2018年 01月 31日
皮革三原則
皮革三原則──それは、大切にされるべき革製品を箪笥の肥しにせず、ネットオークションに出品せず、劣化させないことを指す。
箪笥の肥しにはしていなかったつもりだが、クローゼットの奥で眠っていたレザーのハーフコートがある。
オットの遺品である。
革製品はいかついイメージがあるけれど、オットのそれは上品なオリーブ色。
私の好きな色の1つで、やさしい印象の1着だった。
袖を通さないままだったり、滅多に着なかったものは売ったり譲ったりして、殆どの衣類は処分した。
でも、どうしてもこのコートだけは手放せずにいた。
去年12月に入って間もなく、私は突然ひらめいた。来年(つまり今年)1月、ムスコは成人式を迎える!
オットのお下がりをムスコに着せるという発想はなかったが、このハーフコートならムスコの年齢でもイケるんじゃないか?
オットより10cm近く背が高いムスコだが、このジャケットなら入るんじゃないか?
思い立ったら居ても立ってもいられなくなって、箪笥の奥から引っ張り出した。
あらら? もっと状態がよかったように記憶していたけれど、袖口など擦れやすい部分の色褪せが気になった。
なんじゃこの写真は。わかりにくいが、アップして撮ったのがコレ ↓ 袖口の色が抜けてしまっている。
革のクリーニング・修復を行っている業者をネットで調べまくっていくうちに、「協和クリーニング」さん(愛知県豊橋市)にたどり着いた。
往復の送料&代金引換払いの手数料が無料な上に、クリーニング料金がほかに比べて群を抜いて良心的。とはいえ、ノー・ブランドの新品が楽天バーゲンなら2着は買える。
ムスコに確認してみた。美しく蘇ったら、本当に着る気はあるのかと。着る気があるなら成人式のお祝いに、諭吉2人をクリーニングに送り出す覚悟であると。
ムスコが首肯したので、早速申し込んだ。
ところが、職人さんが1着1着丁寧に仕上げることからもわかるように、申し込みは1日限定10着。
しかも毎日受付けているわけではない。「次回の受付日」は翌週だったりする。
そんなこんなで、限定数に滑り込みセーフで入れたのは、3回目にしてやっと。でも嬉しかった!
クリスマスイブイブだったので、若いユーザーや小さなお子さんがいる家庭は、クリスマスの準備で申し込みどころじゃなかったのかも(笑)
家にあったダンボール箱にハーフコートを入れて、集荷に訪れたドライバーさんに託した。
ハーフコートが先方に着いて中を確認した協和クリーニングさんが、打ち合わせの電話をくれた。
オーダーの最終確認を済ませて、あとは仕上がりを待つのみ。
完了の連絡メールが届いたのは、1月22日だった。
無理もない。年末年始の休業を挟んだし、鞄やお財布といった小物とは違い、大物である。
フード・ライナー(別料金2,376円)付きハーフコート(シミ抜き・色修正:18,144円)。
更にオプションで、撥水加工(3,240円)も追加したのだった。
メールを受けた数日後に、オットの形見が帰還した。
意外なことに箱入りではなかった。型崩れが生じないよう、このように「吊るし」の状態で届けられたのである。
外カバーを外すと内カバーが現れた。
ジャーン! ようこそ、メンズメルローズ様。嗚呼、しなやかでキレイ
たまたま家にいたムスコを呼んで、一緒に確認した。
「大したもんだな!」
ムスコも見事に美しく蘇った革に手で触れ目に触れ驚嘆していた。
「ちょっとちょっと、着てみてよ」
と私が頼むと、照れくさいのか、面倒くさそうに袖を通した。
「すげー重い」
革のジャケットなんか着たことないから無理ないか。手長霊長類のムスコには若干袖丈が短い感がなきにしもあらずだが、ギリギリOK。
「とーちゃんの人生の重みだよ。とーちゃんをおぶってるつもりで着てあげてよ」
私がつい余計なことを言ってしまったばかりに、ムスコは嫌悪感をあらわにした。感傷的なことが大嫌いな性分なのである。
母と一緒に「そうだねかーさん。これをとーさんだと思って後生大事に着るよ」としんみり同調するようなタマではないのである。
チッ!
舌打ちするや否や、さっさとジャケットを脱ぎ捨ててしまった(苦笑)
それにしても、いや~、いいお仕事されてますね。協和クリーニングの職人さんの腕の確かさに、心底脱帽。
カメラ機能のせいで、クリーニング前とクリーニング後の違いがイマイチ伝わらないかもしれない。
実際、まったく色むらもなく、新品と見紛うばかりの美しい仕上がりなのである。
コレが↓
こんな感じに!↓
by vitaminminc
| 2018-01-31 17:10
| 人間
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