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ガラスなワタシ

 朝食の支度をしていると、突然、自分の携帯が鳴った。斎藤和義の「やぁ無情」のオルゴール音である。

 それは、予め自分で設定しておいたスケジュールの告知で、たった三文字、
        ガラス
とあった。
 
「ガラス?」私は挑むように東の窓ガラスを見た。そして、ガラスの向こうの朝陽に意味もなくガンを飛ばしながらつぶやいた。「ガラスって、何だ?」

 愛しさと切なさと心強さのこもった声がした。

「ガラスごみ(正しくは資源ゴミ)の日、って意味でしょ」

 振り返るとそこに、ムスメの眼差しがあった。憐憫と諦念と恐怖を丸底フラスコに入れ、アルコールランプで沸騰させてつくった蒸留水、それを点眼したような瞳が私を見ていた。

「それ以外、ないじゃない」

 すぐそばにいるはずなのに、5mくらい遠く感じる。どん引かれているせいだろう。

 携帯のスケジュール機能を使うときは、次からは、もう少し肉付けすることにしよう。

 ガラスの資源ゴミを出す日

 これがそのうち、「ガラスの資源ゴミ(勝手口にあり)を出す日」

になり、やがて、

「ガラスの空きビン(勝手口の内側のレジ袋の中)を路地出て県道を左折、50m先の集積所に朝8時までに出しに行くこと」

まで入力しないと通用しなくなるのかもしれない。

 ガラス転移したようにキンキンに凍った脳みそを朝陽で温めながら、2階に向かって叫んだ。

「ムスコー! 早く起きてー! そしてガラスを出しに行ってー!」
ガラスなワタシ_b0080718_11224683.jpg

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by vitaminminc | 2011-01-29 11:22 | Comments(0)