、開演にギリギリ間に合った。
映画も同じ。予告編が始まっている中、ギリギリの着席となった。
母は去年に比べ、随分と歩くのに時間を要するようになった。
「もどかしいでしょ」
済まなそうに言う母の腕を取り、脇から抱えるようにして横を歩く。
こんなことも予想できなかったなんて、私はバカだ。

ようやく席に着いた母は、背中にびっしょり汗をかいていた。
「急がせちゃってごめんね。足、痛むでしょう?」
「膝がいうこと利かなくて・・・・・・」
日除けのためのスカーフを母の背中に入れて汗を吸い取る。
「あら、コレいいわね」
「ガーゼ製だから肌触りいいでしょ」

落語は超おもしろかった。
あっという間の3時間だった。

「やっぱり違うわねぇ、桂歌まろさんは」
耳の聴こえも悪くなっている母にとって、一言一句もらさず聞き取れたのは桂歌丸師匠ただ1人。
円楽も小遊三もたい平もすごく面白かったのに、残念なことに、母にはところどころ早口で何を言っているのか聞き取れなかったらしい。

b0080718_1047533.jpg歌丸師匠の声には艶がある。
噺を聴かせようとする、芸歴60年の気概も伝わってきた。素晴らしかった。大満足。
公演が終わってエレベーターに向かう人の波から、
「落語ってこんなに面白いものだったんだね」といった感想があちこちから聞こえてきた。
みんな美味しいものを食べたあとのように幸せそうな表情をしていた。


ところで。
いつも怖い夢ばかり見て嘆いている母が、私と会う少し前に、珍しく楽しい夢を見たそうだ。

そこは何かの審査会場。
すばらしいプロポーションと美貌をもつ若い女性たちの中に、なぜか母も紛れ込んでいた。
ひとりひとり名前を呼ばれては別の場所に移っていく。
何かのオーディションなのだろうか。
やがて、名前を呼んでもらえずしょげ返っていた母に、審査員の1人が言った。
「年齢が85ですからねぇ・・・・・・」
そうか、年齢制限に引っかかったのか。
「それにしてもおきれいですねぇ──って、おっほっほっ」
審査員の台詞を再現して自分で笑い出す母。

めでたい。めでたすぎる。

このまま時の流れを避け、逆走し続けてほしい。
by vitaminminc | 2011-07-07 10:58 | 人間 | Comments(4)

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