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日本一受けさせたい授業

●「いじめ」を醸成する民主主義──西部 邁(評論家、秀明大学学頭)
いじめ撲滅にお題目は不要だ──向山 洋一(TOSS=教育技術法則化運動代表)
●もし、いじめ自殺したら・・・残された親の悲しみ考えさせる──東大阪市立長栄中学非常勤・山下教諭の授業
●「いじめは犯罪」教育主義排し、厳罰化を──中嶋博行(江戸川乱歩賞作家、弁護士)に聞く
●不就学、いじめ問題浮上──在日外国人会議 教育めぐり議論

 以上は、11月27日の産経新聞朝刊の見出し。
 社会面には、山形県立高畠高校で飛び降り自殺した同校2年の女子生徒の告別式に、中学・高校の友人ら300人が参列し、別れを惜しんでいる写真が掲載されている。女子生徒が所属していた高校の吹奏楽部のメンバー3人が「いじめに気づくことができずにごめんね」などと弔辞を述べ、発表会のために練習していた「亡き王女のためのパヴァーヌ」をクラリネットで追悼演奏したという。

 これらの記事を読んでいて、一番胸に響いたのは、大阪の先生の‘生きた’授業の様子を取材した記事だった。
 授業は、山下文夫教諭(63)が21年前から保健体育の時間に行っている「生と死の教育」の一環。定年後も非常勤で続けており、この日は、いじめによる自殺者が全国的に相次いでいるのを受けて、2年生の授業で緊急に取り上げた。タイトルは「もしあなたが自殺するようなことが起こったら・・・」。
 山下教諭は現実の自殺の例を紹介しながら、自ら命を絶った子供の気持ちや、残された親の悲しみを、プリントを使って冷静に考えさせた。
 「もし、君らが自殺したら、その後はどうなるんやろな」
 そう言って山下教諭が全員に1枚ずつ配ったプリントには、10問の設問が書いてあった。

 <山下教諭が作成した授業プリントの主な設問>
 ①病院や警察から電話を受けた親の気持ちは
 ②病院や警察に着くまでの親の気持ちは
 ③病院や警察に着いてあなたを確認したときの親の気持ちは
 ④自殺で亡くなってしまったあなたを前に家族が集まってきました。親があなたに対して言いたいことは
 ⑤あなたの親への返事は
 ⑥10年後、あなたの部屋、机、持ち物はどうなっているでしょうか?(勉強部屋のイラストを完成させる)
 ⑦きょうは成人式です。着物を着た同級生たちが訪問してくれました。そのときの親の気持ちは
 ⑧きょうの授業を通して感じたこと、気付いたことを書きなさい

 「うそや」「考えられへん」などと声を上げながらも真剣な表情で鉛筆を握り締める生徒たち。山下教諭は、生徒たちが想像しやすいように、時折話しかけた。
 「親はいつまでたっても自分を責める。なんで気付けへんかったんやと。今でも夕方になったら子供が帰ってくるような気がする。トントンと階段を上がっていくような気がする・・・」
 「親はそれだけ君らがいとおしんや。君ら一人一人がそうなんや。隣の席の子も、後ろの子も」
 「自殺した人はそれで終わりと思うけど、残された人はそこからずーっと悲しみが始まるんや。いじめる奴がおったら、学校さぼってええねん。自分の人生は君らのものだけやないんや」

 授業後に寄せた生徒たちの感想。
 「親を悲しませないために、どんなことがあっても死なないでおこうと思った」(男子)
 「死ぬのは自分もいややけど、親の方がつらいんだなって思った。嫌なことがあったら、相談した方がいい」(女子)
 「もし、自殺したら、親はこんなに悲しむと分かりました。親は本当に自分を大切にしてくれている」(女子)
 
 授業ではこのほか、いじめられたときに相手の目を見て「嫌だ」と声を出す練習や、「相談できる人」の名前を3人書かせる試みも行ったという。「嫌だ」と声を出す練習については、現実を前にしたら殆ど無意味だろうとは思う。だが、プリントの設問、それに取り組む生徒たちに話しかける先生の声に、私は本当に涙が出た。

 山下教諭の言葉「世間には、死ねば恨みを晴らせると簡単にハードルを越えてしまう子がいることも事実。命は自分だけのものではないのに、死というものを分かっていない。話を聞いてやるだけでも死ぬという選択肢は出てこなくなる。いじめはなくならないかもしれないが、減らすことはできると思う。」

 同じ社会面に、サントリー次世代研究所(大阪市)が行った「現代親子調査」の結果が載っていた。それによれば、“親と一緒にいて楽しい”と思う子供は、親の予想の2倍。
 「子供は親と一緒にいて楽しいと思っているか」を尋ねた親の回答をはるかに上回っていることが判明。
 同研究所はこの調査結果から、「親の自信のなさがうかがえる」と分析しているが、うちはどうかな? 「子供が自分と一緒にいて楽しいと思っているか」なんて、そもそも考えたこともなかった。気がつくといつもそばにいる。上の子も下の子も「一緒にお風呂に入ろう」と誘いにくる。子供の笑い声が、容易に蘇ってくる。幸せだなあと感じる。だからこそ、山下教諭のプリントを読んで涙が出た。想像しただけで、たまらなくなった。

 結局、人を傷つける行為というのは、「想像力の欠如」が発端なんじゃないかと思う。そして自殺してしまう子は、うんと心が傷ついて、もはや親の気持ちを想像する余裕すらなくなってしまったのだろう。
 減りはしても、いじめはなくならない。そう私も思う。けれど、山下教諭の授業を受けた生徒たちは、簡単には死ねなくなる。そう私は思った。
 成績よりも、まず心を引き上げる。これが真の教育ではないだろうか。私も大いに見習いたい。
 
Commented by みんみん梅桜紫陽花彼岸花 at 2006-11-28 21:41 x
ほんま、いじめの連鎖が続いてるなあ。死んで蘇ると考える子供たちが多いというのは、不気味。たった一度だけの人生という思いで精一杯生きてほしいね。親と子の絆が細くなってきたんやろうなあ。
Commented by vitaminminc at 2006-12-08 18:46
自分を殺すことは、殺人犯と同じだということをわかってほしいなぁ。
Commented by にくちゃん at 2006-12-09 14:30 x
心の教育がされてないんだよ、最近の子供らは。勉強やお稽古事ばかりしてたってだめなんだよ。もっと人とたくさん関わっていかにゃあ。
放課後、それぞれのスケジュールを考えていたら、友だちと集団でカラスが鳴くまで泥んこになって遊ぶなんてできないもんなあ。
それに、いろいろと過保護すぎるんだよ。
小学校に親が行く回数の多いこと!
友人は部活で、子供たちは練習に専念できるように周りのことはすべて親がやるらしく、朝から晩まで張り付いてるんだって。
ばかばかしい!
練習だけじゃなくて、準備、片付け、買出し、試合交渉など、全部子供がやればいいんだよ。失敗してなんぼの人生でしょうが!挫折を知らない子供なんて育てちゃいけないんだよ!!!
ハーッ、ハーッ、ハーッε=( ̄。 ̄;)
Commented by vitaminminc at 2006-12-09 16:54
ノーブレスで一気に語っていただいただけあって、溜飲が下がる思いです。確かに私たちが子どもの頃って、いい意味である程度親が放任してくれていたから、それなりに処世術が身について、心身ともに逞しくなれた感じよね?
Commented by にくちゃん at 2006-12-10 02:06 x
そうそう、過保護はだみだよね~。便利になってだめになることって多いじゃない?
関係ないかもしれないけど、この間体育の授業参観に行って、跳び箱を見てたんだけど、準備も片付けも台車のようなものに跳び箱を乗せて運んでくるのね。
そんなに重いものじゃないし、体育館の中の移動なんだからたいした距離じゃないじゃない。友人と一緒に運べば連帯感もできるし、重いもの運べば筋肉もつくのよ。
時間は短縮されるかもしれないけど、クラブ活動同様過保護なのよ。
この子達が20年後は第一線で働くのよね・・・。
う~ン、不安!

Commented by vitaminminc at 2006-12-10 15:54
そったらことやってたら足腰が鈍って、今に自分が台車に乗せられるようになるっぺや!(20年後より前に台車に乗りそうな者より)
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by vitaminminc | 2006-11-27 10:03 | 子ども | Comments(6)