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迷走の果てに見えたもの、それは──

皿の底だった。



ようやく光が見えた。実際、皿の底は銀色に光っていた。
エサを入れたのちに見るそれは、本当に久しぶり。
食欲不振による初診が8月上旬。コタローの食欲不振は3ヵ月近くも続いていたのだ。

先週金曜日。
体重を測ったら、2500gしかなかった。
すぐに病院に連れて行った。

「う~~~~ん。困りましたね」と先生もため息。「ステロイドは効かなかったと」
「病院から連れ帰った直後は若干増えましたけど、劇的といえるものではなくて、前回輸液していただいた後と似たようなもので─」
そう。ほんの少し、食べる量が一時的に3口だったのが5口に増えた程度。ステロイドが効いたというよりは輸液のおかげ。
その輸液にしても、痛い思いをした割に「食欲が回復した」とは言えないのだ。
「食道狭窄症でも食べられなくなるけれど、それだと必ず吐いたりするからねぇ」
「全然吐かないです」
「ウンチは?」
「食べる量が微々たるものなので、それでも2日に1回はちゃんとしたのが出ています」
「う~~~ん。となるとやはり胃腸ではないな」
「救いは、こんなに食べられないのに、常に機嫌だけは良さそうなんです。しっぽをぴんと上に立てて、ゴロゴロ言いながらおでこをこすりつけてきたり─」
私の説明を聞いて、先生の目がキラ~ンと輝いた気がした。
「拒食症ですね」
要するに、内臓疾患ではなく神経系の疾患ということだ。猫にもあるんかい、拒食症!
食いしん坊すぎて飼い主を悩ませるワンちゃんが多いのとは対照的に、猫は食べな過ぎて飼い主を悩ませる動物。先生は明快に説明してくれた。
「先生、実は私、藁にもすがる思いでネットで食欲不振で検索して、猫のフェロモンまで買い求めたんですよ。コンセントに差して揮発させるタイプの─」
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「フェロモンね、以前は3種類出ていましたけど、2種類はもう製造中止になってますね。今残ってるのはフレンドリーになるタイプ」
「え? フェリなんとか(←フェリウェイ)って、食欲不振には効果ないんですか?」
「ない(←言い切り)。とにかくフレンドリーになるタイプですね」
「じゃあもともとフレンドリーなコタローには必要なかったんだ。ほかの凶暴な2匹に使った方がいいかしら」
「うん。そっちに使ってみるといいかもしれないね」
なんてこった! 5000円も投資して必要のないフェロモンを入手するとは。ま、うずらとくーちゃんに使って仲良くさせるか。
フェリウェイは、飼い主に噛みついたり、多頭飼いで喧嘩が絶えない猫、発情期で気が荒ぶっている時などに有効とのこと。

「先生、何とかならないでしょうか。栄養失調になる前に、もう、なんでも試せるものは試したいです! 拒食症に効く薬、ありますか?」
先生は穏やかな笑みを浮かべ、「食欲増進剤のようなものはあります。試しますか?」と言った。
「ホリゾン。これは食欲不振に効きます。自律神経に働きかける薬ですね」
「注射ですか?」
「いや─」先生は実物を見せてくれた。「錠剤です」
「え? 錠剤は飲ませられないかも─」
「簡単に水に溶けますよ」
「ならシリンジで与えられますね」
「1日1錠。半分に割って、朝晩1/2ずつあげてみてください」

早速金曜の晩、1/2錠を水に溶いて、コタローに与えた。
コタローはシリンジで飲ませられた後、「心外だ」という顔で、何度もまずそうに舌なめずりしては口中を清めていた。
そして、服用後10分も経たないというのに、なんと! エサが入ったお皿に顔を突っ込んだではないか。
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カリカリをガリガリ歯ぎしりさせながら、音を立てて食べ始めた。
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食欲不振による初診が8月7日。この食いつきっぷり、かれこれ3ヵ月以上目にしていなかった光景。
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入院して点滴を受けた後に少し食欲が出るには出たが、皿の底が見えるには至らなかった。
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私は嬉しくて嬉しくて、とにかく嬉しくてたまらず、そばでずっとコタローの名を呼び続けた。
自然にそうなってしまい、自分でも止まらなかった。悪夢にうなされ、何度も目を覚ますくらい、ずっと気に病んでいたから。

コタローが、生きようとしている! 自律神経調整剤の力を借りてではあるけれど。

ところが、もりもりエサを食べ、ゴクゴク水を飲んだ後、コタローは突然酔っ払いに変身した。
おっととと、おっととと─四肢の踏ん張りが効かず、千鳥足状態。目も完全にイッチャッている。
そのうち、へなへなと床にへたり込んだ。
病院での先生の説明は、こうだった。
「眠くなる成分が入っているから、もしかしたら1日中ずーーーっと寝てばかりいる感じになるかもしれません」

睡魔に襲われているのか? コタローを抱き上げて、寝床に移した。
素直に横たわったものの、すぐには寝なかった。
イッチャッテる目で、くだを巻くのだった。
目を閉じてからも、猫以外の何かが乗り移ったように、しばらくブツブツと寝言をいっていた。
みんなで思わず笑っちゃえたのは、コタローの呼吸がいたって正常だったからだ。
それでも心配になり、【猫 ホリゾン】でネット検索したら、コタローと同じように食欲不振が続いた末にホリゾンを服用した猫ちゃん(17歳♂)のブログにたどり着いた。
その子は1錠服用した15分後に、驚きの食欲回復が見られ、やはり同じように酩酊状態に陥ったとのこと。
まだ診療時間内だったのだろう、飼い主さんが病院に問い合わせると、先生の答えは「効き過ぎたようですね。2時間くらいで元に戻りますよ」だったそうな。

そうかそうか。体重だけみればコタローは子猫と同じ。だからコタローの先生は1錠ではなく1/2錠ずつ飲ませるよう指示していたのだな。
翌日からは、さらに半量─1/4錠ずつ朝晩2回、1日1/2錠に変えてみた。
与える量が減った分、食べる勢いや量が実にわかりやすく減りはしたけど、3回のうち1回は若干酔っ払いに変身する。
服用後は必ず食べてくれるわけだし、コタローには今の量が妥当な気がする。
これで縮んだ胃袋が元に戻って、自律神経のバランスの崩れも修復できたら万々歳だ。
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写真は本日午前中に撮った1枚。

そんなわけで、コタローは只今腎臓の保護薬セミントラ(←おそらくこれは一生)と、自律神経の調整薬ホリゾンを服用中。

追伸:フェリウェイをうずらとくーちゃんがいる部屋(つまり私の寝室)で使ってみた。
穏やか&フレンドリーになるというより、2匹にそれぞれ「わけもなく多幸感に包まれる」症状が出て、元気に遊びまわり、飛びまわっている。
お陰で私は夜中の騒音で睡眠不足。安眠妨害以外のなにものでもない。
このフェロモン、くーちゃんを迎え入れた直後、情緒不安定になったうずらにこそ使ってあげるべきだった。。。。
そうしていたら、あるいはベッドを尿まみれにされることもなかったかもしれず。自分の知識欲の無さがうらめしや。
高価なフェロモンゆえ、ワクチン接種などで病院に連れて行った日にだけ使うとするか。





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by vitaminminc | 2017-10-29 14:55 | 生きもの | Comments(0)