え~~~、ここらで景気づけに、昨晩の超不毛な親子の会話を再現しますです。

♠大馬鹿ムスコ
❤ドアホ母(me)

♠「あ~~腹減った!なんか喰うもんない?」
❤「え~~~、今夕飯食べたばかりじゃない」
注)母(←私だ)は重症の眠眠ロスで食事をつくる気力がわかず、この日はスーパーで買った寿司、大根と胡瓜のサラダ(←適当に切って梅こぶ茶で和えただけ)、タケノコの味噌汁のみ。
♠「足りねんだよ。なんか喰うもんくれ」
❤「タケノコご飯炊いた(←明朝用)から、なんならそれ食べてもいいよ」
♠「う~~~ん。なんか違うな」
❤「何がどう違うって!?」
♠「いや、何となく」
❤「うるさいなぁ、もう! 邪魔だからあっち行って!」
♠「あれ? それどうするつもり?」
注)母は残ったみそ汁の中からタケノコだけを取り出すと、小鉢に入れ始めた。
♠「おい、何をやってるのかと聞いている」
❤「あんたの明日のお弁当用に取り分けてるの!」
♠「味噌汁に入ってたタケノコを? 汁が出ちゃうじゃないか」
❤「(汁は)レンジで飛ばすから大丈夫です」
♠「やめてくれよ、なんでわざわざ水分を蒸発させて不味くしたのを入れるんだよ?」
❤「汁がこぼれると困るって、ムスコ自分で言ったじゃない。どいてよ、冷蔵庫開けるんだから」
注)母、小鉢にラップをかけ、冷蔵庫にしまう。
♠「おい。今、人の話、聞いてた? 俺は、タケノコを、弁当に入れないでくれ、って頼んだんだよ?」
❤「いいじゃない、たまには旬のものを入れたって」
♠「なんでそんなにこだわるの? 食べるのは俺だよ? その俺が入れないでくれって言ってんだよ?」
❤「作ってもらっているくせに、なんでそんなにエラソーなのよ!」
♠「はい、はい」
❤「おかずが弁当箱の中で寄っちゃわないように、一品でも多く入れたいの!」
♠「どーせ蓋開けりゃ毎日寄ってるって。1つくらい足したって変わんねーよ」
❤「入れさせてくれたっていいじゃない! 旬のものを食べさせたいという親心がわがんねが?」
♠「いつもの冷食でいいよ、それと変な卵焼きで」
❤「嫌なこと言うねぇ。だからこそ入れたいんです。ムスコ、タケノコ好きでしょ?」
♠「好きだよ? だからわざわざ干からびさせるなと。おい、さっきのヤツ何処にしまった?」
❤「ちょ・・・何すんのよ、レンジで温めるだけ、干からびません! やめなさいって、冷蔵庫の扉を長いこと開けてちゃダメ!」
♠「俺ぁ嫌だ。乾いたの喰うぐらいなら、今喰ってやる!」
❤「あ!!」
注)ムスコ、小鉢のラップをひっぺがすが早いか手掴みでタケノコを口に放りこむと、モグモグしながら不敵な笑みを浮かべる。
 
(ーー;)大体いつもこんな調子。みなさん、この↑↑↑会話がいかに馬鹿げてるかおわかりですね? 
まぁ大半は私がですけど。
旬のものを弁当のおかずに加える加えないでギャーギャー言い争っていましたが、どの時点でヌケ落ちたものやら──翌朝お弁当に詰めるゴハンが、タケノコの炊きこみご飯だってこと。
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# by vitaminminc | 2015-04-28 15:04 | 笑い | Comments(0)

ジャンプ!

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 食事をとっている間も、洗濯物を干している間にも、眠眠がひとりで逝ってしまうんじゃないかと気が気でなかった。
 いっそベビースリングで、わが身に眠眠を括りつけておきたいと思った。
 主婦なので、最低限の家事はやらないといけない。
 生きているので、喰うことも寝ることも放棄するわけにいかない。
 どうかどうか、ひとりで逝かないでと願う日々。

 病魔との闘いで、険しい形相になっていた眠眠だが、昨夜、ほんの束の間、久し振りに穏やかな表情を見せてくれた。顔だけ見ていると、末期の腎臓病だなんて、何かの悪い冗談だよと思えた。
 まるでこの時だけ、病魔が短い休息をとったみたいに。
 かわいい、あどけない眠眠。私の宝もの。
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 今朝7時過ぎ。部活に行くムスコに、眠眠を撫でてやってくれと伝えた。もう長くないからと。
 「もう、瞳が動いてなかったよ」
 私の部屋で長いこと眠眠を見ていたムスコが、出がけに言った。
 「ほとんどまばたきしていない。時々ピクッとするくらいで。あれじゃ目が渇いちゃうよ」
 じっと眠眠の顔を覗き込んでいたらしい。

 8時台になると、腹の上下動が短息呼吸に変わった。閉じた口にシリンジを入れ、数滴水を与えた。
一回呑み込んだが、それ以上は口の端から流れ出てしまった。
 汚れた口のまわりを拭いてやると、鬱陶しそうに顔をそむけた。
 それから私の手の平に頭を預けて、遥か遠くを見つめていた。
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 ベランダで洗濯物を干した後、部屋に戻って眠眠の名を呼んだ。
 昨日まで見せてくれた、しっぽによる返事が、今日はもう見られない。
 と、突然、眠眠が、起き上がるようなそぶりを見せた。
 違う、もがいているんだ!
 私は眠眠を抱きあげ、自分が寝そべると、胸の上でそっと眠眠を抱きしめた。
 耳の内側が、自分の心臓の鼓動でどくんどくん揺さぶられる。
 大声でムスメを呼んだ。寝ているのか、なかなか来ない。
 「眠眠が、眠眠が、逝っちゃうよ!」
 ようやくムスメが部屋にきた。
 それまでに眠眠は、三回くらい四肢をピンと引き攣らせ、二度低い慟哭をあげていた。
 「痙攣みたいの起こしてて──」
 だが、ムスメが来てからは、一度両足を真っ直ぐに伸ばし、何かをぐっと掴むみたいに手の平を目いっぱい広げたかと思うと、やがてスッと静止した。

 「眠眠?」

 まだ温かい。まだ柔らかい。
 腹の上下動が止まっているのを認めても、それでもまだ眠眠が生きているのか死んでいるのかわからなかった。

 最期のあれは、ジャンプして、虹の橋を掴んだ瞬間だろう。

 オムツを外すと、おしりの周りに、最期の力を振り絞った痕跡があった。
 ウエットティッシュで、一生懸命眠眠のプライドを守った。
 眠眠の腹の毛並みが、私の大粒の涙を、いくつもいくつも受け止めていた。

 眠眠のおしりを拭いたウエットティッシュと、私とムスメのハナミズと涙でウエットになったティッシュの山ができた。

    2015年4月25日、午前10時。
     眠眠、永眠。享年10歳。

 ムスメは今日、昼過ぎから出かけなければならない用があった。
 孝行者の眠眠は、私が休みの日を選び、ムスメが家にいる時間を選んで別れを告げてくれた。

 どんままさんに教えてもらった、ペットのための出張火葬を執り行ってくれる会社に予約の電話をした。
 明日15時。眠眠に恥ずかしくないよう、しっかり仕事に出て、それから眠眠を送るつもりだ。

 花屋さんに行って、可愛いいブーケをつくってもらう。
 「明るい茶トラの猫なので、黄色をベースにつくってください」
 「10歳ですか。それは、早かったですね」
 「早かったです。腎臓病で──(嗚咽)」
 眠眠は7月生まれだ。
 「そこのひまわりも、一緒に入れてください」
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やさしくて、大きな大きなネコちゃんでした。。。
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励ましてくださったみなさまに、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。





 

 
 



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# by vitaminminc | 2015-04-25 14:55 | Comments(4)

生き場所

  破れたソファーに座って
  生き場所を探す猫みたいに
  爪で 皮膚で 指で 手の平で
  腕で 肩で
  胸で君を確かめてた
  今日も生きてるかを
  最高な世界へ 最高な世界へ── (THE YELLOW MONKEY #BRILLIANT WORLD)


 仕事から戻って眠眠の様子を見にいくと、眠眠は床でへばっていた。
 床のそこかしこに、黒い墨をなすりつけたような跡があった。
 眠眠のウンチだ。
 ペースト状の餌に、墨のサプリを混ぜて与えている。
 身体に溜まった毒素を墨に吸着させ、ウンチと一緒に排出させるのだ。
 よく見たら、ベッドの上の毛布にも、間に合わなかった墨が付着していた。

 餌と呼べるような量を口にしていない。
 昨日やっと歯茎に塗りつけられた量なんて、紅筆にとったリップクリーム程度だ。
 トイレの中にも、猫砂1粒ほどの墨の塊があった。
 ずいぶん苦労して、あちこち洩らしながら、目的地まで辿り着いたようだ。
 なんて偉いんだろう。

 昨夜から今朝にかけて、40分間隔で鳴いて起こされた。新生児の授乳よりしんどい。
 疲れ果てた私は、とうとう鳴き声に気づかずに、深く寝入ってしまった。
 突然、何かが落ちる音で目が覚めた。
 眠眠が、私を乗り越えて、ベッドから床に落ちたのだ。
 本当は、降りたつもりなのだろう。
 けど、もう踏ん張る力が残っていないから、結果的に落下した。

 私は飛び起きて、眠眠を抱きしめた。
 ごめんね、ごめんねと何度も謝った。
 眠眠が落ちないように、要塞となって寝ていたくせに、まったく気付けなかった。
 骨と皮だけの身体だ。
 痛かったろうに。

 今日も床にへばっていたところをみると、また落ちたのだろうか。
 今朝は一応、床にクッション材を敷いておいたけど。
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 どんままさんの素晴らしい知恵を拝借して、子ども用プールも取り寄せた。
 完全防水の簡易寝床である。
 ふらふらになって壁にぶつかったとしても、これなら安心、痛くない。
 試しに寝かせてみたけれど、這い出ようとして、空気入りの壁に爪を立てる。
 ベッドだと落ちたら危ないのに、上で寝たいらしい。
 よし、プールはいよいよ動けなくなった時のために、準備だけにしておこう。

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 眠眠に、紙おむつを穿かせた。嫌がる体力も残っていないから、されるがままだ。
 明日は仕事が休める。一日そばにいてあげられる。
 オシッコも出なくなってきた。
 知っている。こうなると、もうお別れが近いって。
 そういえば、声も出なくなった。
 鳴らない管楽器のように、空気だけが漏れる。
 でも、眠眠は腹を膨らませ、小さな口を開き、必死に訴えている。
 つらいんだよね。

 ふと、横たわる眠眠を見て、いっそ息が止まっていたらと願う。
 だって、そうだとしたら、苦しまずに逝ったことになるから。
 痩せこけた腹が、かすかに上下している。
 なんてことを考えてしまうのだろう。
 でも、本当に、少しでも楽に逝かせてあげたい。それだけが願いだ。
 もう長いことずっと、ずーっと気持ち悪いことに耐えてきたのだから。

 神様。眠眠が、どうか少しでも苦しまずに神様のもとに行けますように──
 

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# by vitaminminc | 2015-04-24 18:40 | Comments(0)

茶尾ぷ~降臨?

おそらく、その気持ち悪さは船底に押し込められて荒波を渡っている時の激烈な船酔い、あるいは入院レベルの重度のツワリだろう。

辛さ、苦しさから夜中に何度も大声で鳴く。そんな眠眠にしてやれるのは、シリンジで水を与えたり、身体を─いや、もはや身などついちゃいないので、骨格をやさしくさすったりくらい。寝不足状態が続いている。

なんとかしてやること自体が延命措置(苦しみの引き延ばし)でしかない、末期の腎臓病。ペースト状の餌を口内に塗るのもためらわれる。実際、ひどく嫌がる。吐き気と闘っているのに、強制給餌なのだから。

好物のおかかも拒否する。餌だけではない。あんなに好きだった水を飲むことさえ、もう自分からはしなくなった。

眠眠は、声変わりした。鳴き過ぎて声がしゃがれたのとは逆で。子猫のときからハスキーボイスだったのだが、きれいな澄んだハイトーンに変わった。

まるで6年ほど前に他界した、妹分の茶尾が鳴いているみたいだ。
そういえば、顔つきもだいぶ変わった。
「わぁ、眠眠、ずいぶん目がつり上がっちゃったね」
病気の苦しみからだろうか、すっかり面変わりした眠眠を見て、ムスメもびっくりしていた。
その顔までもが、なんだか茶尾に似てきた。どんぐりまなこの眠眠と違って、茶尾は女狐顔だった。
身体の重さも茶尾ぷ~並み。
もしかしたら、弱っている眠眠の肉体に茶尾が入り込んだのではないだろうか─などとバカなことを考えてしまう。茶尾は死んでからも何度か家に遊びに来たことがあるので、密かに本気でそんなことを想う。

茶尾ぷ~、頼むよ。アニキ分の眠眠を、早く苦しみの淵から救ってあげてよ。
いっつもキミのわがままを、あんなに穏やかにやさしく受け入れてくれたアニキなんだよ。
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      窓辺に行きたがったが、自分じゃもう上がれない。抱っこして、セッティング
             剥製の虎の敷物のように薄い身体。痛々しい。
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           病魔との死闘の末、すっかり目がつり上がってしまった。
           茶尾、もしかして、おまえが一緒に闘ってくれているの?




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# by vitaminminc | 2015-04-23 18:38 | Comments(0)

転院顛末の補足



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B病院に入院中の眠眠。2/13に見舞いに行った時の様子。
前回の記事でアップした、入院二日目とはかなり違った印象。
そう、入院三日目の眠眠は、明らかに元気がなかった。
前日にはなかった、眠眠のキャリーに入れてあった毛布にくるまっている。
若い甲先生の説明によると、朝検温したら、眠眠の体温が猫の平熱を下回っていたとのこと。
「下にホットカーペットを敷いてからは、だいぶ平熱に近くなりました」
2月である。病気でやせ細った猫である。
夜間無人になる病院で、日割り計算一泊30000円。
はじめから、ホットカーペットを敷いてあげてくれっつんだよ!

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3月10日撮影。やせっぽちの眠眠。通院途中の車内にて。
病院に行く時に欠かせないキャリー(下)と一緒に同乗しているのに、なぜかイキイキ。
それは「自由」に動き回れるから!

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4月6日。経営手腕に使う腕なし=腕はすべて動物のために。
A医院の凄腕先生のもとへ。
食欲不振とヨダレの原因である、「口内炎」を治療してもらう。
医師「口内炎を治す薬は、確実に腎臓を破壊します」
私「では、どうすれば・・・?」
医師「痛くて食べられないのでは辛い。私だったら『今』を優先させます」
私「先生、口内炎を治してあげてください」
にっこり微笑んだ凄腕先生は、いくつかのお薬を調合して、眠眠に注射してくれた。
医師「好きなものを食べさせてあげてください」
ほぼ壊滅状態の腎臓保全よりも、「今」痛くてたまらない口内炎を治療。
しばし好物のかつお節を賞味。


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猫にあるまじき、悲しき「クビレ」
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かつてはこんなにふっくらしていたのに。


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倒れそうな足どりで、それでもトイレに向かう。
健気すぎる。
用を足してからは、私が抱きかかえて寝床へ。
もう、スポーツタオルくらいの重さしかない。
最盛期は6キロを超えていて、アメショーよりもでかかったのに。。。


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直近の眠眠
明日はお仕事なんだよ。
昼間、付き添ってあげられないんだよ。
つらいよ、ホントにもう、とってもさ。
まだ何処にもいっちゃダメだよ。
















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# by vitaminminc | 2015-04-22 11:07 | Comments(3)

二転院三転院

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 上の写真は、2月12日に、B病院に入院中の眠眠を見舞った時のもの。入院二日目。腎臓の数値が悪化して食欲が失せたため、緊急入院を勧められた。24時間体制で血管点滴を行うこと三泊四日。結果、一時的に回復した。
 といっても、かつてのように元気になったわけではない。毎晩の在宅皮下点滴は続き、毒素の排出を助ける2種類のサプリを飲ませる日々。食欲が戻ったとはいえ、発病前みたいに量を食べられるわけではない。減った体重が300g増えたのも束の間。やがて食欲は徐々に落ちていき、サプリの1つを飲むのをひどく嫌がるようになった。
 退院してから、2ヵ月もたなかった。素人目に見ても、2月の入院前より更に具合が悪そうだ。病院に連れて行けば、前回のように即日入院となることは必至。それを覚悟の上で身支度を整え、担当医がいることを確かめるために、病院のホームページを開いた。
 その日は、眠眠を担当した甲先生(若い女医)と乙先生(ベテランの女医)両名の出勤日に当たっていた。しばし頭を抱え込む。
 というのも、はじめに眠眠を担当したのは若い甲先生だったのだが、一度出勤日を見間違えて、甲先生が不在の日に診てくれたのが、ベテランの乙先生。治療上、両先生の説明が食い違っていることがわかり、私は乙先生の言い分に従うことにした。甲先生は、かなり早い時点から、眠眠の症状を見ながらというよりは、段階的に輸液量を増やしていき、その都度増量の善し悪しを判断するため、一週間後に血液検査をするという計画だった。その増量が私には「一気に増やす」印象で、100ml⇒150mlに増やしましょうと言われた時には、怖くなって抵抗してしまい、「末期になると320ml(←これではもはや猫というより水!)点滴する子もいますよ」という説明を押しのけ、「せめて140mlで試したい」と主張した。
 乙先生に診てもらった時点で、眠眠の輸液量は140ml。若い甲先生には、近いうちに160mlに増やしましょうと言われていたので、乙先生に、「そろそろ160mlにした方がいいでしょうか?」と尋ねると、ベテランの乙先生の回答は意外なものだった。因みに、カルテには160mlの件は記入されていなかったと見える。
「いえ。無暗に増やしても、循環器系に影響して心臓に負担がかかりますから。今140ml点滴しているのなら、そのままでいいでしょう」
 乙先生のこの一言で、私は甲先生から乙先生に鞍替えを決めた。甲先生の治療計画に関しては、何だか告げ口するようで気がひけたので、敢えて乙先生には伝えなかった。
 指名して、乙先生に二回目の診察をしてもらった日、眠眠の腎臓は、2月の入院前と同様の数値を示していた。それでも乙先生は、直ちに入院を示唆することはなかった。そこで私は、乙先生に正直に家計の事情を訴えた。ペット保険に加入していないこと。まだまだニンゲンのムスコの学費がかかること。夜勤も始めたが、点滴セットとサプリ代で毎月6万円の出費は、相当深刻であることなど。
「お子さんは、高校生くらいですか?」
「はぃ」
「(ペットの)保険も、発病してからだと人間のと同様、入れませんからねぇ──」
 乙先生は言葉少なに心からの理解を示してくれた。結局、入院を勧めることもなく、また点滴の輸液量を増やすでもなく、栄養剤入りの点滴を(いちいち噛まれ防止のカラーをつける→)甲先生よりもはるかに手際よく済ませると、足りない保水液やサプリ、注射セットを確認して用意してくれた。乙先生の方針は、あくまでも眠眠の具合を見ながら、対処療法的措置を行っていくというものだった。

 だから今回、甲先生が不在で乙先生だけが都合良く出ている日に当たっていたら、私はB病院に眠眠を連れて行き、さすがに今回は入院を提案され、それに応じていたことだろう。
 でも、両名の診療日ということから、私は二の足を踏んだのだ。B病院は、最新の医療設備を誇る大きな病院で、獣医師を何人も抱えている。また、案内専門が1人、受付専門の女性は常に2人いる。
 獣医師を指名できるというのは患者側にはありがたいシステムだが、途中で指名を替えた場合、両医師が鉢合わせるようなシーンの気まずさといったらない。
 診察だけならまったく問題ないが、入院となると話は別だ。もしも入院中、乙先生が不在の日があったら・・・。はたして甲先生は快く眠眠の世話をしてくれるだろうか。
 ただでさえ精神的にいっぱいいっぱいなのだ。余計な気疲れはしたくない。何もかも面倒になった私は、B病院を切り捨てた。そして、以前お世話になったA医院に連れて行くことにした。

 A医院は、隣町にある。大先生と弟子の女医さんの2人だけで切り盛りしている小さなペット診療所だ。採算を度外視しした超良心的診療で知られている。
 私はこの小さい医院で、マイ(♀猫・享年18歳・死因:ほぼ老衰)、ぽぽ(♀犬・享年15歳。死因・悪性リンパ腫)、茶尾(♀猫・享年3歳・死因:猫白血病)の3つの命を見守っていただいた。       先生は凄腕で、入院が当たり前の手術でも、可能な限り日帰りさせてくれることで定評がある。私の子たちは手術は受けていない。先生は、治る病気や怪我以外はメスを使わない。極力日帰りさせる理由は、患者の精神的ストレスを出来得る限り軽減させたいという一心から。
 そんなにいい先生なら、なぜ発病当初からそこに行かなかったのか? 話は長くなるが、理由はただ1つ。A医院は残念なことに、まあ、いろいろ考えあってのことと推測されるが、ノラ猫ちゃんの避妊手術の協力医ではない。しばらくの間、家の周囲のノラにゃんに避妊手術を受けさせることに奔走していた私は、費用の面で折り合いがつかず、二匹目からは市内のC病院を利用するようになった。何匹かその病院に連れていって、相場の半額以下の医療費で避妊手術を施してもらったことから、「義理立て」したのだ。
 しかし、当時私が心配していた眠眠の「血尿」とは別に、血液検査の結果、「腎臓病になっている」と言われ、その説明が今思うとかなり不明瞭で、病気に対してまったく正しく理解できなかった。コミショー丸出しの先生が口にしたことは、入院すればあるいは良くなる可能性はあるが、ここまで悪化しているといつ死んでもおかしくない。もしかしたら入院中に死んでしまうかもしれない云々。
 こんなことを突然言われて、誰が眠眠を病院に置いて行けよう。よくわからないまま点滴をしてもらった眠眠は、血尿のため止血剤を処方されたが、胃をやられて飲ませた途端激しく嘔吐。しかも猫相手に採尿など不可能。四六時中はりついていられる専業主婦ならまだしも、打つ手がないままいたずらに日が過ぎるばかりだった。
 やがて痛みと頻尿でトイレが間に合わない状態になり、床に失禁。それをスポイトで吸引して病院に持参したが、きちんと検査してもらいたいので、「こちらで採尿してはもらえませんか?」と尋ねたところ、新入りの女医さんがいきなり眠眠の膀胱をひねり上げ、眠眠は痛みでもんどりうって唸り声をあげた。しかも、尿は一滴も採れず、点滴の針が抜け落ち、私のバッグが水をかぶる始末。
 頭にきた私は、これを機に在宅点滴に切り替えた。しかし、この期に及んでも、なお「腎臓病」より「血尿の痛み」の方に危機感を募らせていた私は、確実に「採尿」して検査をしてくれると知り、B病院に替えたのだった。
 設備が整っているだけあって、眠眠は即日ありとあらゆる検査を受けた。そしてその結果と今後の治療方針について詳しく説明された。エコー画像には、いびつなかたちに歪んだ眠眠の腎臓と膀胱、尿管が浮かび上がり、そこかしこに点在して血尿の原因となっている数個の結石も認められた。位置と大きさ、眠眠の体力から、外科的手術で結石を取り出すことも、腎臓病を抱えていることから薬剤で石を溶かすことも不可能であることを知らされた。
 若い甲先生ではあったが、病気の説明は簡潔でたいへんわかりやすく、霧が晴れるように理解出来た。その後眠眠は、自力で小さな血のりのついた塊を尿と共に排出し、それ以降、血尿と痛みは治まった。もちろん、結石はまだほかにも存在していたので、最も悪さをしていた石がなくなったというだけだが。
 それからは、「眠眠ちゃんのために、腎臓病の進行をいかに遅らせるか」という呪縛でがんじがらめになっていくのである。
すなわち、治るわけではなく少しずつ悪化して行くしかない腎臓のエコー画像を5000円もかけて撮られて「もうすでにここまで腎臓が縮んでしまっています」と前回の画像と比較し説明されても、絶望感しか抱けない。どうにかしてこれを遅らせてやらねばという強迫観念に駆られ、とにかく必死になるしかなかった。

「毎晩点滴してあげてもねぇ」と平屋建てのA医院の先生が言った。
「結局全部腎臓を素通りして外に出てしまう」そう、本来臭いがキツイはずの眠眠の尿は、まるで水道水のように無色透明。無臭なのだ。「点滴は、筋肉と皮膚の間に結構な太さの針を刺すわけだから、この子がおとなしくしていたとしても、実際はこれね、かなり痛いんだよ」
 コクコクと頷くだけの私に、小さな医院の凄腕先生は続けた。
「入院すれば、その時は一時的によくはなります。ただ、腎臓病は、絶対に治りません。一時的によくなるために、血管に注射針刺されて、24時間拘束されて、でも、それが2ヵ月に1回だったのが毎月になり、毎週になり、毎日になる。この子のことを考えたら、私は入院は勧めない。若い子と違って、この子くらい、10歳過ぎてからの発病は、どんなに数値が悪くても、中には身体が慣れる場合もある。まあ、具合が悪いことにはかわりはないけどね。若いうちの発病は、それはもう重くて、黄色い胃液を泡を吹くように吐き続けて、とても見てられないくらい。私が唯一安楽死を勧めるのは、若いうちに発病した腎臓病くらいなもんです。わかりますか? 腎臓病というのは、それくらい、治らない病なんです。入院は延命措置でしかない。高いお金を払って入院させるくらいなら、この子の苦しみを受け入れて、一緒にいる時間を大切にするのも選択の一つといえます。少し肩の力を抜いて、この子の病を受け入れてみてはどうですか」
少し肩の力を抜いて──私は泣いてしまった。凄腕先生には、金銭的苦労は何も伝えていなかった。
「この子のために、毎晩点滴してあげなくちゃとか、入院もさせられないようじゃひどい飼い主だとずっと思っていたから──」
「そんなことは、ありません!」
 先生は一時口調を強めたけれど、どこまでも優しい目をしていた。
「飼い猫は確かに長生きの子もたくさんいます。この子はもう10年生きた。この子にとっての寿命は10年だったということです。好きなものを食べさせてあげてください。猫は頑固だから、具合が悪い時にまずいものなんか絶対食べません」
「かつお節が好きなんですけど、かつお節もあげていいですか?」
「あげてください。この子が生きてて楽しいなと思えるように」

 先生、救ってくれてありがとうございます。先生にも腎臓病は治せないことはわかりましたが、先生は腎臓病の猫を想ってビョーキになりかけていた飼い主のアタマを治してくださいました。

 眠眠は、かつおの刺身もまぐろの刺身も食べてくれず、乾きもののかつお節のみ、仙人みたいに少し口にする。口のまわりを舐め上げる体力がないのか、かつお節を舐めたあとは、顎にかつお節の髭を生やしたままだ。
 昨日からまた具合が悪くなって、やけに鳴き続ける。寒いのに、どこにそんな力が残ってるものやら、風呂場の扉を押し開け、浴室に蹲ることが多くなった。
 今日もまた凄腕先生のもとに眠眠を連れて行った。
「水場に行きたがるということは、脱水症状のあらわれでしょうか。前に白血病で死んだ子も最期の方はやたらお風呂場に行きたがってたんです」
「本能で(水を)求めているのかな」
「輸液量、少し増やしてもいいですか?」
「今70だっけ? 140までならいいよ。でもここまで痩せてる(かつて6キロあった体重が、すでに2.5キロに)と、あまり(輸液で)おおきなコブになると、首の皮膚がひっぱられて結構きついから、様子を見ながらね」
「はぃ」
 凄腕先生は、「何も処置してないから」と診察代を一銭も受け取らなかった。
 医院の受付は、弟子の女医さんか介助の看護師さんが兼任している。
 何度も礼を言って医院のドアを閉める直前、奥の診察室からもう一度凄腕先生の大きな声が聞こえた。
「お大事に!」
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# by vitaminminc | 2015-04-20 16:11 | 生きもの | Comments(2)

身体能力とは裏腹に、なぜにゃんこのウエストはチーターのようにくびれていないのだろう?
眠眠の愛嬌あふれるずんぐり体型をながめながら、そんなことを思ったあの日にかえりたい。

眠眠の病状は、「壊れた腎臓は治らない」と言われる通り、悪化の一途を辿っている。毎日の点滴を欠かすことはならず、今私がしてやれることは、病気の進行を少しでもゆっくりさせることだけ。

発病以来、病院を替え(説明不十分&採尿ができない)、担当医を替え(無用な検査ばかりして費用が嵩む)てもらい、行き着いた先は、自ら夜勤に出ること。

といっても深夜のお仕事ではない。今いる職場の17時以降の勤務のことだ。13時までの午前勤務に出た後、いったん帰宅して夕飯の支度などをこなしてから再び出勤するのである。
非効率的と思われるかもしれない。朝から17時まで8時間労働すればいいではないかと。
いやいや、ちゃんと考えてのことなのだ。なぜなら夜勤は時給が(若干)いいのである。

ネットで調べてみたところ、猫の腎臓病にかかる治療費はずば抜けて高い。眠眠のように末期に近くなると、年間で100万円以上かかる。
実際、入院を除外しても、月に2万5000円から3万近くかかっていて、症状が悪化して入院となると、それだけで10万円が消えていく。た、す、け、て。

そもそも壊れゆく眠眠の腎臓の画像を見せられて、「ここまで腎臓が縮んでしまっています」と説明されることに何の意味があるのか。こんなエコー検査を受けるために5000円支払うくらいなら、命の水=点滴セットの方に確実にまわしたい。
従来の若い担当医の休日を見間違えて病院を訪れた日、たまたま眠眠を診てくれた40半ばくらいのベテランの先生は、頼まなくても極力無駄を省いた検査をしてくれて、点滴の輸液量を無暗に増やすことにも意義を唱えていた。

担当医を替えてもらうためには相応の気まずさは避けられないが、今は眠眠と共倒れしないための選択が最優先となる。
若い医師からベテラン女医へ。高校生のこどもに学費がかかることも1秒で理解してくれた。
ベテラン女医には、保険に入っていないので医療費に余裕がない旨きちんと伝え、必要最小限の検査にとどめてもらった結果、若い女医の時に比べ、マイナス諭吉1名となった。もっと早く対処すりゃよかった。

愛するペットの病気について語るのに、出費が中心となってしまうのが、いかにも私らしくて不甲斐ないが、たとえば半月分で2万5000円もする点滴セット&腎臓サプリ、これらを購入できなくなったら、即命取りとなる。
ムスメがこの春社会人となり、ようやく少しは楽になれるはずだったのに、下手したら私大の年間授業料より眠眠の医療費の方が高くなる計算。いや、むしろ絶対高くなる。
今のところはひと月5万円かかる猫の医療費だが、重症化と共に更に高額になっていく。

荒稼ぎを始めた私を見て、同僚は「猫ビンボー」と明るく茶化してくれる。
日に3キロの距離をチャリで2往復。間食する暇もないのが幸いし、たった半月で5キロも痩せた!

心配には及ばない。なぜなら、一緒に風呂に入ったムスメに、「どこが痩せたのかまったくわからない」と真顔で言われる程度だからだ。
おそらく、秘蔵の体脂肪が燃焼されたに違いないのであろうことは、軽くなった足どりからも自覚できる。

「みん子さん、これに目を通しておいてください」
疲れのせいだろうか。夜勤を始めるまでは、年に数える程度だった提出書類の「差し戻し」が、週一になっている。
もしかして、痩せたのは脳ミソなのか?

そんなこんなで、へろへろヘロッピの毎日。

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# by vitaminminc | 2015-04-11 14:38 | 生きもの | Comments(0)

拝啓 大佛次郎様

 私があなた様にほんの少しだけお近づきになれたのは、18の春の日のことでした。当時ボーイフレンドが横浜に住んでいたことから、私たちは、港の見える丘公園の展望台の奥にある、お洒落な洋館に足を運びました。馬蹄形の屋根と赤レンガの壁。それが、横浜生まれの作家・大佛次郎記念館でした。
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 とはいえ、代表作「鞍馬天狗」シリーズのことは有名でしたから知ってはいましたが、読んだことはありませんでした。だから館内を巡り、「大佛次郎」の業績と生涯を様々な資料で紹介されながらも、最後まで距離を感じずにはいられませんでした。

 あの日から30数年が過ぎた或る晩のこと。私は湯船につかりながら、母が提供してくれた産経新聞のコラム「産経抄」を読んでいました。そして、2013年の1月の記事で、再びあなた様に巡り合うことができました。
 今度はうんと距離が縮まりました。あなた様が、無類の猫好きだったことを知ったからです。生涯で飼った猫の数はのべ500匹を超え、さらに、毎日遊びに来る猫もいたとか。
 その中で、特にかわいい子猫が、どこからやって来るのか知りたくなったあなた様は、荷札に次のように書いて子猫に付けたそうですね。
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「君ハドコノネコデスカ」
 
すると、3日程経って、子猫に付けられた荷札を見ると、返事が書いてあったと。 
   「カドノ湯屋ノ玉デス、ドウゾ、ヨロシク」
 あなた様は随筆の中で「君子の交わり、かくありたい」と悦に入ってらしたそうで。
 猫を見るあなた様の、なんと穏やかでやさしいまなざし。
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 いまだにあなた様の作品を読んでいないくせに、勝手に親しみだけがふつふつと湧いております。

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# by vitaminminc | 2015-03-07 21:27 | 趣味 | Comments(0)

時間

「一日が、30時間あったらいいのに」
 これは、毎日大変忙しそうに過ごしていて、しかも私の何百倍も時間を有効活用しているムスメの口癖だ。
 先日などは、翌早朝大学のゼミの卒業旅行に発つというのに、いつになく昼食(←肉と野菜のオイル煮。妙に美味しかった)を作ってくれたかと思えば、まだまったく荷造りしていない状態のまま確定申告の書類を作成し(←バイトしながらユニセフ募金などをしていたので、返してもらえるものはしっかり請求する人)、おまけに最近急に夢中になっている某俳優宛てに、生まれて初めてファンレター(←直筆)まで書いた。飛行機に乗る以上、やるべきことはやっておきたいのだという。
 「不吉だ。そんな生き急ぐでない」
 にわかにビビり出した私に、ニヤッ笑ってムスメが言った。
 「わかった? 明日4時に起きなくちゃならないから、××駅まで車で送って」
 下心があったとしても、私がムスメの立場だったら、旅支度もできていないのに、母親に料理をふるまう発想はなかっただろう。

 ムスメの血縁者とは思えないくらいぐうたらな私は、たとえ一日が30時間あったとしても、睡眠時間が増えるだけのような気がする。
 だから30時間とはいわない。1時間でいい。「絶対眠くならないで、何か一つのことに集中できる」時間があればいいのに──と、あたしゃどこまで他力本願なのか。

 そういえば、安房直子さんの児童文学作品に、「だれも知らない時間」というのがあった。ひとりの若者が、亀から時間をもらう話である。かれこれ200年も生きていて、もう生きていることにすっかり飽きてしまった亀が、自らの命を削って、一人の若者に時間を与えるのである。亀から譲り受けた特別な時間。若者は、誰にも知られることなく、夜を徹して夏祭りの太鼓の練習に励む。
 一緒に練習しているはずなのに、若者一人だけが、ぐんぐん上達していく。みんなに訝しがられ、問い詰められた若者は、とうとう亀との秘密を明かしてしまう──このあと事態は思わぬ展開へ。
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 その時々の気持ちのありようで、長くも短くもなる時間。
 平等に与えられているはずなのに、使い方次第でまったく違ってくる。
 その人が、一生の中で有意義に過ごせた時間がどれだけあるかなんて年齢では推し量れない。

 自分の寿命を「有意義な時間」というふるいにかけたら、ものすごーーーく









 短命な気がする。 

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# by vitaminminc | 2015-03-04 19:27 | 人間 | Comments(0)

みんの入院

 みんちゃん(♂ネコ10歳)が、本日入院した。

 腎臓病が進行して数値が悪化してきたことから、輸液量を100ccから140ccに増やし、1ヵ月間がんばって様子をみた結果が、「即入院」。

 たしかに、徐々に食欲はおちてきていたし、輸液量を増やしたからといって、目に見える効果があったわけでもない。
 本日の血液検査では、上がってはいけない数値が前回の2倍近くに上昇、下がってはいけない数値が前回の半分近くまで下降していた。
 中でも先生が最も懸念したのが、電解質の値。電解質というのは、皮下注射では補えないそうだ。血管に直接点滴しなければならないということは、入院するしかないということだ。

 点滴は、丸一日がかり×3日間。
 通院の場合は、3日間朝一で病院に連れて行かなくてはならず、治療する上では非効率的にならざるを得ないと説明された。
 悲しい現実だが、私も3日間いきなり欠勤するわけにもいかない。悩んだ末に、みんちゃんを病院に預けてきた。
 すごく元気がなかったくせに、私と先生の会話から、ただならない気配を読みとったとみえる。キャリーのネット越しに、前足のかわいい肉球を押しつけて、目をまんまるに見開いて「ここから出せ」と私に訴えた。
 精気が蘇ったような目で訴えていた。
 「この点滴に関してのみ言えば、決して危険を伴う治療ではないですよね?」
 私はもう一度主治医に確認した。
 点滴自体は危ないものではないと先生は言った。それでも、万が一の場合に備え、選択を強いられた。
 それは、入院中に心肺停止に陥った場合、蘇生措置を望むか否かということ。
 「治る病ではないと理解しているので、万が一そうなった時は、安らかに逝かせてあげてください」

 車に乗ってからも、助手席にみんのキャリーの幻覚を見た。万が一どころか兆に一だって逝かせるものか。
 家に着いて、みんと私の部屋に入ってからは、みんがベッドの布団の中に潜っていると思い込んだ。

 ムスコにみんちゃんを病院に預けてきたことを告げた時は、涙が目の内側に流れた。
 大丈夫だ、絶対にもち直す。夏に別の病院で、みんの腎臓はいつ急変してもおかしくない状態だと言われた時だって、ちゃんともち直したではないか。
 何も食べられなくなった主な原因が、電解質の激減なのなら、それを補給してもらうしかない。しっかり充電してもらって。バッチリ食欲を取り戻してみせる。

 まだ、10歳なのだ。

 わずか3キロになってしまったみんみん。入院のストレスに耐えられるのかが心配。入院なんて、10年前に去勢手術を受けて1日入院して以来。3日間は長いなぁ。早くもみんみんシック。毎日見舞いに行こう。

みんの入院のショックで思い切り肩を落とし、五十肩を、そして心の代わりに腰を折ったのか、いきなり腰痛を併発してしまった。いやマジで。




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# by vitaminminc | 2015-02-11 16:55 | 生きもの | Comments(0)

真珠

ずーっと長いことガラパゴスに棲息していた。
彼女は野生のブタ、野ブタであった。
それなりに、幸せであった。

しかし、少々居心地が悪くなってきた。
他人の手を借りていることを、意識せざるを得なくなってきた。

若モノは、あらゆる情報を「LINE」という神から受けていた。
野ブタは「LINE」の恩恵に与ることができない。
ガラパゴスの神に、「LINE」は存在しない。

心優しい若モノのおかげで、野ブタも情報を得ることはできた。
しかし、それは若モノの善意に頼ることでもあった。
一度で済む手間を、野ブタの存在が二度手間にさせていた。

「チッ」という舌うちを耳にする前に、野ブタは一歩踏み出した。
ガラパゴスをあとにして、海に泳ぎ出た。
そして、美しい碧の真珠を手に入れた。

とまあ、前置きはこのくらいにして。

ムスメに頼んで、「LINE」とやらに慣れるために、まずは繋がってもらった。
ありゃ~面白い。フキダシでお話ができるのね。
「ムスコが帰ってきたら、ムスコにも繋がるようにしてもらいなよ」
いきなり公にLINEデビューしないよう、ちゃんとムスメが非公開の状態に設定してくれた。

ムスコが部活から帰って来た。
「え? 奥さん、スマホにしたの?」
安い機種といったって、オレのよりは新しいヴァージョンに決まってんだろ?
やけにうらやましそうに真珠をチラ見する。
「ムスコともLINEできるようにして」
野ブタは、真珠をムスコに渡した。
「めんどくせー」
「LINEの練習したいから」
「ムスメ(姉の名)にやってもらってよ」
ムスメが弟を戒める。
「なんで? あたしだって繋げてあげたんだから、あんた自分のはやりなさいよ」
ムスコがしぶしぶ野ブタの真珠を操作する。

「ゲ!」
ムスメが自分のスマホを開いてのけぞった。
ムスメ「友だちから、『たぶんおかーさんから(?)LINE申請届いた』ってメールが来た!」
野ブタ「オープンにしちゃったの? いったいどこまで繋がっちゃってるの?」
ムスコ「だって別にダメって言われなかったし・・・」
野ブタ「おまえと繋がるようにしてくれって頼んだだけなのに! どうしよう? 退会できる?」
ムスメ「誰かから返事が来てからじゃ失礼になるから、いったん退会するしかないか」
(ムスメが退会の手続きをしてくれる)
野ブタ「私の情報、消えたかどうか(友だちに)確認してくれる?」
ムスメ「ははは、残ってるって」
野ブタ「個人情報ダダ漏れじゃん・・・(超落ち込みモード)」
ムスメ「でも許可しないと受けつけない設定にしている人には、開く前に消えているはずだから」
野ブタ「LINEはそういう点が怖いって聞いていたのに・・・」
ムスメ「自分のID入力するのが面倒だから全部に繫がるようにしたんじゃない?」
ムスコ(無言)
ムスメ「主婦は学生とは違うんだからね!」
野ブタ「なんてことをしてくれたのか・・・」
ムスコ「(逆ギレ)もう二度と、オレに何も頼まないでくれ!」

そんなムスコから届いたLINEは、たった3文字 {うんこ)                    

・・・であった。野ブタは、この3文字を受け取るがために、LINEでピンポンダッシュをやらかした相手に、お詫びメールを作成。「うんこ」のための尻拭い。尻を拭うこと小一時間。。。痔になりそう(汗)

その後も野ブタは、ダンナが以前単身赴任していた東北事業所の電話番号を、もう不要だからと電話帳から削除しようとした。なのに、なぜか電話が繋がってしまい、先方が訝しげに「どちらさまでしょうか」と問いかける声に、返すすべも切電するすべもわからぬまま、止むを得ず電源を切った。



パゴスに帰りたい・・・野ブタは、遠い目で思うのである。
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# by vitaminminc | 2015-02-05 14:22 | 人間 | Comments(0)

ムスコーピオン

正月、我が家に親戚が来訪。
昼食に、寿司の出前を頼んだ。4人前36貫入りの上寿司×2桶。
上寿司というと響きはいいが、「極上」⇒「特上」⇒「上」の、「上」。
上はあっても下はない。「松竹梅」の「梅」に相当する。
客人の前で電話する際、聞こえが悪くならないようにとの店の配慮か(笑)
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配達人は言った。
「空いた桶は夕方引き取りに来ますんで、外に出しといてください」
きれいに洗って玄関ポーチに重ねておいた。
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二日後の晩、部活から帰ったムスコが言った。
息「寿司の入れもの、まだ取りに来ないね」
私「当日引き取りに来るようなこと言ってたんだけどね」
息「あんまり取りに来ないでいると、ベイブレード回しちゃうよん」
これ聞いたムスメが、妙にウケていた。
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同じ日の食卓。
テレビをつけながら、どの番組にしようか?と子どもたちに問いかけた。
子どもたちは二人とも、別にこれといって見たい番組はないと言う。
それならば、と私は新聞のテレビ欄を確認し、チャンネルを日テレに合わせた。
子「何見るの?」
聞いておきながら、私が答えるより先に、ムスコが新聞を手に取る。
息「“○×クイズ 真実か?ウソか?” 奥さん、こんなの見るの?」
私「なんで? いいでしょ!」
息「どーせこれまで50年間知らずに生きてきたわけでしょ」
私「な・・・なんちゅー失礼な(笑)」
クイズというのは、宝くじを拾って届け出て、後にそれが当選くじでとなった場合、落とし主が謝礼として支払うべきは、くじの販売額の1割か? それとも当選金の1割か? というような問題。
息「ならば今(答えを)知ったところで、大して意味はない」



ムスコの前歯は、シニカルシウムで形成されている。
そして舌先三寸に、蠍の毒が仕込んであるんである。
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# by vitaminminc | 2015-01-09 17:32 | 笑い | Comments(2)


新年あけましておめでとうございます


どうにも昨年あたりから、サーフィンがきつくなってきた。波にうまく乗れない。
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体力的な問題ならば、せめて頭だけでも時流に遅れずついていきたい。
とは思いつつ、気力も沈下しているから、結局淀みにはまっている。

新年早々シケた話になりそうなので、話題を変えよう。
はまっているといえば、もう過去形になるが、昨年はTVドラマ「Nのために」にハマッた。
久し振りだった、毎週あんなに放映を待ちわびたドラマは。
もともとそんなにドラマを見るほうではないのだけど。
脚本といい演出といい映像といい、すべてがパーフェクト。私にとって最高傑作となった。
DVDボックスも入手したいくらいである。
手元に置いておきたいと思った作品(ドラマ)は、これまで「池袋ウエストゲートパーク」や
「白線流し」など結構あったが、結局購入するにいたっていない。
「Nのために」のDVD、欲しいなぁ~。

それに、ドラマを見ただけで、これほど出演者全員に愛着が湧いた作品は、これまでなかった
窪田正孝くん。あなたの声と表情に、おばさん何度泣かされたことか。
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ラストシーンも夢のように美しかった。空の青に、救われた。
湊かなえ原作の映画やドラマは、どれも間違いなく面白い。
だから「Nのために」も、大いに期待しながら観ていた。
しかし、今回はいい意味で裏切られた。
後味の崇高さと映像美で、私の評価では、ドラマが原作を超えた。
それとも、小説を読む私の想像力が落ちたのだろうか。
昨年観たドラマで一番どころか、ここ30年間観た中で一番かもしれない。
いや~ホント良かった!




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# by vitaminminc | 2015-01-05 18:36 | 趣味 | Comments(0)

I love ''LOVE" !!

わたくし、毎日のらりくらりネットが壊れちゃったパオパオパパパと生きておりますです。

いっそ名まえも、「今の方(かた)」に改名したほうがいいんじゃないかと思っていますです。

先月、銀行のATMで3万円を引き出した直後、ティコンティコンティコンという警報音に負けじと

大声でわたくしを呼び止める親切なご婦人がいらっしゃいました。

「今の方、こ、これ、持ってくの忘れてますよ!」

ご婦人の手には、諭吉が3人、握りしめられておりました。

いつもなら、通帳よりもカードよりも、まず現金をしまうわたくしであります。

何がどうしてああなったんだか。

通帳とカードのみを素早くしまいこむと、安心してさっさとATMをあとにしたのでした。

当然、瞬間移動したわけではないので、立ち去ると同時に警報音が鳴り響きました。

にも関わらず、それは隣のATMから鳴り響いているのだろう、くらいに思ったわけです。

まったく気に留めることなく、スタコラサッサと出口を目指していたのであります。

ご婦人には「ありがとうございます、助かりました」と心の底からお礼を述べました。

実際、3万円がなかったら、わたしくしは生ける屍になっていたかもしれません。


本日は、2015年ダウンロード版の某年賀状作成ソフトをBMAZONで購入。

何も考えずに日頃使用しているマイ・ノートパソコンにダウンロードしました。

お察しのいい方なら、もうおわかりですね?

そう、ダウンロードは出来たけど、インストールが出来なかったわけ。

なぜか。

HDDの空容量が、絶望的に不足していたから。

空容量の単位が、MBじゃなくてGBだったらよかったのにねぇという、ありえないレベル。

メーカーに電話してもつながらない。有料電話だというのに、10分待っても繋がらない。

電話はあきらめて、メールでサポートセンターに相談した。

1割が己のアホさ加減の暴露、4割が早く年賀状の作成に取り掛からねばならないという窮状。

そして残りの5割は、御社のソフトとはWindows XP以来の付き合いで、いかに気に入っているかを

切々と訴えるという・・・

購入元のBMAZONにも相談したら、メーカーの方でダウンロード先の変更は不可という冷たい回答

だった場合は、何かしら対応しますと言ってもらえました。

この際、「慰めてもらう」でも何でもいい。最悪の場合はBMAZONが手を打ってくれるんだと思え

るだけで、ピラニアの襲撃から逃れられたような気持ち

さすが熱帯地方だけのことはある、客にあたたかいなぁ、BMAZON。


さて、そんなしょーもないわたくしは、ただいま FoZZtone というバンドの「LOVE」という

曲が大のお気に入りなのでありますです。

歌詞がまたこう、シュールでして、すっとわが胸に入ってくるのでございますです。

ご興味おありでしたら、こちら⇒FoZZtone「 LOVE」歌詞付オフィシャルライヴ動画をクリック!
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あ、あの・・・「大王のいない七月」で ↑↑↑ を思い浮かべるのは、わたくしの自由。
みなさまにはみなさまが想う大王がいらっしゃって当然。
とにかくこの曲は、今わたくしにとって一番のパワードリンクなんでございますです。ウォーオ!!


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# by vitaminminc | 2014-12-18 15:41 | 音楽 | Comments(0)

記憶の欠落

 日々の生活に追われて、ずいぶんブログをサボッてしまいました。。。(愕然)

 ところで、本日のタイトル。一見していかにもボケっぷりの著しい自分の身に起きたことのようであるが、チガウ。

 ムスコのことだ。

 先日、ふとした拍子にムスコの小学校時代に話が及び、「そういえば、あん時の担任とは相性が悪かったよねぇ」などと冗談半分に私が言うと、ムスコが意外な反応を示した。
 「え? そうだっけ? つか、そんなことあったっけ?」
 「え? 覚えていないの? K先生のことだよ」
 「・・・・・覚えてない」
 「ウソぉ~女の先生だったことくらいは覚えているでしょ?」
 「いや・・・・・まったく覚えてない」(真顔で答えるムスコ)
 最初のうち、私とムスメは「その若さでボケるとは」と笑っていた。だが、どうも様子がおかしい。
 なぜならムスコは、私が話題に挙げた小学4年の記憶だけが、だるま落としみたいにスコンと消えていて、それより遡る1年から3年までの記憶はしっかりしていたのだ。担任の性別はもちろん、名前も。
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 そして私はあることに思い当った。4年時の担任が、ムスコの言動のほとんどすべてを否定的に解釈する中年女性であったことに。
 当時(2007年5月29日の記事「坊主憎けりゃ・・・」ご参照願います)は私も、学校でのムスコの様子について担任から話を聞かされた際、注意事項ばかりで何一つ長所を挙げてもらえなかったことに、少なからずショックを受けた。大切に育ててきた我が子を全否定されて落ち込んだ。
 幼稚園の3年間と小学校に上がってからの3年間、どの担任も必ずムスコのいいところ(面白くてやさしいお子さんです)を挙げてくださり、それなりにムスコを可愛がってくださった。全否定されたのは、あとにも先にもこの4年という悪夢の学年が初めて。この時期ムスコは反抗期とは縁遠く、悪さに磨きがかかったわけでもない。ごく平穏に、素直に成長していた。

 「嫌いな生徒」のレッテルを貼られたムスコは、きっと学校では親の前とは比べようもないくらい、担任に冷遇され続けたに違いない。虫が大嫌いで、ごっつ几帳面な担任の、神聖であるべき教室内に、こともあろうに嫌い中の嫌いの最たる昆虫=カマキリの赤ちゃんを連れて登校しちまったばっかりに。
 私の中では笑い話にすり変わっていた記憶が、ムスコの中では見事に抹消されていた。
       それほど傷ついていたということだ

 まだ生まれて10年ほどの子どもが、自分の心を護るために記憶を消す。
 心的外傷ストレスによる記憶の欠落なんて、小説やドラマの中の話。そう他人事として認識していた自分が恥ずかしい。
 私は、ムスコのことを過信していた。いつも明るく笑っていたから、担任の無理解にもへいちゃらでいると思っていた。7年も経って、思わぬことから真相を知るに至り、きゅるきゅると胸が痛んだ。

 今更ながら、思わずにはいられない。生徒の記憶から消されるような先生が、子どもたちに一体何を教えられるというのか。
 小学校時代の担任は、幼い生徒ひとりひとりの人格形成に多大な影響を与える。あの当時の担任は、虫はもちろん、絶対に子どもが好きではなかったはずだ。たとえ虫が嫌いでも、子どもが好きならば、あそこまで嫌悪感に満ちた目で見ることはなかったろう。子どもが好きでないのなら、小学校の教員になどならないでもらいたい。

 K先生、悲しくはないですか? 自分と関わった一人の少年の思い出の中に、貴女は存在しないのです。
 
 

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# by vitaminminc | 2014-10-26 20:05 | 子ども | Comments(2)

はぶらしのなく頃に

 「一限の授業なんかとるんじゃなかった~」
 ムスメは今朝も、バタバタ身支度しながら嘆いた。大学4年後期で選んだ科目が、よりによって朝一に組まれていることを。
わかりきっていたはずなのに。「それでも履修したい」と望んだ、あの美しい向学心は何処へ?

 「ハブラシ! ハブラシがない! なんで? さっきまで持っていたのに! 奥さん(←私のこと)、私の青いハブラシ知らない?」
 「知りまっかいな」
 「あ~、もう! 駄目だ、時間がない、もう行く!」
 突如として消えたという、ムスメのハブラシ・・・。歯はちゃんと磨き終えていたのだろうか。

 ムスメが家を飛び出したリビングルームには、まったりとした静寂が漂っていた。
 猫の眠眠と私だけ。
 身支度を整えて、そろそろ私も出勤せねば。

 ふと目に入ったキッチンカウンター。
 何だ? この違和感。
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 ゲゲッ!カウンター隅のペン立てに、仲間はずれのものを1本発見。
 大丈夫かいな、私のムスメ・・・048.gif
 ま、キッチンカウンターにペン立てを置く母親も母親だけど。


 

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# by vitaminminc | 2014-09-29 19:32 | 笑い | Comments(0)

ジグロサクソン人の結論

 体の色は、その対称となる色を、心に宿す。

 意味不明に聞こえるかもしれない。が、最近私は、確信に近いものを感じている。

 前にも述べたが、私は色が黒い。年齢と共に褐色化が増す、進行形ジグロサクソン人である。
 色白だったら得だなぁとは思う。顔がどうであれ、初対面の人に「褒め言葉」を提供できる。
 色黒だったらこうはいかない。「健康そうでイイですね」が、嫌味のない褒め言葉として通用するのはせいぜい30代まで。今の私に提供できることといったら、相手の目を泳がせるだけの「間」くらいだろう。

 本当のところ、私はジグロサクソン人に生まれたことをさほど気にしていない。気にすることで白くなるなら、真面目に気にもするだろうが、どうにもならないのだから仕方ない。

 ところが、なぜ? 
 周りが放っておいてくれない。それも、ごく身近な者どもが。

 まず、オット。
 朝の情報番組のお天気お姉さんが変わったことに気づいた朝、たいへん五月蠅かった。ワザとこの漢字を使いたくなるほどに。
 「あれ? お天気お姉さん変わった? なんでまた色の黒いのを起用したんだ? どう見ても朝にふさわしくないよなぁ」
 要約して↑↑↑コレ。どう見てもと言うが、画面のお姉さんは、私の目にはちっとも色黒に見えない。さすがにウンザリして言い返した。
 「私も色黒ですけど? 朝にふさわしくない顔で、申し訳ありませんね」
 オットはちょっと焦った様子で、苦し紛れに取り繕った。
 「いや、朝にって言うか、お天気お姉さんとしてどうかなと思っただけだよ」
 オットが平気で失礼なことをヌカすのは、オットが私を色黒と認識していないからではない。
 朝から色黒の顔を見ないように努めるあまり、妻の顔の色はもちろん、顔色を窺うもろことさえ忘れたに過ぎない。
 
 オットだけではない。
 味方であるべき実母までもが、私を放っておかない。百歩譲って、オットは私など眼中になく、単に新お天気お姉さんについて感想を述べただけとしよう。
 しかし、実母は違った。
 8月に帰省して、銭湯に行った。入浴後、脱衣所で先に着替えを済ませて待っていた私のふくらはぎを見た母が、こんなことを言った。
 「あら、みん子ちゃん、足はずいぶん白いのね」
 え? そう? と嬉しそうに照れる私に、母は冗談ぽく言った。
 「足じゃなくて、顔だったら良かったのにね」
 直球かい。実母(←88チャイ)は、舌に天然の毒を仕込んでいる。

 私とは対照的に、色のオットと実母に共通しているのは、腹い一面がある、という点。
 本人らに悪意がないとは信じたいが、あまりにも無神経。
 同じジグロサクソン人に言われたなら笑い飛ばせるが、奴らは絶対、色白であるがゆえの優越感に浸り過ぎ、ふやけている。その自堕落でブヨブヨした神経が、心無い発言を生むのである。

 そこで、冒頭の結論。
 体の色は、その対称となる色を、心に宿す。
 はいはい、私は自分の心が清く白いだなんてコレっぽちも思っちゃいませんよ。私の場合は、よく頭が真っになるんですぅ。

 


 





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# by vitaminminc | 2014-09-26 11:25 | 生きもの | Comments(2)

慇懃無礼なカレ

働き始めて7年だし、ギリギリ「今どきの若いもん」に入ると思いますよ、私から見りゃ。
見た目も結構ステキなわけ。スマートでスラッとしちゃって。昭和もんのスタイルとは明らかに違う。
出資額が大きいだけあって、アタマもいい。知識が豊富で、器用に何でもこなせちゃう。
しかも親切。ちょっとした力仕事ならボクがやるよ053.gifてな感じで、頼んでもいないのに素早く反応。

だけど、虚弱体質。特に環境の変化みたいのにはとことん弱い。いわゆるもやしっ子?
繊細といえば聞こえはいいけど、単に融通がきかないだけ。秀才肌の、いわゆる頭でっかちみたいで。
転居や、夏の尋常でない暑さとかで神経をやられたのか? ここ数年で仕事にも支障をきたしている。
正直いって、家族は手を焼いているに違いない。ほっぽり出すわけにもいかず、ご機嫌窺いの日々?



カレが我が家にきたとき、家族はその端正な容姿に見惚れ、歓声をあげたものだった。
ナーバスそうなカレの、心の扉を開けるには、ちょっとした労力が要るものと警戒したが、カレは違った。
軽いスキンシップだけで、自ら扉を開いてみせたのだ。何度も。何度でも。
そしてカレは、たくさんの引き出しを保有していた。
通常の冷蔵室以外に、チルド室、野菜室、冷凍室は大小2個。

カレの親切心は、狭い我が家では無用の長物。そばを通っただけで勢いよく扉が開いた。
腕が触れたといっちゃーどつかれ、肩が触れたといっちゃーどつかれる。
無駄なオープンは電力の無駄。一週間経ずして、カレのタッチセンサー機能は解除された。
思えば、この自慢の親切心が裏目に出たことが、カレの自尊心を大いに傷つけたのかもしれない。

以来、カレは黙々と働きながらも、徐々に家族に不信感を抱いていくようになる。
自分が家族に愛されていないことを、家族の会話の端々に感じ取るようになっていった。
「あ~ぁ。前の冷蔵庫が、家を建替えるまでもってくれてたら、もっと大きいのを買ったのに」
「アイス食べてない人、早く食べちゃって! うちの冷凍室、狭いんだから」

やがてカレは、神経に異常をきたすようになった。確実に、病んでいった。
まず、小さいほうの冷凍室が、フリーザーとしての役目を放棄した。
アイスが溶けてしまうのはもちろん、ケーキなどについてくるミニ保冷剤でさえ、凍るまでに三日を要す。

「野菜室がちゃんと閉まらないよ? 何かつかえてるみたい」
野菜室の、大きくて深い引き出しをギリギリまで前に出し、仕切りのトレイを外して奥を確認。
つかえているものの正体を知った瞬間、私は凍りついた。ぃや、頭の中で何かが溶けて、笑い崩れた。
野菜室の奥に、日本三名瀑の一つ「袋田の滝~冬のジオラマ」が出現したからだ。
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画像の滝は白いが、カレの作品は「霜」とは違う。透明で、扇状に裾野を延ばした、美しい滝だった。
冷凍室の小引き出しの無能ぶりを批判されたカレは、その腹いせに、せっせと滝をつくっていたのだ。
長い年月をかけ、丁寧にこしらえた純度100%の水の結晶は、非常に強固なものである。
ヤカンで沸かしたお湯をかけても、溶けやしないのである。永久凍土もまっつぁおなんである。

「頼んでもいない場所で、氷つくってんじゃないよッ!」
即刻クビにしたいところだが、そうもいかない。
電子レンジや洗濯機と違って、家庭になくてはならない必須アイテム、それがカレ。
価格、消費電力ともに、最高値の座を譲らないカレは、家庭の強い味方にして、家計にツライ敵。
滝のせいで野菜室がきちんと閉まらず、いかに電力代が嵩もうが、今、カレを解雇するわけにはいかない。

足元を見られている気がする。
出会った頃、さんざん扉でどついてきたのだって、きっとワザとだ。
いい奴ぶって、本当は無礼なだけだったのだ。


そんなカレの名は、慇懃無冷蔵庫之丞。

昭和の家電は良かった。ズングリムックリしてたって、頑固一徹、職人気質。
とにかく頑丈、ちょっとやそっとじゃ壊れなかった。。。









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# by vitaminminc | 2014-09-25 10:25 | 笑い | Comments(0)

麗しの添いネコ

昨日の輸液は上々だった。
1回針が抜けはしたものの、しっかり合計100ccの輸液に成功した。
ちょっとしたコツもつかんだ。
眠眠の我慢が限界に達するのは、当然後半戦。
なので、注射器交換後の時間を短縮する必要がある。
それで、これまでは50ccを入れた注射器を2本用意していたが、内容量を変更することにした。
前半用に最大量60cc、後半用に40ccを入れることにしたのだ。
さらに、注射針は、つまみ上げた皮膚の下の、空洞になった部分に刺すのだが、刺した後は、通常皮膚から手を放す。
しかし、私は皮膚をつまみ上げたまま輸液してみた。
なぜなら、眠眠はほかの猫に比べて、皮膚にあまり余裕がない。つまみあげるのにも苦労するくらいだ。
皮膚に余裕がないから、液体を注入されている間、違和感が気色悪いのではないだろうかと考えた。
それで、試しにつまみ上げたまま注入してみたところ、これが功を奏した。
身をよじる回数がが激減したのだ。
秋ナースは、こうして、微力ながらも日々進化している(と思っている)。

輸液後の眠眠は、充電が完了した機器のように、フル回転。
速攻水を飲み、マンマをカリカリ。
いいウンチも出る。

「輸液するとやっぱり体調がいいみたいだね」と嬉しそうにムスメが言う。
「でも、(発病)前みたく私の隣に寝てくれないんだよね・・・」と私がしょんびり言う。
「はっはっはっ、そりゃ嫌われても仕方ないよな」毒舌のムスコが遠慮なく言う。
「ああ、どうせ私は嫌われ者だよ、来る日も来る日も注射針を刺してるからぬぇぇ」
そう、眠眠は腎不全発病後、一度たりとも私の隣で眠ることがなくなった。真夏のクソ暑い熱帯夜でさえ
必ず隣に寝ていたというのに。
体調を崩してから、独りで寝たがるようになったのだ。

ところが、眠眠が隣に寝てくれなくなったことをぼやいた晩、眠眠がこっそり寝室に入って来た。
「あ! 眠眠!」
私が喜ぶと、眠眠はひらりとベッドに飛び乗って、私の隣にちんまりと丸まって寝た。久しぶりだった。
こうして眠眠は、私が読んでいた小説を閉じて、電気を消してからもずっと隣にいた。少なくとも私が意識をなくして完全に寝入るまでの間、ずっと隣で寝ていた。

翌朝(つまり今朝)5時に起床すると、眠眠はホールに置いてあるソーイング・テーブルの上で寝ていた。
私は悟った。
眠眠に添い寝してもらったのだと。
赤ちゃんネコの時から人と一緒に暮らしているのだ。絶対ヒトの言葉がわかっている。
ああ、私は病気の猫にまで気を遣わせているのか。
でも、嬉しかった。

余談だが、ムスコは一昨日も毒舌ぶりを発揮した。
もぐもぐとバナナを食べている私に向かって、こんなことを抜かしやがったのである。
「お。サマになってるぜ
でも、嬉しくねー!


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# by vitaminminc | 2014-09-16 16:56 | 生きもの | Comments(2)

100cc の、誘い水

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獣医さんに指導を仰ぎ、自宅で眠眠に輸液しております。
獣医さんではすんなり刺さる注射針が、なぜか自宅ではうまいこと刺さりません。
というより、獣医さんではじっとしている眠眠が、自宅では動いてしまうわけで。
ストレス軽減のため在宅輸液にしたわけですが、リラックスできることが裏目に出ています。
怖くて固まることがなくなった分、逃げる隙を窺うのです。
注射針を刺す時に、下手に躊躇してしまう私もいけない。
一気にプスッとやらないから、痛みに気づいてしまうんですね。

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注射する方もされる方も慣れていないから、もうてーへんです。
眠眠が逃げ出さないよう押さえてくれる係は、今のところムスコ。
輸液量は、100cc。50ccを2本です。
輸液三日目の本日、初めてしくじりました。
途中で注射器をつけかえる時に、眠眠の爪がムスコの肩に食い込み、さらに針が抜けてしまいました。
抜けたら刺せばいいんです。ムスコは続行を申し出てくれました。
でも、これ以上嫌がる眠眠に無理を強いるのは後々マズイと思い、50ccで断念しました。

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それにしても、輸液の効果は一目瞭然、すごいです。
枯れかけていた樹木の葉が、一気にみずみずしさを取り戻したかのようになります。
ごわごわしていた毛並みまでもが、ふわふわになります。
そして、誘い水のように、水をよく飲み、ゼロに近かった食欲が少し回復するのです。
辛そうに四肢を折り畳んだ箱座りは、手足を伸ばした寝姿に変わります。
話すこともしんどくて、無言になってしまった眠眠が、かつてのようによくしゃべります。
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腎不全なんてウソなんじゃないかと錯覚しそうになります。
でも、一日置きの輸液が一日置きに必要な理由を、嫌でも思い知らされます。
もう眠眠の身体は、自力では水分を補給することができないってことを。
良い状態が保たれるのは、輸液後せいぜい36時間。
私は今日も、動画サイトで猫の輸液シーンを繰り返し見て学習。
もっと上手に輸液してやれるようになりたい。
輸液されて一時潤う眠眠とは逆に、輸液するたびに私は大量の水分を放出します。
汗だくで、確実に100ccは失われています。

しかし、私の人生に、この上ない潤いを与えてくれているのも眠眠。

4枚目の写真は、輸液直後。
超不機嫌な面構えですが、体勢はなんとなく、くつろいで見えますよね。













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# by vitaminminc | 2014-09-14 22:22 | 生きもの | Comments(0)

ドレ耳ソラ耳

最近、「ババア」「ジジイ」と呼び合っている。
幸い、夫婦間での話ではない。私とムスコ(←16チャイ)の間でだ。
ムスコがふざけて私を「ババア」と呼ぶたび、怒りより笑いが勝つ。
なんなんだ、この笑わずにはいられない「ババア」の言葉の響き、そして魔力。
だからバランスを保つために、私もムスコのことを「ジジイ」と呼んでいる。
「え?」とフツーに返事をする。
呼ばれて笑って、呼んでも笑う。バカ親子である。

そんなババアとジジイの昨夜の会話。
ジ「あれ? 今日って10日じゃなかったっけ?」
バ「9日だよ。しっかりしなよ」
ジ「なんだ、このババア」
バ「なんだこのババアはないでしょ! しっかりしろと言ってあげただけなのに」
ジ「ハッ!? 俺は今、『なんだ、9日かぁ』って言ったんだけど?」
バ(←相当な笑い)
ジ「勝手に聞き間違えて、独りで盛り上がってんじゃねーよ」
バ「だっていつも、あんまりババア、ババアって言うから(笑)何でもそう聞こえちゃって(笑)」
ジ「ババア、しっかりしろよな」

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# by vitaminminc | 2014-09-10 08:08 | 笑い | Comments(0)

「腎臓病予備軍」といわれたのは、いったい何月のことだったろう。
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もともとお水を飲むのが大好きだったので、水を飲む量が増えたことや、それに伴い尿の量も増えていたことに関しては、あまりにも無頓着だった。
今までなったことのない便秘になったために、慌てて獣医に連れていったのだった。
それでも、この時点では検査の結果、「腎臓病予備軍」と診断されて、薬は出なかった。ただ、餌を腎臓病用フードに切り替えるようにと指導された。
先生は、眠眠(♂猫10才)の下腹部を触診した。
「まだ便が詰まっているほどではないから、このまま様子を見ましょう」
ほどなくして、心配していた便通もあった。まずそうながらも、腎臓サポート食をチビチビ食べてくれ、ほっとしていた。鰹節はもちろん、大好物のレタスも与えてはいけないと言われた。腎臓用の餌以外は一切ダメですと。

冷蔵庫を開けるたびに、レタスをほしがって飛んできた眠眠だったが、数えきれないくらい望みが叶えられないことを経験して、さすがに学習したらしい。
眠眠は、レタスをあきらめた。
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夏の暑さがこたえたものか、徐々に食欲が落ちていき、動作も緩慢になっていった。
家族みんなが「眠眠も年をとったなぁ」とつぶやいた。
そのうちに、血尿が出始めた。これはいかんと受診した。
6キロあった体重は、4.7キロまで減少していた。
「慢性腎臓病」と診断され、生涯飲ませ続けなくてはいけない腎臓病の薬(水薬)が出された。
水薬の名称は「セミントラ」という。トラ猫のみんみんと相性が良さそに思えたが、シリンジ(針無し注射器)を嫌がって飲んでくれない。仕方なく餌にかけて食べさせた。
血尿に関しては、腎臓病のほかに膀胱炎の可能性もあるので、採尿して持ってくるように言われた。

採尿など不可能だ。眠眠は、便秘時の排便はあらぬところで粗相することはあっても、オシッコは必ず紙砂入りのトイレでしかしたことがなかった。
トイレをとっぱらってオシッコを我慢させるのは酷だ。そこまでして採尿することができなかった。
そうこうしているうちに、「血が出ている!」というくらい、血尿の色が深刻になってきた。珍しく、尿がトイレからはみ出ていたので、すかさずスポイトで吸い取って、眠眠とオシッコを病院に運んだ。
眠眠の体重は、4.2キロに減っていた。
膀胱炎の薬と止血剤8日分が出た。こちらの二種類は錠剤だったので、飲ませるのに難儀した。

膀胱炎と止血剤を飲ませ始めてから6日が経過。眠眠は、まったく餌を口にしなくなった。水薬をかけるのを止めても、餌皿に近寄りもしなくなった。大好きだった水さえ飲まなくなった。
そして、飲まず食わずの状態で、黄色い胃液を何度も吐いた。
獣医で測った体重は、3.9キロ。
もともと大柄な子だったので、立ち姿は物干し竿に干したカーペットみたいだ。
涙なんか流すものか。一滴残らず呑み込んでやる。
錠剤で胃をやられたのかもしれない。血尿は治まったが、眠眠の消耗はあまりにも大きすぎた。
血液検査の結果は、数値だけで判断すると「末期」。あまりにも進行が早いことに先生も驚きを隠せず、猫白血病か猫エイズを疑って再検査となった。結果は共に陰性。白血病で亡くなったおてんば猫の茶尾に噛みつかれたり引っ掻かれたりしたにも関わらず、奇跡的に陰性。
なのに、「末期の腎不全」だなんて。入院した方がより良い治療を受けることは可能だが、最悪の場合入院中に容体が急変して、そのまま死んでしまうかもしれないなんて。
「通院します」
迷わず選択した。「治る病気なら入院させたいところですが、万が一の場合、家族の誰も看取ってあげられないというのは考えられません」

幸い眠眠は「輸液」により急場をしのぐことができた。
現在、週に2~3回、「輸液」のため通院している。
まったく食べられなかった餌も、日に大さじ1杯くらいなら食べられるようになった。
「輸液」後は、便通も一時的に回復する。新鮮な水もよく飲む。
「輸液」は、ヒトでいうところの「透析」を意味する。
腎臓が機能しなくなると、いくら水を飲んでも体内を素通りしてしまい、慢性的な脱水症状を引き起こす。体内に溜まった毒素を尿と一緒に排出できなくなるため、飲み喰いできなくなるほど具合が悪くなる──簡単に解釈すると、こういうことらしい。

獣医には言えないが、餌を替えた。腎臓用のまずい餌ではなく、高齢猫用の、とても小さい粒のフードにした。こちらに替えたことで、ようやく大さじ1杯とはいえ、食べてくれるようになったのだ。
ペースト状の餌は、一口舐めただけで、二度と口にしなかった。

餓死だけは、絶対に避けたい。

今でも、オレンジを目にすると、ひどく心が痛む。
末期がんで治る見込みのない父が、病床で「オレンジが食べたい」と何度も訴えたのに、点滴に影響するといけないからと、私は拒み続けた。
死んでしまってから、どれほど自分を責めたかわからない。
どうせ死んでしまうのなら、食べたいものを思う存分食べさせてあげればよかった、と。

批難されることは承知の上だ。おまえはろくでもない飼い主だとなじられることも。
きちんと腎臓病のフードを与えて、きちんと薬も飲ませて、定期的に輸液を続けることで、小さな命を延ばすことが可能だということは理解している。
けれど、腎臓サポートフードを、ドライタイプもペーストタイプも、まったく受けつけないのだ。少しずつでも自分で食べられるうちは、強制給餌はしたくない。

幸い、腎臓病の水薬は、餌にかけなくても、シリンジで直接口に入れることができるようになった。
手足を突っぱね、顔をそらして抵抗するだけの体力が、すでになくなったせいだ。
これほどまでに弱ってしまったけれど、眠眠はどこまでも気高い。
毎晩私のすぐ横で眠っていたくせに、今はホールでひっそりと眠りに就く。
一緒にずっと触れていたいけど、眠眠の本能を尊重して、ぐっと我慢している。
排尿に関してあれほど潔癖症だった眠眠が、トイレ付近の床で失禁を繰り返るようになった。
ボケたのではない。間に合わないのだ。
床に水溜りをこしらえるたびに、律儀に小さく鳴いて教える。とても切ない顔をする。

腎臓は、一度傷ついたら二度と治らない。あきれるくらいもろい臓器だ。
私の心臓も容易には治らない。父の死から干支が一回りしたけれど、オレンジを見るたび傷口が開く。

今さっき、眠眠が悲しそうな声で知らせにきた水溜りを拭きながら、決意した。
今日、輸液の帰りに、レタスを買って帰ろう。


眠眠に、レタスを食べさせてあげるんだ。
大好物のレタスを。
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# by vitaminminc | 2014-09-08 13:22 | 生きもの | Comments(0)

虫がいい話

 今朝早く、部屋で物音がして目が覚めた。時刻を確認すると、まだ5:23だった。本格的起床時間まで、あと90分は寝ていられたはずなのに。
 ダブルベッドの横で寝ているはずの眠眠(♂ネコ)の姿が見えない。
 音のする方を見てみたら、床で眠眠が、しきりに紙袋を小突いている。どうも床に無造作に放置していた紙袋の下に、何かを追い詰めたようなのだ。
 ゴキちゃんだったらイヤだなぁと思ったが、そんな予感はあまりしなかった。実は、眠眠は私と同じで、ゴキちゃんがあまり好きではない。ゴキが動くたびにびくっと怯える始末で、しまいには寝転がっている自分の横をでかいゴキが悠々と通り過ぎるのを片眼を開けて見送ったことさえある。その様子はまるで「見なかったこと」にしたとしか思えず、大騒ぎしていたのは私だけなのだった。
 だから、ゴキ嫌いな眠眠がちょっかいを出しているからには、相手はゴキ以外の何かだろうと安心して見守っていられた。
 
 紙袋の下から、降参したのか最後の脱出を試みたのか、一匹の昆虫登場。眠眠が、すかさず猫パンチをお見舞いする。遊びたいから手加減している。今なら救出可能だ!
 「眠眠、おやめ」
 眠眠はおとなしく脇へ退いた。私は弱っている昆虫を、そっと手ですくい取った。洗濯ものと一緒に取り込まれてしまったらしい。よかった、まだ生きている。
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 画像はネットから引っ張って来たソックリさんである。カナブンより丸くずんぐりしているから、コガネムシの仲間だろうか。艶消しタイプの、地味な薄緑色をした子だった。私はカナブンとかハナムグリとかコガネムシとか、丸っこい昆虫が好きなので、ちょっと嬉しかった。
 その子は私の手の内側で、しっかり爪をたてて踏ん張っている。よしよし、これだけ元気があれば大丈夫。階段の踊り場の窓を開けて、外に放ってあげた。
 朝早くから起こされてしまったけれど、小さな命を一つ救えたのだ。実に気分がいい。知らなかったとはいえ、勝手に拉致して、勝手に救助して、勝手に自己満足するとは、虫のいい話。

 部屋の隅では、眠眠が、思い通りに事が運ばなかった時によくやる仕草─爪とぎ─の音だけが響いていた。バリバリバリバリ・・・・


 


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# by vitaminminc | 2014-08-03 23:39 | 生きもの | Comments(2)

新世紀ガングリオン

「なんじゃその、エヴァンゲリオンみたいな名まえは!?」
 ムスメに笑われた。
 わが身に起きた症状の正体を、ネットで突き止めた瞬間である。
 下記の画像は、大阪の古東整形外科さんが、「患者さんのための病気の参考資料」としてHPに載せているものを拝借。まさに今、私の左手首は、位置といいサイズといい、↓↓↓こんな状態。
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 これは「ガングリオン」と呼ばれる、良性腫の一つだそうだ。とはいえ、ネット相談者の大半が「骨が突き出てきた!」と勘違いしているように、ちっともブヨブヨなんかしていない。結構硬くて、骨が変形して飛び出てきたんじゃないかという恐怖におののいてしまう。
 先の整形外科さんによれば、ガングリオンは「放置」が望ましいという。注射器で内容物を吸い出したり、外科的手術で除去しても、再発することが多く、放っておくと自然消滅することもあるからだそうだ。
 異様な手首の正体がわかるまでは、「私なんか骨まで出して頑張っているのに」と報われない主婦業をぼやくのに使ったりもしたが、本音は恐ろしい難病─進行性骨化性線維異形成症(筋肉が骨に変わっていく病気FOP)に対する恐怖をごまかしていたのである。
 気づいたのが土曜の午後だったので、すぐに医者に行けなかった私は、丸一日無駄に恐怖と闘い、無駄に憂鬱であった。
 でも、ガングリオンという、原因不明ながらも恐れるほどでもない症状とわかった以上、もう平チャラ。月曜になったって整形外科になんか行かなかった。
 案の定、ムスメに叱られた。
 「安心するのは、専門医に診てもらってからでしょう?」
 どっちが親だかわかりゃしない。で、仕方なく火曜日に受診。
Dr.「これは、いつから? 最近じゃないよね?」
ワタシ「それが、いつからかはわからないんですけど、気づいたのは土曜の午後です」
Dr.「あれ? ちょっと待てよ(と脈をとる仕草をしたまま)。コレ脈打ってるな」
ワタシ「???」
Dr.「コレのちょうど下あたりを動脈が通ってるんだけど、コレが血管に食い込んでたら厄介だ──」
ワタシ「!!!」
Dr.「ちょっと!(看護師さんに向かって)ほらあれ! 超音波用意して!」

 超音波断層カメラで念入りに調べてもらった結果、私の突起物は動脈を避けるようにつくられており、悪性腫瘍の特徴はまったく見られなかった。そして、「水ぶくれのようなもの」と診断された。
 私は自分で調べた病名を、間違えないように気をつけながら、おずおずと口にした。ゲングリオンでもガングリゲンでも、もちろんエヴァンゲリオンでもなく──
 「これはあの、ガングリオン、ですか?」
 「ああ、そう、ガングリオン」東北大医学部出身の気さくなセンセイは、素人が知ったような口をきくのにも寛容で、すんなり肯定。
 ガングリオンと認めてもらった以上、私は断固として『放置』を望むものである。もしもセンセイがやれ吸い出すの、やれ切開するのと言い出したら、「今週海に行くのです。帰ってからお願いしたいのです」とウソをついて永遠にバックレる準備も万端。
 「このままでいいでしょ?」むしろセンセイの口から、望み通りの言葉が。「たぶん自然に治っちゃうと思うから」
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 「どうしてもね、主婦は結構手をつかうからね」とセンセイが原因らしいことに触れるのにつられ、私はつい言わなくてもいいようなことを口にしていた。
 「コレに気づく前の日に、すごく重いレジ袋を、左の手首にかけてしまったんですけど──」
 「それは、無い」みなまで言わせず否定された。そんなことでいきなり飛び出たりはしないらしい。
 ま、20代~40代の女性に多い症状だというし、私もまだ若いってことか。ふはははは。
 
 人騒がせだな、ガングリオン。
 
 
    


 

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# by vitaminminc | 2014-08-02 19:21 | 健康 | Comments(0)

「アナ雪」が降らせた大雪に埋もれてしまって、ノー・チェックだった。それだけに、今回観に行った映画には、いい意味で裏切られた。
 もちろん、ネットで映画評はチェックした。5つ星中、概ね星4つ以上。これなら手堅い、
観て損はないだろうと思い、母を誘って観に行ったのだ。
 けど、こんなに面白いとは! ここまで楽しめるとは、正直思わなかった。
 すっごく面白かった!
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「超高速!参勤交代」

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 星1つ欠いたコメントを書いた人たちの難癖は、もっぱら「時代考証」だった。みんなコレさえもっと真面目に(?)考証していたら満点あげられたのに、ってな寸評。言いかえれば、歴史に疎い者にとっては文句なしの満点作品ということだ。
 娯楽映画に徹底的な時代考証を求めたりしたら、その分制約が増えて面白味に欠けてしまう。星が5つになるどころか、3つくらいに減ってしまいかねない。だから、日本史にうるちゃい人を除いて、すべての老若男女にお勧めしたい。

 役者も魅力的だった。
 いわきの弱小貧乏藩の殿様役は、佐々木蔵之介。さすが。品格がある。閉所恐怖症だが、気さくな人柄で、分け隔てなく民に接する、人情味にあふれた殿様。抜刀術の達人で、その剣さばきに目がハートになることまつがいなす。
 そして、持ち前の知恵で何度も藩の窮地を救ってみせる実直な家老に、われらが西村雅彦。もう、家老なんだか過労なんだかわからないくらいの苦労人。体をはって何度も笑かしてくれる、愛すべき人格者。
 さらに、藩で一番年下の武士・弓の名人役に、知念侑李くん。
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 ンもうもう、どうしようもないくらい、超可愛い。この子が話す福島弁の素朴さったらねーのよ、おばちゃん、も~胸がキュンキュン。一番福島弁らすい福島弁だったのではねーがと。
ネイティブ福島弁も知らないくせに大絶賛しちゃうもんね。
 ほかにも、石橋蓮司、市川猿之助、寺脇康文、陣内孝則、伊原剛志、上地雄輔、六角精児に深キョンなど、いい役者が勢ぞろい。あ~、観に行って、ホントえがった。

 もっともっと評判になってもおかしくないくらい面白い作品なのに、イマイチ騒がれていない気がする。
 後味がまた、なんともイイ! 爽快! 落ち込んでたり、ちょっち元気がないそこのアナタ、超高速でこの作品を観に行くことをお勧め。滋養強壮剤よりダイレクトに効くことまつがいなす!

 ど~でもいいが、人からDVDを借りて観た「アナ雪」、私にはイマイチイマニイマサンだった。どこがそれほど面白いのかサッパリ。そりゃ映像はきれいで見事でしたョ。あと、別に好きじゃないけど、歌は確かに耳に残る。でもそれだけ。観終わったあと、頭の上にクエスチョンマークが扇状に並んでしまった。
 私だけがおかしいのか?とふと心配になったが、一緒に観たムスメも「つまらん」という感想だった。あ、もしもアナタが「アナ雪」が大好きでしたらお許しを。我々母娘、おかしいんです。きっとハートが汚れてしまっているんです。おほほほほ・・・

 やっぱり私は日本人なんだな~。福島バンザイ!
 

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# by vitaminminc | 2014-07-25 18:39 | 趣味 | Comments(0)

 関東地方もようやく梅雨が明けたらしい。
 太陽の季節、そして体温の季節。今日も35℃は超えそうだ。

 私は壺を持っていない。だから壺の代わりに、頭蓋骨の中に大魔王とあくびちゃんを閉じ込めている。
 現金なものである。たっぷり寝ていても、仕事中は何度となくあくびちゃんを噛み殺す。ごめんよ、あくびちゃん。
 その癖、夢中になれることがあったりすると、覚せい剤でも打ったんかいというぐらい、頭が冴える。もちろんこの冴えは、もっぱらフィクションに対してのみ活かされ、決して仕事や勉強など現実的側面ではまったく役に立たない。ネバー。100%、役に立たない。
 それを裏付けてみよう。そもそも私が夢中になれる対象は、この世に存在しないのである。私を夢中にさせてくれるのは、いつだってフィクションなのだ。非現実的世界に存在するもの、非現実的世界で起こる事象、あるいはそういった非現実的夢の世界そのもの。だからこそ夢中になれる。
 話がくどくなってしまったが、私はつくりものが好きなのだ。映画だったり、小説だったり。要するに、現実から逃避することが好きなだけである。
 その日私は、CATVで放映された「ゴールデンスランバー」という映画を鑑賞した。堺雅人主演の映画で、なかなか面白かった。またいつか観てみたくなるような、息の長いタイプの作品だったので、ああ、予約録画しておいて良かったなぁとしみじみ思った。
 次に私は、その同名の原作(伊坂幸太郎/著)をネットで取り寄せた。半分まで読んだところで、予想通り、映画をしのぐ面白さだったので、会社の同僚相手に大絶賛。その同僚とは読書仲間で、私が持っている万木目学作品と、同僚が持っている伊坂幸太郎作品を交換し合うのが常だった。
 ここにきて、逆転現象が起きたわけだ。いつもなら、同僚のほうから貸すよといってくるはずの伊坂幸太郎作品を、私のほうが先に読んで貸す。もとより伊坂好きだった彼女は、当然のことのように言った。
「貸して」
 紹介して、貸すとまで言った以上、「いやぁ、実はまだ半分までしか読んでなくて」と待たせるのも忍びない。ちょうど脂がのって来たところだ。物語も俄然面白くなっている。分厚い長編ゆえ、残り半分といっても、通常の文庫本1冊以上のヴォリュームはあったが、私はふた晩で読み終える決心で臨んだ。
 ところが、面白すぎて止まらなくなった。気づいたら、夜が白々と明けつつある。えらいこっちゃ! 今日も仕事なのに、もう若くもないのに、ほぼ徹夜で出勤とは!
 4時半に読破するやいなや、意地でも寝てやるとばかり、ギリギリまで仮眠をとって、しっかりお勤めを果たした。
 人間、やる時ゃやるものである。睡眠不足にはからきし弱く、本来であれば「仕事にならない」状態に陥っても不思議じゃなかった。それこそ小説のタイトルどおり、黄金のまどろみを享受してこその自分、のはずだった。
 朝一で、バトン(小説)を無事同僚に渡し終えた私は、若干いつもより無駄口が少なく、若干いつもより品位を保ち、若干いつもより真面目に仕事ができた。
 私の頭蓋骨の中の魔王は、睡魔界の魔王だ。フィクション大魔王だけあって、面白い小説が大好物。小説を読んでいる間中、その見返りとして、私に上質な眠り(ゴールデンスランバー)を与えてくれたらしい。
 ふつう睡眠不足の翌日は、疲労ハイでどうにかもっても、翌々日には絶対ガタが来る。それが今回、まったくなかった。
 そう、私は目を開けたまま眠ることも得意だが、目を開けて活字を追いながら、本当に夢を見る─つまり眠る─に等しい優れワザを体得したのである。
 何度もいうが、このゴールデンスランバーは、退屈でわけのわからない学術書の活字を目で追いながら、≪寝落ち≫するのとは全く違う。
 脳は、現実(いつも)以上に、覚醒していた! 

 余談ではあるが、映画版のキャストについて。
 堺雅人は、原作の人物描写が、まさに堺雅人の風貌を指しているとしか思えないくらいだったので別格としても、主人公の元カノ役の竹内結子も良かった。彼女以外、元カノ役は不可能だと思わせるくらい、ハマリ役だった。話し方も、声さえも。だから小説を読んでいると竹内結子の声に変換されるので、すごく愉しかった。
 まだ「ゴールデンスランバー」を読んだり観たりしていないみなさんへ。本作品の場合は、先にヴィジュアル(映画版)から入っていくことをお勧めします。
 映画を観て、ストーリーがわかったあとでも、いや、わかっていれば尚更、小説が愉しく読めます。見事なキャスティングのおかげで、台詞すべてが、映画の出演者の声で再現されるのですョ061.gif
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# by vitaminminc | 2014-07-23 15:11 | 趣味 | Comments(0)

お告げ

 昨年11月に義母が他界した。四十九日法要を終えると同時に、それまでオットの実家で義母が管理していた仏壇が我が家にやってきた。といっても、私が運転する車に載せて、私がお連れしたのだが。
 位牌は義父母2柱あるのに、遺影は義母のものだけが飾られた。12年前に亡くなった義父のものはない。何となく落ち着かない気分になった私は、オットに問うた。
 「お義父さんの写真は飾らないでいいの?」
 オットは気乗りしない様子で、「仏壇の引き出しの中に、数枚親父の写真が入っているはずだけど」と私に丸投げした。
 引き出しの中に入っていたのは、セピア色に褪せた、かなり古い写真だった。義父はずいぶん若く、下手したらオットが生まれる前のものではないかとさえ思えた。
 「こんな古いのじゃなくて、お義父さんのお葬式の時に作った遺影、それの小さい方、実家にあるんじゃないの?」
 答えはNoだった。処分してしまって、もう存在しないという。オットははっきり誰が、とは言わなかったが、義母が処分したのは明明白白。義父は昔気質の超関白亭主で、義母によく手を上げたらしい。義父の遺影を処分したのは、おとなしく無抵抗で、我慢に我慢を重ねて尽くした義母の、それは最後の抵抗心だったのだろう。
 ならばバランスよろしく、義母の遺影も飾るのをやめようという気にはなれず、うやむやのうちに月日が過ぎていき、私もいつしか遺影のことは考えないようになっていた。
 そんなある日(先月末)、私は義父から言われたのだ。目覚める直前まで見ていた夢の切れ端で、その言葉は残響として、いつまでも鼓膜にはりついていた。

──写真は、2つ並べて飾るものだよ。

 義父は生前、嫁の私にもうるさいほうだったので、私も正直言って義父は苦手だった。けれど、夢の中の義父は、ただただやさしかった。柔和な笑みを浮かべて、静かにそう訴えかけたのである。
 起床して、夢の話をムスメにしたところ、ムスメもちょうどおなじ日の真夜中過ぎ、不可思議な音を聞いたという。床に就いたものの、まだ眠れずにじっと横たわっていたら、いきなりベッド脇で金属音がしたのだと。ムスメのベッドはパイプベッドで、何か硬いものでベッドの柵を叩かれたような感じだったという。驚いたムスメは、布団をかぶるようにして、現実から逃げるように眠りに就いたらしい。
 で、私は行動に出た。ムスメのアルバムを引っ張り出して、義父が写っている写真を探した。まだ1歳くらいの幼いムスメを抱っこした義父が、夢の中の印象そのままに、実に柔和な笑顔で撮れている一枚を見つけた。
 義父の葬式で使われた遺影も、元はムスメを抱っこした写真で、私が撮ったものだ。が、新しく作り直す遺影は、義母に処分されたのとは別の写真にしたほうがいいような気がした。
 早速カメラ屋に持ち込んで、遺影の作成を頼んだ。ムスメの手が入ってしまわないように、「着せ替え」サービスを利用することにして、義父には渋い感じに紋付袴を着てもらうことにした。
「髪はいかがされますか?」と店の人が聞いてくれた。え!? 増毛まで!? しかし、
それではあのセピア色の写真を飾るようなものではないか。義父から頭部の輝きを奪ってしまっては、もはや義父ではなくなる。上がる口角を下げようもないまま、やんわり辞退した。
 加工には1万円ほどかかる。これはぜひともオットから徴収し、亡き父親の供養に一役買ってもらわねば。

 2013年9月25日付日経サイエンスによると、ここ10年間、夢を使った能力開発や課題の解決はどこまで可能か?といった、脳科学の研究成果に基づいた研究が進展しているそうである。

 人が夢を見るのは「レム(REM=急速眼球運動の略)睡眠」時で、この間、眼球のみならず、脳の活動も覚醒時と同じ水準に高まっているという。

 ただ、活性化している脳領域は覚醒時とは異なり、夢を見ているときは、大脳皮質のうち視覚や動きの感知に関わる部分、及び情動に関連した部分の活動が活発になっているという。

 対照的に、意思を伴う行動や、論理的・社会的に適切かどうかの判断に関係した領域(前頭前野背外側部)はあまり活動しない。このことの一つの解釈としては、思考を論理的で既知の事柄に制限している「思考の抑制作用」が弱まり、常識にとらわれない思考をすること。すなわち独創的な発想や、問題解決が導かれるというもの。

 今回の夢のお告げは、むしろ常識的に考えて導かれた結果、のような気がしてならない。義父の遺影の仕上がりには、発注から10日ほどかかるらしい。義父が紋付袴を気に入ってくれるといいのだが。

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# by vitaminminc | 2014-07-03 16:03 | 人間 | Comments(0)

田丸麻紀 と 
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真木よう子   
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波瑠
 と
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綾野剛
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けッ! いったいどこが! とお思いの方がいたって全然かまやしないのです。
あくまでも私見です・・・ふっ。

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# by vitaminminc | 2014-07-01 18:09 | 趣味 | Comments(0)

なんちゃってフル装備

 職場での雨降りの朝の会話


同僚「オハヨー。今日は(雨だから)バスで来たの?」

私 「いや、自転車で」

同僚「へーぇ、頑張ったね」

私 「レインポンチョに、レインハット、そしてこの・・・」と、足元を指差し、

  「ガーデニングシューズ」

同僚「(笑)あっはははははは、今日もしっかり、ハズさないでくれて・・・(笑)」

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# by vitaminminc | 2014-06-23 21:34 | 笑い | Comments(0)

イナカ者とイカ者

 腐ってもトウキョ~。23区の1つに生まれ育った私の中では、ガッコの保護者会 に出席するには、スーツ着用 というのが常識だった。
 夏はさすがに上着なしでも、白ブラウスにスーツの下(スカート)という、それなりにきちんとしたいでたちでガッコを訪れるものと思っていた。
 ところがドスコイ、結婚して都落ちして住むようになったわが町においては、まったく違った。上の子が小学校に入学し、最初の保護者会を控えた私は、近所のママに、「当たり前のことだけど」と前置きし、念のため確認した。「もちろんみんなスーツで行くよね?」
 「えぇ~~~」と笑われた。「ジーパンじゃまずいけど、そこまでキッチリした格好で行く人なんていないよ」
 半信半疑ながら、「スーツだと浮くから止めた方がいい」という言葉を信じ、割ときちんとした、おとなしめの、真面目そうな服装で参加した。
 みんな結構ラフなので驚いた。なんていうのか、幼児の世話をするため動き易い服装で来るのがベターだった、幼稚園の保護者会感覚のまま、小学校にもつれ込んだ感じ。下手すると、スーツでもないのに、割ときちんとした服装でさえ浮いているような気がしたほどである。
 そして町全般において「保護者会は普段着でも可」が当たり前であったが、地球温暖化に比例するかのように、年々ラフ度が増していくように思われた。さすがに県立中高一貫校の説明会に、ジャージの上下でやってきた夫婦を見た時は我が目を疑ったが。
 ところで、ガッコの最初の保護者会で感じた違和感はどこへやら、私の中の田舎ントリー精神は、必要以上に順応し、ラフ化の一途を辿っていったのである。

 そんな田舎ントリーな私にとって、ムスコの高校の保護者会は、実に敷居が高い。校風なのだろうか。夏場であろうが、95%以上の保護者が黒のスーツで御来光ぃゃ、来校する。誰の葬式ですかってなもんである。ちなみに残る5%は濃紺もしくはダークグレーの上下である。
 そんなことを知らなかった田舎ントリーな私は、昨年第1回目の保護者会でしくじった。黒ではなく、紺のサマージャケットとライトグレーのスカートで参加してしまったのである。講堂のどこを見回しても黒ずくめであるからして、大変肩身が狭かった。下が上と違う色なので、一生座っていたかった。
 全体保護者会が終了し、ムスコのクラスに移動した。斜め前方の席に、ワークシャツにジーンズで来てしまった、気の毒なデザイナー風のおとーさんが座っているのを発見。どんなに癒されたかしれやしない。しかし、その肩は男性にしては窮屈そうで、物言わぬ背中には、「絶対うしろ、振り向きません!」という意思が殴り書きされているかのようであった。

 去年の失敗で学習した私は、今年は黒を身にまとった。が、蒸し暑い。亜熱帯化しているこの日本の夏に、上着なんて耐えられない。それでも一応、丁寧に折り畳んだ上着を持参の上、参戦することにした。
 しかし、今年は服装問題だけでは済まなかったのである。
 出がけになって、履いて行くべき黒のパンプスが行方不明であることに気づいた。当然入っていると思っていたシューズボックスのふたを開けたら、もぬけの殻だったのである。昨年11月に、義母の葬儀の際に履いたあと、一体いずこへ・・・。私は足のサイズが小さい。間違ってもムスメが履いていけるわけはないのである。
 どこを探しても見つからないので、仕方なく、別の古いパンプスを履いていくことにした。確かこれって、足が痛くなるタイプの靴だったような・・・だからこそパンプスを新調したのでは・・・? 悪い予感は的中。バス停までたった3分歩いただけで、すでにアキレス腱のすぐ下(ここも踵に入るのか?)が痛くなった。
 駅に到着してみると結構時間に余裕があった。近くのマツキヨに寄って、靴ずれ対策用バンドエイドを購入。イトーヨーカドーのトイレで両方の踵を保護すべく、応急処置を施した。
 靴ずれ用バンドエイドは高価なだけあって、クッション性に優れていた。これならどうにか耐えられるかもしれない。一縷の望みを抱くことができた。
 
 しかし、渋谷駅で撃沈。いい加減ウンザリする距離を歩かねばならない乗換途中で、右の踵に痛みが走った。バンドエイドがズレてしまったのだ。苦痛と闘いながら、「痛くない、痛くない」と自己暗示をかけて歩き続けた。
 そのうち、踵をかばうように歩いたせいで、さらに右足の小指まで痛くなってきた。もともと靴が窮屈なわけではない。むしろ若干ゆるいために足がフィットせず、踵に靴ずれが生じてしまうのだ。それに反しての小指の痛み。明らかに、締め付けられることによるものである。踵の痛みから逃れようとして、無意識に足が前方に寄り、その結果、魔のデルタ地帯(とがったつま先)に押しつけられ、小指が悲鳴を上げているのだ。
 地獄であった。小指の血流は堰止められ、うっ血し、じんじん痺れてきた。しかも、小指を犠牲にすることによって踵の痛みが軽減することはなく、ズル剥けはing形なのである。
 
 ガッコに着いた。校舎までの並木道が永遠に思われた。教室までの廊下も永遠に思われた。
 痛みのせいでにじみ出た脂汗は引くことを知らない。従って、誰もがきちんとスーツの上を着ている中、私だけが白いブラウスで光り輝いていた。もうどうでもよい。
 担任登場。白Yシャツに、ライトグレーのスラックス。上着など着用していない。私は指差して叫びたかった。
 「ざまあ御覧ください、先生も正しく肌で季節を感じておいでです! 夏仕様です!」
 私の心の叫びは教室に響くことはなく、担任が型どおりの挨拶を始めた。ところが、話の途中でいきなり話題を変えたのである。
 「教室、暑くて申し訳ありません。室温を26度までしか設定できないようになっているもので・・・」
 クラスの特徴などを話していたはずなのに、なぜ急に?
 まもなく、せわしなく動くものが私の視界に入ってきた。
 それは、私の左手に持たれて私の左手首によって高速前後運動を続けている扇子であった。
 一瞬だけ体感温度が下がった。私はそーーーーっと扇子を畳み、そーーーーーっと机の端に置いた。そして、そーーーっと黒目だけを左右に動かして、周囲の様子を窺った。ある人は机の上に上品に置いた両手を聖母マリアのように組み、ある人はしゃんと背筋を伸ばして担任の言葉に聞き入り、またある人は自前の手帳に自前のペンで何やらメモをとっていた。
 私の体感温度は確実に20度上昇し、完全に発熱状態に陥った。
 しかし、やがてスーーーーッと平熱に戻る事態が起きた。担任が、定期テストの成績表を配ったのである。
 驚いたことに、いや、予想通りというべきか、わがムスコの成績は、数Bただ一教科をのぞき、ほかはすべて、見事なまでに、きれいに平均点を下まわっていたのである。
 ヤリイカ、アオリイカ、スルメイカ・・・イカにもいろいろあるけれど、
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 うちのムスコは、平均イカ。

 帰りは妄想で痛みを紛らわせるしかなかった。
 もう、右の踵は血まみれに違いない。昇りエスカレーターで私の後ろに立つ人は、さぞかしドン引きしていることだろう。
 もう、右足の小指は、壊死しているに違いない。家に帰ってストッキングを脱いだら、つま先に、もげ落ちた小指だけが残ることだろう。
 歯を食いしばって歩く凄い形相を人に見られたくなくて、復路はこの暑いのに、マスク着用で帰った。

 うちに着くなり、恐る恐るパンプスを脱いでみたら、小指が赤くなって、アキレス腱下の踵は薄皮が剥けただけだった。血も滲んでいやしない。どれだけ痛みに弱い体質なのか。
 それにしても若いころ、よくもこんな非人間工学的履物を履いて歩けたものである。
 あの頃私は痩せていた。体の重さを分散させるには、足の小さい私は不利である。いっそ一年中雪駄を履いてはどうか。などと屁理屈こねてないで、真面目に減量してみるか。
 「奥さん、もうやめて!」
 「頼むから、もうそれ以上痩せないで!」
 子どもたちが手に手に握り飯を持って私にすがりつく姿を妄想し、ふとズル剥けた踵に目をやる夏の午後。
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# by vitaminminc | 2014-06-21 17:26 | 人間 | Comments(0)

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