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はぶらしのなく頃に

 「一限の授業なんかとるんじゃなかった~」
 ムスメは今朝も、バタバタ身支度しながら嘆いた。大学4年後期で選んだ科目が、よりによって朝一に組まれていることを。
わかりきっていたはずなのに。「それでも履修したい」と望んだ、あの美しい向学心は何処へ?

 「ハブラシ! ハブラシがない! なんで? さっきまで持っていたのに! 奥さん(←私のこと)、私の青いハブラシ知らない?」
 「知りまっかいな」
 「あ~、もう! 駄目だ、時間がない、もう行く!」
 突如として消えたという、ムスメのハブラシ・・・。歯はちゃんと磨き終えていたのだろうか。

 ムスメが家を飛び出したリビングルームには、まったりとした静寂が漂っていた。
 猫の眠眠と私だけ。
 身支度を整えて、そろそろ私も出勤せねば。

 ふと目に入ったキッチンカウンター。
 何だ? この違和感。
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 ゲゲッ!カウンター隅のペン立てに、仲間はずれのものを1本発見。
 大丈夫かいな、私のムスメ・・・048.gif
 ま、キッチンカウンターにペン立てを置く母親も母親だけど。


 

by vitaminminc | 2014-09-29 19:32 | 笑い | Comments(0)

ジグロサクソン人の結論

 体の色は、その対称となる色を、心に宿す。

 意味不明に聞こえるかもしれない。が、最近私は、確信に近いものを感じている。

 前にも述べたが、私は色が黒い。年齢と共に褐色化が増す、進行形ジグロサクソン人である。
 色白だったら得だなぁとは思う。顔がどうであれ、初対面の人に「褒め言葉」を提供できる。
 色黒だったらこうはいかない。「健康そうでイイですね」が、嫌味のない褒め言葉として通用するのはせいぜい30代まで。今の私に提供できることといったら、相手の目を泳がせるだけの「間」くらいだろう。

 本当のところ、私はジグロサクソン人に生まれたことをさほど気にしていない。気にすることで白くなるなら、真面目に気にもするだろうが、どうにもならないのだから仕方ない。

 ところが、なぜ? 
 周りが放っておいてくれない。それも、ごく身近な者どもが。

 まず、オット。
 朝の情報番組のお天気お姉さんが変わったことに気づいた朝、たいへん五月蠅かった。ワザとこの漢字を使いたくなるほどに。
 「あれ? お天気お姉さん変わった? なんでまた色の黒いのを起用したんだ? どう見ても朝にふさわしくないよなぁ」
 要約して↑↑↑コレ。どう見てもと言うが、画面のお姉さんは、私の目にはちっとも色黒に見えない。さすがにウンザリして言い返した。
 「私も色黒ですけど? 朝にふさわしくない顔で、申し訳ありませんね」
 オットはちょっと焦った様子で、苦し紛れに取り繕った。
 「いや、朝にって言うか、お天気お姉さんとしてどうかなと思っただけだよ」
 オットが平気で失礼なことをヌカすのは、オットが私を色黒と認識していないからではない。
 朝から色黒の顔を見ないように努めるあまり、妻の顔の色はもちろん、顔色を窺うもろことさえ忘れたに過ぎない。
 
 オットだけではない。
 味方であるべき実母までもが、私を放っておかない。百歩譲って、オットは私など眼中になく、単に新お天気お姉さんについて感想を述べただけとしよう。
 しかし、実母は違った。
 8月に帰省して、銭湯に行った。入浴後、脱衣所で先に着替えを済ませて待っていた私のふくらはぎを見た母が、こんなことを言った。
 「あら、みん子ちゃん、足はずいぶん白いのね」
 え? そう? と嬉しそうに照れる私に、母は冗談ぽく言った。
 「足じゃなくて、顔だったら良かったのにね」
 直球かい。実母(←88チャイ)は、舌に天然の毒を仕込んでいる。

 私とは対照的に、色のオットと実母に共通しているのは、腹い一面がある、という点。
 本人らに悪意がないとは信じたいが、あまりにも無神経。
 同じジグロサクソン人に言われたなら笑い飛ばせるが、奴らは絶対、色白であるがゆえの優越感に浸り過ぎ、ふやけている。その自堕落でブヨブヨした神経が、心無い発言を生むのである。

 そこで、冒頭の結論。
 体の色は、その対称となる色を、心に宿す。
 はいはい、私は自分の心が清く白いだなんてコレっぽちも思っちゃいませんよ。私の場合は、よく頭が真っになるんですぅ。

 


 





by vitaminminc | 2014-09-26 11:25 | 生きもの | Comments(2)

慇懃無礼なカレ

働き始めて7年だし、ギリギリ「今どきの若いもん」に入ると思いますよ、私から見りゃ。
見た目も結構ステキなわけ。スマートでスラッとしちゃって。昭和もんのスタイルとは明らかに違う。
出資額が大きいだけあって、アタマもいい。知識が豊富で、器用に何でもこなせちゃう。
しかも親切。ちょっとした力仕事ならボクがやるよ053.gifてな感じで、頼んでもいないのに素早く反応。

だけど、虚弱体質。特に環境の変化みたいのにはとことん弱い。いわゆるもやしっ子?
繊細といえば聞こえはいいけど、単に融通がきかないだけ。秀才肌の、いわゆる頭でっかちみたいで。
転居や、夏の尋常でない暑さとかで神経をやられたのか? ここ数年で仕事にも支障をきたしている。
正直いって、家族は手を焼いているに違いない。ほっぽり出すわけにもいかず、ご機嫌窺いの日々?



カレが我が家にきたとき、家族はその端正な容姿に見惚れ、歓声をあげたものだった。
ナーバスそうなカレの、心の扉を開けるには、ちょっとした労力が要るものと警戒したが、カレは違った。
軽いスキンシップだけで、自ら扉を開いてみせたのだ。何度も。何度でも。
そしてカレは、たくさんの引き出しを保有していた。
通常の冷蔵室以外に、チルド室、野菜室、冷凍室は大小2個。

カレの親切心は、狭い我が家では無用の長物。そばを通っただけで勢いよく扉が開いた。
腕が触れたといっちゃーどつかれ、肩が触れたといっちゃーどつかれる。
無駄なオープンは電力の無駄。一週間経ずして、カレのタッチセンサー機能は解除された。
思えば、この自慢の親切心が裏目に出たことが、カレの自尊心を大いに傷つけたのかもしれない。

以来、カレは黙々と働きながらも、徐々に家族に不信感を抱いていくようになる。
自分が家族に愛されていないことを、家族の会話の端々に感じ取るようになっていった。
「あ~ぁ。前の冷蔵庫が、家を建替えるまでもってくれてたら、もっと大きいのを買ったのに」
「アイス食べてない人、早く食べちゃって! うちの冷凍室、狭いんだから」

やがてカレは、神経に異常をきたすようになった。確実に、病んでいった。
まず、小さいほうの冷凍室が、フリーザーとしての役目を放棄した。
アイスが溶けてしまうのはもちろん、ケーキなどについてくるミニ保冷剤でさえ、凍るまでに三日を要す。

「野菜室がちゃんと閉まらないよ? 何かつかえてるみたい」
野菜室の、大きくて深い引き出しをギリギリまで前に出し、仕切りのトレイを外して奥を確認。
つかえているものの正体を知った瞬間、私は凍りついた。ぃや、頭の中で何かが溶けて、笑い崩れた。
野菜室の奥に、日本三名瀑の一つ「袋田の滝~冬のジオラマ」が出現したからだ。
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画像の滝は白いが、カレの作品は「霜」とは違う。透明で、扇状に裾野を延ばした、美しい滝だった。
冷凍室の小引き出しの無能ぶりを批判されたカレは、その腹いせに、せっせと滝をつくっていたのだ。
長い年月をかけ、丁寧にこしらえた純度100%の水の結晶は、非常に強固なものである。
ヤカンで沸かしたお湯をかけても、溶けやしないのである。永久凍土もまっつぁおなんである。

「頼んでもいない場所で、氷つくってんじゃないよッ!」
即刻クビにしたいところだが、そうもいかない。
電子レンジや洗濯機と違って、家庭になくてはならない必須アイテム、それがカレ。
価格、消費電力ともに、最高値の座を譲らないカレは、家庭の強い味方にして、家計にツライ敵。
滝のせいで野菜室がきちんと閉まらず、いかに電力代が嵩もうが、今、カレを解雇するわけにはいかない。

足元を見られている気がする。
出会った頃、さんざん扉でどついてきたのだって、きっとワザとだ。
いい奴ぶって、本当は無礼なだけだったのだ。


そんなカレの名は、慇懃無冷蔵庫之丞。

昭和の家電は良かった。ズングリムックリしてたって、頑固一徹、職人気質。
とにかく頑丈、ちょっとやそっとじゃ壊れなかった。。。









by vitaminminc | 2014-09-25 10:25 | 笑い | Comments(0)

麗しの添いネコ

昨日の輸液は上々だった。
1回針が抜けはしたものの、しっかり合計100ccの輸液に成功した。
ちょっとしたコツもつかんだ。
眠眠の我慢が限界に達するのは、当然後半戦。
なので、注射器交換後の時間を短縮する必要がある。
それで、これまでは50ccを入れた注射器を2本用意していたが、内容量を変更することにした。
前半用に最大量60cc、後半用に40ccを入れることにしたのだ。
さらに、注射針は、つまみ上げた皮膚の下の、空洞になった部分に刺すのだが、刺した後は、通常皮膚から手を放す。
しかし、私は皮膚をつまみ上げたまま輸液してみた。
なぜなら、眠眠はほかの猫に比べて、皮膚にあまり余裕がない。つまみあげるのにも苦労するくらいだ。
皮膚に余裕がないから、液体を注入されている間、違和感が気色悪いのではないだろうかと考えた。
それで、試しにつまみ上げたまま注入してみたところ、これが功を奏した。
身をよじる回数がが激減したのだ。
秋ナースは、こうして、微力ながらも日々進化している(と思っている)。

輸液後の眠眠は、充電が完了した機器のように、フル回転。
速攻水を飲み、マンマをカリカリ。
いいウンチも出る。

「輸液するとやっぱり体調がいいみたいだね」と嬉しそうにムスメが言う。
「でも、(発病)前みたく私の隣に寝てくれないんだよね・・・」と私がしょんびり言う。
「はっはっはっ、そりゃ嫌われても仕方ないよな」毒舌のムスコが遠慮なく言う。
「ああ、どうせ私は嫌われ者だよ、来る日も来る日も注射針を刺してるからぬぇぇ」
そう、眠眠は腎不全発病後、一度たりとも私の隣で眠ることがなくなった。真夏のクソ暑い熱帯夜でさえ
必ず隣に寝ていたというのに。
体調を崩してから、独りで寝たがるようになったのだ。

ところが、眠眠が隣に寝てくれなくなったことをぼやいた晩、眠眠がこっそり寝室に入って来た。
「あ! 眠眠!」
私が喜ぶと、眠眠はひらりとベッドに飛び乗って、私の隣にちんまりと丸まって寝た。久しぶりだった。
こうして眠眠は、私が読んでいた小説を閉じて、電気を消してからもずっと隣にいた。少なくとも私が意識をなくして完全に寝入るまでの間、ずっと隣で寝ていた。

翌朝(つまり今朝)5時に起床すると、眠眠はホールに置いてあるソーイング・テーブルの上で寝ていた。
私は悟った。
眠眠に添い寝してもらったのだと。
赤ちゃんネコの時から人と一緒に暮らしているのだ。絶対ヒトの言葉がわかっている。
ああ、私は病気の猫にまで気を遣わせているのか。
でも、嬉しかった。

余談だが、ムスコは一昨日も毒舌ぶりを発揮した。
もぐもぐとバナナを食べている私に向かって、こんなことを抜かしやがったのである。
「お。サマになってるぜ
でも、嬉しくねー!


by vitaminminc | 2014-09-16 16:56 | 生きもの | Comments(2)

100cc の、誘い水

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獣医さんに指導を仰ぎ、自宅で眠眠に輸液しております。
獣医さんではすんなり刺さる注射針が、なぜか自宅ではうまいこと刺さりません。
というより、獣医さんではじっとしている眠眠が、自宅では動いてしまうわけで。
ストレス軽減のため在宅輸液にしたわけですが、リラックスできることが裏目に出ています。
怖くて固まることがなくなった分、逃げる隙を窺うのです。
注射針を刺す時に、下手に躊躇してしまう私もいけない。
一気にプスッとやらないから、痛みに気づいてしまうんですね。

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注射する方もされる方も慣れていないから、もうてーへんです。
眠眠が逃げ出さないよう押さえてくれる係は、今のところムスコ。
輸液量は、100cc。50ccを2本です。
輸液三日目の本日、初めてしくじりました。
途中で注射器をつけかえる時に、眠眠の爪がムスコの肩に食い込み、さらに針が抜けてしまいました。
抜けたら刺せばいいんです。ムスコは続行を申し出てくれました。
でも、これ以上嫌がる眠眠に無理を強いるのは後々マズイと思い、50ccで断念しました。

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それにしても、輸液の効果は一目瞭然、すごいです。
枯れかけていた樹木の葉が、一気にみずみずしさを取り戻したかのようになります。
ごわごわしていた毛並みまでもが、ふわふわになります。
そして、誘い水のように、水をよく飲み、ゼロに近かった食欲が少し回復するのです。
辛そうに四肢を折り畳んだ箱座りは、手足を伸ばした寝姿に変わります。
話すこともしんどくて、無言になってしまった眠眠が、かつてのようによくしゃべります。
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腎不全なんてウソなんじゃないかと錯覚しそうになります。
でも、一日置きの輸液が一日置きに必要な理由を、嫌でも思い知らされます。
もう眠眠の身体は、自力では水分を補給することができないってことを。
良い状態が保たれるのは、輸液後せいぜい36時間。
私は今日も、動画サイトで猫の輸液シーンを繰り返し見て学習。
もっと上手に輸液してやれるようになりたい。
輸液されて一時潤う眠眠とは逆に、輸液するたびに私は大量の水分を放出します。
汗だくで、確実に100ccは失われています。

しかし、私の人生に、この上ない潤いを与えてくれているのも眠眠。

4枚目の写真は、輸液直後。
超不機嫌な面構えですが、体勢はなんとなく、くつろいで見えますよね。













by vitaminminc | 2014-09-14 22:22 | 生きもの | Comments(0)

ドレ耳ソラ耳

最近、「ババア」「ジジイ」と呼び合っている。
幸い、夫婦間での話ではない。私とムスコ(←16チャイ)の間でだ。
ムスコがふざけて私を「ババア」と呼ぶたび、怒りより笑いが勝つ。
なんなんだ、この笑わずにはいられない「ババア」の言葉の響き、そして魔力。
だからバランスを保つために、私もムスコのことを「ジジイ」と呼んでいる。
「え?」とフツーに返事をする。
呼ばれて笑って、呼んでも笑う。バカ親子である。

そんなババアとジジイの昨夜の会話。
ジ「あれ? 今日って10日じゃなかったっけ?」
バ「9日だよ。しっかりしなよ」
ジ「なんだ、このババア」
バ「なんだこのババアはないでしょ! しっかりしろと言ってあげただけなのに」
ジ「ハッ!? 俺は今、『なんだ、9日かぁ』って言ったんだけど?」
バ(←相当な笑い)
ジ「勝手に聞き間違えて、独りで盛り上がってんじゃねーよ」
バ「だっていつも、あんまりババア、ババアって言うから(笑)何でもそう聞こえちゃって(笑)」
ジ「ババア、しっかりしろよな」

by vitaminminc | 2014-09-10 08:08 | 笑い | Comments(0)
「腎臓病予備軍」といわれたのは、いったい何月のことだったろう。
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もともとお水を飲むのが大好きだったので、水を飲む量が増えたことや、それに伴い尿の量も増えていたことに関しては、あまりにも無頓着だった。
今までなったことのない便秘になったために、慌てて獣医に連れていったのだった。
それでも、この時点では検査の結果、「腎臓病予備軍」と診断されて、薬は出なかった。ただ、餌を腎臓病用フードに切り替えるようにと指導された。
先生は、眠眠(♂猫10才)の下腹部を触診した。
「まだ便が詰まっているほどではないから、このまま様子を見ましょう」
ほどなくして、心配していた便通もあった。まずそうながらも、腎臓サポート食をチビチビ食べてくれ、ほっとしていた。鰹節はもちろん、大好物のレタスも与えてはいけないと言われた。腎臓用の餌以外は一切ダメですと。

冷蔵庫を開けるたびに、レタスをほしがって飛んできた眠眠だったが、数えきれないくらい望みが叶えられないことを経験して、さすがに学習したらしい。
眠眠は、レタスをあきらめた。
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夏の暑さがこたえたものか、徐々に食欲が落ちていき、動作も緩慢になっていった。
家族みんなが「眠眠も年をとったなぁ」とつぶやいた。
そのうちに、血尿が出始めた。これはいかんと受診した。
6キロあった体重は、4.7キロまで減少していた。
「慢性腎臓病」と診断され、生涯飲ませ続けなくてはいけない腎臓病の薬(水薬)が出された。
水薬の名称は「セミントラ」という。トラ猫のみんみんと相性が良さそに思えたが、シリンジ(針無し注射器)を嫌がって飲んでくれない。仕方なく餌にかけて食べさせた。
血尿に関しては、腎臓病のほかに膀胱炎の可能性もあるので、採尿して持ってくるように言われた。

採尿など不可能だ。眠眠は、便秘時の排便はあらぬところで粗相することはあっても、オシッコは必ず紙砂入りのトイレでしかしたことがなかった。
トイレをとっぱらってオシッコを我慢させるのは酷だ。そこまでして採尿することができなかった。
そうこうしているうちに、「血が出ている!」というくらい、血尿の色が深刻になってきた。珍しく、尿がトイレからはみ出ていたので、すかさずスポイトで吸い取って、眠眠とオシッコを病院に運んだ。
眠眠の体重は、4.2キロに減っていた。
膀胱炎の薬と止血剤8日分が出た。こちらの二種類は錠剤だったので、飲ませるのに難儀した。

膀胱炎と止血剤を飲ませ始めてから6日が経過。眠眠は、まったく餌を口にしなくなった。水薬をかけるのを止めても、餌皿に近寄りもしなくなった。大好きだった水さえ飲まなくなった。
そして、飲まず食わずの状態で、黄色い胃液を何度も吐いた。
獣医で測った体重は、3.9キロ。
もともと大柄な子だったので、立ち姿は物干し竿に干したカーペットみたいだ。
涙なんか流すものか。一滴残らず呑み込んでやる。
錠剤で胃をやられたのかもしれない。血尿は治まったが、眠眠の消耗はあまりにも大きすぎた。
血液検査の結果は、数値だけで判断すると「末期」。あまりにも進行が早いことに先生も驚きを隠せず、猫白血病か猫エイズを疑って再検査となった。結果は共に陰性。白血病で亡くなったおてんば猫の茶尾に噛みつかれたり引っ掻かれたりしたにも関わらず、奇跡的に陰性。
なのに、「末期の腎不全」だなんて。入院した方がより良い治療を受けることは可能だが、最悪の場合入院中に容体が急変して、そのまま死んでしまうかもしれないなんて。
「通院します」
迷わず選択した。「治る病気なら入院させたいところですが、万が一の場合、家族の誰も看取ってあげられないというのは考えられません」

幸い眠眠は「輸液」により急場をしのぐことができた。
現在、週に2~3回、「輸液」のため通院している。
まったく食べられなかった餌も、日に大さじ1杯くらいなら食べられるようになった。
「輸液」後は、便通も一時的に回復する。新鮮な水もよく飲む。
「輸液」は、ヒトでいうところの「透析」を意味する。
腎臓が機能しなくなると、いくら水を飲んでも体内を素通りしてしまい、慢性的な脱水症状を引き起こす。体内に溜まった毒素を尿と一緒に排出できなくなるため、飲み喰いできなくなるほど具合が悪くなる──簡単に解釈すると、こういうことらしい。

獣医には言えないが、餌を替えた。腎臓用のまずい餌ではなく、高齢猫用の、とても小さい粒のフードにした。こちらに替えたことで、ようやく大さじ1杯とはいえ、食べてくれるようになったのだ。
ペースト状の餌は、一口舐めただけで、二度と口にしなかった。

餓死だけは、絶対に避けたい。

今でも、オレンジを目にすると、ひどく心が痛む。
末期がんで治る見込みのない父が、病床で「オレンジが食べたい」と何度も訴えたのに、点滴に影響するといけないからと、私は拒み続けた。
死んでしまってから、どれほど自分を責めたかわからない。
どうせ死んでしまうのなら、食べたいものを思う存分食べさせてあげればよかった、と。

批難されることは承知の上だ。おまえはろくでもない飼い主だとなじられることも。
きちんと腎臓病のフードを与えて、きちんと薬も飲ませて、定期的に輸液を続けることで、小さな命を延ばすことが可能だということは理解している。
けれど、腎臓サポートフードを、ドライタイプもペーストタイプも、まったく受けつけないのだ。少しずつでも自分で食べられるうちは、強制給餌はしたくない。

幸い、腎臓病の水薬は、餌にかけなくても、シリンジで直接口に入れることができるようになった。
手足を突っぱね、顔をそらして抵抗するだけの体力が、すでになくなったせいだ。
これほどまでに弱ってしまったけれど、眠眠はどこまでも気高い。
毎晩私のすぐ横で眠っていたくせに、今はホールでひっそりと眠りに就く。
一緒にずっと触れていたいけど、眠眠の本能を尊重して、ぐっと我慢している。
排尿に関してあれほど潔癖症だった眠眠が、トイレ付近の床で失禁を繰り返るようになった。
ボケたのではない。間に合わないのだ。
床に水溜りをこしらえるたびに、律儀に小さく鳴いて教える。とても切ない顔をする。

腎臓は、一度傷ついたら二度と治らない。あきれるくらいもろい臓器だ。
私の心臓も容易には治らない。父の死から干支が一回りしたけれど、オレンジを見るたび傷口が開く。

今さっき、眠眠が悲しそうな声で知らせにきた水溜りを拭きながら、決意した。
今日、輸液の帰りに、レタスを買って帰ろう。


眠眠に、レタスを食べさせてあげるんだ。
大好物のレタスを。
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by vitaminminc | 2014-09-08 13:22 | 生きもの | Comments(0)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by み茶ママ