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ゼロじゃなかった(コタロー退院)

 27日。ひたすら回復を祈りつつ、朝一で病院に連れてったコタロー。
 私の目の前で直ちに右腕に点滴器具を取り付けられたコタローは、そのままひょいっと抱っこされて病室に連れてかれた。コタローはおとなしいので、ネットやエリザベスカラーは不要。

 同じ日の夕刻。面会に訪れると、何がどうなったらこうなるんです?てな顔のコタローがうずくまっていた。
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 隣のケージの子が私の気配に興奮して鳴きっぱなしなので、早々に引き揚げた。もっと一緒に居たかったけど幸いなことに、とことん眠くなるのが点滴の魔力。コタローがうとうと眠ってくれたおかげで後ろ髪を引かれずに済んだ。
「ありがとうございました」
 帰ろうとしたら、先生からマッタがかかった。
 血液検査の結果が出ているので説明するとのこと。
 怖いこわいコワイ。耳を塞ぎたくなった。
 椅子に腰かけてドキドキして待っていると、先生が「正常!」と一言。
「あんなに悪かった数値、ほら、このようにほとんどすべて正常に戻ってます」
「え! ホントですか?」
 嬉しくて涙がじわ~~~~。
 目にハンカチを当てながら、「点滴の威力ですか?」と訊いた。
「う~~~ん。正直わからない。何かが原因で、一時的にひどくダメージを受けていたことは間違いないです」
 人間も発熱を伴うような重症の風邪をひくと、一気に腎・肝機能の数値が悪化したり、白血球が異常な数値を示すことがある。コタローもそうだったのだろうか。
 病名(急性腎不全)をつけざるを得ないほどの数値だっただけに、先生もキツネにつままれたような顔をしていた。それでも祝福の笑みを浮かべて、
「これなら明日には退院できます」と太鼓判を押してくれた。
 ただ、今一つ食欲が完全回復には至らないので、帰宅後もずっと食べられないようなら、自己免疫疾患が疑われるので、そっちの治療を試みましょうと言われた。
 熱なし、下痢なし、嘔吐なし。食欲なし。でも、おうちに戻ったら、食欲も戻るかも。

 28日夕刻。
 コタローを迎えに行った。スゴイ! 目に生気が!
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 やはり点滴は皮下注射と違う。血液に入ってダイレクトに身体中を巡るだけのことはある。
「うにゃにゃうにゃにゃ」
 とコタローはしきりに私に話しかけてきた。たぶん、なんでこんなとこに置いてくんだよーと文句を言っているのだろう。が、点滴はとことん眠くなる。文句を言いながら、大口を開けて欠伸を2度3度。
 ほかの子の診察を終えた先生自らコタローを診察室に運んでくれた。
 診察台の上で、点滴器具を取り外してもらう瞬間、コタローが暴れた。針を抜かれるまでおとなしくしてりゃいいものを、なまじ元気になったものだから。ちょいと流血(汗)。

 後部座席にコタローのキャリーバッグを乗せて帰宅。家に着いて車のドアを開けた途端、コタローが飛び出て焦った。
 キャリーバッグの閉め方が甘かったようで、元気になったコタローが中で動き回っているうちに開いてしまったらしい。
「コタちゃ~~~ん」
 と私はつとめてさりげなく、コタローが自由の身になっていることに気づかせないように、そっと玄関ドアを開けて、
「さあ、お入り~~~~、おうちだよ~~~~」
 と猫なで声でお誘いした。
 コタローは敷地内から路地に出ようとしかけ、足を止めた。
(あれ?)
 開け放したドアの向こうに、懐かしいコタローのおうちが両手を広げて出迎えていた。
(そうそう、こっちこっち)
 コタローが思い出したように、すっ飛んで家の中に飛び込んでいった。急いでドアを閉め、私は喜びに震えた。
 奇跡ってあるんだな。
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 先日ムスメと二人で、かつて我が家で暮らし、今は天国にいる猫やわんこのお墓参りをした。そこで今うちに暮らす猫たちの健康を祈念してきたのが、功を奏したに違いない。

 猫は、奇跡だ。奇跡の化身だ。
 会社の元同僚の実家で飼っていた猫も、13歳の時に慢性腎臓病と診断され、「もって3、4カ月」と言われたのに、20歳まで生きたそうだ。
 しかも、危篤状態に陥るたび輸液はしてもらったが、点滴入院は一度もしなかったという。
 さすがに肝硬変になった時は「もって3日」と言われ、家族みんなで見送るための心の準備をしていたところ、突然元気になってむしゃむしゃごはんを食べ、何事もなかったかのように天寿をまっとうしたという。
 この時は先生も「肝硬変はふつう治るわけないんだけどなあ」と驚きを通り越して呆れていたそうだ。

 猫という生き物にとっては、数値が示すものなど時として意味をなさないのかもしれない。自分が生きると思ったら生き続ける、そんなところが(病気に気づかないでいるところが)、ありそうな気がする。

 わずかではあるが、昨日よりも今日の方が食欲が出てきた。
 頑張って食べようね!
 ムスコが言っていた。
「コタローは、食べてる時に背中を撫でてやると、割と食べ続けるよ」
 体重を測ったら、入院前と同じく、まだ2700gのまま。
 元気に動き回っているせいだろう。
 頑張れ! 頑張れ!
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by vitaminminc | 2017-09-29 20:10 | 生きもの | Comments(4)

ゼロじゃない(コタロー入院)

輸液する前のコタロー
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居間の片隅でぐったり。餌も殆ど食べられなかった。


日曜日。午前中に輸液。晩のコタロー
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夕方、居間の片隅用にと買ったベッド。縁の部分が枕代わりになって、なかなか具合が良さそう。


月曜日。輸液翌日のコタロー
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階段をあがって、2階のホールに置いてあるソフトケージの屋根(ハンモック代わり)に上れた!
でも皮下注射をした痛みだろうか。目が死んでいる。発病前は、ここにいる時は、寝起きであってもいつも得意顔を見せていたのに(T_T)
夜半過ぎに、居間を歩き回ってリハビリ(?)に精を出していた健気なコタローとしばらく遊んだ。
嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らし、私の手を甘噛みした。だいぶ気分が良さそう。


火曜日。輸液後3日目のコタロー
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輸液した水分・栄養剤が、皮膚からじわじわ浸透して、ゆっくり全身に行き渡った頃。
右腕のむくみがなくなり、全身の痛みから解放されたようだ。わずかながら食欲も出てきた。
目に力あり。なんて可愛いんだろう。入院を決めた。

症状が悪化したからではなく、良くなったから入院させる勇気が湧いた。
今頃どうしているかな、コタロー。
診療時間内ならいつでも面会OKらしい。
場所見知りする猫にとって、入院は心的ダメージが大きいよね。
午後の診療が始まる16時頃、様子を見に行こう。迎えに来た!ってぬか喜びさせちゃうだろうけど。
コタロー。無遅刻無欠勤─鍵当番の社員待ちをするくらい早く出勤して、仕事には真面目に取り組んできたけれど、今朝、平気で嘘ついちゃった。
「すみません、だいぶ、体調が悪いので、本日、休ませて、いただきます」
「だいぶ」のあとに「コタローの」が抜けただけで、嘘とは言えないか。いやいや、かなり演技してたよな、声で。






最近のうずぴ
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コタローが口をつけなかった、ありとあらゆるフードをようやく食べるようになった。
警戒心が強いので、食べつけない物にはすぐに舌を出さない、都会育ちの箱入り娘。
ご覧ください、この、おろしたてのように真っ白い清潔な靴下を。ああ眩しい。

グローブ型ブラシにも慣れて、私がブラシを手にはめると必ず「きゃあ113.png」と叫んですっ飛んでくる。
「にゃあ」ではない。「きゃあ」。女子高生なもんで。
利口なくーちゃんは、私が部屋のドアを開けた時点ですでに「ブラッシングしてもらいます」態勢でスタンバっているから、うずぴはいつだって2番目。
でも、くーちゃんの横で、正座している私の膝に額をぐりぐり押し付けながら、まるで自分もブラッシングしてもらっているかのように(←エアブラッシング)背中の次は脇腹、そしてまた背中というふうに身体の向きを変えて身もだえする、JKうずぴ(笑)。



最近のくーちゃん
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コタローの食べ残しのみならず、それを拒否ったうずらの分まで残さずペロリ。
まあ、コタロー用のまんまだから微量ではあるのだけど。
おかげでますますにゃんこ先生(夏目友人帳)の体型に似てきた。小さなアンヨと丸いしっぽも。
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今年に入ってから、実は黒い毛に白髪と思しき白い毛が混じり始めた。
まさかまさか、推定より遥かに熟女ってこと? 那須高原で捕獲したそこのアナタ、白髪が混じってきたように見えるんですけど?

くーちゃんへのブラッシングは、力加減を誤ると速攻で噛まれるので、要注意。
「違うだろ!」程度な噛み方だけど、くーちゃんだっていつ力加減を誤るやもしれず。
くーちゃんは、うずぴのブラッシングを始めても、しばらくは「うずぴに飽きて、また私に戻るかも」てな体で受けの態勢でいるけれど、見切りをつけた途端、超クール。私の手の届かない場所までサッと移動。
そしてこちらを振り返る顔には「ふん!」と書いてある。いやホント。それ見て何度吹き出したことか。
食い意地は張っているけどプライドは富士の高嶺より高い。
歩いている後ろ姿の可愛さをお見せできないのが、ただただ残念!


 猫の腎不全にお詳しい方は、きっと「バカ! 一刻も早く点滴を受けさせんかい!」と歯ぎしりされていたことでしょう。
 いろいろな事情に邪魔されて、思考回路が遮断されたりするんであります。
 現にコタローを入院させて家に帰って来て、最初に何をしたか、考えたかというと、(居間からコタローが出て来ない、また体調が悪いんだろうか)てなもんです。探しましたよ、さっき自分で病院に連れてって入院させたばかりのコタローを。
 早く回復してくれないと本気で頭が壊れそう。
 
 急性腎不全は、程度にもよるけれど、初期の集中的点滴治療で【回復】する子もいるといいます。
 もちろん、治るわけではないとのこと。それでも中には回復した後、亡くなるまでの間、ずっと点滴や輸液に頼ることなく、セミントラの服用のみで普通に生きられた子もいたそうです。
 過剰な期待を抱かぬようエンジンブレーキは使用しつつ、ゼロじゃないなら前進するしかないでしょう。
 アクセルを踏まない足はない(なんだ、この日本語)。

 ゼロじゃないならば。





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by vitaminminc | 2017-09-27 12:58 | 生きもの | Comments(0)

水袋搭載

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 コタローの右腕の付け根の球状のコブは、本日たっぷり輸液してもらった証。
 元気がなくて食欲がなくて、どうしようもなくて、やむを得ず病院に連れて行った。
 輸液後なので表情が幾分柔らかだが、病院に連れて行くまでは目の光が消え失せて、素人目にもいかにも病猫にしか見えなかった。
 コタローを一目見るなり、先生も言った。
 「また悪化しちゃったようだね」
 と顔を曇らせた。
 本来なら入院させるレベル。嫌と言うほどわかっちゃいたけど、諸事情により拒否。入院ではなく輸液を希望した。

 慢性腎不全だった眠眠は、初めの頃は進行が緩やかで、即腎臓サポートフードに切り替えて、スタート時の輸液は確か2ヵ月に一度だった。そして検査の数値を見ながら、月に一度、半月に一度、というように徐々に回数が増えていき、通院代が嵩むので在宅輸液に切り替えたのだった。

「入院させる場合は、一週間はみてください」とコタローの先生が言った。「3日間で大体効果の善し悪しがわかります。個体差があるので、入院させたことで数値が下がる子が多いとはいえ、全然変わらない子もいます。中にはかえって数値が高くなってしまう子もいる。入院させる以上絶対治してくださいと言う人がいますが、正直無理です。ただ、3日間様子を見て、数値が変わらなかったり悪化するようであれば、(うちの治療方針としては)退院させます。急性だからといって腎不全が治るわけではないですからね」
 以上、あくまでも急性腎不全のケース。慢性腎不全は3日間で好転しなくても一週間続けることである程度は数値が下がることが多いという。


 私にお金の使い道に困るほどの余裕があれば、入院させていたのかな。
 でも、強烈に連れて帰りたかった。
 入院させて一時的に回復しても、いくらも経たないうちにすぐにまた、入院させる前以上に悪化してしまった眠眠のことが頭をよぎった。コタローの先生は、眠眠が入院した、別の病院の担当医とは全く違う。
 『入院させてあげないとかわいそう』というようなプレッシャーを与えたりしない。一通り詳しく説明した上で、飼い主に決めさせてくれる。

 強烈な拒絶反応を起こしながらも、結構悩んだ。次の患者さんが待っていることが気になったが、結果的にはもう一人の先生が後の患者さんを診ていて、私とコタローは午前の部の最後の患者になっていた。

 入院させて行う点滴は、文字通り血管に細い針を刺して1滴ずつゆっくり注入していくから痛みは少ないし、血液にのって体の隅々まで十分行き渡る利点がある。その一方、時間がかかるので、慣れない環境下に長時間身を置き、自由を奪われることによるストレスは免れない。
 入院させてかえって数値が悪化する場合があるのは、ストレスによるものだろう。高い医療費を支払った結果、かえって具合が悪くなるなんて、飼い主にとっては二重の苦しみだ。

 そして、ぶっとい針を皮膚にぶっ刺す輸液(皮下注射)は、短時間で大量の水分補給が可能であるが、皮膚から漏れ出てしまうことも少なくない。しかも痛みは点滴の比ではなく、かなり辛い。また、写真のように、輸液後浸透するまでの間、身体の一部に水分が集中し、膨れ上がった状態になる。

 輸液を終えて帰宅したコタローは、恐ろしい病院に連れていった悪役=私が近づいても逃げることなく、おとなしく撫でさせた。いいウンチも出た。家に帰れてホッとした表情を見せてくれた。
 
 今唯一の慰めは、セミントラ(腎臓病の水薬)をさほど抵抗されることなく、確実に飲ませられていることくらい。
 「急性」という言葉が頭についている病気の怖さを実感している。眠眠の時の、一体何倍の速さで進んでいるだろうか。眠眠の時でさえ、あれよあれよという間に悪化していった印象なのに。

 だからこそ一緒にいたい。毎日触れていたい。ゆとりのない者にはゆとりのない者なりの方法─ただひたすら愛情を注ぐ─で、コタローの病気と向き合っていくしかない。

 追伸:さきほどムスメと2人で、ペット霊園にお参りに行ってきた。納骨堂に眠る眠眠の遺骨の安置期限が今月いっぱいで切れるので、更新するか共同墓地に埋葬するかの返事がてら、納骨堂への最後のお参りに行って来た。
 亡くなってから一度更新して、1年間延長してもらっていたが、今回はマイ(享年18歳♀猫),ぽぽ(享年15歳♂犬),茶尾(享年3歳♀猫)が眠る共同墓地に、眠眠(享年10歳♂猫)も移してもらうことにした。
 眠眠はじめ共同墓地の面々に、冥福を祈るとともに、うずらとくーちゃんとコタローの健康を祈願してきた。

 霊園に出かける前に、庭でモフを見かけた。もっふもふの見事な毛並みを見て、ああ、元気でいるんだなと安心した。


 


 

 
 




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by vitaminminc | 2017-09-24 17:35 | 生きもの | Comments(2)

ラブレター

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 愛するみん子ちゃん

 お手紙嬉しく拝見しました。
 「はじめまして・・・」お手紙書くのは初めてよネー。自分乍ら筆不精だったなあと反省しております。
 七月十一日~十三日は本当にありがとう。幸せをしみじみ味わったせいか、あの日から夢見が善くなりました。
 毎晩、何故か? どうしてか? 大掃除して、せっせとコンクリートを磨いている夢ばかり見て、疲れて情けなくなっていました。
 ところがです。
 みん子ちゃん、孫みん(←ムスメの名)ちゃんがきてくれてから、夢が陰から陽にガラッと変身したのです。
 物事に積極的で明るく、美しい夢を見るようになりました。嬉しい嬉しい事です。
 ありがとう!
 今日は早速朝から鳥がゆ、昼は焼きビーフンを頂きました。美味しくて、ほっぺたが落ちそうです。
 では又、これからは、せっせとラブレターを書きたいと思っています。
 お体には充分気をつけて、皆さん、仲良く元気でお暮し下さい。
 
  九月十日                  みん子母
 みん子様


 先日、91歳の母から届いた書簡である。
 原文をそのまま転記したので、一部訂正あり。私とムスメが帰省したのは、7月ではない。8月11日~13日の誤り。

 母から手紙を受け取ったのは、本人が言うとおり「初めて」とは言わないまでも、年賀状を除いたら、母の娘となって以来、通算一、二通程度。
 敬老の日用に、レンジで加熱しただけで簡単に食べられる中華粥や焼きビーフンを贈ったのだが、その礼として手紙をしたためてくれた。

 亡父は結構筆まめな人で、字もなかなか達筆だった。母は文章を書くのが苦手で、自分があまり字がきれいでないことに劣等感を抱いていた。もっとも私が知る限り、母の字は決して下手などではなかった。小学校に入学した時、学用品に書いてくれた名前なんかも、むしろ「きれい」だった。
 なぜそんなに引け目を感じていたのかよくわからない。ただ、書き慣れた文字を書く父より劣ると自認していたのは確かだろう。
 
 働き盛りで多忙を極めていた40代~50代、母は毎晩寝る前のペン習字を欠かさなかった。ペン習字といっても倹約家の母のこと、日ペンの美子ちゃんみたいな通信教育を受けていたわけではない。
 どこで調達したやら、ひらがなのお手本のようなペラ紙を横に置いて、それを見ながら広告の裏や不要になった紙に書いたり、お手本を紙の下に敷いてなぞったりをひたすら繰り返していた。
 「お父さんの字はほら、一字一字が上手いわけじゃないのよ。字配りが良いのね」
 と、母はゴミ箱から拾いでもしたのか、父の書き損じをながめてしみじみ言ったものだ。
 絵心もあった父は、字に置いてもバランス感覚に優れていたのかもしれない。それに比べて母の字は、一字一字は何年もペン習字を続けていただけにきれいなのだが、文にすると少なからず稚拙な印象を受けた。
 (ひぃぃ。PCが固まって編集機能が無効になってしまい、急遽スマホにて続きをしたためておりますです)
 母の字は、几帳面なくらい、一字一字がすべて同じ大きさで、それが敗因だったように思う。
 文(ふみ)を書くのが苦手だから字がぎこちないのか、字がぎこちないから文を書く気が失せるのか。
 結局、何年も何年も独学で続けたペン習字の成果は、生かされることなく幕を閉じたのだった。

 ここ3年くらいの間に母の聴力は著しく衰えてしまった。電話をかけても会話にならないのは日常茶飯事。最近じゃその電話の呼び出し音も聞こえないらしく、いつかけても出ないので、2階に同居している兄に母の安否を問う始末。
 私は父に似て筆まめな方なので、母の日以降はもっぱら電話ではなく手紙を書くようにしている。
 ある日、私はふと疑問を覚えた。私だけが手紙を書いて、母が「手紙着いたわ」と電話を寄越す。その電話に私が何を言おうが母の耳には聞き取れない。「ごめんなさいね、何を言ってるか聞こえなくて。でもお手紙嬉しかった」と母が締め括る。
 これではキャッチボールになっていない。頑なに返事の手紙を寄越そうとしないのは、握力が弱っていてペンが握れないからなのだろうか。それを確かめる意味もあって、私は手紙に書いた。
 「たまにはお手紙くださいな。昔、生欠伸を噛み殺しながら、あんなに毎晩ペン習字を続けていたじゃありませんか。勿体ないですよ」
 そのあと受けたのが、電話ではなく冒頭の手紙だ。
 驚いた。思っていたよりずっと筆跡も確かで、内容もしっかりしているではないか。91歳が書いたとは思えない。
 ムスメも同様の反応。
 「ご高齢の顧客の中にはペンさえ握れなくなってる方もいるからね。おばあちゃん凄い。若いね!」
 ムスコにも見せてみた。
 「まあ。なんて綺麗な字なのでしょう」⬅ムスコはクソ汚い悪筆。
 母上。貴女は私にラブレターを書くために、毎晩あんなに一生懸命ペン字を習っていたのでしょう。
 貴女の字は、かつて父が書いていた、伸び伸びとした字とは違います。どこか慎ましやかで、少しぎこちないれど、私の目には相変わらず綺麗。
 とてもとても懐かしい字です。またお手紙ください。
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by vitaminminc | 2017-09-18 12:29 | 人間 | Comments(0)

仙猫コタロー(追伸あり)

コタローが一日に口にする食べ物は、ちゅ~るなら1本弱。仙人ぃゃ仙猫か。
頼みの綱のちゅ~るだが、最近これもあまり好まなくなってしまった。

あるいは、ウエットタイプの鶏ササミ・ゼリー仕立て。
これの、ゼリーの部分のみ(オイ)。

殆ど食べてくれない日は、水に溶いた粉末カリウムをシリンジで与える。
栄養失調になると、カリウムが不足して吐きやすくなるという。
これは、眠眠を介護している時に得た知識。今そんなことになったら即脱水症状だ。

こんなコタローにも、まるで奇跡のような日が訪れたりする。
何が原因で体調が良いのやら。
見当もつかないが、朝から元気な鳴き声が響く。
発病前に叫んでいた、あのヤンチャな雄たけびだ。

「なになに、どうしたの?」
嬉しくてコタローを、ガリガリで綿のように軽いコタローを抱き上げる。
クネクネもがく。やっぱり元気。ゆうべだってろくに食べられなかったのに。
昨夜、綿が飛び出た蹴りぐるみを繕ってあげたせいなのか? 巨大エビにタックルして蹴り蹴りしている!
久しぶりに見たぁ~、コタローがじゃれつく光景~。

あまりにも食べないので、いろんな種類のフードを集めて、プラBOXに入れてある。
「なにか食べられそう?」
コタローはBOXの中に丸い頭を突っ込む。いちいち可愛い。
ふんふんと中を調べ、金色に輝くスティック状の袋を口にくわえて取り出す。

「これ食べるの?」
床に置いて私を見上げている。光物に反応しておもちゃにするなら、自分で投げ飛ばしてるはず。

「そうかそうか、食べるのね」
ちょっと前に与えた時には見向きもしなかったけど、今日は食べる気らしい。
見ただけでウッとならないよう、大匙すり切り1杯ほどを上品に皿に盛る。

カリカリカリカリ・・・嗚呼、久しぶりに聴く快音。なんて健康的な音色でしょう。
私は喜びに震えながら、いつでもおかわりできるよう、小袋を手に見守る。
しかし、カリカリいう音は1分で途絶えてしまった。
皿を見ると、半分残ったまま。

(ちょっと疲れちゃったボク)というように、コタローはこれまた珍しく、階段をのぼっていった。
見に行くと、ソフトケージの屋根をハンモック代わりにしていた。
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うん、それでも今日はだいぶ体調がいいみたい。目にも光が宿っている。

コタローは先に述べたように、どことなく犬っぽいところがある。
実は、セミントラという水薬が割と好き。
箱をくわえて来て「飲ませて」とせがむことがある。
味が好きなのか、飲んだ後に気分がよくなるのを学習したのか。

先日、「セミントラの飲ませ方」をムスコに伝授した。
「こうやって左腕で抱きかかえて保定、左手で顔を固定する」
「うん」
「で、顔の横から─牙の後ろのとこに小さなスペースがあるから、そこにシリンジの先をちょっと入れて、ちょっと押す。やってみて」
「─あれ?」
コタローの顎に水分が!
「ちょっと、絶対こぼさないでよ! これ高いんだから」(←このように失敗すると思い、練習では中身は水)
「高いの?」
「いや、値段だけじゃなくて、1滴1滴がコタローにとって大事なの!」
「こんな感じ?」
「そう。一気に押したらむせちゃうから、少しずつだよ。一度嫌にさせちゃうと後々大変だから」
「わかったわかった」
コタローはすでに十分嫌気がさした模様。


上半身と下半身がスクリュー。変わった寝相のコタロー(このまま爆睡することもしょっちゅう)
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冷感タイプの敷物の上で箱座りするコタロー(痩せてるくせにかなり暑がり)
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ブログ更新中、背後のベッドに寝に来たコタロー。痩せっぽちすぎて1才に見えない。まるで子猫。毛艶いと悪し(涙)
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昨日の朝、1年以上振りに庭に現れたモフ! しゃがれ声といい三黄眼といい、相変わらずデビルチックで愛らしい(笑)
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ついでに、襲撃される恐れがあったのでシャッターこそ切れなかったが、隣家の屋根の上に二羽のカラス! ひぃぃ、こっちをガン見!
ここに来るとなんか食うもんあるかもかぁ~~~ カラスに知れてもた。
コタローの食べ残し、外猫ちゃんが来ていないにも関わらず餌皿に入れておくのは厳禁ネ。

追伸:朝からろくすっぽ食べていないので、さきほど(10時半頃)鶏ササミゼリー仕立てをあげたが、案の定一口も食べない。
なのに、フードBOXの真ん前に座ってこっちを見上げている。
「ほかに食べたいものがあるの?」
BOXの蓋を開けてみた。
するとなんと、下の方に入れてあったサーモンのゼリー仕立てのパウチを、わざわざ上のものをどかして咥え上げたではないか。

おもちゃをくわえて来てご主人様の足元に置き、「さあ、遊びましょう!」とアピールする猫ちゃんの動画はよく見る。
コタローは、本当にコレを選んだのだろうか? 食べるために?
いまだ半信半疑で、さっき鶏ササミを入れたばかりの同じ皿に、サーモンを入れてみた。
すると、鶏ササミは除けて、本当に自分で選んだサーモンだけをわずかながら食べた。平らげられないのが悲しいけど。

以前はサーモンを食べないからササミにしていたのだが、その時々によって食べられるものが変わるらしい。
一見わがままなようだけど、発病するまでは好き嫌いなく、与えられたものを食べていた。
なので、今は本人(猫)の意思を尊重するしかない。
それで少しでも食べてくれるなら、私も安心できるというもの。

それにしても、コタローはどうやって中身とパッケージを結び付けているのだろう?
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by vitaminminc | 2017-09-13 09:38 | 生きもの | Comments(2)