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なんでやねん

 関東・甲信越地方も、とうとう梅雨が明けてしまいました。
 本日昼下がりに、灼熱アッパーカット(別名:アスファルトの照り返し)を喰らいながら、町に一本調子のBGMが流れているのを耳にして、わけもなくイライラいたしました──なんでこんな一本調子のBGMなんか流すのだ、流れるのは自分の汗だけでたくさんだ──
 しかし、まともに聴いてみますと、それは市の防災課の親切なアナウンスなのでありました。

──ただいま 市内の気温が
 35℃を超えました。  
 熱中症にならないよう、  水分をこまめにとるなど
 健康管理に  十分注意してください 
 ピンポンパンポン──

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 ひぃぃ。暑いなぁとは思ったけれど、「気のせい」だと言い聞かせておりました。でも、市の防災課に断言されてしまったので、この暑さはホンモノだということがわかりました。
 わかってからは、こめかみからだけではなく額からも汗が流れ落ちる始末で、まさに気温で梅雨明けを実感した次第です。

 熱帯夜には恐怖小説が似合います。最近読む本が尽きたので、本棚から古い文庫本を引っ張り出して読みました。
 外国のミステリーやホラーといった短編ばかり12作品を収めた本です。最終ページの自筆の書き込みから、28年前の9月7日、22:33に一度読み終えていることがわかりました。
 それぞれの短編に、前説が載っているのが特徴です。
 一話目は、デ・ラ・メアの「失踪」という作品です。残念ながら、記憶にありません。12作品のうち、目次に★印が付いてあるのはわずか1つ。もちろん自分で書いたのは一目瞭然。面白いと感じたのが1つしかなかったことを意味しております。
 さて、一話目に★が付いていたわけではないのですが、読者のマナーとして、最初から読むことにしました。28年前の自分の評価を鵜呑みにすべきではないとも思いましたので。
 前説を読む限り、相当面白そうであります。
 作中の人物(主人公)だけが恐怖を認識しておらず、また作中のどこにも直接恐怖が描かれてはいないにも関わらず、読み手にじわじわと「殺人」を意識させる手法。「失踪」は、比類のない、最も恐ろしい殺人小説であると絶賛しているのであります。
 28年前の自分はきっと未成熟だったのだ。それでこの小説の真の怖さが理解できなかったのだ。これは大いに期待できそうだ──私はワクワクしながら読み始めました。

 『 ロンドンに一週間も猛暑が続いた、その最後のことであった。──』

 猛暑猛暑。おんなじおんなじ。出だしからして、感情移入できるというものです。主人公の「わたし」は、たまたま店を開けている古本屋に入り、別にほしくもなかった精神分析の本を一冊、九ペンスで買ってから、暑さから逃れるため、とある喫茶店に入ります。
 古本屋、精神分析の本、月と六ペンスと同じ通貨、喫茶店──ひっひっひっ。私好みのアイテムが出揃いましたぜ。私は主人公の「わたし」と同化し、作品の中へ溶け込みつつありました。
 やがて「わたし」は、そばの席にいる、一人の客に気を留めます。その男は人品も決して悪くはないものの、まわりの雰囲気というものをまるで無視しているかのようなところがありました。

 『彼は、何か胸のうちに、厳重に包んだ宛名のない小包の箱みたいなものを持っているように見えるが、あれはどういうわけなのか? どうやらそれが自分でも重荷になってきているらしい。』

 おお、なんという素晴らしい観察眼。そして表現力。この作品への期待は、もはやうなぎのぼりであります。
 
 彼は何を思ったか、自分の帽子と、腰掛けている椅子のそばに置いてあった、だいぶ手ずれたワニ皮の大きな鞄を手に持つと、椅子から立ち上がって、猫のような静かな足どりでこちらへやって来ましたです。
 そして、「わたし」のまん前の椅子に腰をおろし、話しかけてきましたです。

 『あの、御邪魔をして、えらい恐縮だすが』

 だすが? ですが、じゃなく? もしかして誤植?

 『ここからキングス・クロスへ行くバスの番号を教えていただけまへんやろか?

 まへっ! まへ~~~っ!? 28年前、私がこの作品に★を付けなかった理由がわかりましたです。恐怖の対象として、関西弁はあきまへん。
 絶対怖くなくなります! 関西弁は私にとっては日本で最も愛すべきファンキーな言語であり、お笑いの象徴なのであります。関西出身の方々、決して悪口ではありません。褒め言葉とお受け取りください。
 シークレットに包まれた殺人鬼は意外と饒舌で、延々語り続けますです。

 『わてもな、田舎には猫の額ほどの土地をもってるのが』

 ひぃぃ~~~。わてだって~~~。憎めないですぅ~~~。

 『ロンドンいうところが、いかに友愛的なところかあんたなど意外に思われますやろが、つまり、市民がほんまに助けになってくれはる、援助的やちゅう意味ですわ

 なにゆえ関西弁に訳したのか。これが真のミステリー。





 二話以降、読み進められなくなりました。なぜだか読んでも涼しくなれなかったもので。へい。

  
Commented by キャサリン at 2013-07-07 21:38 x
はい、はい、お褒めの言葉ありがたく頂戴いたします。
以前、アメリカの刑事モノのドラマシリーズをみてたら、なんでか一人の刑事が関西弁しゃべってはったんですわ。
なんでや、なんでアメリカ人やのに関西弁?
あまりの違和感に、見るのやめました。ほんま、おかしいやろ~。
後日、久しぶりに、ちょっと見てみるか~、と怖いもん見たさでチャンネルをあわせると、ちゃんと標準語しゃべってはりました、その刑事さん。
やっぱりな。製作者は、斬新なアイデアやと悦に入ってはったんやろうけど。そんなん、あかん、あかん。
日本に住んでる外国人が、関西弁しゃべるのは面白いけど。。。
吹き替えで関西弁、ありえへん!
翻訳で関西弁、なおさらありえへん!!!
しかも、この関西弁、ヒドっ。突っ込みどころ満載。
いや~、面白いモン、ご紹介いただいて、おおきにです。
あっ、今更ながら、ワタクシ、こてこての関西のおばちゃんです。
Commented by vitaminminc at 2013-07-08 07:52
❤キャサリンお大臣さまさま~❤
(>▽<)ウッキャ~~~! 憧れの関西人! 流暢な関西語!
リズミカルなその語調、紛れもなくネイティ部長ざんすぅ~!
なるほどなるほど。やはり関西の方が見ても聞いても読んでも、
外国人(日本在住を除く)の関西弁はあかんのですね!?
いや、実際ご当地の方にとってはどういう印象なのかなと思って
いたもので、生の声が聞けて嬉しゅうございますです♪

で、実はキャサリンさまのブログにお邪魔したくて、あちこち探しているのですが、根が方向音痴なもので、どうしても辿り着けないのです。
お手数ですが、ご案内いただきたく、何卒宜しくお願いしますです❤
byバテバテの関東のおばちゃん
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by vitaminminc | 2013-07-07 18:56 | 趣味 | Comments(2)