2015年 04月 24日
生き場所
生き場所を探す猫みたいに
爪で 皮膚で 指で 手の平で
腕で 肩で
胸で君を確かめてた
今日も生きてるかを
最高な世界へ 最高な世界へ── (THE YELLOW MONKEY #BRILLIANT WORLD)
仕事から戻って眠眠の様子を見にいくと、眠眠は床でへばっていた。
床のそこかしこに、黒い墨をなすりつけたような跡があった。
眠眠のウンチだ。
ペースト状の餌に、墨のサプリを混ぜて与えている。
身体に溜まった毒素を墨に吸着させ、ウンチと一緒に排出させるのだ。
よく見たら、ベッドの上の毛布にも、間に合わなかった墨が付着していた。
餌と呼べるような量を口にしていない。
昨日やっと歯茎に塗りつけられた量なんて、紅筆にとったリップクリーム程度だ。
トイレの中にも、猫砂1粒ほどの墨の塊があった。
ずいぶん苦労して、あちこち洩らしながら、目的地まで辿り着いたようだ。
なんて偉いんだろう。
昨夜から今朝にかけて、40分間隔で鳴いて起こされた。新生児の授乳よりしんどい。
疲れ果てた私は、とうとう鳴き声に気づかずに、深く寝入ってしまった。
突然、何かが落ちる音で目が覚めた。
眠眠が、私を乗り越えて、ベッドから床に落ちたのだ。
本当は、降りたつもりなのだろう。
けど、もう踏ん張る力が残っていないから、結果的に落下した。
私は飛び起きて、眠眠を抱きしめた。
ごめんね、ごめんねと何度も謝った。
眠眠が落ちないように、要塞となって寝ていたくせに、まったく気付けなかった。
骨と皮だけの身体だ。
痛かったろうに。
今日も床にへばっていたところをみると、また落ちたのだろうか。
今朝は一応、床にクッション材を敷いておいたけど。
完全防水の簡易寝床である。
ふらふらになって壁にぶつかったとしても、これなら安心、痛くない。
試しに寝かせてみたけれど、這い出ようとして、空気入りの壁に爪を立てる。
ベッドだと落ちたら危ないのに、上で寝たいらしい。
よし、プールはいよいよ動けなくなった時のために、準備だけにしておこう。
明日は仕事が休める。一日そばにいてあげられる。
オシッコも出なくなってきた。
知っている。こうなると、もうお別れが近いって。
そういえば、声も出なくなった。
鳴らない管楽器のように、空気だけが漏れる。
でも、眠眠は腹を膨らませ、小さな口を開き、必死に訴えている。
つらいんだよね。
ふと、横たわる眠眠を見て、いっそ息が止まっていたらと願う。
だって、そうだとしたら、苦しまずに逝ったことになるから。
痩せこけた腹が、かすかに上下している。
なんてことを考えてしまうのだろう。
でも、本当に、少しでも楽に逝かせてあげたい。それだけが願いだ。
もう長いことずっと、ずーっと気持ち悪いことに耐えてきたのだから。
神様。眠眠が、どうか少しでも苦しまずに神様のもとに行けますように──
by vitaminminc
| 2015-04-24 18:40
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