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A子のQ日

 私の名前は、銀波(ぎんば)A子(←フィールド・ネーム)。
 日曜出勤したオフィスで、バナナに対する持論を熱く語った。
 他の果物には糖度や酸味の点で、個体差というのだろうか、どうしても(箱入りはともかく袋入りの場合)味に当たりハズレがある。が、バナナには殆どハズレがない。適度に熟してさえいれば、ほぼ100%「おいしい」。ボケたリンゴや味のない梨、甘さの足りないメロンに当たってしまった時のような失望を、バナナに与えられたためしがない。バナナの味は常に安定している。そう、 
 バナナは裏切らない。
 すると2つ離れた席のB子さんが、
「A子さん、バナナの味は一定でないって知ってた?」とやんわり反論してきた。
 品種によって、ものすごーくおいしいバナナがあるというのだ。
「そりゃ値段が高くなればそれなりにおいしい品種はあるだろうけど、バナナなんて普通のでも十分おいしいョ」と私は牽制した。
「それが全然違うのよ」とB子さんは熱弁する。「もうアレを食べちゃったらアタシが今まで食べてきたバナナは何だったの?ってくらい、味に差があるのよ。濃厚で、ほっぺたが落ちるっていうのはまさにアレのことよ」
 値段を聞いたら、私が毎朝ダイエット用に購入しているバナナの軽く2.5倍はしている。なまじそんな贅沢な味に目覚めてしまうと、「安くおいしく痩せられる」という朝バナナ・ダイエットの根幹が崩れそうなので、少なくとも今は食べるべきではないと心に誓った。

仕事を終えて帰る途中に寄ったいつものスーパーでは、いつものバナナが売り切れていた。バナナに裏切られた気分になった。
 遅い昼食を済ませた後、恐るべき睡魔に襲われた。自室にこもって爆睡。夕方、ムスコに「バドミントンをやろう」と起こされるまで、2時間以上眠り続けていた。

「私の名前は、銀波A子。どんな球にも食らいつく!」
 自分で自分を実行中継しながら、ムスコの方向うんちなサーブにたかる。銀蠅のごときしつこさで、快音あげて打ち返す。カキンッ、コキンッ。 枠に当てて打ち返すのは、ネットに当てるよりもテクニックが要る。でなけりゃ単に下手なのである。
 サーブの時、ラケットを持つ手を背中に回し、開いた足の間から打ってみた。
「あっははは」とムスコが笑い崩れる。「バカみたい」
 確かにバカみたいである。こんな母によく付き合ってくれるもんだと感心する。

 風邪気味なのか声変わりしかかってるのか。最近ムスコはハスキー・ボイスだ。声がひっくり返ってばかりいる。本当にこのまま声変わりしてしまうのなら、もっと子どもらしい声をいっぱいDVDに残しておけばよかった。 

「そろそろ帰ろうか」 日が落ちて、球がよく見えなくなってきた。
 本当は朝バナナなんかより、こうして子どもとバドミントンをやる方が健康的に痩せられるんだけどね、とA子は思う。いつまで母親相手にバドミントンに付き合ってくれるか、それが問題、としんみり思うのであった。 
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by vitaminminc | 2008-10-19 22:14 | Comments(0)