家庭拷問

 
b0080718_15153561.jpg←ありし日のチューリップ(4月)

 昨日、小学校の家庭訪問が終わった。
 家庭訪問──毎年このたった10分間のために、一体どれだけの時間を費やすことだろう。前日の日曜は、朝から終日片付けに追われた。先生になり切って、路地からうちの敷地内に足を踏み入れてみた。
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                   家庭訪問当日の花壇→

 初っ端からめまいを覚えた。花咲く頃を終えたヨレヨレのチューリップが花壇を茶色く濁している。それにしても、やけに汚い。葉のいたるところに無数の黒い塵が付着している。火山灰にしては、山がない。よくよく見てみたら、子どもたちが花壇の近くに植えたポピーの花に、無数の小さな毛虫が大量発生しているではないか!
 チューリップの葉に付着した火山灰は、花壇の上を領空侵犯するように伸びた、丈の高いポピーに巣食う、そやつらの糞だったのである。
 毛虫たちは毛虫のくせに、蜘蛛の巣のような細かい網目のハンモックの中で生活していた。頭髪をゾゾ毛立てながらゴム手袋をはめると、毛虫に触れないよう細心の注意をはらいながら、茎ごと切ってはゴミ袋に捨てた。毛虫たちは振動に殺気を感じ取るらしい。なぜなら、もぎ取られた茎の先で、尻から蜘蛛のような糸を出してはブランブランと蓑虫状に垂れ落ちる。ゆっくりながらも必死でゴミ袋に入れられまいと抵抗する。
「うぎゃあ」
 私もいなかっぺ大将のように、大粒の涙でアメリカンクラッカーをしながら必死で駆除した。虫は大の苦手だが、あまりの惨状になんとかしないわけにはいかなかった。
 やっとのことで毛虫退治を終えた後は、場所を地べたに移して草むしり。45㍑2袋分の雑草を引っこ抜いた。舗装していない砂利路地にも雑草は容赦なく生えていた。
 ようやく玄関。またしても軽いめまい。下駄箱からは靴がはみ出し、下駄箱の上の観葉植物はほこりをかぶっている。靴の仕分け作業と観葉植物の洗浄。
 問題は、ココから先である。
 うちの間取りは最悪だ。先生を居間にお通しするには、いやでもキッチンを通っていただくことになる。そうなると、キッチンと居間の2部屋を何とかしなければならなくなる。
 すでに時刻は午後に突入──というわけで、今年も二階の子ども部屋(それも息子ではなく娘の部屋)を訪問部屋として採用することにした。うちは毎年コレでいっている。娘の部屋なら、そこに至るまでの階段と1部屋を片付けるだけで済む。中間テストのにわか試験勉強を居間でやっている娘に、「掃除してやるから明日部屋を提供しろ」と交渉した。応じなけれ私が次に口にするのが「ならば永久に個室を明け渡せ」であることを知っている娘。「またか」という顔でOK。
 娘が小学生のうちは、娘の担任に、さも気の利く親のような顔をして、
「せっかくですから娘の部屋へどうぞ」なんて言ったもんだ。でも一昨年からは息子の担任も娘の部屋にお通ししている。息子の担任が、見るからに女の子の部屋に通されて、何か問いたそうにこちらを見るが、私は能面のような顔でしらばっくれる。
 
 そもそも、なんで家庭訪問というものが必要なのだろう。私にはわからない。児童の家庭環境を知っておく必要も、確かに先生方にとってはあるのかもしれない。昨今の不審者対策として、児童の家の場所を把握しておくことも大切だろう。実際ありがたいことと感謝している。
 でも家庭内の状況に関する限り、私のように必死で取り繕うズボラ主婦もいるわけだから、必ずしも「ありのままの状態」を知ることにはならない。そうなると、家の中にまであがる必要性がどこにあるのかという疑問に行き着く。
 聞くところによれば、ある年のある学年などは、先生方の間で「玄関で話を終わらせる」という夢のような協定が結ばれたという。残念なことに、私は娘の代からいまだかつてそのような慈悲深い家庭訪問を受けたためしがない。もっとも玄関訪問で味をしめたお母さん、翌年の家庭訪問で、靴を脱ごうとする先生を見て「そんなバカな」と焦ったそうだ。そこで上がりがまちに座布団を置いて「阻止」したという。こうなると、座布団というよりは決壊しかけた堤防に置く土嚢である。

 とにかく、家庭訪問というのは主婦にとってかなりの負担。私の職場では、家庭訪問に備えて「片付け休み」をとる人も出る始末。こんなことでは国力が落ちる。機嫌よく登校し、機嫌よく下校してくる児童の家庭は、家庭訪問ではなく、親が学校に面談に行く方法に変えてもらえまいか。

 先週土曜日、職場で家庭訪問が近いことを嘆いたら、
「うちの学校は数年前に廃止になったけど、今ではあった方がよかったなぁと思う」なんて言う人がいた。
「え~? 何でです!?」
「だって、家庭訪問がなくなってからうちの障子、もう何年も破れたまんまなのよ・・・」

 ところで、家庭訪問当日。うちはトップバッターだったのだが、先生は予定時刻より5分遅れて到着。そして5分で引き上げていった。5分間のために、1日半=合計10時間近くも、汗を流していたとは。家庭訪問がなくなったら、うちはジャングルになるだろうか。それでもいい。
 私のように整理整頓のセンスがない者にとって、家庭訪問は拷問なのである。
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Commented by sarasa at 2006-05-23 21:12 x
うちの子たちの学校は家庭訪問が無くなりました。長男の1、2年生の時は必須で、その後希望者になり、今は個人面談になりました。おかげで家の中は泥棒も逃げ出す、いや、掃除してくれるかも?なんて思えるほどひどい状態です。ただし、急に家庭訪問とか言われたら・・・家を引っ越すかな?
Commented by vitaminminc at 2006-05-24 21:16
あらぁ、夜逃げですか? おほ。わたくしたち、奇襲にはとことん弱いざあますのねぇ。それにしても家庭訪問が無いとは羨ましい・・・。いっそのことどんな家庭環境の先生が子どもの担任をしてくださっているのか、保護者たちでツアーを組んで、先生方のご家庭を訪問させていただくというのはいかがでしょうね?(←仕返ししてどーなる)
Commented by sarasa at 2006-05-25 12:46 x
逆訪問!いいですね~。で、奥さんに普段の生活態度とかね掘り葉堀聴いちゃってね^^
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by vitaminminc | 2006-05-21 16:54 | 人間 | Comments(3)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by みん子