母性本能くすぐり魔

地井武男さん亡きあと「ちい散歩」を見ることがかなわなくなった私にとって、今、心のよりどころとなっているのが、BSプレミアムで放送されている「にっぽん縦断 こころ旅」であります。
好きだと胸を張る割には、リアタイでの放送をことごとく見逃しております。雑誌で言うと季刊ものに近いからでありましょうか。
ある日ハッと気がつき慌てて調べるのであります。今現在放送されているのは、毎週木・金のお昼時。これは再放送なのか? 再々放送? それとも「とうちゃこ」版という特選もの? 
よくわかりませんが、とにかくイ~イ旅番組です。火野正平さんが、すごく可愛いのです。

火野正平と言えば、忘れもしない、あれは私が小6の頃。幼馴染の家に遊びに行くと、その子のお姉さん(高1)が、自分の友だちと噂しておりました。
「火野正平、また違う女の人と付き合ってるみたいね」
「知ってる、テレビで見た! 小鹿みき、泣いてたよ~」
そうかそうか。火野正平という人は、女の敵なのだな。
子どもの私には、スキャンダルの裏に隠されたミラクルな❛現実❜などわかるはずもありません。
火野正平に泣かされる女性はいても、火野正平を恨む女性はいないという不思議。
だから刷り込みのように、密かに火野正平を敵視し続けたのでした。
同時にTVで見ても、(この人の一体どこが女性にモテるんだ?)
てな具合で、さっぱり理解できないのでした。

ところが、今になって納得させられました。
「にっぽん縦断 こころ旅」という番組を通じて、ようやく。
東京は目黒区生まれの火野さんですが、中学から大阪に移り住んだようで、この番組ではもっぱら大阪弁。
大阪弁を愛する私には、ソコもまたツボなわけです。
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完璧な母性本能くすぐり魔。父性本能をもくすぐるようで、男性ファンも多いのだとか。
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そういえば、お顔もどことなく小犬のヨークシャテリアっぽいかも。
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この番組の構成は、朝から始まります。スタート地点となる場所で、火野さんが視聴者から送られてきた手紙を読みます。
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視聴者のこころの風景──思い出の場所を目指して、火野さんとスタッフが、自転車で旅をします。
嵐でない限り、雨天決行。
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「晴れてたらもっと遠くまで見渡せたろうねぇ」なんてこともしょっちゅう。
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旅の途中、一行はゴハンを食べます。有名店に立ち寄るのではなく、旅の途中にある、ごくごく普通のゴハンやさんです。
火野さんは、食べることがお好きなようで、お食事タイムは何ともいえない笑顔を見せてくれます。
お店に入ってメニューを見るなり、「あ!」と叫んで、なぜかパッと手で隠してしまいます。
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カメラがズームしていくと、「松茸うどん」の文字が。
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予算超える? と気にしつつ、「380円オレ自分で払うから」と、1380円の松茸うどんを注文。
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松茸うどんが運ばれてくると、純粋無垢な笑顔で嬉しそうに受け取ります。
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松茸を口に入れ、「オイチイ!」
幼児言葉がこれほど似あう68チャイ、そうザラにいません。
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もう、可愛いったらありゃしない。
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それでは、あくまでも【私の好きな番組紹介】ということで(著作権に抵触・高触しようがしまいが)、ある日のルートをたどってみましょう。
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「おはようございます。香川県、高松空港にいます」
リスに乗っても違和感まったくナシの68チャイ。
ボヘミアン調のゆるゆるの服も、毎回楽しみの一つ。私好みなんであります。

この日の旅は、「父との忘れられない思い出の場所──綾川町枌所(そぎしょ)の永富池(ながとみいけ)」
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晩年は体調を崩しがちだったという差出人さんのお父さん。ある日突然、小さい頃に遊んでいた永富池にもう一度行ってみたいと言い出したお父さんを車の助手席に乗せ、お父さんが指示する通りに田舎道を進み、迷うことなく永富池付近に到着。
そして、足腰の弱った小柄なお父さんをおんぶして、予想以上の軽さに驚きながらも、ハアハアと息を切らせつつ、池の淵まで坂道を上がったそうです。
ようやく永富池にたどり着くと、目の前に深い青色の湖面が広がっていて、ふたりで何も言わずにずっと眺めていたことを昨日のことのように思い出します─と綴られていました。

火野さんは手紙を読み終えると、おもむろに口ずさみました。
「たわむれに 母を背負いて そのあまり軽きに泣きて 三歩あゆまず──」こういう歌があったよね、と。石川啄木ですね。
「これ、お父さんをおんぶしてるね、女の子(←58歳 私と同年代を指して❛女の子❜扱いしてくださるっっっ162.png)。
「だからどうしたらいいかというと、池の淵までハアハアと息を切らせながら、ネーさん(←この日の監督/女性)がオレをおんぶしてくれればいいんだ、(オレ)軽いから。泣けてくるよ、軽いから」
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そう言って、いたずらっぽい表情でにっこり。超カワイイ。

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さあ、旅の始まりです。
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「下手なのか上手なのかわからん、アレ。可愛らしい162.png
いえいえ、チャリオくん(自転車)を停めて案山子を見つめる火野さんも負けずに可愛らしいです。ベストの大きな右ポッケには、一体何が入っているの?
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「(この辺りで)唯一のごはんやさん発見169.png やってるの?」
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「あれ、にゃんこたち113.png  あ、(お店)openてかいてあるよ」
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「ポンポン大きい猫。おい、お腹大きいな162.png
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(ふん、マタハラよ!)とにらみつけて見せるにゃんこですが、まんざらでもなさそう。
火野さん、にゃんこの母性本能もくすぐったようです。

「5人でごはん食べられますか? ごはんを食べてるところ撮影できますか?」
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「まあ、上がってくんなぃ。オレんちだけど(←嘘)」
「なんでもいいから食べさせて」
「カレーでいいですか?」
「十分です」
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お店のお母さん、気づくの遅ッ(笑)
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「おうちみたい162.png 」といって嬉しそうに寛ぐ火野さん。「ほっこりしますね」とスタッフさん。
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「お待たせしました」

「オイチチョー! いただきまーす」
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「オイチーオイチー、お母さんカレー110.png

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腹ごしらえも済んで、再びツーリング!

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「永富池、放流したって言ったな、さっき(ごはんやさんの)お母さんが」
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「よいしょ、よいしょ、ふぅ」

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「おぉ! 大発見や~! 高い堤になっているという堤があれだ」
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「あぁ、永富池出た! 永富池!」
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「えぇ? この坂をお父さんをおんぶして上がった? この坂を・・・じゃあネーさん、お願いします」
にわかに背を丸め、膝を曲げて爺さん然となる火野さん(笑)

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気のいい女性監督が、火野さんをおんぶしようと試みますが、重くて一歩もあゆまず。
「ネーさんその気になってるよ、ネーさん恥ずかしいからヤメて、ネーさん変態」
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女性監督の背にしがみつく火野さんに「変態」と言い返し大笑いする女性監督。

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火野さんが、長い坂をふぅふぅ言いながら登っていくと──
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「あぁ、こういったふう──デカッ! ああ、ここが全部見えるな。こんなんです」
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「着いた。いいとこだね。ふたりでずーっと見てた・・・どの辺やろな。来たよ」
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思い出の場所──こころの風景に溶け込んで、再びお手紙を読みます。

お手紙も、必要以上に感情を込めることなく、むしろ淡々と読んでくれるのが、またいいんです。
こちらが感情移入するのに邪魔にならないというか、とにかく丁度いい感じなんです。
だから、お手紙に泣かされることもしばしば。

以上。今、私が最も好きな旅番組の紹介を終わります。










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# by vitaminminc | 2018-02-10 20:15 | 趣味 | Comments(2)
今年の節分は、珍しく家族全員揃って家にいた。
ならばコンビニが仕掛け、今や全国区に定着してしまった恵方巻きを作らねばなるまい。しかし、なにゆえ関西の風習を真似せねばならんのだ。こちとら埼玉に住んじゃいるが、江戸っ子なんでぃ。てやんでぃ。
浅ッい歴史の渦の中、くるくる踊らされながら、くるくる海苔を巻くのかい。まくといえば、豆まきの豆も買い忘れているではないか。いかんいかん、豆まきだけは欠かしたことがないというのに。
観念した私は、徒歩10分ほどの所にあるコープみらいまで、豆と太巻の具材を買いに行った。

卵、サーモン、海老、カイワレ、沢庵(干瓢の代役)などを並べ、一気にくるんと巻いた。
手加減が馬鹿力級だったので、4匹並べた海老の内、左端の1匹がロケット噴射して床に落ちた。
ヘラッと笑いながら拾って水洗いして、ピッピと水を切り、ぐいっと太巻の端に捩じ込んだ。我ながら雑ッ!
作る過程がいかにひどくとも、見た目はきれいな恵方巻きちゃん。
皿に盛り付け、大きな子ども2人を夕飯に呼んだ。
ムスメ「恵方巻き作ったんだ、いいね~♪」
そしておもむろに食べ始めた弟に向かって、姉が言った。
ムスメ「南南東に向かって願い事をしなきゃダメなんだよ」
ワタシ「南南東はどっち?」
全員ムスメが指差す方──つまり、それまで通りテレビを見ながら、そしてテレビ番組の進行に集中力を妨げられながら何かしら祈りつつ食べた。
本来は物言わず一気に祈りを込めて食べるものらしい。歴史がないくせに、なぜか作法はしっかりある。
しかし、我が家は我が家流を貫くのみ。一口食べては醤油皿に太巻の先をちょんちょん浸しながらいただいた。甘く煮込んだ干瓢がキライなので、味付け役として沢庵を抜擢してはみたものの、歯応えしか演じてくれなかったからである。
恵方巻きを食べ終えたムスコが、さっさと自室に引き揚げようと居間のドアに手をかけた。
ワタシ「ちょっと待って。豆まきしてよ」
ムスコ「俺が?」(⬅白々しいにも程がある)
ワタシ「毎年やってくれてたでしょ」
ムスコ「え? そうだっけ?」(⬅精一杯の抵抗か)
ムスメ「やってたやってた」
不思議なことに、こうしたことには従順なムスコ、私から豆が入った器を渡されると窓を20cmばかり開けた。年々細くなる。
そして、地声より半オクターブ低い声で、「鬼は外」と不気味につぶやき、力なく豆を外にピッとまく。それを見てムスメが吹き出した。いっそムスメが口から飛ばした方が勢いがありそうだ。
ワタシ「あ、家の中にはまかないで、福は内の分は口に入れちゃって(後片付けが面倒だから)」
ムスコ「福は内、ポリポリポリ…」
ムスメ「あはははは…」
この、アングラ劇場の一幕のような豆まきが終了したあと、ムスコが言った。
「腹減った。夕飯何?」
おい。豆まきをする前、おまえは確かに2階に引き揚げようとしたよな。それは、《夕食を終えた》ことを認識したからだよな。なのに豆まきをした後、おまえはすでに空腹を覚えている。あの奈落の底よりも低いテンションで、一体どれだけのエネルギーを消費したというのだ──というようなことを私が頭の中で思っている最中、ムスメが弟に言っていた。
「え? 今の恵方巻きが夕飯だよ。私は十分足りたよ」
しかし、恵方巻きを作りながら、一抹の不安はあったのだ。
(これで足りるかな、ムスコ)
純粋な休日を与えられていないブラック企業よりスーパーブラックな主婦。ここ季節の分かれ目にきて、エネルギーが切れかかっていたのである。恵方巻き以外作る気にならなかったんである。
ムスコ「なんかない? スープみたいのでいいから」
ワタシ「なら、卵スープ作ろうか?」
ムスメ「あ、卵スープがいい♪」
ムスメは私が定時に帰れるよう私の肩をもってくれていたはずの手のひらを返すと、今度は私の残業の後押しをした。
温かいスープを飲みながら、今年の節分も幻聴を耳にした。
寒いのに窓をいっぱいに開ける音。
「鬼は外、福は内!」と叫ぶ可愛い声。
外の地面に、家の床に散らばる豆の音。

15年以上前の、懐かしい音。








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# by vitaminminc | 2018-02-04 03:31 | 人間 | Comments(2)

皮革三原則

皮革三原則──それは、大切にされるべき革製品を箪笥の肥しにせず、ネットオークションに出品せず、劣化させないことを指す。

箪笥の肥しにはしていなかったつもりだが、クローゼットの奥で眠っていたレザーのハーフコートがある。
オットの遺品である。
革製品はいかついイメージがあるけれど、オットのそれは上品なオリーブ色。
私の好きな色の1つで、やさしい印象の1着だった。
袖を通さないままだったり、滅多に着なかったものは売ったり譲ったりして、殆どの衣類は処分した。
でも、どうしてもこのコートだけは手放せずにいた。

去年12月に入って間もなく、私は突然ひらめいた。来年(つまり今年)1月、ムスコは成人式を迎える!
オットのお下がりをムスコに着せるという発想はなかったが、このハーフコートならムスコの年齢でもイケるんじゃないか?
オットより10cm近く背が高いムスコだが、このジャケットなら入るんじゃないか?


思い立ったら居ても立ってもいられなくなって、箪笥の奥から引っ張り出した。
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あらら? もっと状態がよかったように記憶していたけれど、袖口など擦れやすい部分の色褪せが気になった。
なんじゃこの写真は。わかりにくいが、アップして撮ったのがコレ ↓ 袖口の色が抜けてしまっている。
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革のクリーニング・修復を行っている業者をネットで調べまくっていくうちに、「協和クリーニング」さん(愛知県豊橋市)にたどり着いた。
往復の送料&代金引換払いの手数料が無料な上に、クリーニング料金がほかに比べて群を抜いて良心的。とはいえ、ノー・ブランドの新品が楽天バーゲンなら2着は買える。
ムスコに確認してみた。美しく蘇ったら、本当に着る気はあるのかと。着る気があるなら成人式のお祝いに、諭吉2人をクリーニングに送り出す覚悟であると。
ムスコが首肯したので、早速申し込んだ。
ところが、職人さんが1着1着丁寧に仕上げることからもわかるように、申し込みは1日限定10着。
しかも毎日受付けているわけではない。「次回の受付日」は翌週だったりする。
そんなこんなで、限定数に滑り込みセーフで入れたのは、3回目にしてやっと。でも嬉しかった!
クリスマスイブイブだったので、若いユーザーや小さなお子さんがいる家庭は、クリスマスの準備で申し込みどころじゃなかったのかも(笑)

家にあったダンボール箱にハーフコートを入れて、集荷に訪れたドライバーさんに託した。
ハーフコートが先方に着いて中を確認した協和クリーニングさんが、打ち合わせの電話をくれた。
オーダーの最終確認を済ませて、あとは仕上がりを待つのみ。

完了の連絡メールが届いたのは、1月22日だった。
無理もない。年末年始の休業を挟んだし、鞄やお財布といった小物とは違い、大物である。
フード・ライナー(別料金2,376円)付きハーフコート(シミ抜き・色修正:18,144円)。
更にオプションで、撥水加工(3,240円)も追加したのだった。

メールを受けた数日後に、オットの形見が帰還した。

意外なことに箱入りではなかった。型崩れが生じないよう、このように「吊るし」の状態で届けられたのである。
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外カバーを外すと内カバーが現れた。
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ジャーン! ようこそ、メンズメルローズ様。嗚呼、しなやかでキレイ113.png
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 たまたま家にいたムスコを呼んで、一緒に確認した。
「大したもんだな!」
 ムスコも見事に美しく蘇った革に手で触れ目に触れ驚嘆していた。
「ちょっとちょっと、着てみてよ」
 と私が頼むと、照れくさいのか、面倒くさそうに袖を通した。
「すげー重い
 革のジャケットなんか着たことないから無理ないか。手長霊長類のムスコには若干袖丈が短い感がなきにしもあらずだが、ギリギリOK。
「とーちゃんの人生の重みだよ。とーちゃんをおぶってるつもりで着てあげてよ」
 私がつい余計なことを言ってしまったばかりに、ムスコは嫌悪感をあらわにした。感傷的なことが大嫌いな性分なのである。
 母と一緒に「そうだねかーさん。これをとーさんだと思って後生大事に着るよ」としんみり同調するようなタマではないのである。
チッ!
 舌打ちするや否や、さっさとジャケットを脱ぎ捨ててしまった(苦笑)

 それにしても、いや~、いいお仕事されてますね。協和クリーニングの職人さんの腕の確かさに、心底脱帽。
 カメラ機能のせいで、クリーニング前とクリーニング後の違いがイマイチ伝わらないかもしれない。
 実際、まったく色むらもなく、新品と見紛うばかりの美しい仕上がりなのである。



コレが↓
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こんな感じに!↓
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あとは、親父の霊を背負わされるという呪縛を解いたムスコが、曲がった臍を正し、機嫌を直して着てくれりゃー、私ゃ大満足。










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# by vitaminminc | 2018-01-31 17:10 | 人間 | Comments(0)

独り進歩ジウム

 一昨日の就寝前。
 いつものようにベッドに寝ながら時代小説「居眠り磐音江戸双紙」の20巻目を読んでいると、いつになくふたりがキャッキャとはしゃぎながら、逃走犯と追手役を交代しては8畳洋室の空間を最大限活用して走り回っていた。
 あんまり走り回るものだから、エネルギーが有り余ってるのだなと解釈した私は、部屋の温度が急激に下がるのも致し方なし、と部屋のドアを開けることにした。猫が走り抜けられるように、爪とぎをドアストッパー代わりに挟むと、まずくーちゃんがトトトトッと廊下に出ていった。うずらも数秒後に、こちらは一目散に廊下を出てすぐのところにある階段を走り下りていく気配。
(うっひゃ~、寒い!)私は慌てて布団に潜り込み、廊下から容赦なく入り込んでくる冷気に負けじと再び文庫本を手にした。
 が、間もなく分厚い布団を介して、足もとと腹の上に重みを感じた。
「なんだ、もう戻って来たんかい」
 私は部屋の中にふたりが戻っていることを確認すると、廊下の電気を消してドアを閉めた。もともと部屋から出たがらないふたりだが、部屋の外のあまりの寒さに耐えられなかったようだ。
 かくして、ふたりの捕り物が再開する中、私は江戸時代にワープしたのであった。
「イデ!」
 顔面と左手に鋭い衝撃を受け、私は上体を起こした。
「何をするんですか!」
 となぜか丁寧語で悪態をつきながら、鼻梁から少なくとも流血はしていないことを確かめホッとしつつ、左手の親指の付け根の下3cmの手のひらから流血していることを確認してハッとした。
 1階の洗面所の鏡で顔を確認しながら推理した。
 ベッドの端からジャンプしたうずらの前足は、私が手にしていた文庫本の上(その真下は私の顔面)に着地し、後ろ足は文庫本を手放して宙をさまよっていた私の左手の腹を捕らえつつ踏み台に使われたようだ。目撃したわけではないが、こういう瞬間的無意識の暴力は、ほぼ100%犯猫はうずらなのだ。なぜなら、くーちゃんはわざとゆっくりと私の腹の上を踏みつけて歩いてみたり、どっしりと私の胸の上に箱座りしてこちらを観察する、意識的な「御覧あさ~せ」タイプだからだ。
 文庫本のお陰で、顔面は痛みの割に無傷であったが、皮の薄い手のひらにはくっきりとうずらの爪痕が刻まれ、血が出ていた。
 水道水で洗い流してティッシュで圧迫して止血したあと、消毒スプレーを噴霧した。
 そして、懲りずに小説の続きを読みながら、
(日曜になったらふたりとも動物病院に連れていって、爪を切ってもらわねば)
 と決意したのだった。
 で、今朝。
 起床してすぐにフレンドリー効果フェロモン「フェリウェイ」を仕掛けた。お恥ずかしい話、朝とか言いつつ、起きたら10:26だった。
 あぶねーあぶねー。おちおちしてたら動物病院の午前の部が終わっちまう。
 前回は、捕獲30分前にフェリウェイをコンセントに差した。時間が短かったからだろう、うずらの凶暴性は前より少しマシになった程度で、相変わらずコブラだった。
 今回は、コンセントに差し込んでから遅い朝食を済ませたり身支度したりで、優に1時間は揮発させた。部屋中友好フェロモンで満たされていたに違いない。
 私がキャリーバッグや洗濯ネットを手に部屋に入ると、いつもなら殺気づくふたりが、「嘘~~~ん」という表情で、さてどうやって逃げようかしらと品よく思案しているのだった。
 あのうずらが、シャーシャー言わなかった。これをフェリウェイ効果と言わず何と言おう。
 おかげで、ふたりともそれなりに抵抗したので、それなりに手間取りはしたものの、いつもの半分以下の時間&恐怖感で捕獲に成功。
 玄関までキャリーバッグを運んで行ったところで、ふと思った。
(いつもよりずっと穏やかに捕獲できた今、私自身が爪を切るのもアリなのではないか?)
 そう、これまで私以外の誰にも爪を切らせなかった初代飼い猫マイを筆頭に、迎える猫という猫の爪を自ら切ってきた私。うずらとくーちゃんという強敵を前に、爪を切ることが出来ない自分の不甲斐なさに、どれほど傷つき情けなく思ったことか。
「私、自分で切ってみる!」
 思わず叫んでいた。
 試験期間中なので、自室で勉強してる(と信じたい)ムスコが、「え”」と不思議な声で応えた。ヤツは少し前、まさにくーちゃんを捕獲している最中、突然私の部屋を開けて、「朝飯出来てる?」と訊いた。
「フライパンにできてるよ!」
「なに、猫捕まえてんの? どっち?」
「白黒! くーちゃん! ふたりとも医者に爪切りに連れてくの!」
 ムスコは私の手元を見た。遊具のトンネルに逃げ込んだくーちゃんを捕らえるため、トンネルの一方の出入り口を壁に押し付け、もう片方の出入り口にネットを被せ、じりじりと蛇腹状のトンネルを折り畳み、縮めているところだった。
「ほんとに猫、こん中入ってるの?」
 ムスコが信じらんねーという顔で言うので、私も冷静になって手元のトンネルを凝視した。
 トンネルの縦幅は、今や25cmほどまで折り畳まれ縮まっていた。しかし、はみ出ていいはずの白黒の毛がまったく見えない。
 ムスコがトンネルの上からわしわしと素手で確認した。トンネルはぺしゃんこになった。
「入ってねー!」
 ギャハハギャハハと大笑いしているムスコの腰を小突きながら、私も笑った。
「いつ逃げたの~? さっきまでちゃんと入っていたのに、あんたが邪魔するから~」
 イリュージョンをやってのけた引田天くーは、ドレッサーの椅子の下に、仲良くうずらと一緒にくっ付き合うようにして隠れていた。
 フェリウェイのフレンドリー効果、侮りがたし!

 そんなわけで、一度玄関まで運んだキャリーバッグをえっちらおっちら部屋に戻すと、まず手ごわいうずらをネットに入れたまま床に引っ張り出した。
 ネットごと抱っこして、動物病院で先生がやるように、狙いを定めた足の近くにファスナーの開け口をうまいこと移動させ、片方の前足のみ引き出した。
 フェリウェイとネットの助けを借りて、難なく5本の爪を切ることができた。続いてもう片方の手。次にアンヨ。途中いやいやをするうずらの額をネットの上から撫でて、バスタオルを顔にかけて視界を塞ぐと、観念したようにおとなしくなった。
(足の爪は4本だよね? 狼爪と呼ばれるのが退化してるから、4本でいいんだよね?)
 切り残しがないように、何度も1本1本確かめ、無事に両手両足を切り終えた。

 お次は引田天くー。意外とくーちゃんの方が手こずった。
 くーちゃんは後ろ足からスタート。
 まん丸の身体に似合わず、アンヨは小さく可愛い。うずらより1周り半ほど小足である。
「くーちゃんは爪まで小さいんだねぇ」
 それでも気力と体力がある分、くーちゃんは何度ももがく。
 動かれるとくーちゃん自身が怪我をしてしまう。
「ごめんなさいね、ごめんなさいね~」
 キレると怖いくーちゃんを崇め奉り、額をゆっくり撫でてはご機嫌を取った。

 ヤッター!
 上級者向き野生猫ふたりの爪切り、とうとうやり遂げやした!
 もちろん、目標はネットなしで切れるようになること。
 まあ、ネットに入っていた方が当猫たちが落ち着くというのもあるから、あまり無理はしないでおくか。
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爪切りを終えた直後のうずら。一気に10歳老けてしまった。痩せてるくせに団子に見えるのは、ストレスで毛が総毛立ってふくらみ、固まっているせい。
ムスメがこの画像を見て「なんだ? いつものうずぴの顔じゃない!? ガーフィールドみたい」と笑った。耳を伏せていないのがせめてもの救い。額のコブラ柄、今回は出る幕なし。胸中何を思っていることやら・・・。


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同じく、爪を切り終えた直後の若返った感のあるくー様。背後のベランダに残る雪のように真っ白な白い毛。太っているくせにスッキリ。ネットに入れられ爪を切られた屈辱より、解放され自由を得たという直近の喜びからか?


 

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# by vitaminminc | 2018-01-28 13:55 | 生きもの | Comments(2)

漢字を見て感じたこと

ムスコの名前の名付け親は産みの親と同一人物であります。
つまり、ムスコの名前は100%私が命名したんであります。
因みにムスメの名前は漢字をオット、読みを私が担当。
第一子の時に3冊の名付け辞典をとっかえひっかえして画数調べに精を出しすぎたせいで、2人目の時にゃ私に丸投げ。
これ幸いと、好きなように付けられたわけであります。
考えてみたら、子どもの時に抱いていた夢なんて何も叶えられなかった、なんて思っていたけど、1つ叶えていたんであります!
小学生か中学生の時に読んだ少女漫画に出てきた、主人公が好きになる男の子の名前。
この名前、響きがイイなぁと思いました。
キラキラネームではありません。
決して多くはないけれど、確かに世の中に存在する名前でした。
そしてまだローティーンだったくせに、将来男の子を産んだらこの名にしたいと思ったのであります。
漠然とながら、でも20年以上経っても覚えていたくらいだから、それなりにしっかりと。
かくして私はムスコにその名を付けました。
漢字は少女漫画どおりではありませんでした。
名付け辞典で調べたところ、画数が苗字と合わなかったからであります。
で、苗字との最高の組み合わせとなる画数を割り出し、その画数の漢字をいくつか候補に挙げ、自分が最も気に入った漢字を選んだのであります。
少女漫画は漢字一文字でしたが、画数的に同じ読みの漢字一文字は他になかったので、漢字二文字の表記となりました。
むしろ漢字としては、少女漫画に出てきた一文字よりも、自分が選んだ二文字の方がずっと好きであります。
自画自賛で字画字賛するんであります。
そして昨日、私はテレビのどうぶつ番組の中で、象さんが今年の干支【戌】の字を筆で上手に書いたのを見て気づきました。
ムスコの名に当てた漢字二文字のうちの一字(この字、座りがいいし男らしいし、私好きなんですよぅ)から『女』を取ると、【戌】になるということに。
名は体を表すといいます。
ムスコから女を取ったら、犬的生活が待っているのではなかろうか。
ここでいう犬というのは可愛いペットのわんこのことではなく、『おまえ、いつから権力の犬に成り下がったんだ』なんてふうに表現される哀しき犬のことであります。
逆に言えば、一人の女性をしっかり守れている限り、ムスコは威風堂々としていられるのではあるまいか。
女性云々は外して、単純に「女を取ったら戌になるね」とムスコにラインで伝えたら、「へーぇ」「たしかに」とそれなりに感慨深げな返信がありました。
去年秋頃から、ムスコの首に絶対にムスコ自身が選ばないであろうペンダントが下がっていることに母は気づいているんであります。
私が知る限り、ムスコにはまずペンダント自体身につけるという発想がない(はずは)。デザイン以前の問題であります。
女の影がちらついているんであります。
大事にしなさいよ。
守ってあげなさいよ。
ペンダントなくすんじゃないよ、お揃いなんでしょう。
彼女に去られたら、おまえイヌに成り下がるんだから。
それとも、守っているつもりが尻に敷かれ、結局ペットのわんこのように愛されつつコントロールされる運命か(笑)



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# by vitaminminc | 2018-01-20 02:32 | 人間 | Comments(0)

ほっこり

ここに移り住んだ当時、ムスメはまだ2チャイ。
早いもので、もうかれこれ20数年。
同じ一画に、去年の秋まで一軒の空き家があった。
私が引っ越して来た時にはすでに空き家だったから、30年以上もの間ずっと空き家であり続けたわけだ。
正確には途中1回だけ、土地の所有者の親戚筋という若い夫婦とベイビーが古家に入居したことがあった。
でも1年以内にすぐに転居してしまった。単に仮住まいとして利用しただけだったのか?
あるいは周りに小さな子どもがいないため、ママ友不足と知って寂しくなってしまったのか──。

ところが昨年、「売地」の看板がひっそり立っていることに気づいた。
しばらくして買い手がついたらしく、夏には古家の解体工事が始まった。
住宅メーカーの担当者が「着工にかかります。ご迷惑をおかけします」とタオルを持って挨拶に来たのとは別に、新しく住人となるカップルが我が家のチャイムを鳴らした。
30歳前後だろうか。菓子折りを手に、笑顔で挨拶してくれた。美男美女の、お似合いの夫婦であった。

秋の終わり。シックで落ち着いた色調のモダンな家が建った。
若いながら律儀な人柄のようで、「来週引っ越してきます」と夫婦は改めて挨拶にみえた。
夫婦の入居後、広い庭には大きなガレージも建ち、遅れて趣味の良い石畳のエントランスが完成した。
共働きのようで、ムスメは帰りのバスで時たま奥さまと乗り合わせることがあるという。
休日や時間帯が合わない私などは、挨拶以降、残念ながら顔を合わせることなく今日に至っている。

けれど、1つほっこりする出来事があった。

すごく洒落た作りの庭の一角に、ネギや大根が植えられているのである。
あの、美しいキャリアウーマン風の奥様に似合いそうな花ではない。
あの、仕事がキレキレに出来そうなご主人が選ぶべく樹木でもない。

ネギ。
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そして、大根。(画像はいずれもイメージです)
それも、道路から一番目立つ一角に。

これをギャップ萌えといわずに何と言おう。
思わず顔がにっこり。心がほっこり。
これだけで、私はこの超実用主義な夫婦の隠れファンになってしまった。

ほっこりといえば、最近うずぴは、眠眠(2015年春に他界した優しいオス猫)が愛用していた、しましまネコのぬいぐるみがお気に入り。
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気づくと背中を預けている。
相性最悪とはいえ、生身のくーちゃんに寄り添う方が、ずっと温かいのにね。
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# by vitaminminc | 2018-01-17 11:31 | 人間 | Comments(2)

ねぇ、くーちゃん



ねぇ、くーちゃん。
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どう思う?
あの、ディズニーの可愛くないキャラクター、ベスト3に入るスティッチ。
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あの子の耳も、くーちゃんと同じさくらカットだョ。
TNR(捕獲&避妊・去勢手術&リリース)の仲間だと思う?
もっともくーちゃんは、里親(あだす)が決定していたんだけど。
TNR活動の協力医さんに、どうしたわけかカットされちゃったわけで。
それを知った時は、ショックで膝の力が抜けて涙がちょちょ切れたもんだけど。
けど「これもくーちゃんの歴史と思って」とホールデン・コールフィールどんままさんに謝られ諭されて。
また、一見痛そうなV字カットも「さくらねこ無料不妊手術事業」すなわち殺処分をなくす運動から生まれた「大切な地域猫」の証なわけで。
さくらカットと呼ばれていると知ってからは、くーちゃんの耳がなんだかとっても愛しく思えるわけ。

で、なんの話だっけ?

あ、そうだった。スティッチの耳。
どう思う?
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× ?
やっぱ違うか。猫じゃないもんね。






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# by vitaminminc | 2018-01-16 18:23 | 趣味 | Comments(0)

微かに微妙な微笑み

今朝は寒かったねぇ。
氷点下だったもんね。
6時に居間のシャッターを開けたら、キーンと冷えた日の入り前の空に、白い月が光っていた。
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朝刊を入れた。
ユーキャンの4面広告(儲かってまんな)に目が奪われた。
そして、『聞いて楽しむ日本の名作』に登場していた太宰治を見て、
なんの冗談なんだ?
と口角が上がった。

だって太宰といえば、私の中ではこのイメージ。
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ほかの文豪はみんな写真なのに、太宰だけはなぜかイラストっぽく見える。
「走れメロス」を世に出した当時の太宰さんはこんなだったのかしら。
ふっくらとして、まるでモナリザの微笑みのよう。
何かに困っているような、何かを憐れんでいるような──。
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うちにもこういう、なんとも表現のしようのない顔をする子がいたわ。
タレ目でびっくりまなこのうずぴ。
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# by vitaminminc | 2018-01-15 20:12 | 趣味 | Comments(0)

あテましておめでとう

今年の年賀状は、とうとう猫写真抜き。
限りなく馬に近い犬のシルエットの無料テンプレート。
今回ほど十二支に猫が入っていないことをありがたく思ったことはない。
今年が猫年だったら立ち直れない。
いつまでもグズグズ洟すすってちゃしょーがないんだけど。
悲しいもんは悲しいし。
寂しいもんは寂しいし。

大晦日に葛飾に帰省。
府中の多磨霊園(実父)と亀有にある菩提寺(オット)の墓にお参りしてから。
昼食を終えると母に頼まれた買い物をするため、車でイトヨへ。
ゲームコーナーにガチャガチャ発見。
コレがあると、つい猫はいねーが~と物色してしまう。
いた!
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しかもコタローがいる!(下段右から2つ目)
全6種。引き当てるというか、回し当てる確率は1/6。
イイ齢超えて、ガチャガチャに小銭を投じる50代後半。
ひゃっほ~!
一発でコタローGet!

そういえば、除夜の鐘、実家の地元では1回しか鳴らなかった。
「1回しか鳴らなかったよな?」
徒歩5分のところにある小さな神社で初詣するため並んでいると、アニキにも確認された。
今ってどこもそうなの?
誰だっつんだよ、除夜の鐘を騒音扱いして規制対象に決めたアホンダラは。
お墓参りをしていた午前中は雨雲が出ていたけど、日付が変わる頃にはきれいな星空。
今年は風も殆ど無くて、身体にやさしい初詣となった。
母の健康を祈念した。
アルコールはからきしダメなくせに、お神酒だけはなぜ旨いんだろう。

1月1日の昼前、アニキとムスメと3人で毎年恒例の柴又帝釈天へ出かけた。
足もとの地面が見えないくらい、相変わらずすごい人出。
人の頭と背中しか見えやしない。
「屋台のミニカステラが評判だそうだ」
アニキが何かで見聞きした情報に基づき、並んで買ってみた。
確かに甘すぎなくて、たいへん美味しかった。

コタローは今、トイレで私を見上げてる。
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何度シャッターを押しても、コタローにピントが合わなかった。
コタローが、ボクもうこの世にいないんだよって、私に教えようとしたのかも。

コタロー。
私元気にしているよ。
くーちゃんが、コタローの分ももりもりゴハン食べてる。
那須高原で越冬したっていうのに、すごく寒がりでね。
静電気で背中の毛を逆立てながら、オイルヒーターにいつもへばりついてる。
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うずぴは相変わらず気難しいよ。
なかなか写真を撮らせてくれない。
でもね、キャットタワーで爪とぎしている時を狙うわけ。
ひょいっと抱き上げるとね、そうね、7秒間は抱っこさせてくれるよ。

コタロー。
ガチャガチャに当たってくれてありがと!








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# by vitaminminc | 2018-01-14 19:02 | 人間 | Comments(6)
 今日、うずらとくーちゃんをどうぶつ病院に連れていった。
 受付には女医さんがいた。
 うずらのワクチン接種とふたりの爪切り。そして健康診断のため、ふたりの血液検査をお願いしたところ──。
「何か気になることがありますか?」
 と訊かれた。
 水を飲む量が増えている旨告げると、今度は一日にどのくらい飲んでいるか問われた。
「2匹一緒なので正確なところはわからないんですが、1日に200ccほど減っています」
「2匹で200?」
 女医さんはくすっと笑って、1匹がまったく飲まなくて、片方だけが飲むならともかく、両方で200ならちっとも多い量じゃないと言った。
「夜中に水を飲んでいる音がして目を覚ますと、結構長時間飲み続けていたりするので──」
 いや、ちょいと待て。よくよく思い出してみたら、それがある晩はうずらであり、またある晩はくーちゃんであったり。
「どうしますか? 血液検査、受けますか?」
「200ccくらいなら心配するほどではないんですよね?」
「どんどん痩せてきたというのでなければ。もっとも、痩せてきたらすでに発症してることになりますけど」
 うずらは細マッチョだが、痩せる一方というわけではない。小食ながらゴハンも欠かさず食べている。
 私は少し神経質になり過ぎているようだ。血液検査はもう少し様子を見てから決めることにした。
 そして、コタローが先月22日に亡くなったことを報告して、その節はお世話になりましたと礼を述べた。
 女医さんはやさしい笑顔で頷くと、受付カウンターから素早く出て、くーちゃんのキャリーバッグを持ち上げた。
「そっち(うずら)持って入って」
 と私とうずらを診察室に招き入れた。
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 診察台に上がったうずらの体重は3.55kg。今回も捕獲時コブラ化したのとはうって変わり、仮死状態に近く微動だにしない。
 あっという間に注射され、あらよっと言う間に両手両足の爪を切られた。しばらく聴診器をあてられていたが、問題なしということでバッグにカムバック。
 お次はくーちゃん。うずらより骨格は一回り小さいのに、体重は4.75kg。
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「餌の量は決して多くないんですけど、遊び食いするうずらの分も隙あらば食べてしまうので──」
 私の説明にもただ笑うだけ。特にああしちゃいけない、こうしちゃいけないの指導なし。
 くーちゃんはいつになく嫌がってネットに入ったままずるずる逃げようとしたが、女医さんは独りで手足の爪を切ってのけた。
「はい、お疲れさん! うずらちゃんはワクチンを打ったから、3日間くらいは安静にしてあげて」
 
 商売っ気ゼロ。この病院を主治医に選んでよかったなあ。改めて思った。

 帰宅。心をフレンドリーにしてくれるフェロモンに満ちた部屋がふたりを待っていた。
 出かける時、例のフェリウェイをコンセントに差し込んでおいたのだ。


 話は変わるが、先日読売新聞の「人生案内」を読んで、少なからず違和感を覚えたことを話したいと思う。
 「人生案内」は、読者の相談に回答者が答えるもので、私の愛読書の一つである。いや、むしろ生活欄のココとテレビ番組欄を読むためだけに新聞をとっているといってもいい。
 その日の見出しは「愛犬の死 悲しく体調崩す」というものだった。
 私もコタローを失ったばかり。他人事ではない。

 相談者は60代後半の独り暮らしの女性。15年近く飼ってきた愛犬2匹を相次いで病気で亡くした悲しさから体調を崩しているという。
 そしてこのままではダメだと思い、また動物と暮らしたいと考えているが、娘が反対しているそうだ。
「ペットより先にお母さんが死んじゃうかもしれないじゃない! それにワンコ2匹が死ぬまでにいくらかかったと思ってるの? 軽自動車が買えたわよ? 今のお母さんの経済状況ではとてもじゃないけど、無理無理!」(←この口語は私の脚色)
 息子は相談者の精神状態を気にかけ、猫を飼ってはどうかと提案。
「猫ならさ、散歩に連れてく必要ないんだから、お母さんに万が一のことがあっても餌やりとトイレの掃除くらいオレが面倒見てやるよ。猫にすれば?」(←同上)
「けど、あの子(娘)猫アレルギーでしょ? 猫なんか飼われたら自分とマゴが遊びに行けなくなるって。意地悪で言ってるわけじゃないのよ、ワンコが死んだ時のお母さんを見てるのが辛かったんだって言うのよ」(←同上)
 息子と娘のどちらの気持ちもよくわかり、心の整理がつかないというのが相談者の悩み。

 今回の回答者はノンフィクションライターの最相葉月さん。
 実は、違和感を覚えたのは「回答」の方なのだ。
 私はいつもならこの方の回答に異を唱えることはない。が、今回は少々チガッた。
 もう、全文口語にしてやるべ。
「他人事とは思えないわ。我が家にも人間なら80歳近い老猫がいるの。
 この子がいなくなったとして、次の猫を迎えられるだろうかと想像するだけで不安になる。
 私の母が病気で猫を手放したのが、今の私とちょうど同じ年齢の時だったから。
 最近の猫は、室内で飼えば20年前後生きる子もいるのよ。
 一方自分はいつ倒れてもおかしくない。
 最後まで面倒を見られるかわかったもんじゃない。
 それは飼い主として無責任だと思うのね。
 猫って抱きかかえて爪を切るだけでも簡単なことじゃないし。
 それにおおむね腎臓が弱くて、治療を望むなら医療費がかかるわよ。
 悲しみが癒えないのはわかるけど、幸いお子さんたちは貴女のことを気遣ってくれてるじゃない。
 その思いに感謝して、これからは長期旅行やボランティアとか、ワンコがいた時にはできなかったことを楽しみなさいよ。
 ペットを飼うのはもちろん自由よ? 
 でもこれだけは忘れないで。
 貴女は2匹を愛し、最期まで心を尽くして世話をした。
 彼らは十分幸せだったでしょう。
 今も、これからも、貴女を天国から見守ってくれているはず」

 いつ死んでもおかしくないって、最相さんアナタいったいおいくつなの?
 調べたら、まだ50代半ばにも達していないではないか。
 もしや病を抱えていらっさる?
 なのでアナタには敢えて何も言わない。
 ただね、コレだけ読むとね、夢をあきらめなければならない人や、里親を探している人の嘆きが聞こえてきそう。

 ──医療費がそんなに? 現役引退したらワンコかにゃんこと暮らしたいと思っていたけど、とても無理か。 
 ──全国紙で、猫のリスクだけ説かれちゃった。猫との暮らしがどんなに素晴らしいか、ではなく…。
 
 念のため、若いムスメにも読ませて感想を聞いてみた。
「70代後半ならともかく、60代後半じゃまだ若いよ」
 とムスメは言った。
 まだまだ人生これから。ペットと仲良く暮らしたっていいじゃない。70前の人に、今からペットを飼うのは無責任と言うのは酷過ぎる。
 決して簡単なことではないけれど、動物のためのボランティアはどうだろう。保護犬・保護猫の一時預りなら20年飼うことにはならないし、施設に出向いて世話をする道もあると思うのだが。
 ペットの医療費は確かにかかる。大気汚染など環境の変化によるのか、昔より犬・猫の体質そのものが弱くなっているように感じる。医療が進歩して、栄養バランスにすぐれたフードも出回って、ペットの寿命は格段に延びたけど、昔のわんにゃんの方が逞しかった。少なくとも、私が保護した犬・猫に関して言えば。
 でも、自分のやれる範囲で頑張れば十分だと思う。
 日々愛情をもって接すれば、それで十分だと思う。
 ワンコやにゃんこには人間みたいな打算などないから、愛情は必ず伝わる。
 これは経済的にゆとりのない自分に言い聞かせているのだが、佐藤愛子さんだって著書「九十歳。何がめでたい」の中で、まったく違う表現で書いている。
『グチャグチャ飯』という話。
 実は、何度もあらましを書いてみたのだけど、原文を損なってしまいそうなので止めた。
 短いエッセイです。
 本屋さんで立ち読みしてください。ハタキをかけられる前に読み切れます。
 ぜひぜひ! 読んでください。

 若くなくたって、忙しくたって、金持ちじゃなくたって、動物と一緒に暮らせる。
 ワンコもニャンコもやさしい。
 生きている時も、死んじゃってからも。
 自分にできる範囲でいいんです。
 精いっぱい愛情を注げられるなら、それでいいんです。
 彼らはちゃんとわかってくれる。
 彼らにはちゃんと伝わります!
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# by vitaminminc | 2017-12-09 17:49 | 生きもの | Comments(3)

唸牙城

大切な家族の一員たるコタローを亡くし、心は喪に服している。
が、人間界の習わしだから仕方ない。
いい加減年賀状をつくらねばと思い、頭の中でぼんやりとデザインを描いてみた。

愕然とした。

そうか。そういうことになるのか。

コタローは、私がつくる年賀状に一度も登場しないまま逝ってしまった。

一回も我が家で年を越せなかったということだ。

いかに短命だったかを思い知らされ、悲しさとか寂しさよりも、悔しさが牙をむき、みぞおち辺りで唸り続けている。

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# by vitaminminc | 2017-12-06 17:40 | 生きもの | Comments(2)

星のコタロー

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猫用に用意された骨壺。
小さい方のサイズにすっぽり収まりました。
骨壺を入れる袋を選ぶとき、子どもたちは白毛が多かったコタローのイメージに合わせ、白地にしてはどうかと言いました。
白地に金糸の流線柄が施された、人用でもよく目にするような、オーソドックスで雅なデザイン。

「コタローはまだ子どもだったから──」私は、星柄の袋に目がいきました。「本当は白地の方がいいのだけど」
空色の袋の、星の顔に目が釘付けになりました。
「私はこれがいいなぁ」
ふたりの子どもは、一番コタローの面倒を見てたんだからとあっさり譲ってくれました。

係の人が、袋にコタローを入れて持ってきてくれました。
実際に骨壺が中に入ってみると、見本よりずっと可愛いねとムスメが褒めてくれました。
「この星の顔、コタローの写真の中に、似てるのがあるんだ─」
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私はスマホを取り出して、該当するコタローを見せました。
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ムスコがコタローの顔を見てくすっと笑いました。
「コレどこで撮ったの?」
「2階。ソフトケージの横」
コタローは、ソフトケージの屋根に上るのが好きでした。
この顔は、まさにそれを企んでいます。
メッシュ加工された天板は、ハンモックみたいにボヨンとしなって楽しいのです。
痩せてるくせに暑がりのコタローには、通気性のよいメッシュ素材が心地よかったのでしょう。


誰に先立たれても、遺された者はみな後悔に苦しみます。

消し忘れた留守電のメッセージ。
「こちら○○ペットクリニックです。先日検査に出した、コタローちゃんの腫瘍の結果が送られてきました。それによると─」

去勢手術を受けるついでに、額の上にあった小さなコブを切除してもらった時のものです。
小さかったので外見上問題はなかったのですが、良性であっても後に悪性になる可能性は否めません。
それで、一度の全身麻酔で去勢と同時に小さな頭のコブも切除してもらったのでした。
腫瘍は心配するようなものではありませんでしたよと、検査結果を送付する前に、いち早く病院が電話をくれたのです。

──こんなに早く逝ってしまうなら、痛い思いをさせなきゃよかった。
──痛い思いをさせたストレスが病気の引き金になったのではないか。


10月に撮ったコタローの動画。
薬の力を借りてではありましたが、久しぶりに頑張ってマンマを食べています。

この時私はすごく嬉しくて、コタローが死ぬなんて考えもしませんでした。
ようやく回復の兆しが見えたとふるえるほど喜んでいました。

──もっとどうにか出来たんじゃないか、この時は薬が効いて、こうしてなんとか食べられたのだから。
──薬が効かなくなったのなら、別の薬をもっと強く望んでいればどうにか出来たんじゃないか。

ただ、コタローの身体に穴を開けて、チューブで流動食を強制給餌することだけは選択肢にありませんでした。
先生も勧めませんでした。初期の段階で、食欲不振に対する療法の1つとしてチラッと挙げはしましたが。
私がコタローの身だったら、餓死する方を選ぶから。


それにしてもこんなにひ弱な身体で、どうやってコタローは冬を越せたのかな?
ちょうど生後2、3カ月。小さな身体で、どうやって寒さを乗り越えられたのかな?
先生は、母猫やそれに代わる猫に守られていたのだろうと言っていたけど、不思議でなりません。
猫なのに、寒さには耐性があっても、暑さには耐性がなかったのでしょうか。
発症したのは、夏でした。

悔やんでも悔やみきれないし、悩んでも答えは見つからない。
星柄に似ているコタローの顔が、梅の花に見えてくるだけです。寒い季節に咲く、梅の花。
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# by vitaminminc | 2017-11-26 09:49 | 生きもの | Comments(2)

コタローがいっぱい

なまえを呼ぶと駆けてきたコタロー
階段を転げ落ちるようにおりてくコタロー
流水を上手く飲めず鼻に浴びてたコタロー
じっとこちらを見ながら踏み踏みしていたコタロー
テーブルに飛び乗り損ね尻から落ちたコタロー
お風呂に入りたくてドアの前で待機していたコタロー
冷凍室を開けるたびに飛んできて冷気をカキカキしたコタロー
やせっぽちの猫のくせに暑がりだったコタロー
家族みんなを分け隔てなく好きでいてくれたコタロー
毛が薄いせいかブラッシングが苦手だったコタロー 
猫じゃらしがヘビみたいに動くのが好きだったコタロー
乾燥肉球のため床や廊下で滑ってばかりいたコタロー
いつも誰にでも抱っこさせてくれたコタロー

ひ弱ながら元気だった頃のコタローがいっぱい
頭がガンガンするくらい頭の中にコタローがいっぱい

保護してからたった7ヵ月なんて信じられない
もっとずっと長いこと一緒にいた気がする
何年も何年もそばにいてくれた気がする

コタローの亡骸と一緒に眠ることが今一番の慰め

幼い子をたったひとりぼっちで逝かせてしまいました
頭を撫でて「それじゃ出掛けてくるからね」といって
部屋を出ようとしたら、コタローが頭をもたげ、
口をパクパクさせました
水が飲みたいのだと私は思いました
いつもは拒む水をコタローはおとなしく受け入れました
水を含ませた脱脂綿で汚れた顎を拭いてあげることもできました
少し目を細めて気持ちよさそうな表情を見せました



冷たくなってもドライアイスを抱えていても
コタローはあたたかいです
死んじゃってからもやさしい子です
どうしてこんなにやさしいのか
同じ部屋で眠ってるだけで気持ちが落ち着きます



明日の火葬には家族揃って立ち会います










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# by vitaminminc | 2017-11-24 22:20 | 生きもの | Comments(2)

追いつかない

とんだ痴れ者です。

20日(月)、コタローは診察台に上がることも出来ませんでした。
こわばった私の両手が握り締める、キャリーバッグの中でうずくまったままでした。
バッグの上にはバスタオルをかけて、人の目に触れることはありませんでした。

受付担当ではなく、女医さんが応対してくれました。
少し困惑した表情で、「今日(きょう)はどうされました?」と訊きました。訊きながら、次の言葉を選んでいるようでした。
「血が混じったヨダレが出るようになったので─」
と私は新たな症状のことを訴えました。
─先生、コタローはやっぱりただの歯肉炎だったんだと思います。その証拠に、こうして出血まで始まったのだから。歯肉炎がだいぶ悪化しちゃったみたいなんです。
『あら、じゃあやっぱりお口のトラブルだったんだ』という私が望む反応を寄越す代わりに、女医さんは、これまで見てきた中で一番やさしい目で、真っすぐ私を見ました。
「今は、もう、どうしてあげることもできないの」
噛んで含めるように言うのでした。
「ステロイドが効かないというのは、もう、身体が勝てなくなってるの。ステロイドを注射してからまだ一週間しか経ってないのに出血が始まったということは、つまりはそういうことなの」
─ステロイド? そういえば、ステロイドを注射してもらったっけ。あれはいつだった? そうだ、おかーさんがうちに来た翌日。打ってもらったのだっけ。
「でも、少しでも炎症を抑えてもらえないかと思って─」
食い下がる私に、女医さんは辛抱強く説くのでした。
「もう薬ではどうにもならないの。この子にとって負担になるだけ。昭和天皇が亡くなる前、毎日のようにその日の下血量がニュースで流れてたの、覚えてます? あれは、もう手の施しようがない状態だったの。病気に勝てなくなると、身体のいろんなところから出血するものなの」
私は咄嗟にオットの死亡診断書の文字を思い出しました。病名は別にありましたが、直接の死因はその病気が引き金となった、『出血性ショック』と書かれていました。病理解剖の結果、(免疫力がゼロになり)ありとあらゆる臓器から出血していた旨、説明されました。

「居ても立ってもいられなくて─」
自分でも不思議でした。頭で理解しているはずなのに、なんで自分はこんな風にずっと受付の前に立っているんだろう。
「気持ちはすごくわかります。でも、もう長くないから、暖かくして、見守ってあげて。好きな物だけ食べさせて」
「全然食べられません」
─『食べられない』から始まって、食べられないままなんです。
「なら無理にあげなくていいから。貴女だってすごく気持ち悪いのに、無理やり食べさせられるのは辛いでしょう? 食べ物なんか見るのも嫌だと思う」
「水はあげてもいいですか?」
「もちろん」
「あの、シリンジで。嫌がるけど」
「嫌・が・ら・な・け・れ・ば。嫌がるなら無理にあげなくていい。猫は飲まず食わずでも一週間くらい平気で頑張っちゃう動物だから。暖かくだけしてあげて」
ハイ、ワカリマシタ、ソウシマス、アリガトウゴザイマシタ─たぶんそんなことを言って、ようやくオカンは受付を去ったのです。
コタローのオカンは、いつからこんなに聞き分けが悪くなったのでしょう。
受付を待っている人はいませんでしたが、待合室には診察を待つ患ニャや患ワン、そのご家族が何組かいて、ずっと私と女医さんのやり取りを聞いていたに違いありません。
帰る背に感じました。振り返って見ることはできませんでしたが、みなさんの視線が、絶対とても、温かかったです。

「なんだよ、コタロー、死んじまうのかよ」
土曜の晩、FIPの可能性が大きいことと、FIPが不治の病であることを説明しても、「何を言ってるのかさっぱりわからない」「頭が真っ白だ」と理解することを拒んでいたムスコでしたが、月曜の「もう長くないって」という私の言葉は嫌でも理解したようでした。

火曜の朝。健気にも、コタローがトイレでウンチをした痕跡がありました。立ち上がるのもやっとの身体で、よくトイレに入れたものだと思います。
先週金曜の晩、わずかながら口にできたマンマ。それが、黒っぽいどろっとした物体に変わっていました。
今まで見たことのない色と形状から、トイレを使えなくなるのは時間の問題だろうと悟りました。
コタローが現在寝ている場所のすぐ脇にトイレを移動させ、コタローに使用しているミニホットカーペットを含め、オシッコシートを敷き詰めました。

仕事から帰ると、ムスコから報告を受けました。
「コタローがトイレに入る手前で力尽きたみたいで、床にオシッコしてた。拭いといた」
すぐに眠眠に使用して余っていた紙おむつをコタローに穿かせ、ホームセンターまでおむつの買い足しに行きました。
「どんどん悪くなる。速いな」
改めてムスコが言いました。
「コタポ・・・」指先でコタローの額を撫でるムスメ。

転々と鮮血を帯びた薄茶色のシミが残るシートを交換する以外、何もしてあげられない自分が情けないです。
血液交じりの、濁ったヨダレ。ひどく汚れた顎を柔らかい布できれいに拭いてあげたいのに、出来ません。
真っ赤に爛れて腫れていて、触れること自体、拷問にしかなりません。
女医さんに言われたように、ただ見守るだけ。

お雛様みたいにやさしく可愛かったコタローでしたが、苦痛で目が吊り上がり、キツネのお面をつけているような面立ちになりました。
瞬膜が開いたままで、どこを見ているのか、見えているのかさえわかりません。
ピンク色だった鼻は薄いグレーにくすみ、肉球は、怖いくらい白くなりました。白い肉球になってしまいました。
名前を呼んでも、ほとんど反応しなくなりました。


気がつくとネットで「笑気ガス」を調べている有様です。


気持ちが全然、追いつきません。









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# by vitaminminc | 2017-11-22 11:22 | 生きもの | Comments(0)

FIPの可能性大

昨日の夕方。
また一段と症状が深刻化したコタローを病院に連れていった。
「こうして診ても口の中は赤くなってない。口内炎というより、気ちが悪いんでしょう」
と大先生。
「セミントラも嫌がる?」
女医さんに聞かれ、
「暴れて抵抗するようになったので、てっきり口が痛いのかとばかり。前はむしろシリンジで飲ませると喜んで舐めてたのに」
「困ったねぇ。どう思う?」
と大先生が女医さんを見た。大先生の診立てが、キー・ガスケル症候群から別のものに変わったのだと私は悟った。
「FIP?」
女医さんが言うのを大先生は否定しなかった。
「FIPというのは─」大先生が私に向き直って説明してくれた。「猫伝染性腹膜炎のことですが、お腹あたりが(腹水や胸水がたまって)ブヨブヨしちゃう湿性型はわかりやすいんですよ。この子はおそらくドライタイプ。正直、ドライタイプのFIPは診断が難しい。血液検査をしても、グレーが多くてね」
「グレー?」
「野良だった子は殆どが猫腸コロナウイルスを持っています。それが体の中で変異して、FIPを発症するかしないかの問題。もちろん発症してれば詳しい血液検査でわかりますよ。ただ、わかったところでどうすることもできない。だから敢えて血液を調べましょうと私は言わない」 
ただ病名を絞り込む、それだけのために、コタローの貴重な血を1滴だって無駄にしたくない。
「検査は受けないでいいです。薬はないってことですよね?」
「対症療法しかありません」
私はコタローを覗き込み、「ずっと気持ち悪かったんだね、かわいそうに」とつぶやいた。
女医さんが薬の棚を見上げて大先生に言った。
「姫マツタケ、出してみましょうか。でもまた嫌いなものが増えちゃうだけかな。ストレスになるかな」
「姫マツタケって、アガリクスみたいなものですか?」
「あげてみる?」
「コタローみたいになってる子によさそうですか?」
「1匹だけだけど、ピンポイントに効いた子がいました」と大先生が答えた。「もう、腎臓も肝臓もやられてて、長くはもたないだろうと思ってたような子だったんだけど、復活しましたね。今もふつうに暮らしてるそうですよ」
「あげたいです、コタローにも」
女医さんが棚から小さな袋を取り出して、私に手渡した。
「ただ、恐ろしく高価なんですよ」と大先生。「こういった類いのはみんなそうだけど、中でもこれはね」
「え…どのくらいですか?」
女医さんが答えてくれた。わずか30mlの小瓶に対し、諭吉っつぁんを1人差し出すと、野口くんが2人と小銭になって戻ってくるらしい。
「それはサンプルだから、無料で差し上げます。顆粒タイプのもお試しで1袋ついてるけど、猫はリキッドタイプ(←人がスポイトで与える)じゃないとダメみたい、自分からは食べないから」
帰宅するや否や姫マツタケをググった。医療機関でのみ取り扱いとなっているが、楽天でネット購入できることがわかった。しかも、2000円近く安く。
先生、裏切ってネットで買わせていただきます。生活かかってるもんで。
コタローに与えられるかどうかが問題。
膝掛けにくるんで抵抗できない状態にして、コタローの口の横からまずは1滴たらし入れた。
「カカカカカッ」
初めての味に、口を三角に開いて奇妙な声をあげる。
すかさずもう1滴。
今度は必死の抵抗の末、逃げられた。
本来であれば、コタローの体重だと1日に合計12滴は与えなくてはならないが、初日は2滴に終わってしまった。
病院で、安定剤のホリゾンと腎臓薬セミントラは毎日続けるよう言われたが、その正しさを痛感している。
なぜなら、体を襲うあらゆる不快感に、じっとうずくまり耐えているコタローが、短時間ながらも体を横たえて目を閉じ眠れるのは、ホリゾン服用後、2、3時間だけなのだ。
ほんのわずかまんまを舐めて、水を飲めるのも、その間だけ。

1日1日と、どんどん悪くなっている。
面立ちがすっかり変わってしまった。 
辛くてカメラを向けられない。
まだ1歳だなんて信じられない。
コタローではない、別の猫の世話をしているような気がする。
すごく高齢で、弱っている重病の猫。
私のそばに寄ってくることもない。
移動するのは、トイレに入る時くらい。
いい子だね。ちゃんとトイレの場所がわかるんだね。

女医さんに、病院で話したっけ。
「すごくたくさん食べてたんです、うちに来た当初は。カリカリを1粒ずつ、庭から点々とまいて、玄関ドアを開けた中までまいて、それで捕まえられたくらいで─」
いつもクールな女医さんが、やわらかい目をして、口元だけ泣き笑いみたいに少し歪めて、黙って頷いていた。
「もう、何でもいいから食べられるもの探して」と女医さんが言った。
「食べないことには体力がね」と大先生も言った。
「私が前に飼ってた猫は─」と女医さんが、「あれ何だっけ、魚の─カワハギだ。カワハギが突破口になった」と教えてくれた。
「カワハギですか?」
「そう。この際、猫の体に良くないと言われてるものでも構わないから、塩分も気にしなくていいから」
「人間も─」と大先生。「なんにも食べられなくなった病人でも、アイスクリームは口にした、とかあるでしょ?」

今夜あともう1回、姫マツタケエキスを4滴与えたい。
そうすれば今日1日の使用量をクリアできる。
今はまだホリゾンの力で横になって休んでいるから、もう少しあとになってから。

「薬=ストレスを与えている」というのが、なんともツライ。
コタローは、私が近づいただけでストレスを感じてるだろう。
あ、頭を起こした!

姫マツタケ様、コタローの体の中で大活躍してくれることをひたすら祈ります!








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# by vitaminminc | 2017-11-19 17:39 | 生きもの | Comments(0)

母─後日談

今週月曜の晩─つまり、母が私のところに一泊二日した翌日の晩、母から電話がかかってきた。
「今日届いたわよ、本! 本ッ当に嬉しい、ありがとう!」
土曜の晩に楽天ブックスに発注した、佐藤愛子さんの大ベストセラー「九十歳。何がめでたい」が届いたという知らせだ。
「とってもイイんですってね。みんなが言うから図書館に借りに行ったら、2000人も待っている人がいるって言われたの」
「なら丁度よかっ──」
「順番がきても、借りに来たことを忘れちゃってるかもしれませんねって、図書館の人に言われて。だからよかったわぁ」
「うん、丁度よかった、読みたかった本だったみたいで。私も同じ本を読みたくなって、一日遅れで自分用に買い足して──」
「お年寄りだけじゃなくて、子どもから若い人から、みんな読んでるらしいわね」
「そうだね。私もおかーさん世代の人の考えとかもっと知りたくて、自分でも読んでみようと──」
「本当にありがとう!」
「うん。毎晩少しずつ読んでみて。私も届いたら一緒に──」
「お土産(スノー・ドーム)もありがとう!」
「おかーさ──」
「夢のような二日間でしたわ」
「おかーさん!」
「なあに?」
「風邪、引かなかった?」
「引いてないわ。ちょっと喉がイガイガするくらいで」
でしょうね。そんだけ(こちらの話を聞こうともせず)一方的に大声張り上げてりゃ喉も嗄れますがな。

母は、先の週末の2日間のあいだに、かつて図書館で叱られたことが余程印象的だったのか、二度も語った。
1回目は私が迎えに行った車中。2回目は、ムスメと私と3人で、和食ファミレスでの食事の最中。
いずれも、話す声がデカ過ぎます、もう少し声のボリュームを落としてくださいと頼んだ直後。まるでもれなくついてくるおまけのように話すのだった。
「Gさんと図書館で話してたら、図書館員さんに注意されちゃったの」
そりゃそーだろ。図書館は閲覧の場であって、話をしに行く場所じゃない。
「それも、二度もよ!」
ゲッ!! 何がキライって、あたしゃ公共マナーを守れないヤツが嫌いなんだよ。それを我が母が・・・。
二度も注意されたということは、一度言ってもわからんちんだったってことではないか。恥ずかしい。
「こっちは迷惑をかけないように、小声で話してたのにねぇ」
ゲッ!! 絶対大声だったに違いない。小声でだって、図書館で話なんかするんじゃねー!
「筆談にしろや」
と私が言うのを、冗談として受け取り笑う母。あたしゃ本気です!
この時だって、ファミレス中のお客さんが振り向くくらいのボリュームで話すから、慌ててムスメと2人でたしなめたばかり。
「おばーちゃん、声が大きい」
なのに、ちっとも小声になっていやしない。
五百歩譲って、ボリュームを気にせず好きなだけ声を張り上げ話してもらうとしよう。
ダメダだめだ、絶対に駄目! 
なぜなら母は大声で話すのと連動して、必ず呼吸が荒くなる。
ままままま、そんなにコーフンしないでいいからっっっと止めずにはいられない。

基本的に、私は声が大きい人が苦手だ(特に♂)。
静かに、ゆっくり話す人が好きだ(オダギリジョー的に)。
女性も然り。
子バカになるが、母は40、50代の頃までは、割ときれいな声の持ち主だった。
もちろん、大声で話すような人ではなかった。
母の年齢頃の自分にはない品の良さが、母にはあった(ような気がする)。

幼児といういきものは、やたら声を張り上げる。
甥と姪が小さい頃、何度思ったことだろう──そんなに喚かなくていいよ、ちゃんと聞いてるからね。
母は、我が母は、聴力が未発達な幼児と同じようになってしまったことであるなぁ。
大きな違いあり。幼児の声は可愛いが、母のしわがれ声は可愛くない。
だからこそ、母には筆談を勧めたい。
常にノートとペンを持ち歩く。
相手の言葉が聴き取れないときは、相手にも書いてもらえばいい。
喉も酷使しないで済む⇒風邪と勘違いして不要な風邪薬を飲まずに済む⇒健康保持
「ほほほ、いつも書くもの持ってないとダメねぇ」
ダメだこのリアクション。実行する気、ないでしょう?

昨日楽天から届いた本「九十歳。何がめでたい」を5話ほど読んだ。
著者の佐藤愛子さんは私の母より多分3歳年上。娘さんは私より8ヵ月月上。
同世代母娘とあって、尚更興味深い。愛子さんの言葉を我が母の代弁として、噛み締めながら読んでいる。
『若者は夢と未来に向かって前進する。
 老人の前進は死に向かう。』
ドキッとくる一文が目に飛び込んでくる。
大丈夫、母だけじゃない、私だって誰だって、生まれた瞬間、死に向かっているんだと自分に言い聞かす。
佐藤さんのエッセイからは、高齢者の開き直り的「けっ!」という舌打ちが聞こえてきて、実に小気味よい。
明るくて、元気になれる。
母もちゃんと読んでくれてるといいなぁ。
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# by vitaminminc | 2017-11-15 16:59 | 人間 | Comments(0)

忙しい週末

先週末は忙しかった。

金曜日。前日になって急に決まった部署会議。
「病院に予約を入れていたので」という理由(←もちろん深紅の嘘)で出席を拒み、帝国ぃゃ定刻に帰った。
家に着いた私は、その週の半ばにギリギリセーフで届いた車椅子を巨大な段ボール箱から取り出し(もうコレだけで息が上がった)、取説を見ながら開いて折り畳んでの練習。
多くのクチコミを信じ、また専門メーカーが手掛けた製品だけあって、性能的にはまったく問題なし!
しかも販売元が、良心の欠片をつなぎ合わせて設立されたとしか思えないくらい、良心的な価格で提供しているから、ホント助かった。
しかし、車に積み込むのには一苦労。軽量と謳ってはいるけれど、結構重い。
母を連れて行こうとしているところに車椅子は置いてある。が、台数には限りがあるから、出払ってしまっている可能性は否めないのだ。
母は近所の買い物くらいなら二足歩行可能だが、長距離・長時間は絶対無理。今夏、某植物園にお連れした時に確認済みだ。
2年前の熱海・小田原への奇跡の強行軍を最後に、母の脚力は日に日に衰えている。仕方ない、もう91チャイなのだ。
私は折り畳んだ車椅子を抱えると、渾身の力を籠めて車の後ろに載せた。
母が寝泊りする部屋に掃除機をかけ、ベッドの布団に乾燥機をかけた。
居間に戻ってコタローの様子を見たら、どうにも具合が悪そうだ。
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辛そうな表情で、カタツムリのように丸まっている。
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私はコタロー(キャリーバッグ入り)を車の助手席に乗せ、動物病院に急行した。そして、栄養剤と安定剤入りの輸液をたっぷりしてもらってきた。

土曜の朝。実家の母に電話を入れた。
「今から出るから」
これより前、週のはじめには、手紙も送った。
「土曜の朝、家を出る前に電話します。私がそちらに着くのは、それから1時間45分~2時間後になります。到着したら玄関チャイムの音が聞こえるように、必ずテレビは消しておいてください。寒いので、防寒着の用意もお願いします」
いつだったか、実家に着いて玄関チャイムを鳴らしたのに、どうにもこうにも出てもらえないことがあった。いることはわかっていた。携帯から電話もしてみたが、電話にも出ない。家の中で倒れているんじゃなかろうかとひどく心配になった。だって、テレビが大音響で鳴り響いたままなのだから。
携帯で110番しようか迷いだした時、テレビの大音響に負けないくらい大きなクシャミが聞こえた。「ヒャッホイ!」と特徴的なのサウンドは紛れもなく母のクシャミだ。
しかも、テレビのある茶の間にいるに違いない。つまり、テレビを見ているわけだ。
私はテレビが置いてある窓辺に近寄り、テレビの背後にまわった。そして、怪しい人影となって母の視界に入り込んだ。
それにしてもウルセー! このテレビの音量、近所迷惑にならないか?
テレビの音がやんだ。私に気づいたらしい。玄関ドアを開けながら、母が言った。
「道、混んでた? ずいぶん遅かったわね」
私は到着してから10分も待つ羽目になった旨母に訴えた。玄関チャイムもだが、電話の音が聞こえないくらいデカイ音でテレビをつけてるのは問題。緊急の時に困るではないかと言うと、母はしれっと返した。
「あら。電話なんか鳴らなかったわよ」
家の中で私がかけている電話の音が鳴り続けているのを私は聞いている。テレビの大音量をかいくぐるように鳴っているのを。
携帯の発信履歴にもほら─まぁ途中で面倒くさくなって言い争うのは止めたのだけれど。

手紙にあらかじめ注意事項を記して送っておいたので、今回はちゃんとテレビは消して、私が押した玄関チャイムの音にもすぐに反応してもらえた。
母を乗せて一路目的地へ──といいたいところだが、3時間の行程の2時間まで走ったところで、ランチタイムとなった。
ナビに誘導されて初めて通る道だったので、この先走ったところで母の好きな回転寿司やがある保証はない。
「もう、ここでいいね」と、KP寿司に入った。
いつもはKR寿司かSSRなのだが。
母は実際回転寿司が好きで、よせばいいのに話し方教室でもみんなの前で話したことがあるという。
「娘がKR寿司に連れて行ってくれて、ご馳走してくれました、って話したら、急にみなさん笑ったのよ。なぜかしらね」
ヤ~~~~~メ~~~~テ~~~~。
「それは、回らないお寿司ではなく、回転しちゃってたからですよ、おかーさん」
「?」
「ずいぶんシワイ娘だなと、失笑を買ったのですよ、おかーさん!」
たとえ私がセレブで、惜しみなく回らないお寿司をご馳走できたとしても、おそらく母は「回転寿司の方がよかったわ」と平気で言ってのけるだろう。
なぜなら母は、目の前を通り過ぎていくいろんなお寿司をいつもこどものように目を輝かせて見ているから。
KP寿司を出ていくらも走らないうちに、同じ通りにKR寿司があるのに気付いた。
「しまった、もう少し走ってたらKR寿司があったのに」と私は嘆いた。
「KR寿司? さっきのが?」
「いやいや、さっき入ったのはKP寿司。私はどっちかというとKR寿司のが好きなんだよね。おかーさんはSSRも好きだよね」
「あら、さっきのお店はHM寿司だったでしょ? SSRじゃなかったわよ」
「違います! さっき入ったのはKP寿司!」
「HM寿司に見えたけどねぇ」
「KPだってば!」
と、有名回転寿司チェーンの名を挙げ連ねているうちに、案の定曲がる道を1本間違えた。
「どうして? この機械(←ナビのこと)壊れてるのかしらね」
母の大声が狭い車内に鳴り響き、頭が痛くなりかけて間違えたのだということは伏せて、ナビは正常だとだけ答えた。
ついでに、すぐ横でそんな大声を張り上げなくても十分聞こえますとも。
「あら~。自分ではひそひそ声で話しているつもりだったけど。耳の遠い人は、自分の声もよく聞こえないのかしらね」と母は相変わらず大声でつぶやいた。

やっと目的地に着いた。
「ずいぶん遠いのね」と母は言った。
私の家からは1時間で来られるけれど、実家からだと3時間かかるのだと説明した。
母は引き算をした。
「みん子ちゃんとこと、2時間も離れてるのね。もっと近かったらよかったのに」
私は母を車の中に待たせたまま、入り口に走った。そして車椅子を借りられることを確認した。
「うしろに車椅子、載せて来たんだけど、こっちで借りられるから、入り口までは歩こうね」
母に車の後ろの車椅子を見せた。
「あら、こんなのまで用意してくれて。大変だったでしょうに」
「でも今日は上げ下ろしが大変だから、公園のを借りる」
「自分で歩けるのに」
「いや、無理だって」
「そうかしら」
母は、駐車場から公園の入り口までのわずかな距離もきつそうだった。
「だから言ったでしょ」
母が入り口付近のトイレを借りている間に、入園券を買った。
母と手をつないで公園内に入った。
入り口を見上げて、母が嬉しそうに言った。
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「も、み、じ、見ナイト?」
「夜間ライトアップされるんだよ」
ゲートを入ったところで車椅子を借りた。
母を車椅子に座らせて、私は持参した袋の中からニットの帽子と手袋とマフラーとひざ掛けといった防寒グッズを取り出しては母の身につけていった。
「いたれりつくせりね」と母が笑った。
私自身、武蔵丘陵森林公園に足を踏み入れるのは初めてだ。全国で一番最初につくられた国営公園で、広大な敷地は、東京ドーム65個分に及ぶという。
ライトアップは日の入りに合わせて、夕方16時半から。自然が好きな母のために、昼間の紅葉狩りも楽しんでもらおうと、14時半に現地入りした。
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平地だと車椅子を押す手も軽い。ただ、丘陵公園だけあって、なだらかであっても上り坂はしんどい。はぁはぁ言いながら車椅子を押した。
母は途中何度も気にして、「降りて歩くわよ」と言ったが、そんなことをされたら余計大変だ。
車椅子を押しながら、おかーさんと手を繋いで歩くことはできないと説明すると、ようやく納得したのか、おとなしく座って紅葉を愛でてくれた。
植物園だけでもかなりの広さだ。腕がおかしくなる前にいったん休憩所に入って休むことにした。
珈琲やビスケットなどのほかに、クリスマス・グッズが売られていた。
母がスノー・ドームを手に取って「わぁ、なんてきれいなんでしょう」と感嘆の声を上げた。
「おみやげに買ってあげようか?」と訊くと、珍しく遠慮しないで「うん」と頷いた。
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店内はライトアップを待つ大勢の客でにぎわっていた。
車椅子だと動けるスペースが限られている。
迷惑にならないよう店の外に出て、生垣見本園やハーブ見本園などを見てまわった。
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園内にアナウンスが流れ、ライトアップが始まった。
「わぁ~、きれいね」
「もう少し暗くなるともっときれいになるよ」
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北風が強く吹いていたが、母は防寒グッズのおかげで寒くないと言った。
私も車椅子を押しているので寒くはなかった。
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都心部や観光地にはもっとすごいライトアップが施されているのは知っている。
が、ライトアップで浮かび上がる紅葉というのも幻想的で、なかなか良かった。
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細い枝先にまで取り付けられたLED。たくさんの樹林にこれだけの照明を取り付けるのは、本当に大変な作業だろうとしみじみ思った。

感激した母を帰りの車に乗せ、しばし思案した。
本当はそのあと温泉に連れていく計画だったのだが、坂道の車椅子押しでへとへとになったので、安全重視で潔く中止した。
ちょうど金沢の旅行からムスメが帰ってきたところだったので、近所の和食ファミリーレストランに女三代で食べに行った。
ムスコは私たちが家路に着く前に夜間のアルバイトに出てしまっていた。
食事はムスメの驕り。私はデザートのみ驕り(笑)。

コタローの様子がよろしくない。
輸液後はいつもなら少しは食欲の回復が続くのに、いくらかなりとも食べられたのは1回きり。あとはまた食べなくなった。
しかも、水が入ったお皿の前で、じっとうずくまり、しきりに舌を出し入れしている。
これは、飲みたいのに飲めないでいるのでは?

日曜日。老人の朝は早い─はずなのに、母はよく眠っていた。
母に置手紙を残し、9時のOPENに合わせるように、またしてもコタローを病院に連れて行った。
さかんに舌を出し入れしていること。胸元にこぼれた唾液の痕跡があること。今まで嫌がることなく飲んでいたセミントラまで嫌がるようになったことなどを告げた。
「そうか、口内炎かぁ。輸液する時、入れてあげればよかったね。ステロイドを入れようか迷ったんですけど、まだそこまでじゃなかったから止めておいたんですよ」
と先生が言った。
確かに、急に悪化していた。
ステロイドを注射してもらったコタローが、ごはんを口にすることができたのは、お昼近くになってからだった。
食欲不振⇒栄養不足(ビタミンB欠乏)⇒口内炎⇒ステロイド⇒食欲不振 
負のスパイラル!
口内炎にもいいというハチミツも試したが、イマイチに終わった。
土曜の晩、母に書籍を1冊、コタローの口内炎サプリを1本、楽天で注文した。
今は、そのラクトフェリン系サプリが届くのを待っている状態。

母は、なんと通算11時間も眠った。休日の中高生並みの睡眠時間である。途中1回目が覚めたけど、気持ちがいいのでそのままぬくぬく二度寝したそうだ。
あまりにも起きて来ないので、正直焦った。紅葉を見に連れていって、変に疲れさせてしまったことが原因で、昇天してしまったのではないかと思った。
注意深く観察してみると、なんとも健やかな寝息をたてているではないか。そのまま起こさずに食事の支度をした。
お腹を空かせて起きてきたムスメが、おばーちゃんを起こしに行った。
朗らかな母の声。
「あらよく眠っちゃったわ」
母は、紙パンツを穿くようになる前は、頻尿で夜中に何度もトイレに起きていた。
私が勧めてもがんとして穿こうとしなかったくせに、同世代の人に「それに紙パンツって温かいのよ。おなかが冷えないでいいわよ」と勧められるとコロッとなびいた。
以来、夜中に何度もトイレに起きなくて済むようにはなったが、今回のように長時間眠れたのは本当に珍しいと自分でも驚いていた。
「みん子ちゃんが寝る前にお布団(乾燥機で)を温めてくれたおかげかしらね」
ブランチを食べたあと、母のために録画しておいた高野山と空海のテレビ番組を見せながら、母の爪を磨いた。
年輪のように深く刻まれた、母の爪の縦じわ。
やすりで擦ってもなかなか平らにならなかった。
「もっとゆっくりしてってほしいんだけど、明日仕事があるから」と私は詫びて、母を車で送る時間であることを伝えた。
一度車に乗ってから、母は紙パンツを穿き忘れていることを私に告げた。
「でも大丈夫」と母は言う。
「大丈夫なわけないでしょう。2時間かかるのに、もつはずない。渋滞するかもしれないし、絶対に穿いて」
「前に大丈夫だったことあるもの」
「絶対大丈夫じゃないから。途中でトイレに行きたいと言われても、急に停まれないんだよ」
「そうかしら」
「何を根拠に大丈夫っていうの? 押し問答している間に穿いてくれればいいものを」
「前に大丈夫だったから」
「大丈夫じゃないってば! 車の中でお漏らししたら、新車買ってもらうからね!」
母が吹き出し、ようやく車を降りることに同意した。
これだけで10分のロス。
前に、私が古いカーナビにだまされて、大した距離でもないはずなのに、なかなか目的地にたどり着けないことがあった。
その時の母の機嫌の悪くなりようといったらひどいものだった。
カーナビをぼろクソにけなし、新しいカーナビとやらを買ったらどうなのと息巻いた。
そして、「ああ、トイレに行きたい」を横で連発され、運転していても気が気でなかった。それに懲りてカーナビを新調したと言っても過言ではない。
あの日の悪夢をケロッと忘れ、「前は大丈夫だった」と真逆のことを頑固に言い張る母。
でも、もう91チャイなのだ。憎めるわけがない。
今回の母は、実家に送り届けるや否や、勝ち誇ったように言った。
「平気だったわよ」
「何が?」
「1回も(紙パンツの)お世話にならないで済んだわよ」
そりゃ、ほとんど眠っていたからですよ、おかーさん。。。
「ああ、本当にいい2日間だった! ありがとう」












可愛い母を降ろし、埼玉に帰る道中、私はいつも切ない。
























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# by vitaminminc | 2017-11-15 14:09 | 人間 | Comments(0)

キー・ガスケル症候群?

コタローの病気がほぼキー・ガスケル症候群であることがわかった。
病名はついたけれど、原因(神経毒)はいまだに解明されておらず、従って特効薬もない。
水が飲めなくて脱水症状に陥ったら輸液、食べられなくなったら強制給餌、目が乾ききったら点眼薬といったように。
キー・ガスケル症候群の諸症状の中で、コタローの症状と合致しているのは、「食欲不振」「元気がない」「瞬膜が出っぱなし」の3項目。
不幸中の幸いで、コタローは前回処方された自律神経調整剤の残りがまだ少しあるので、薬のチカラでわずかながらも毎日餌を食べている。
瞬膜も、一日中出っ放しとまではいかず、気づくと出ている時間帯がある、という感じ。

5日の朝、我が家の猫を3匹まとめて病院に連れていった。
コタローは本来ならワクチンの接種月。とても受けられるような健康状態ではないので、相談のため。
うずらとくーちゃんは、限界まで伸び切った爪を切ってもらうため。

この日の担当は女医さん。動物第一主義が高じて飼い主に厳しい。しかもせっかち。だからのんびり屋の私とは相性が悪い。
コタローを診察台の上に置くや否や、女医さんが険しい声で訊いた。
「今日は?」
「コタローのワクチンの─」
このあと私はこう続けるはずだった。「接種の月ですが、こんな状態なのでもちろん注射はなしで連れ帰ります。今日は相談に来ました」
けれど話を最後まで聞かずにまくしたてられた。
「ワクチン!? どうしてそんなに無理してまでワクチンを打ちたいの? もちろん予防のためでしょうが、こんなに痩せ細って弱っているのに、ワクチンを打ったりしたら、逆にワクチンにやられちゃう!」
「いえ」ようやく説明させてもらえる。「このようにワクチンを打ってもらえるような状態じゃないので、一応相談させていただきたくて」
そして、1/2錠だとコタローには強すぎたので、1/4錠にして飲ませたこと、量を減らしただけ食べられる量も減ったこと、薬服用後は顎の筋肉がおかしくなるのかやたら歯ぎしりしながら噛むこと、薬を飲まないとどうにもこうにも食べないこと、比較的機嫌はよく天使みたい(←すみません、親バカで)なことなど。
女医さんは気の毒そうな声で言った。
「薬がなくなっても、何とかして少しずつでも食べさせないとね。もうワクチンは(打たないで)いいでしょう。外とかに出してないでしょ? なるべくストレスを与えないようにしてあげて」
「ハイ」
「もしも身体によい変化が訪れて、たくさん食べられるようになって、体重が元に戻ったらワクチンを受けに連れて来て」
「ハイ」

うずらを捕まえるのはいのちがけだ。なぜならうずらが死に物狂い(←文字通りコレ)で抵抗、反撃してくるから。
それでも、猫ちゃん用フレンドリー・フェロモン「フェリウェイ」の効果か?
いつもならコブラのごときシャーッ!!(マジ怖い)とゲッ!!という威嚇砲(マジ超コワイ)を連発し、鎌と化した爪を炸裂させ流血騒ぎとなるのだが、この日はゲッ!!一発のみだった。
とはいえ、正気を失ったいきものほど恐ろしいものはなく、こちらの心臓はバクバク。
診察台の上にうずらをのせて、端的に説明した。
「うずらは超ビビリで捕まるまでは凶暴ですが、病院では固まります」
その通り、これ以上小さくなれませんというところまで縮こまって動かなかった。
女医さんは、介助なしで、慣れた手つきで両手両足の爪を切ってくれた。

くーちゃんは、この日キューブ型ハウスの中でまどろんでいるところをハウスごとネットに入れられた(笑)
あとで私が器用にハウスだけネットから取り出し、ネットに入ったくーちゃんをキャリーバッグに入れた。
いつもなら捕まったあとは寡黙になるくーちゃんが、この日は往路車中で鳴いていた。
オシッコがしたかったらしい。
診察台の上にのせる時、いち早く女医さんが失禁に気づいた。
そして、新しい新聞紙と尿取りシートを持ってきて、キャリーバッグの中に敷いてくれた。
私は端的に説明した。
「くーちゃんは、スイッチが入ると凶暴になります。以前ご迷惑をおかけしました。前科者です」
女医さんはちょっとだけ苦笑して、やはり介助なしでくーちゃんの両手両足の爪を難なく切ってくれた。

本日は2匹分の爪切り代1080円也。

女医さんは私にコタローを任せると、自分はうずらとくーちゃんのキャリーバッグを両手に持ち、駐車場に停めてある私の車まで運んでくれた。
猫にはやさしいが、飼い主には厳しい、を撤回。
たぶん、両方にやさしい。

コタローに根気強くマンマを食べさせる。必要に応じて手遅れにならないよう、その都度病院の手を借りる。
諦めずに、ガンバルしかない。
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赤い縞々はエビちゃんの蹴りぐるみ。元気にキックする姿が見られなくなって、早3カ月以上。とても悲しい。










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# by vitaminminc | 2017-11-06 22:43 | 生きもの | Comments(2)

キメラんない

とても魅力的113.pngどちらか1つにキメラんない種(?)族。



ホームセンターの園芸コーナーで私の目をくぎ付けにして我が家にやってきたガーベラちゃん
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両性具有(?)のあしゅら男爵
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ネットで見つけた胸元のナプキンが愛らしい子猫ちゃん
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我が家のピカソニック・キャット,くーちゃん(相変わらず任侠チックなイイ目してるわぁ)
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# by vitaminminc | 2017-11-03 17:49 | 趣味 | Comments(0)
皿の底だった。



ようやく光が見えた。実際、皿の底は銀色に光っていた。
エサを入れたのちに見るそれは、本当に久しぶり。
食欲不振による初診が8月上旬。コタローの食欲不振は3ヵ月近くも続いていたのだ。

先週金曜日。
体重を測ったら、2500gしかなかった。
すぐに病院に連れて行った。

「う~~~~ん。困りましたね」と先生もため息。「ステロイドは効かなかったと」
「病院から連れ帰った直後は若干増えましたけど、劇的といえるものではなくて、前回輸液していただいた後と似たようなもので─」
そう。ほんの少し、食べる量が一時的に3口だったのが5口に増えた程度。ステロイドが効いたというよりは輸液のおかげ。
その輸液にしても、痛い思いをした割に「食欲が回復した」とは言えないのだ。
「食道狭窄症でも食べられなくなるけれど、それだと必ず吐いたりするからねぇ」
「全然吐かないです」
「ウンチは?」
「食べる量が微々たるものなので、それでも2日に1回はちゃんとしたのが出ています」
「う~~~ん。となるとやはり胃腸ではないな」
「救いは、こんなに食べられないのに、常に機嫌だけは良さそうなんです。しっぽをぴんと上に立てて、ゴロゴロ言いながらおでこをこすりつけてきたり─」
私の説明を聞いて、先生の目がキラ~ンと輝いた気がした。
「拒食症ですね」
要するに、内臓疾患ではなく神経系の疾患ということだ。猫にもあるんかい、拒食症!
食いしん坊すぎて飼い主を悩ませるワンちゃんが多いのとは対照的に、猫は食べな過ぎて飼い主を悩ませる動物。先生は明快に説明してくれた。
「先生、実は私、藁にもすがる思いでネットで食欲不振で検索して、猫のフェロモンまで買い求めたんですよ。コンセントに差して揮発させるタイプの─」
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「フェロモンね、以前は3種類出ていましたけど、2種類はもう製造中止になってますね。今残ってるのはフレンドリーになるタイプ」
「え? フェリなんとか(←フェリウェイ)って、食欲不振には効果ないんですか?」
「ない(←言い切り)。とにかくフレンドリーになるタイプですね」
「じゃあもともとフレンドリーなコタローには必要なかったんだ。ほかの凶暴な2匹に使った方がいいかしら」
「うん。そっちに使ってみるといいかもしれないね」
なんてこった! 5000円も投資して必要のないフェロモンを入手するとは。ま、うずらとくーちゃんに使って仲良くさせるか。
フェリウェイは、飼い主に噛みついたり、多頭飼いで喧嘩が絶えない猫、発情期で気が荒ぶっている時などに有効とのこと。

「先生、何とかならないでしょうか。栄養失調になる前に、もう、なんでも試せるものは試したいです! 拒食症に効く薬、ありますか?」
先生は穏やかな笑みを浮かべ、「食欲増進剤のようなものはあります。試しますか?」と言った。
「ホリゾン。これは食欲不振に効きます。自律神経に働きかける薬ですね」
「注射ですか?」
「いや─」先生は実物を見せてくれた。「錠剤です」
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「え? 錠剤は飲ませられないかも─」
「簡単に水に溶けますよ」
「ならシリンジで与えられますね」
「1日1錠。半分に割って、朝晩1/2ずつあげてみてください」

早速金曜の晩、1/2錠を水に溶いて、コタローに与えた。
コタローはシリンジで飲ませられた後、「心外だ」という顔で、何度もまずそうに舌なめずりしては口中を清めていた。
そして、服用後10分も経たないというのに、なんと! エサが入ったお皿に顔を突っ込んだではないか。
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カリカリをガリガリ歯ぎしりさせながら、音を立てて食べ始めた。
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食欲不振による初診が8月7日。この食いつきっぷり、かれこれ3ヵ月以上目にしていなかった光景。
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入院して点滴を受けた後に少し食欲が出るには出たが、皿の底が見えるには至らなかった。
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私は嬉しくて嬉しくて、とにかく嬉しくてたまらず、そばでずっとコタローの名を呼び続けた。
自然にそうなってしまい、自分でも止まらなかった。悪夢にうなされ、何度も目を覚ますくらい、ずっと気に病んでいたから。

コタローが、生きようとしている! 自律神経調整剤の力を借りてではあるけれど。

ところが、もりもりエサを食べ、ゴクゴク水を飲んだ後、コタローは突然酔っ払いに変身した。
おっととと、おっととと─四肢の踏ん張りが効かず、千鳥足状態。目も完全にイッチャッている。
そのうち、へなへなと床にへたり込んだ。
病院での先生の説明は、こうだった。
「眠くなる成分が入っているから、もしかしたら1日中ずーーーっと寝てばかりいる感じになるかもしれません」

睡魔に襲われているのか? コタローを抱き上げて、寝床に移した。
素直に横たわったものの、すぐには寝なかった。
イッチャッテる目で、くだを巻くのだった。
目を閉じてからも、猫以外の何かが乗り移ったように、しばらくブツブツと寝言をいっていた。
みんなで思わず笑っちゃえたのは、コタローの呼吸がいたって正常だったからだ。
それでも心配になり、【猫 ホリゾン】でネット検索したら、コタローと同じように食欲不振が続いた末にホリゾンを服用した猫ちゃん(17歳♂)のブログにたどり着いた。
その子は1錠服用した15分後に、驚きの食欲回復が見られ、やはり同じように酩酊状態に陥ったとのこと。
まだ診療時間内だったのだろう、飼い主さんが病院に問い合わせると、先生の答えは「効き過ぎたようですね。2時間くらいで元に戻りますよ」だったそうな。

そうかそうか。体重だけみればコタローは子猫と同じ。だからコタローの先生は1錠ではなく1/2錠ずつ飲ませるよう指示していたのだな。
翌日からは、さらに半量─1/4錠ずつ朝晩2回、1日1/2錠に変えてみた。
与える量が減った分、食べる勢いや量が実にわかりやすく減りはしたけど、3回のうち1回は若干酔っ払いに変身する。
服用後は必ず食べてくれるわけだし、コタローには今の量が妥当な気がする。
これで縮んだ胃袋が元に戻って、自律神経のバランスの崩れも修復できたら万々歳だ。
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写真は本日午前中に撮った1枚。

そんなわけで、コタローは只今腎臓の保護薬セミントラ(←おそらくこれは一生)と、自律神経の調整薬ホリゾンを服用中。

追伸:フェリウェイをうずらとくーちゃんがいる部屋(つまり私の寝室)で使ってみた。
穏やか&フレンドリーになるというより、2匹にそれぞれ「わけもなく多幸感に包まれる」症状が出て、元気に遊びまわり、飛びまわっている。
お陰で私は夜中の騒音で睡眠不足。安眠妨害以外のなにものでもない。
このフェロモン、くーちゃんを迎え入れた直後、情緒不安定になったうずらにこそ使ってあげるべきだった。。。。
そうしていたら、あるいはベッドを尿まみれにされることもなかったかもしれず。自分の知識欲の無さがうらめしや。
高価なフェロモンゆえ、ワクチン接種などで病院に連れて行った日にだけ使うとするか。





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# by vitaminminc | 2017-10-29 14:55 | 生きもの | Comments(0)
昨日18時過ぎ。
ケーブルテレビで映画「闇金ウシジマくん」を観ていたら、電話が鳴った。
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ディスプレイを確認したところ、フリーダイヤルからかかってきていた。
どうせまた何かの営業だろうと思い、留守電に任せて受話器を取らないつもりでいたが、何かが引っ掛かった。
フリーダイヤルの番号。
下4桁に、見覚えがあった。
き、勤務先やんけーッ! 
留守電のアナウンスが応答する直前に受話器を取った。
女性社員の安堵の声。
「ホゲホゲさん(←私の苗字)ですね? よかったー、ご無事で。心配してたんですよ。今日ホゲホゲさん、出勤日なのにいらっしゃらなかったから──」
あんぎゃー!
自分でも意外だが、今の会社(勤続12年目)どころか、これまで勤めた全ての勤務先に対し、無断欠勤なんかやらかしたことはない。今回が生まれて初めて。
バカなので寝込むほどの風邪を引かない。だから、まず休まない。遅刻どころか社員よりも無駄に早く出勤するのは前に述べた通り。
勤怠に関してだけは、非の打ち所がないほど高評価なのである。
もちろん、よんどころのない大変な事情で欠勤せざるを得なかったことはあった。
そんな時は(当たり前のことだが)どんなに緊迫した場面であっても、必ず始業時刻30分前までには連絡を入れたものだ。
だから、社員が敢えて遅い時間になってから電話を寄越したのは、寝坊の類のチンケな遅刻あるいは欠勤と思われたからではない。
日頃から、「いかんせん母親が高齢なもので、いつ何時体調を崩すやもしれず、そうなったら突然仕事を休まなくてはなりませぬ、このことだけは是非頭の片隅に入れておいてくださいね」と伝えていた。
ゆえに、「何か不測の事態が起こったに違いない」と判断した社員が、「対応に追われているホゲホゲさんの邪魔にならないよう」私を気遣い、「少しは落ち着いた頃」を見計らって、様子伺いをしてくれたのだ。
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消し忘れた「闇金ウシジマくん」の音声が流れる中、「申し訳ありませんっ」を連発して、脱力しつつ受話器を置いた。
月に最低2日間は土日祝日にシフトを入れないといけないルールである。
前回のシフトがどうだったかを確認せぬまま今回のシフトを提出した私は、先週、先々週と2週連続して土曜出勤していた。
いくらなんでも3週連続はありえない。そう信じて疑わなかった私は、金曜に退社する時、
「じゃあ私、明日は休みですんでよろしく~~~」なんて手を振りながらいそいそと帰ったのだった。
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あ~っはっは! 一寸先は闇。
このたった1回の不始末で、「勤怠面だけは信用できる」という私の数少ない、いやたった1つの強みを失ってしまった。


でも、相変わらず「闇金ウシジマくん」の山田孝之はカッコエエなぁ!
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# by vitaminminc | 2017-10-22 12:23 | 趣味 | Comments(0)
2階ホールの本棚の中に飾ってある猫の写真を見て、突然気づいてしまった。
2年前に天に召された、眠眠(享年10歳)
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ギョロ目が印象的な名優・渡辺いっけい
映画でもドラマでも、この人が出ているシーンはもれなく好き。その意味が、ようやくわかった(笑)



コタロー、相変わらず食が細いけれど、毎日それなりに機嫌よく過ごしています。
ガリガリに痩せていて見た目が寒そうなので、先日楽天で猫用ちゃんちゃんこを購入しました。
着せてみたら、嫌がらずにゴロゴロ喉を鳴らしていました。
でもそれは、動かずにいた時だけ。
歩こうとしたら慣れぬ裃に、一歩も踏み出すことができず、途端に不快感をあらわにしました。(写真は階段で大あくび)
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もちろん、すぐに脱がせました。
見た目と違ってコタロー本人は暑がりなのです。
コタローの定位置になってる居間のあちらこちらに、身体が冷えないよう敷物をセットしました、
それらを避けるように、わざわざ何もない冷たいフローリングに直に寝てたりします。
この秋一番の冷え込みとなった今朝は、さすがにベッドで寝てましたけど。(写真は窓辺)
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# by vitaminminc | 2017-10-18 14:35 | 趣味 | Comments(0)

食欲と読書

この秋の中、私の目下の楽しみは、仕事から帰って7粒ほどいただく美味しい銀杏。
地元の友だちEちゃんが、毎年届けてくれる。ウハウハ言いながらありがたく頂戴しているが、まるで売り物のように完璧な状態(敷地内で収穫⇒洗浄⇒天日干し)にしていらっさるのはご主人とのこと。大変な労力を費やされているだけあって、翡翠の如く美しい色艶。素朴で味わい深く、秋そのものといった風味。
本当に美味しい。
Eちゃん、ご主人、ありがとうございます。
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それから、就寝前に読む本。
秋に入ってから、何かないかと亡きオットの書棚を物色して、佐伯泰英の時代小説を手に取った。
「居眠り磐音 江戸双紙」。今現在、文庫本で50巻目が出たか出るかしている超人気シリーズで、10年ほど前にNHKでドラマ化もされている。
剣豪磐音役を山本耕史が演じたようだが、どうもイメージが違う。オットがドラマを観なかったのも同じ理由だろうか。山本耕史が悪いというわけではない。どちらかといえばむしろ好きな俳優だ。ただ、磐音をやるには肌が白く、つるんとし過ぎているような気がする。別に原作の中で、磐音は肌が浅黒いだのキメが粗いだのといった描写など一切ないのだが。

オットの書棚には32巻まで揃えてあった。私は今、11巻目まで読み進めたところだ。
それにしても──こんなに面白いのに、なんで生前、オットは私に教えてくれなかったのだろう。私が意外に時代小説も好きだってこと、知ってたくせに。

悔しいから、私は読んでやる。オットが読めなかった33巻以降も、自分で買って読んでやるからな!
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# by vitaminminc | 2017-10-15 19:33 | 趣味 | Comments(0)

お助けロイド

今日は、うずらとくーちゃんのゴハン事情について語るつもりでしたが、急きょ予定を変更してお送りしますです。
考えてみたらふたりのマンマは、くーちゃんのマンソン劣頭条虫事件以来ずっとロイヤルカナン消化器サポート(可溶性繊維)。それにコタローの食べ残し(腎臓にやさしい高齢猫用フード)が加わっただけ。語るほどのものではござ~せん。

くまのぬいぐるみのような足をしたくーちゃんと、カメラを敵と思い込んでいるうずらの近影を挟みつつ(神経質なうずらはなかなかカメラでキャッチできないので1枚のみ)、内容はまたしても虚弱体質王子・コタローに関してであります。
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本日夕方、コタローを病院に連れて行きました。
仕事から帰ってコタローのマンマ皿を見たところ、朝入れたまんま(マンマだけに)でした。
こりゃアカン!
コタローを抱っこして体重を計測。
ふ、増えている!(私がな)
これだとコタローの体重が5000gはあって欲しいところ。が、コタローをおろして測り直した我が体重、心まで重くなりました。
んなこたどーでもよい。
差し引き計算したコタローの体重、悲しいことに、2600gを下回ろうとしておりました。
もう手に負えません。
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今回は、私自ら先生に頼みました。
「ステロイドを試したいです」と。
前回先生は言っていました。コタローの食欲がこのまま戻らないようであれば、ステロイドを試すのもありと。
インターネットで下調べしたところ、自己免疫疾患による食欲不振にステロイドはかなり有効らしいです。
また、先生に副作用について訊いたら、次のように教えてくれました。
ステロイドの副作用はずっと続けた場合に生じるものであって、今回のように単発的に与える場合はまず心配ないそうです。それに、人間よりも犬の方が、犬よりも猫の方が、ステロイドの副作用は少ないというデータがあるとのこと。
不思議なことに、ステロイド(いわゆる免疫抑制剤)は、猫の身体と相性がいいようなんですね。
安心しました。
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薬剤入りの輸液はことのほか皮下で凍みて辛いので、先生は少しでも痛みが和らぐよう、希釈の意味も込めて(?)今回もたっぷり輸液してくれました。
投入したステロイドは2種類。速効性タイプと、じわじわ長く効くタイプ。
コタローは3本の注射器が空になるまでの間、じっと耐え抜きました。強いなぁ!
頑張ったのだから、ステロイド治療が功を奏して、もりもり食べられるようになるよ、きっと!
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帰宅してしばらく経つと、ヤケ食いみたいにカリカリを音を立てて食べました!
すごい! 速効性ステロイドの威力でしょーか。久しぶりに耳にする快音です。
でも、だいぶ胃が小さくなっているようで、勢いの割に、食べられた量はまだちょっとだけ。
これからじわじわタイプのステロイドに助けられて、徐々に食欲が増えていくことでしょう。







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# by vitaminminc | 2017-10-13 23:09 | 生きもの | Comments(0)

猫にゴハン

我が家のにゃんこの食事情をば──


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性格的には人懐こくて最も育てやすいのだが、食事面では最も悩まされている。

ま~、ほんとに食が細い。
写真のように、まつ毛も可憐な美少年(←親バカ)のコタロー。
現在、コタローのためのフードの買い置きは、ドライ,ウエット合わせて20種類を超えている。
楽天,ホームセンター,ドラッグストアで買い漁ったありとあらゆるフードが、大きな段ボール箱の中でひしめき合っている。
見向きもしなかったフードでも、諦める必要はない。忘れた頃にあげてみると、今度は食べたりする。
逆に、食べたからといって調子に乗って同じフードをまとめ買いするのは危険だ。2回目は見向きもしなかったりする。

ま~、とにかく食が細い。
いつまで経っても3000gに戻らない。2600g~2800gを行ったり来たり。
デカ王子・眠眠は、コタローと同じ月齢(12カ月)の頃は軽く5000g超えて、先生に「大きな子だねぇ」と笑われていた。
まるで子猫のように軽く、壊れそうなコタロー。


あまりにも食べなくて、こりゃまた病院に連れて行くしかないかな~と思い始める頃、何かを感じ取ったかのように、突然食べ始めたリする。
(あ。そういえばボク、今日ゴハン食べるの忘れてたかも)てな感じである。
それでも、具合が悪いならやはり連れて行くしかないのだが、撫でるとピンと立てた尾が天を指すし、ゴロゴロ機嫌よく喉を鳴らす。
誰かが水道の蛇口をひねろうものなら、どこからともなくすっ飛んできて、流し台だろうが洗面台だろうが飛び乗って、水をねだる。
流水王子・眠眠は器用に顔を傾け、上手に流水を直飲みしたものだが、コタローはとことん下手である。
水の出をうんと細くしてあげても、思い切り鼻に浴びて(なんでやねん)、結局器に入れてあげないと飲めない。

本日も、朝からちょびっとしか食べていないことがわかったので、夕方医者に連れて行くしかないと踏んだ。
でもダメ元でと、うずぴとくーちゃんを捕獲した、あのギロッポン野良猫界の守護神・那須高原のホールデン・コールフィールドが、コタローのために送ってくれたスープタイプのフード「無一物」を小皿に入れてみた。
前回は、2、3度舐めただけで止めてしまい、残りすべてがくーちゃんの胃袋におさまるという残念な結果に終わった。
しかし、今回は素晴らしい「呼び水」となった。
無一文ぃゃ無一物を半分飲んだ後、「シーバ香りのまぐろ味セレクション15歳以上」を私のてのひらから小袋の8分目くらいまで食べられたからである。
この量、昨今のコタローにしてみたら、久々の快挙である。

コタローは、腎臓をいたわるに越したことはないので、腎臓ケアのフードをチョイスしている。
自然、老猫用フードにたどり着く。痩せ方からしたら高カロリー食品を与えたいところだが、子猫用は厳禁なんである。
かといって医療用にしてしまうと、腎臓サポートはあまりにも不味い。
くーちゃんでさえ舌を出さなくなるのは必至。
くーちゃんにはダイエットになるからいいかもしれないけれど、コタローが食べなきゃ意味がない。
その点、11歳以上や15歳以上向けは、体にやさしいだけでなく、美味しさもそこそこ保たれているようだ。
くーちゃんはもちろん、気難し屋のうずぴも意外に(コタローの食べ残しを)食べている。







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# by vitaminminc | 2017-10-12 21:33 | 生きもの | Comments(0)

ワタシとコドモ

vs ムスメ

 ムスメと2人でダイエット・レースをしている。
 週に最低1回以上、同じ日の同じ時間帯に体重計に乗る。
 そして、前回の自分と比較して、より減量に成功した方が、相手から300円受け取るのである。

 この競争の言い出しっぺはムスメであった。
「嫌だ」
 と私は断った。
 年齢的に新陳代謝が落ちている。圧倒的に不利である。
 しかし、ムスメは食い下がった。
「友だちとの付き合い上、外で食べないわけにはいかない」と言うのである。
 外食はハイカロリーになりがちだから、こっちはこっちでハンデがあると言うのである。
 金曜の晩に、土曜は朝から。確かに毎週1、2回はしっかり外で食べてくる。
「まあ、いいでしょ」と私はOKした。

 あきれるくらい緩いレースである。増量してたって成立し続けるのである。
 前回の自分より1キロ太ったって、嘆くことはないのである。
 1300g増えちゃったムスメから300円もらえるからである。
 で、今現在、プラスマイナス私が900円勝っていて、体重はと言うと、700g減。
 誤差の範囲である。
 これのどこがレースなのか。
 自分たちに甘すぎるってんで、ムスメが博奕を提案した。
 即ち、それぞれの理想の体重を設定し、より早くそれに到達したら1000円ゲットというもの。

 私もムスメも3キロ減量しなければならない。
 途方もない話である。
 ノー残業デーで早く帰れるというムスメから誘いを受け、駅までムスメを迎えに行って、そのままイタリアンレストランに直行した。
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 ピザ食べ放題。よせばいいのにドルチェまでつくコースを選び、ウップ!となるほど二人で食べまくった。
 もしかしたら、900円負けているムスメの作戦かもしれないと思いつつ、食欲の秋を体現してしまった。

 不毛なレースは続く。



vs ムスコ

 ムスコはよく私をからかう。
 私が録画しておいた番組を熱心に観ていると、わざと視界に入って来る。
 そして、目の前で歌を唄い出す。
 一応私向けにセレクトしているのか、20年近く前のヒット曲だったり、時には昭和歌謡だったり。
「ちょっと、見えないからどいて」というと、小憎らしい表情で、益々テレビ画面に被さってくる。
「それにうるさい。何言ってるのか聴き取れないじゃん!」と文句を言うと、スマホだかiPodだかをいじくって、益々ヴォリュームを上げる。
「今、いいとこなんだから、ホント止めて!」と立ち上がると、
「いい齢して半パン穿いてんじゃねーよ」と抜かす。
「ハーフパンツじゃありません」と反論する。「これは膝丈より長いです!」
 すると、
絶妙なズボン丈のズボンなんか穿いてんじゃね~よ」
  とからかってくる。
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(写真はイメージです)

 怒ろうにも笑いが邪魔して怒れない。
 奇妙なボキャブラリーにやられて、テレビのリモコンの停止ボタンを押すしかないのである。
「絶妙なズボン丈って─」と言い返そうとしただけで笑い崩れてしまう(←アホ)。

 母の笑いのツボを知り尽くしているムスコ。
 新聞を広げるとわざわざその上に寝そべり、人の視界を占領する猫のようである。

 そこまで可愛くないけどな。

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# by vitaminminc | 2017-10-08 16:16 | 笑い | Comments(0)
 27日。ひたすら回復を祈りつつ、朝一で病院に連れてったコタロー。
 私の目の前で直ちに右腕に点滴器具を取り付けられたコタローは、そのままひょいっと抱っこされて病室に連れてかれた。コタローはおとなしいので、ネットやエリザベスカラーは不要。

 同じ日の夕刻。面会に訪れると、何がどうなったらこうなるんです?てな顔のコタローがうずくまっていた。
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 隣のケージの子が私の気配に興奮して鳴きっぱなしなので、早々に引き揚げた。もっと一緒に居たかったけど幸いなことに、とことん眠くなるのが点滴の魔力。コタローがうとうと眠ってくれたおかげで後ろ髪を引かれずに済んだ。
「ありがとうございました」
 帰ろうとしたら、先生からマッタがかかった。
 血液検査の結果が出ているので説明するとのこと。
 怖いこわいコワイ。耳を塞ぎたくなった。
 椅子に腰かけてドキドキして待っていると、先生が「正常!」と一言。
「あんなに悪かった数値、ほら、このようにほとんどすべて正常に戻ってます」
「え! ホントですか?」
 嬉しくて涙がじわ~~~~。
 目にハンカチを当てながら、「点滴の威力ですか?」と訊いた。
「う~~~ん。正直わからない。何かが原因で、一時的にひどくダメージを受けていたことは間違いないです」
 人間も発熱を伴うような重症の風邪をひくと、一気に腎・肝機能の数値が悪化したり、白血球が異常な数値を示すことがある。コタローもそうだったのだろうか。
 病名(急性腎不全)をつけざるを得ないほどの数値だっただけに、先生もキツネにつままれたような顔をしていた。それでも祝福の笑みを浮かべて、
「これなら明日には退院できます」と太鼓判を押してくれた。
 ただ、今一つ食欲が完全回復には至らないので、帰宅後もずっと食べられないようなら、自己免疫疾患が疑われるので、そっちの治療を試みましょうと言われた。
 熱なし、下痢なし、嘔吐なし。食欲なし。でも、おうちに戻ったら、食欲も戻るかも。

 28日夕刻。
 コタローを迎えに行った。スゴイ! 目に生気が!
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 やはり点滴は皮下注射と違う。血液に入ってダイレクトに身体中を巡るだけのことはある。
「うにゃにゃうにゃにゃ」
 とコタローはしきりに私に話しかけてきた。たぶん、なんでこんなとこに置いてくんだよーと文句を言っているのだろう。が、点滴はとことん眠くなる。文句を言いながら、大口を開けて欠伸を2度3度。
 ほかの子の診察を終えた先生自らコタローを診察室に運んでくれた。
 診察台の上で、点滴器具を取り外してもらう瞬間、コタローが暴れた。針を抜かれるまでおとなしくしてりゃいいものを、なまじ元気になったものだから。ちょいと流血(汗)。

 後部座席にコタローのキャリーバッグを乗せて帰宅。家に着いて車のドアを開けた途端、コタローが飛び出て焦った。
 キャリーバッグの閉め方が甘かったようで、元気になったコタローが中で動き回っているうちに開いてしまったらしい。
「コタちゃ~~~ん」
 と私はつとめてさりげなく、コタローが自由の身になっていることに気づかせないように、そっと玄関ドアを開けて、
「さあ、お入り~~~~、おうちだよ~~~~」
 と猫なで声でお誘いした。
 コタローは敷地内から路地に出ようとしかけ、足を止めた。
(あれ?)
 開け放したドアの向こうに、懐かしいコタローのおうちが両手を広げて出迎えていた。
(そうそう、こっちこっち)
 コタローが思い出したように、すっ飛んで家の中に飛び込んでいった。急いでドアを閉め、私は喜びに震えた。
 奇跡ってあるんだな。
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 先日ムスメと二人で、かつて我が家で暮らし、今は天国にいる猫やわんこのお墓参りをした。そこで今うちに暮らす猫たちの健康を祈念してきたのが、功を奏したに違いない。

 猫は、奇跡だ。奇跡の化身だ。
 会社の元同僚の実家で飼っていた猫も、13歳の時に慢性腎臓病と診断され、「もって3、4カ月」と言われたのに、20歳まで生きたそうだ。
 しかも、危篤状態に陥るたび輸液はしてもらったが、点滴入院は一度もしなかったという。
 さすがに肝硬変になった時は「もって3日」と言われ、家族みんなで見送るための心の準備をしていたところ、突然元気になってむしゃむしゃごはんを食べ、何事もなかったかのように天寿をまっとうしたという。
 この時は先生も「肝硬変はふつう治るわけないんだけどなあ」と驚きを通り越して呆れていたそうだ。

 猫という生き物にとっては、数値が示すものなど時として意味をなさないのかもしれない。自分が生きると思ったら生き続ける、そんなところが(病気に気づかないでいるところが)、ありそうな気がする。

 わずかではあるが、昨日よりも今日の方が食欲が出てきた。
 頑張って食べようね!
 ムスコが言っていた。
「コタローは、食べてる時に背中を撫でてやると、割と食べ続けるよ」
 体重を測ったら、入院前と同じく、まだ2700gのまま。
 元気に動き回っているせいだろう。
 頑張れ! 頑張れ!
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# by vitaminminc | 2017-09-29 20:10 | 生きもの | Comments(4)
輸液する前のコタロー
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居間の片隅でぐったり。餌も殆ど食べられなかった。


日曜日。午前中に輸液。晩のコタロー
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夕方、居間の片隅用にと買ったベッド。縁の部分が枕代わりになって、なかなか具合が良さそう。


月曜日。輸液翌日のコタロー
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階段をあがって、2階のホールに置いてあるソフトケージの屋根(ハンモック代わり)に上れた!
でも皮下注射をした痛みだろうか。目が死んでいる。発病前は、ここにいる時は、寝起きであってもいつも得意顔を見せていたのに(T_T)
夜半過ぎに、居間を歩き回ってリハビリ(?)に精を出していた健気なコタローとしばらく遊んだ。
嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らし、私の手を甘噛みした。だいぶ気分が良さそう。


火曜日。輸液後3日目のコタロー
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輸液した水分・栄養剤が、皮膚からじわじわ浸透して、ゆっくり全身に行き渡った頃。
右腕のむくみがなくなり、全身の痛みから解放されたようだ。わずかながら食欲も出てきた。
目に力あり。なんて可愛いんだろう。入院を決めた。

症状が悪化したからではなく、良くなったから入院させる勇気が湧いた。
今頃どうしているかな、コタロー。
診療時間内ならいつでも面会OKらしい。
場所見知りする猫にとって、入院は心的ダメージが大きいよね。
午後の診療が始まる16時頃、様子を見に行こう。迎えに来た!ってぬか喜びさせちゃうだろうけど。
コタロー。無遅刻無欠勤─鍵当番の社員待ちをするくらい早く出勤して、仕事には真面目に取り組んできたけれど、今朝、平気で嘘ついちゃった。
「すみません、だいぶ、体調が悪いので、本日、休ませて、いただきます」
「だいぶ」のあとに「コタローの」が抜けただけで、嘘とは言えないか。いやいや、かなり演技してたよな、声で。






最近のうずぴ
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コタローが口をつけなかった、ありとあらゆるフードをようやく食べるようになった。
警戒心が強いので、食べつけない物にはすぐに舌を出さない、都会育ちの箱入り娘。
ご覧ください、この、おろしたてのように真っ白い清潔な靴下を。ああ眩しい。

グローブ型ブラシにも慣れて、私がブラシを手にはめると必ず「きゃあ113.png」と叫んですっ飛んでくる。
「にゃあ」ではない。「きゃあ」。女子高生なもんで。
利口なくーちゃんは、私が部屋のドアを開けた時点ですでに「ブラッシングしてもらいます」態勢でスタンバっているから、うずぴはいつだって2番目。
でも、くーちゃんの横で、正座している私の膝に額をぐりぐり押し付けながら、まるで自分もブラッシングしてもらっているかのように(←エアブラッシング)背中の次は脇腹、そしてまた背中というふうに身体の向きを変えて身もだえする、JKうずぴ(笑)。



最近のくーちゃん
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コタローの食べ残しのみならず、それを拒否ったうずらの分まで残さずペロリ。
まあ、コタロー用のまんまだから微量ではあるのだけど。
おかげでますますにゃんこ先生(夏目友人帳)の体型に似てきた。小さなアンヨと丸いしっぽも。
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今年に入ってから、実は黒い毛に白髪と思しき白い毛が混じり始めた。
まさかまさか、推定より遥かに熟女ってこと? 那須高原で捕獲したそこのアナタ、白髪が混じってきたように見えるんですけど?

くーちゃんへのブラッシングは、力加減を誤ると速攻で噛まれるので、要注意。
「違うだろ!」程度な噛み方だけど、くーちゃんだっていつ力加減を誤るやもしれず。
くーちゃんは、うずぴのブラッシングを始めても、しばらくは「うずぴに飽きて、また私に戻るかも」てな体で受けの態勢でいるけれど、見切りをつけた途端、超クール。私の手の届かない場所までサッと移動。
そしてこちらを振り返る顔には「ふん!」と書いてある。いやホント。それ見て何度吹き出したことか。
食い意地は張っているけどプライドは富士の高嶺より高い。
歩いている後ろ姿の可愛さをお見せできないのが、ただただ残念!


 猫の腎不全にお詳しい方は、きっと「バカ! 一刻も早く点滴を受けさせんかい!」と歯ぎしりされていたことでしょう。
 いろいろな事情に邪魔されて、思考回路が遮断されたりするんであります。
 現にコタローを入院させて家に帰って来て、最初に何をしたか、考えたかというと、(居間からコタローが出て来ない、また体調が悪いんだろうか)てなもんです。探しましたよ、さっき自分で病院に連れてって入院させたばかりのコタローを。
 早く回復してくれないと本気で頭が壊れそう。
 
 急性腎不全は、程度にもよるけれど、初期の集中的点滴治療で【回復】する子もいるといいます。
 もちろん、治るわけではないとのこと。それでも中には回復した後、亡くなるまでの間、ずっと点滴や輸液に頼ることなく、セミントラの服用のみで普通に生きられた子もいたそうです。
 過剰な期待を抱かぬようエンジンブレーキは使用しつつ、ゼロじゃないなら前進するしかないでしょう。
 アクセルを踏まない足はない(なんだ、この日本語)。

 ゼロじゃないならば。





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# by vitaminminc | 2017-09-27 12:58 | 生きもの | Comments(0)

水袋搭載

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 コタローの右腕の付け根の球状のコブは、本日たっぷり輸液してもらった証。
 元気がなくて食欲がなくて、どうしようもなくて、やむを得ず病院に連れて行った。
 輸液後なので表情が幾分柔らかだが、病院に連れて行くまでは目の光が消え失せて、素人目にもいかにも病猫にしか見えなかった。
 コタローを一目見るなり、先生も言った。
 「また悪化しちゃったようだね」
 と顔を曇らせた。
 本来なら入院させるレベル。嫌と言うほどわかっちゃいたけど、諸事情により拒否。入院ではなく輸液を希望した。

 慢性腎不全だった眠眠は、初めの頃は進行が緩やかで、即腎臓サポートフードに切り替えて、スタート時の輸液は確か2ヵ月に一度だった。そして検査の数値を見ながら、月に一度、半月に一度、というように徐々に回数が増えていき、通院代が嵩むので在宅輸液に切り替えたのだった。

「入院させる場合は、一週間はみてください」とコタローの先生が言った。「3日間で大体効果の善し悪しがわかります。個体差があるので、入院させたことで数値が下がる子が多いとはいえ、全然変わらない子もいます。中にはかえって数値が高くなってしまう子もいる。入院させる以上絶対治してくださいと言う人がいますが、正直無理です。ただ、3日間様子を見て、数値が変わらなかったり悪化するようであれば、(うちの治療方針としては)退院させます。急性だからといって腎不全が治るわけではないですからね」
 以上、あくまでも急性腎不全のケース。慢性腎不全は3日間で好転しなくても一週間続けることである程度は数値が下がることが多いという。


 私にお金の使い道に困るほどの余裕があれば、入院させていたのかな。
 でも、強烈に連れて帰りたかった。
 入院させて一時的に回復しても、いくらも経たないうちにすぐにまた、入院させる前以上に悪化してしまった眠眠のことが頭をよぎった。コタローの先生は、眠眠が入院した、別の病院の担当医とは全く違う。
 『入院させてあげないとかわいそう』というようなプレッシャーを与えたりしない。一通り詳しく説明した上で、飼い主に決めさせてくれる。

 強烈な拒絶反応を起こしながらも、結構悩んだ。次の患者さんが待っていることが気になったが、結果的にはもう一人の先生が後の患者さんを診ていて、私とコタローは午前の部の最後の患者になっていた。

 入院させて行う点滴は、文字通り血管に細い針を刺して1滴ずつゆっくり注入していくから痛みは少ないし、血液にのって体の隅々まで十分行き渡る利点がある。その一方、時間がかかるので、慣れない環境下に長時間身を置き、自由を奪われることによるストレスは免れない。
 入院させてかえって数値が悪化する場合があるのは、ストレスによるものだろう。高い医療費を支払った結果、かえって具合が悪くなるなんて、飼い主にとっては二重の苦しみだ。

 そして、ぶっとい針を皮膚にぶっ刺す輸液(皮下注射)は、短時間で大量の水分補給が可能であるが、皮膚から漏れ出てしまうことも少なくない。しかも痛みは点滴の比ではなく、かなり辛い。また、写真のように、輸液後浸透するまでの間、身体の一部に水分が集中し、膨れ上がった状態になる。

 輸液を終えて帰宅したコタローは、恐ろしい病院に連れていった悪役=私が近づいても逃げることなく、おとなしく撫でさせた。いいウンチも出た。家に帰れてホッとした表情を見せてくれた。
 
 今唯一の慰めは、セミントラ(腎臓病の水薬)をさほど抵抗されることなく、確実に飲ませられていることくらい。
 「急性」という言葉が頭についている病気の怖さを実感している。眠眠の時の、一体何倍の速さで進んでいるだろうか。眠眠の時でさえ、あれよあれよという間に悪化していった印象なのに。

 だからこそ一緒にいたい。毎日触れていたい。ゆとりのない者にはゆとりのない者なりの方法─ただひたすら愛情を注ぐ─で、コタローの病気と向き合っていくしかない。

 追伸:さきほどムスメと2人で、ペット霊園にお参りに行ってきた。納骨堂に眠る眠眠の遺骨の安置期限が今月いっぱいで切れるので、更新するか共同墓地に埋葬するかの返事がてら、納骨堂への最後のお参りに行って来た。
 亡くなってから一度更新して、1年間延長してもらっていたが、今回はマイ(享年18歳♀猫),ぽぽ(享年15歳♂犬),茶尾(享年3歳♀猫)が眠る共同墓地に、眠眠(享年10歳♂猫)も移してもらうことにした。
 眠眠はじめ共同墓地の面々に、冥福を祈るとともに、うずらとくーちゃんとコタローの健康を祈願してきた。

 霊園に出かける前に、庭でモフを見かけた。もっふもふの見事な毛並みを見て、ああ、元気でいるんだなと安心した。


 


 

 
 




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# by vitaminminc | 2017-09-24 17:35 | 生きもの | Comments(2)

ラブレター

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 愛するみん子ちゃん

 お手紙嬉しく拝見しました。
 「はじめまして・・・」お手紙書くのは初めてよネー。自分乍ら筆不精だったなあと反省しております。
 七月十一日~十三日は本当にありがとう。幸せをしみじみ味わったせいか、あの日から夢見が善くなりました。
 毎晩、何故か? どうしてか? 大掃除して、せっせとコンクリートを磨いている夢ばかり見て、疲れて情けなくなっていました。
 ところがです。
 みん子ちゃん、孫みん(←ムスメの名)ちゃんがきてくれてから、夢が陰から陽にガラッと変身したのです。
 物事に積極的で明るく、美しい夢を見るようになりました。嬉しい嬉しい事です。
 ありがとう!
 今日は早速朝から鳥がゆ、昼は焼きビーフンを頂きました。美味しくて、ほっぺたが落ちそうです。
 では又、これからは、せっせとラブレターを書きたいと思っています。
 お体には充分気をつけて、皆さん、仲良く元気でお暮し下さい。
 
  九月十日                  みん子母
 みん子様


 先日、91歳の母から届いた書簡である。
 原文をそのまま転記したので、一部訂正あり。私とムスメが帰省したのは、7月ではない。8月11日~13日の誤り。

 母から手紙を受け取ったのは、本人が言うとおり「初めて」とは言わないまでも、年賀状を除いたら、母の娘となって以来、通算一、二通程度。
 敬老の日用に、レンジで加熱しただけで簡単に食べられる中華粥や焼きビーフンを贈ったのだが、その礼として手紙をしたためてくれた。

 亡父は結構筆まめな人で、字もなかなか達筆だった。母は文章を書くのが苦手で、自分があまり字がきれいでないことに劣等感を抱いていた。もっとも私が知る限り、母の字は決して下手などではなかった。小学校に入学した時、学用品に書いてくれた名前なんかも、むしろ「きれい」だった。
 なぜそんなに引け目を感じていたのかよくわからない。ただ、書き慣れた文字を書く父より劣ると自認していたのは確かだろう。
 
 働き盛りで多忙を極めていた40代~50代、母は毎晩寝る前のペン習字を欠かさなかった。ペン習字といっても倹約家の母のこと、日ペンの美子ちゃんみたいな通信教育を受けていたわけではない。
 どこで調達したやら、ひらがなのお手本のようなペラ紙を横に置いて、それを見ながら広告の裏や不要になった紙に書いたり、お手本を紙の下に敷いてなぞったりをひたすら繰り返していた。
 「お父さんの字はほら、一字一字が上手いわけじゃないのよ。字配りが良いのね」
 と、母はゴミ箱から拾いでもしたのか、父の書き損じをながめてしみじみ言ったものだ。
 絵心もあった父は、字に置いてもバランス感覚に優れていたのかもしれない。それに比べて母の字は、一字一字は何年もペン習字を続けていただけにきれいなのだが、文にすると少なからず稚拙な印象を受けた。
 (ひぃぃ。PCが固まって編集機能が無効になってしまい、急遽スマホにて続きをしたためておりますです)
 母の字は、几帳面なくらい、一字一字がすべて同じ大きさで、それが敗因だったように思う。
 文(ふみ)を書くのが苦手だから字がぎこちないのか、字がぎこちないから文を書く気が失せるのか。
 結局、何年も何年も独学で続けたペン習字の成果は、生かされることなく幕を閉じたのだった。

 ここ3年くらいの間に母の聴力は著しく衰えてしまった。電話をかけても会話にならないのは日常茶飯事。最近じゃその電話の呼び出し音も聞こえないらしく、いつかけても出ないので、2階に同居している兄に母の安否を問う始末。
 私は父に似て筆まめな方なので、母の日以降はもっぱら電話ではなく手紙を書くようにしている。
 ある日、私はふと疑問を覚えた。私だけが手紙を書いて、母が「手紙着いたわ」と電話を寄越す。その電話に私が何を言おうが母の耳には聞き取れない。「ごめんなさいね、何を言ってるか聞こえなくて。でもお手紙嬉しかった」と母が締め括る。
 これではキャッチボールになっていない。頑なに返事の手紙を寄越そうとしないのは、握力が弱っていてペンが握れないからなのだろうか。それを確かめる意味もあって、私は手紙に書いた。
 「たまにはお手紙くださいな。昔、生欠伸を噛み殺しながら、あんなに毎晩ペン習字を続けていたじゃありませんか。勿体ないですよ」
 そのあと受けたのが、電話ではなく冒頭の手紙だ。
 驚いた。思っていたよりずっと筆跡も確かで、内容もしっかりしているではないか。91歳が書いたとは思えない。
 ムスメも同様の反応。
 「ご高齢の顧客の中にはペンさえ握れなくなってる方もいるからね。おばあちゃん凄い。若いね!」
 ムスコにも見せてみた。
 「まあ。なんて綺麗な字なのでしょう」⬅ムスコはクソ汚い悪筆。
 母上。貴女は私にラブレターを書くために、毎晩あんなに一生懸命ペン字を習っていたのでしょう。
 貴女の字は、かつて父が書いていた、伸び伸びとした字とは違います。どこか慎ましやかで、少しぎこちないれど、私の目には相変わらず綺麗。
 とてもとても懐かしい字です。またお手紙ください。
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# by vitaminminc | 2017-09-18 12:29 | 人間 | Comments(0)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by みん子