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小便親子

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「立小便は、町の恥」
 という立て札を見たBFに、「ぶっ」と吹き出されたのは、今から何十年前だろう? 自分の家に初めてBFを連れていく日。迎えにいった駅から長く続く道。周りに畑が見え始めた頃、BFが立て札に気づいて笑った。
「東京じゃないみたいでしょ」と言い訳して照れ笑いしながら、心の中じゃ「立小便は町の恥」という立て札こそ町の恥ではないかと町内会のセンスに激怒していた。
 そう。私は立ちションが嫌いである。自分がしないのは言うまでもなく、立ちションする野郎が嫌いだ。犬を飼っていた頃、夕方に散歩をさせていると、よくソの最中のオヤジに出くわした。近くのパチンコ店から出てきて、道端でやらかしているのだ。店にはトイレが設置されているというのに、わざわざ道端で立ちションする。そしてまた煙草の煙モウモウの、チンジャラやかましい店内に戻っていく。頭にくる。立ちションオヤジを見つけるたびに、こちらはわざわざ散歩コースを変えなければならないのだ。外の空気を吸いたかったら、店内で小便くらい済ませてから出て来いてんだ。
 ところがある日。もう引き返せないところまで歩いているところに、突然オヤジが現われた。駐車場の周りに張りめぐらされた生垣の隙間から不意に出てきて、いきなり立ちション体勢に入ったのだ。美しく可憐な人妻と、いかにも賢そうなミックス犬が歩いてくるとわかっていながら、である。
 引き返そうかとも思ったが、悔しいのでそのまま歩いていった。少しは羞恥心を見せるかと思いきや、向こうは首を半回転させて私と犬を睨み、バーロー、見世物じゃねーんだというような視線を投げて寄越した。
 足は短いくせに、尿道はやたら長いらしい。いつまでたっても不快な瀑布の音が鳴り止まず、そのあまりの、あまりの長さに、通り過ぎてずいぶん進んでから吹き出しそうになった。いや、笑い事ではない。わが愛犬の散歩コースに、よそからやってきたパチンコオヤジに所かまわず排尿されたのではたまらない。不愉快この上ない。不潔以外のなにものでもない。戸外での放尿は、そんなに気持ちがいいのだろうか。立ちションオヤジはこのほかにも何人もいた(たぶん今もいる)。
 さて、このように「立小便撲滅運動」を推進している私である。まさか自分の家の中で、立ちションの被害に遭うなどとは思ってもみなかった。ダンナである。ダンナが立ちションを止めない。トイレで立ちションされると、細かい飛沫が床に壁に飛び散る。そんなに足が長いわけでもないのに、なぜか飛び散る。許せない。しかも時々中ブタを下ろし忘れて、私やムスメが便器にはまりかけたりする。許せない。
「頼むから座って」と頼むと、その場でだけ生返事を返す。しかし独身時代からの習性はちょっとやそっとでは変えられないらしい。本人は「立ってやってない」と言い張るが、密偵のムスコが時々報告するところによると、「いつもパパのあとは中ブタが上がったまま」なのだそうだ。これが動かぬ証拠である。
立小便厳禁と書いた貼り紙も、一向に効果がなかった。立ちションスタイルによる排尿は、腰掛スタイルよりも便器を汚すってことがまったくわかっていない。きっとルミノール反応かなんかで見たら、便器から跳ねて飛び散った尿で、壁と床一面に星空が現れるに違いない。ダンナが長期出張で不在の週は無臭なのに、いる週はトイレがやたらアンモニア臭に包まれるのは、みんなみんな立ちションのせいである。おすわり!

 ところが、今朝。トイレから戻ったムスコが、困ったように報告してきた。
「なんかトイレの床が、濡れているんだけど・・・」
 見に行ったら、「ヒィ!」と叫びたくなるくらい、オピッコ臭かった。ダレだだれだ誰だ。朝っぱらからトイレの床にこぼすヤツは!
 ぷりぷりしながら床を拭いた。「─ったく、自分で汚したもんくらい、自分で拭いてほしいわよね!」とブツブツ言いながら、セッセと拭いた。「あー、男子ってヤーネ!」
 歯を磨いていたダンナが口をモゴモゴしながら、「何だよ、オレじゃないからな」と言った。声には出さなかったが、(どーだか)と思った。出切ってないのに膝を伸ばしたに違いない。ふん。
「言っとくけどな」とダンナが言った。洗面所で歯磨きの泡を吐き出している。「オレは、起きてから、まだトイレに行ってないんだからな。トイレに入ろうとしたらムスコが入ってクソしていたから、こーして先に歯を磨いてる。ジョーダンはよしてくれ」
 床をオシッコまみれにしたと疑われた割には、ダンナの怒りは中途半端だった。日頃の立ちション癖でわたしに細かく迷惑をかけていることを自覚しているせいか。・・・・と、いうことは・・・?
 他人事のように報告していたが、犯人はムスコか。座った状態でもクシャミなんかをするとオピッコが場外乱闘する。いや、私ではない。幼児期に一度、ムスメがクシャミをした瞬間、オピッコが前の壁まで飛ぶのをこの目で見た。が、後にも先にもトイレを汚してくれたのは、その時だけ。私もムスメも実にクリーンな使用者である。
 そこいくと、うちのオヤジとアホムスコは、立っても座っても・・・。
 男子って、ホント、ばっちくて、ヤーネ!!

Commented by chin-papa at 2007-01-15 20:20
「急ぐとも 心静かに手を添えて 外へもらすな松茸の露」
ワシは思春期の頃に初めてこの叙情的な句を知って以来、殿方のオションションには結構寛大になりました。
しかし家のトイレットでのオションションは別!手を添えて・・・とか風流なこと言っとる場合ではない。掃除すんのはこっちじゃー。ワシも我がオットには「座って放尿しやがれ」と日々優しく言い続けております。
しかし今朝のオモラシ犯は結局誰だったのか?このまま迷宮入りか?林檎殺人事件。
Commented by vitaminminc at 2007-01-15 23:47
ギャー国の紳士用公衆トイレの小便器の中心に、リアルな蝿の絵を描き‘的’を与えてみたところ、殆どの男性がその蝿を落とそうとして、ちゃんと中心目がけて放尿したそうな。その結果便器周辺の汚れが激減。日本のトイレメーカーがこの案を採用することにしたって話があるくらいだから、いかに殿方の尿がコースを外れ飛び散りやすいかってことですわね。うちも便器にリアルな蝿の絵を描こうかしら─ばっくれてるのは父子どっちなのか。ほんとのところは不明です。くの、ションベンタレがぁ!
Commented by 鱗のファン at 2007-01-17 03:31 x
オモラシ犯をご主人と坊ちゃまに限定するのはいかがかと・・・
Commented by vitaminminc at 2007-01-17 15:14
( ̄□ ̄;)!! そ、それの意味するところは!?
わかりました。便器のひび割れの線ですね!?
申し上げておきますが、ほんっとーに、私とムスメは‘白’です。
雪のように白い白雪姫です。
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by vitaminminc | 2007-01-15 16:42 | 人間 | Comments(4)