カテゴリ:人間( 96 )

今年の節分は、珍しく家族全員揃って家にいた。
ならばコンビニが仕掛け、今や全国区に定着してしまった恵方巻きを作らねばなるまい。しかし、なにゆえ関西の風習を真似せねばならんのだ。こちとら埼玉に住んじゃいるが、江戸っ子なんでぃ。てやんでぃ。
浅ッい歴史の渦の中、くるくる踊らされながら、くるくる海苔を巻くのかい。まくといえば、豆まきの豆も買い忘れているではないか。いかんいかん、豆まきだけは欠かしたことがないというのに。
観念した私は、徒歩10分ほどの所にあるコープみらいまで、豆と太巻の具材を買いに行った。

卵、サーモン、海老、カイワレ、沢庵(干瓢の代役)などを並べ、一気にくるんと巻いた。
手加減が馬鹿力級だったので、4匹並べた海老の内、左端の1匹がロケット噴射して床に落ちた。
ヘラッと笑いながら拾って水洗いして、ピッピと水を切り、ぐいっと太巻の端に捩じ込んだ。我ながら雑ッ!
作る過程がいかにひどくとも、見た目はきれいな恵方巻きちゃん。
皿に盛り付け、大きな子ども2人を夕飯に呼んだ。
ムスメ「恵方巻き作ったんだ、いいね~♪」
そしておもむろに食べ始めた弟に向かって、姉が言った。
ムスメ「南南東に向かって願い事をしなきゃダメなんだよ」
ワタシ「南南東はどっち?」
全員ムスメが指差す方──つまり、それまで通りテレビを見ながら、そしてテレビ番組の進行に集中力を妨げられながら何かしら祈りつつ食べた。
本来は物言わず一気に祈りを込めて食べるものらしい。歴史がないくせに、なぜか作法はしっかりある。
しかし、我が家は我が家流を貫くのみ。一口食べては醤油皿に太巻の先をちょんちょん浸しながらいただいた。甘く煮込んだ干瓢がキライなので、味付け役として沢庵を抜擢してはみたものの、歯応えしか演じてくれなかったからである。
恵方巻きを食べ終えたムスコが、さっさと自室に引き揚げようと居間のドアに手をかけた。
ワタシ「ちょっと待って。豆まきしてよ」
ムスコ「俺が?」(⬅白々しいにも程がある)
ワタシ「毎年やってくれてたでしょ」
ムスコ「え? そうだっけ?」(⬅精一杯の抵抗か)
ムスメ「やってたやってた」
不思議なことに、こうしたことには従順なムスコ、私から豆が入った器を渡されると窓を20cmばかり開けた。年々細くなる。
そして、地声より半オクターブ低い声で、「鬼は外」と不気味につぶやき、力なく豆を外にピッとまく。それを見てムスメが吹き出した。いっそムスメが口から飛ばした方が勢いがありそうだ。
ワタシ「あ、家の中にはまかないで、福は内の分は口に入れちゃって(後片付けが面倒だから)」
ムスコ「福は内、ポリポリポリ…」
ムスメ「あはははは…」
この、アングラ劇場の一幕のような豆まきが終了したあと、ムスコが言った。
「腹減った。夕飯何?」
おい。豆まきをする前、おまえは確かに2階に引き揚げようとしたよな。それは、《夕食を終えた》ことを認識したからだよな。なのに豆まきをした後、おまえはすでに空腹を覚えている。あの奈落の底よりも低いテンションで、一体どれだけのエネルギーを消費したというのだ──というようなことを私が頭の中で思っている最中、ムスメが弟に言っていた。
「え? 今の恵方巻きが夕飯だよ。私は十分足りたよ」
しかし、恵方巻きを作りながら、一抹の不安はあったのだ。
(これで足りるかな、ムスコ)
純粋な休日を与えられていないブラック企業よりスーパーブラックな主婦。ここ季節の分かれ目にきて、エネルギーが切れかかっていたのである。恵方巻き以外作る気にならなかったんである。
ムスコ「なんかない? スープみたいのでいいから」
ワタシ「なら、卵スープ作ろうか?」
ムスメ「あ、卵スープがいい♪」
ムスメは私が定時に帰れるよう私の肩をもってくれていたはずの手のひらを返すと、今度は私の残業の後押しをした。
温かいスープを飲みながら、今年の節分も幻聴を耳にした。
寒いのに窓をいっぱいに開ける音。
「鬼は外、福は内!」と叫ぶ可愛い声。
外の地面に、家の床に散らばる豆の音。

15年以上前の、懐かしい音。








[PR]
by vitaminminc | 2018-02-04 03:31 | 人間 | Comments(2)

皮革三原則

皮革三原則──それは、大切にされるべき革製品を箪笥の肥しにせず、ネットオークションに出品せず、劣化させないことを指す。

箪笥の肥しにはしていなかったつもりだが、クローゼットの奥で眠っていたレザーのハーフコートがある。
オットの遺品である。
革製品はいかついイメージがあるけれど、オットのそれは上品なオリーブ色。
私の好きな色の1つで、やさしい印象の1着だった。
袖を通さないままだったり、滅多に着なかったものは売ったり譲ったりして、殆どの衣類は処分した。
でも、どうしてもこのコートだけは手放せずにいた。

去年12月に入って間もなく、私は突然ひらめいた。来年(つまり今年)1月、ムスコは成人式を迎える!
オットのお下がりをムスコに着せるという発想はなかったが、このハーフコートならムスコの年齢でもイケるんじゃないか?
オットより10cm近く背が高いムスコだが、このジャケットなら入るんじゃないか?


思い立ったら居ても立ってもいられなくなって、箪笥の奥から引っ張り出した。
b0080718_15574405.jpg
あらら? もっと状態がよかったように記憶していたけれど、袖口など擦れやすい部分の色褪せが気になった。
なんじゃこの写真は。わかりにくいが、アップして撮ったのがコレ ↓ 袖口の色が抜けてしまっている。
b0080718_15581499.jpg
革のクリーニング・修復を行っている業者をネットで調べまくっていくうちに、「協和クリーニング」さん(愛知県豊橋市)にたどり着いた。
往復の送料&代金引換払いの手数料が無料な上に、クリーニング料金がほかに比べて群を抜いて良心的。とはいえ、ノー・ブランドの新品が楽天バーゲンなら2着は買える。
ムスコに確認してみた。美しく蘇ったら、本当に着る気はあるのかと。着る気があるなら成人式のお祝いに、諭吉2人をクリーニングに送り出す覚悟であると。
ムスコが首肯したので、早速申し込んだ。
ところが、職人さんが1着1着丁寧に仕上げることからもわかるように、申し込みは1日限定10着。
しかも毎日受付けているわけではない。「次回の受付日」は翌週だったりする。
そんなこんなで、限定数に滑り込みセーフで入れたのは、3回目にしてやっと。でも嬉しかった!
クリスマスイブイブだったので、若いユーザーや小さなお子さんがいる家庭は、クリスマスの準備で申し込みどころじゃなかったのかも(笑)

家にあったダンボール箱にハーフコートを入れて、集荷に訪れたドライバーさんに託した。
ハーフコートが先方に着いて中を確認した協和クリーニングさんが、打ち合わせの電話をくれた。
オーダーの最終確認を済ませて、あとは仕上がりを待つのみ。

完了の連絡メールが届いたのは、1月22日だった。
無理もない。年末年始の休業を挟んだし、鞄やお財布といった小物とは違い、大物である。
フード・ライナー(別料金2,376円)付きハーフコート(シミ抜き・色修正:18,144円)。
更にオプションで、撥水加工(3,240円)も追加したのだった。

メールを受けた数日後に、オットの形見が帰還した。

意外なことに箱入りではなかった。型崩れが生じないよう、このように「吊るし」の状態で届けられたのである。
b0080718_15594563.jpg

外カバーを外すと内カバーが現れた。
b0080718_16000305.jpg

ジャーン! ようこそ、メンズメルローズ様。嗚呼、しなやかでキレイ113.png
b0080718_16002809.jpg

 たまたま家にいたムスコを呼んで、一緒に確認した。
「大したもんだな!」
 ムスコも見事に美しく蘇った革に手で触れ目に触れ驚嘆していた。
「ちょっとちょっと、着てみてよ」
 と私が頼むと、照れくさいのか、面倒くさそうに袖を通した。
「すげー重い
 革のジャケットなんか着たことないから無理ないか。手長霊長類のムスコには若干袖丈が短い感がなきにしもあらずだが、ギリギリOK。
「とーちゃんの人生の重みだよ。とーちゃんをおぶってるつもりで着てあげてよ」
 私がつい余計なことを言ってしまったばかりに、ムスコは嫌悪感をあらわにした。感傷的なことが大嫌いな性分なのである。
 母と一緒に「そうだねかーさん。これをとーさんだと思って後生大事に着るよ」としんみり同調するようなタマではないのである。
チッ!
 舌打ちするや否や、さっさとジャケットを脱ぎ捨ててしまった(苦笑)

 それにしても、いや~、いいお仕事されてますね。協和クリーニングの職人さんの腕の確かさに、心底脱帽。
 カメラ機能のせいで、クリーニング前とクリーニング後の違いがイマイチ伝わらないかもしれない。
 実際、まったく色むらもなく、新品と見紛うばかりの美しい仕上がりなのである。



コレが↓
b0080718_15584473.jpg

こんな感じに!↓
b0080718_16005150.jpg
あとは、親父の霊を背負わされるという呪縛を解いたムスコが、曲がった臍を正し、機嫌を直して着てくれりゃー、私ゃ大満足。










[PR]
by vitaminminc | 2018-01-31 17:10 | 人間 | Comments(0)

漢字を見て感じたこと

ムスコの名前の名付け親は産みの親と同一人物であります。
つまり、ムスコの名前は100%私が命名したんであります。
因みにムスメの名前は漢字をオット、読みを私が担当。
第一子の時に3冊の名付け辞典をとっかえひっかえして画数調べに精を出しすぎたせいで、2人目の時にゃ私に丸投げ。
これ幸いと、好きなように付けられたわけであります。
考えてみたら、子どもの時に抱いていた夢なんて何も叶えられなかった、なんて思っていたけど、1つ叶えていたんであります!
小学生か中学生の時に読んだ少女漫画に出てきた、主人公が好きになる男の子の名前。
この名前、響きがイイなぁと思いました。
キラキラネームではありません。
決して多くはないけれど、確かに世の中に存在する名前でした。
そしてまだローティーンだったくせに、将来男の子を産んだらこの名にしたいと思ったのであります。
漠然とながら、でも20年以上経っても覚えていたくらいだから、それなりにしっかりと。
かくして私はムスコにその名を付けました。
漢字は少女漫画どおりではありませんでした。
名付け辞典で調べたところ、画数が苗字と合わなかったからであります。
で、苗字との最高の組み合わせとなる画数を割り出し、その画数の漢字をいくつか候補に挙げ、自分が最も気に入った漢字を選んだのであります。
少女漫画は漢字一文字でしたが、画数的に同じ読みの漢字一文字は他になかったので、漢字二文字の表記となりました。
むしろ漢字としては、少女漫画に出てきた一文字よりも、自分が選んだ二文字の方がずっと好きであります。
自画自賛で字画字賛するんであります。
そして昨日、私はテレビのどうぶつ番組の中で、象さんが今年の干支【戌】の字を筆で上手に書いたのを見て気づきました。
ムスコの名に当てた漢字二文字のうちの一字(この字、座りがいいし男らしいし、私好きなんですよぅ)から『女』を取ると、【戌】になるということに。
名は体を表すといいます。
ムスコから女を取ったら、犬的生活が待っているのではなかろうか。
ここでいう犬というのは可愛いペットのわんこのことではなく、『おまえ、いつから権力の犬に成り下がったんだ』なんてふうに表現される哀しき犬のことであります。
逆に言えば、一人の女性をしっかり守れている限り、ムスコは威風堂々としていられるのではあるまいか。
女性云々は外して、単純に「女を取ったら戌になるね」とムスコにラインで伝えたら、「へーぇ」「たしかに」とそれなりに感慨深げな返信がありました。
去年秋頃から、ムスコの首に絶対にムスコ自身が選ばないであろうペンダントが下がっていることに母は気づいているんであります。
私が知る限り、ムスコにはまずペンダント自体身につけるという発想がない(はずは)。デザイン以前の問題であります。
女の影がちらついているんであります。
大事にしなさいよ。
守ってあげなさいよ。
ペンダントなくすんじゃないよ、お揃いなんでしょう。
彼女に去られたら、おまえイヌに成り下がるんだから。
それとも、守っているつもりが尻に敷かれ、結局ペットのわんこのように愛されつつコントロールされる運命か(笑)



[PR]
by vitaminminc | 2018-01-20 02:32 | 人間 | Comments(0)

ほっこり

ここに移り住んだ当時、ムスメはまだ2チャイ。
早いもので、もうかれこれ20数年。
同じ一画に、去年の秋まで一軒の空き家があった。
私が引っ越して来た時にはすでに空き家だったから、30年以上もの間ずっと空き家であり続けたわけだ。
正確には途中1回だけ、土地の所有者の親戚筋という若い夫婦とベイビーが古家に入居したことがあった。
でも1年以内にすぐに転居してしまった。単に仮住まいとして利用しただけだったのか?
あるいは周りに小さな子どもがいないため、ママ友不足と知って寂しくなってしまったのか──。

ところが昨年、「売地」の看板がひっそり立っていることに気づいた。
しばらくして買い手がついたらしく、夏には古家の解体工事が始まった。
住宅メーカーの担当者が「着工にかかります。ご迷惑をおかけします」とタオルを持って挨拶に来たのとは別に、新しく住人となるカップルが我が家のチャイムを鳴らした。
30歳前後だろうか。菓子折りを手に、笑顔で挨拶してくれた。美男美女の、お似合いの夫婦であった。

秋の終わり。シックで落ち着いた色調のモダンな家が建った。
若いながら律儀な人柄のようで、「来週引っ越してきます」と夫婦は改めて挨拶にみえた。
夫婦の入居後、広い庭には大きなガレージも建ち、遅れて趣味の良い石畳のエントランスが完成した。
共働きのようで、ムスメは帰りのバスで時たま奥さまと乗り合わせることがあるという。
休日や時間帯が合わない私などは、挨拶以降、残念ながら顔を合わせることなく今日に至っている。

けれど、1つほっこりする出来事があった。

すごく洒落た作りの庭の一角に、ネギや大根が植えられているのである。
あの、美しいキャリアウーマン風の奥様に似合いそうな花ではない。
あの、仕事がキレキレに出来そうなご主人が選ぶべく樹木でもない。

ネギ。
b0080718_11174448.png
そして、大根。(画像はいずれもイメージです)
それも、道路から一番目立つ一角に。

これをギャップ萌えといわずに何と言おう。
思わず顔がにっこり。心がほっこり。
これだけで、私はこの超実用主義な夫婦の隠れファンになってしまった。

ほっこりといえば、最近うずぴは、眠眠(2015年春に他界した優しいオス猫)が愛用していた、しましまネコのぬいぐるみがお気に入り。
b0080718_11192247.jpg
気づくと背中を預けている。
相性最悪とはいえ、生身のくーちゃんに寄り添う方が、ずっと温かいのにね。
b0080718_11195779.jpg





[PR]
by vitaminminc | 2018-01-17 11:31 | 人間 | Comments(2)

あテましておめでとう

今年の年賀状は、とうとう猫写真抜き。
限りなく馬に近い犬のシルエットの無料テンプレート。
今回ほど十二支に猫が入っていないことをありがたく思ったことはない。
今年が猫年だったら立ち直れない。
いつまでもグズグズ洟すすってちゃしょーがないんだけど。
悲しいもんは悲しいし。
寂しいもんは寂しいし。

大晦日に葛飾に帰省。
府中の多磨霊園(実父)と亀有にある菩提寺(オット)の墓にお参りしてから。
昼食を終えると母に頼まれた買い物をするため、車でイトヨへ。
ゲームコーナーにガチャガチャ発見。
コレがあると、つい猫はいねーが~と物色してしまう。
いた!
b0080718_17353413.png
しかもコタローがいる!(下段右から2つ目)
全6種。引き当てるというか、回し当てる確率は1/6。
イイ齢超えて、ガチャガチャに小銭を投じる50代後半。
ひゃっほ~!
一発でコタローGet!

そういえば、除夜の鐘、実家の地元では1回しか鳴らなかった。
「1回しか鳴らなかったよな?」
徒歩5分のところにある小さな神社で初詣するため並んでいると、アニキにも確認された。
今ってどこもそうなの?
誰だっつんだよ、除夜の鐘を騒音扱いして規制対象に決めたアホンダラは。
お墓参りをしていた午前中は雨雲が出ていたけど、日付が変わる頃にはきれいな星空。
今年は風も殆ど無くて、身体にやさしい初詣となった。
母の健康を祈念した。
アルコールはからきしダメなくせに、お神酒だけはなぜ旨いんだろう。

1月1日の昼前、アニキとムスメと3人で毎年恒例の柴又帝釈天へ出かけた。
足もとの地面が見えないくらい、相変わらずすごい人出。
人の頭と背中しか見えやしない。
「屋台のミニカステラが評判だそうだ」
アニキが何かで見聞きした情報に基づき、並んで買ってみた。
確かに甘すぎなくて、たいへん美味しかった。

コタローは今、トイレで私を見上げてる。
b0080718_17342895.jpg

何度シャッターを押しても、コタローにピントが合わなかった。
コタローが、ボクもうこの世にいないんだよって、私に教えようとしたのかも。

コタロー。
私元気にしているよ。
くーちゃんが、コタローの分ももりもりゴハン食べてる。
那須高原で越冬したっていうのに、すごく寒がりでね。
静電気で背中の毛を逆立てながら、オイルヒーターにいつもへばりついてる。
b0080718_17340600.jpg
うずぴは相変わらず気難しいよ。
なかなか写真を撮らせてくれない。
でもね、キャットタワーで爪とぎしている時を狙うわけ。
ひょいっと抱き上げるとね、そうね、7秒間は抱っこさせてくれるよ。

コタロー。
ガチャガチャに当たってくれてありがと!








[PR]
by vitaminminc | 2018-01-14 19:02 | 人間 | Comments(6)

母─後日談

今週月曜の晩─つまり、母が私のところに一泊二日した翌日の晩、母から電話がかかってきた。
「今日届いたわよ、本! 本ッ当に嬉しい、ありがとう!」
土曜の晩に楽天ブックスに発注した、佐藤愛子さんの大ベストセラー「九十歳。何がめでたい」が届いたという知らせだ。
「とってもイイんですってね。みんなが言うから図書館に借りに行ったら、2000人も待っている人がいるって言われたの」
「なら丁度よかっ──」
「順番がきても、借りに来たことを忘れちゃってるかもしれませんねって、図書館の人に言われて。だからよかったわぁ」
「うん、丁度よかった、読みたかった本だったみたいで。私も同じ本を読みたくなって、一日遅れで自分用に買い足して──」
「お年寄りだけじゃなくて、子どもから若い人から、みんな読んでるらしいわね」
「そうだね。私もおかーさん世代の人の考えとかもっと知りたくて、自分でも読んでみようと──」
「本当にありがとう!」
「うん。毎晩少しずつ読んでみて。私も届いたら一緒に──」
「お土産(スノー・ドーム)もありがとう!」
「おかーさ──」
「夢のような二日間でしたわ」
「おかーさん!」
「なあに?」
「風邪、引かなかった?」
「引いてないわ。ちょっと喉がイガイガするくらいで」
でしょうね。そんだけ(こちらの話を聞こうともせず)一方的に大声張り上げてりゃ喉も嗄れますがな。

母は、先の週末の2日間のあいだに、かつて図書館で叱られたことが余程印象的だったのか、二度も語った。
1回目は私が迎えに行った車中。2回目は、ムスメと私と3人で、和食ファミレスでの食事の最中。
いずれも、話す声がデカ過ぎます、もう少し声のボリュームを落としてくださいと頼んだ直後。まるでもれなくついてくるおまけのように話すのだった。
「Gさんと図書館で話してたら、図書館員さんに注意されちゃったの」
そりゃそーだろ。図書館は閲覧の場であって、話をしに行く場所じゃない。
「それも、二度もよ!」
ゲッ!! 何がキライって、あたしゃ公共マナーを守れないヤツが嫌いなんだよ。それを我が母が・・・。
二度も注意されたということは、一度言ってもわからんちんだったってことではないか。恥ずかしい。
「こっちは迷惑をかけないように、小声で話してたのにねぇ」
ゲッ!! 絶対大声だったに違いない。小声でだって、図書館で話なんかするんじゃねー!
「筆談にしろや」
と私が言うのを、冗談として受け取り笑う母。あたしゃ本気です!
この時だって、ファミレス中のお客さんが振り向くくらいのボリュームで話すから、慌ててムスメと2人でたしなめたばかり。
「おばーちゃん、声が大きい」
なのに、ちっとも小声になっていやしない。
五百歩譲って、ボリュームを気にせず好きなだけ声を張り上げ話してもらうとしよう。
ダメダだめだ、絶対に駄目! 
なぜなら母は大声で話すのと連動して、必ず呼吸が荒くなる。
ままままま、そんなにコーフンしないでいいからっっっと止めずにはいられない。

基本的に、私は声が大きい人が苦手だ(特に♂)。
静かに、ゆっくり話す人が好きだ(オダギリジョー的に)。
女性も然り。
子バカになるが、母は40、50代の頃までは、割ときれいな声の持ち主だった。
もちろん、大声で話すような人ではなかった。
母の年齢頃の自分にはない品の良さが、母にはあった(ような気がする)。

幼児といういきものは、やたら声を張り上げる。
甥と姪が小さい頃、何度思ったことだろう──そんなに喚かなくていいよ、ちゃんと聞いてるからね。
母は、我が母は、聴力が未発達な幼児と同じようになってしまったことであるなぁ。
大きな違いあり。幼児の声は可愛いが、母のしわがれ声は可愛くない。
だからこそ、母には筆談を勧めたい。
常にノートとペンを持ち歩く。
相手の言葉が聴き取れないときは、相手にも書いてもらえばいい。
喉も酷使しないで済む⇒風邪と勘違いして不要な風邪薬を飲まずに済む⇒健康保持
「ほほほ、いつも書くもの持ってないとダメねぇ」
ダメだこのリアクション。実行する気、ないでしょう?

昨日楽天から届いた本「九十歳。何がめでたい」を5話ほど読んだ。
著者の佐藤愛子さんは私の母より多分3歳年上。娘さんは私より8ヵ月月上。
同世代母娘とあって、尚更興味深い。愛子さんの言葉を我が母の代弁として、噛み締めながら読んでいる。
『若者は夢と未来に向かって前進する。
 老人の前進は死に向かう。』
ドキッとくる一文が目に飛び込んでくる。
大丈夫、母だけじゃない、私だって誰だって、生まれた瞬間、死に向かっているんだと自分に言い聞かす。
佐藤さんのエッセイからは、高齢者の開き直り的「けっ!」という舌打ちが聞こえてきて、実に小気味よい。
明るくて、元気になれる。
母もちゃんと読んでくれてるといいなぁ。
b0080718_16581958.jpg









 


[PR]
by vitaminminc | 2017-11-15 16:59 | 人間 | Comments(0)

忙しい週末

先週末は忙しかった。

金曜日。前日になって急に決まった部署会議。
「病院に予約を入れていたので」という理由(←もちろん深紅の嘘)で出席を拒み、帝国ぃゃ定刻に帰った。
家に着いた私は、その週の半ばにギリギリセーフで届いた車椅子を巨大な段ボール箱から取り出し(もうコレだけで息が上がった)、取説を見ながら開いて折り畳んでの練習。
多くのクチコミを信じ、また専門メーカーが手掛けた製品だけあって、性能的にはまったく問題なし!
しかも販売元が、良心の欠片をつなぎ合わせて設立されたとしか思えないくらい、良心的な価格で提供しているから、ホント助かった。
しかし、車に積み込むのには一苦労。軽量と謳ってはいるけれど、結構重い。
母を連れて行こうとしているところに車椅子は置いてある。が、台数には限りがあるから、出払ってしまっている可能性は否めないのだ。
母は近所の買い物くらいなら二足歩行可能だが、長距離・長時間は絶対無理。今夏、某植物園にお連れした時に確認済みだ。
2年前の熱海・小田原への奇跡の強行軍を最後に、母の脚力は日に日に衰えている。仕方ない、もう91チャイなのだ。
私は折り畳んだ車椅子を抱えると、渾身の力を籠めて車の後ろに載せた。
母が寝泊りする部屋に掃除機をかけ、ベッドの布団に乾燥機をかけた。
居間に戻ってコタローの様子を見たら、どうにも具合が悪そうだ。
b0080718_10500153.jpg
辛そうな表情で、カタツムリのように丸まっている。
b0080718_10502210.jpg
私はコタロー(キャリーバッグ入り)を車の助手席に乗せ、動物病院に急行した。そして、栄養剤と安定剤入りの輸液をたっぷりしてもらってきた。

土曜の朝。実家の母に電話を入れた。
「今から出るから」
これより前、週のはじめには、手紙も送った。
「土曜の朝、家を出る前に電話します。私がそちらに着くのは、それから1時間45分~2時間後になります。到着したら玄関チャイムの音が聞こえるように、必ずテレビは消しておいてください。寒いので、防寒着の用意もお願いします」
いつだったか、実家に着いて玄関チャイムを鳴らしたのに、どうにもこうにも出てもらえないことがあった。いることはわかっていた。携帯から電話もしてみたが、電話にも出ない。家の中で倒れているんじゃなかろうかとひどく心配になった。だって、テレビが大音響で鳴り響いたままなのだから。
携帯で110番しようか迷いだした時、テレビの大音響に負けないくらい大きなクシャミが聞こえた。「ヒャッホイ!」と特徴的なのサウンドは紛れもなく母のクシャミだ。
しかも、テレビのある茶の間にいるに違いない。つまり、テレビを見ているわけだ。
私はテレビが置いてある窓辺に近寄り、テレビの背後にまわった。そして、怪しい人影となって母の視界に入り込んだ。
それにしてもウルセー! このテレビの音量、近所迷惑にならないか?
テレビの音がやんだ。私に気づいたらしい。玄関ドアを開けながら、母が言った。
「道、混んでた? ずいぶん遅かったわね」
私は到着してから10分も待つ羽目になった旨母に訴えた。玄関チャイムもだが、電話の音が聞こえないくらいデカイ音でテレビをつけてるのは問題。緊急の時に困るではないかと言うと、母はしれっと返した。
「あら。電話なんか鳴らなかったわよ」
家の中で私がかけている電話の音が鳴り続けているのを私は聞いている。テレビの大音量をかいくぐるように鳴っているのを。
携帯の発信履歴にもほら─まぁ途中で面倒くさくなって言い争うのは止めたのだけれど。

手紙にあらかじめ注意事項を記して送っておいたので、今回はちゃんとテレビは消して、私が押した玄関チャイムの音にもすぐに反応してもらえた。
母を乗せて一路目的地へ──といいたいところだが、3時間の行程の2時間まで走ったところで、ランチタイムとなった。
ナビに誘導されて初めて通る道だったので、この先走ったところで母の好きな回転寿司やがある保証はない。
「もう、ここでいいね」と、KP寿司に入った。
いつもはKR寿司かSSRなのだが。
母は実際回転寿司が好きで、よせばいいのに話し方教室でもみんなの前で話したことがあるという。
「娘がKR寿司に連れて行ってくれて、ご馳走してくれました、って話したら、急にみなさん笑ったのよ。なぜかしらね」
ヤ~~~~~メ~~~~テ~~~~。
「それは、回らないお寿司ではなく、回転しちゃってたからですよ、おかーさん」
「?」
「ずいぶんシワイ娘だなと、失笑を買ったのですよ、おかーさん!」
たとえ私がセレブで、惜しみなく回らないお寿司をご馳走できたとしても、おそらく母は「回転寿司の方がよかったわ」と平気で言ってのけるだろう。
なぜなら母は、目の前を通り過ぎていくいろんなお寿司をいつもこどものように目を輝かせて見ているから。
KP寿司を出ていくらも走らないうちに、同じ通りにKR寿司があるのに気付いた。
「しまった、もう少し走ってたらKR寿司があったのに」と私は嘆いた。
「KR寿司? さっきのが?」
「いやいや、さっき入ったのはKP寿司。私はどっちかというとKR寿司のが好きなんだよね。おかーさんはSSRも好きだよね」
「あら、さっきのお店はHM寿司だったでしょ? SSRじゃなかったわよ」
「違います! さっき入ったのはKP寿司!」
「HM寿司に見えたけどねぇ」
「KPだってば!」
と、有名回転寿司チェーンの名を挙げ連ねているうちに、案の定曲がる道を1本間違えた。
「どうして? この機械(←ナビのこと)壊れてるのかしらね」
母の大声が狭い車内に鳴り響き、頭が痛くなりかけて間違えたのだということは伏せて、ナビは正常だとだけ答えた。
ついでに、すぐ横でそんな大声を張り上げなくても十分聞こえますとも。
「あら~。自分ではひそひそ声で話しているつもりだったけど。耳の遠い人は、自分の声もよく聞こえないのかしらね」と母は相変わらず大声でつぶやいた。

やっと目的地に着いた。
「ずいぶん遠いのね」と母は言った。
私の家からは1時間で来られるけれど、実家からだと3時間かかるのだと説明した。
母は引き算をした。
「みん子ちゃんとこと、2時間も離れてるのね。もっと近かったらよかったのに」
私は母を車の中に待たせたまま、入り口に走った。そして車椅子を借りられることを確認した。
「うしろに車椅子、載せて来たんだけど、こっちで借りられるから、入り口までは歩こうね」
母に車の後ろの車椅子を見せた。
「あら、こんなのまで用意してくれて。大変だったでしょうに」
「でも今日は上げ下ろしが大変だから、公園のを借りる」
「自分で歩けるのに」
「いや、無理だって」
「そうかしら」
母は、駐車場から公園の入り口までのわずかな距離もきつそうだった。
「だから言ったでしょ」
母が入り口付近のトイレを借りている間に、入園券を買った。
母と手をつないで公園内に入った。
入り口を見上げて、母が嬉しそうに言った。
b0080718_10480684.jpg
「も、み、じ、見ナイト?」
「夜間ライトアップされるんだよ」
ゲートを入ったところで車椅子を借りた。
母を車椅子に座らせて、私は持参した袋の中からニットの帽子と手袋とマフラーとひざ掛けといった防寒グッズを取り出しては母の身につけていった。
「いたれりつくせりね」と母が笑った。
私自身、武蔵丘陵森林公園に足を踏み入れるのは初めてだ。全国で一番最初につくられた国営公園で、広大な敷地は、東京ドーム65個分に及ぶという。
ライトアップは日の入りに合わせて、夕方16時半から。自然が好きな母のために、昼間の紅葉狩りも楽しんでもらおうと、14時半に現地入りした。
b0080718_10512050.jpg
平地だと車椅子を押す手も軽い。ただ、丘陵公園だけあって、なだらかであっても上り坂はしんどい。はぁはぁ言いながら車椅子を押した。
母は途中何度も気にして、「降りて歩くわよ」と言ったが、そんなことをされたら余計大変だ。
車椅子を押しながら、おかーさんと手を繋いで歩くことはできないと説明すると、ようやく納得したのか、おとなしく座って紅葉を愛でてくれた。
植物園だけでもかなりの広さだ。腕がおかしくなる前にいったん休憩所に入って休むことにした。
珈琲やビスケットなどのほかに、クリスマス・グッズが売られていた。
母がスノー・ドームを手に取って「わぁ、なんてきれいなんでしょう」と感嘆の声を上げた。
「おみやげに買ってあげようか?」と訊くと、珍しく遠慮しないで「うん」と頷いた。
b0080718_10530192.jpg
店内はライトアップを待つ大勢の客でにぎわっていた。
車椅子だと動けるスペースが限られている。
迷惑にならないよう店の外に出て、生垣見本園やハーブ見本園などを見てまわった。
b0080718_10535725.jpg
園内にアナウンスが流れ、ライトアップが始まった。
「わぁ~、きれいね」
「もう少し暗くなるともっときれいになるよ」
b0080718_10543865.jpg
北風が強く吹いていたが、母は防寒グッズのおかげで寒くないと言った。
私も車椅子を押しているので寒くはなかった。
b0080718_10550377.jpg
都心部や観光地にはもっとすごいライトアップが施されているのは知っている。
が、ライトアップで浮かび上がる紅葉というのも幻想的で、なかなか良かった。
b0080718_10552922.jpg
細い枝先にまで取り付けられたLED。たくさんの樹林にこれだけの照明を取り付けるのは、本当に大変な作業だろうとしみじみ思った。

感激した母を帰りの車に乗せ、しばし思案した。
本当はそのあと温泉に連れていく計画だったのだが、坂道の車椅子押しでへとへとになったので、安全重視で潔く中止した。
ちょうど金沢の旅行からムスメが帰ってきたところだったので、近所の和食ファミリーレストランに女三代で食べに行った。
ムスコは私たちが家路に着く前に夜間のアルバイトに出てしまっていた。
食事はムスメの驕り。私はデザートのみ驕り(笑)。

コタローの様子がよろしくない。
輸液後はいつもなら少しは食欲の回復が続くのに、いくらかなりとも食べられたのは1回きり。あとはまた食べなくなった。
しかも、水が入ったお皿の前で、じっとうずくまり、しきりに舌を出し入れしている。
これは、飲みたいのに飲めないでいるのでは?

日曜日。老人の朝は早い─はずなのに、母はよく眠っていた。
母に置手紙を残し、9時のOPENに合わせるように、またしてもコタローを病院に連れて行った。
さかんに舌を出し入れしていること。胸元にこぼれた唾液の痕跡があること。今まで嫌がることなく飲んでいたセミントラまで嫌がるようになったことなどを告げた。
「そうか、口内炎かぁ。輸液する時、入れてあげればよかったね。ステロイドを入れようか迷ったんですけど、まだそこまでじゃなかったから止めておいたんですよ」
と先生が言った。
確かに、急に悪化していた。
ステロイドを注射してもらったコタローが、ごはんを口にすることができたのは、お昼近くになってからだった。
食欲不振⇒栄養不足(ビタミンB欠乏)⇒口内炎⇒ステロイド⇒食欲不振 
負のスパイラル!
口内炎にもいいというハチミツも試したが、イマイチに終わった。
土曜の晩、母に書籍を1冊、コタローの口内炎サプリを1本、楽天で注文した。
今は、そのラクトフェリン系サプリが届くのを待っている状態。

母は、なんと通算11時間も眠った。休日の中高生並みの睡眠時間である。途中1回目が覚めたけど、気持ちがいいのでそのままぬくぬく二度寝したそうだ。
あまりにも起きて来ないので、正直焦った。紅葉を見に連れていって、変に疲れさせてしまったことが原因で、昇天してしまったのではないかと思った。
注意深く観察してみると、なんとも健やかな寝息をたてているではないか。そのまま起こさずに食事の支度をした。
お腹を空かせて起きてきたムスメが、おばーちゃんを起こしに行った。
朗らかな母の声。
「あらよく眠っちゃったわ」
母は、紙パンツを穿くようになる前は、頻尿で夜中に何度もトイレに起きていた。
私が勧めてもがんとして穿こうとしなかったくせに、同世代の人に「それに紙パンツって温かいのよ。おなかが冷えないでいいわよ」と勧められるとコロッとなびいた。
以来、夜中に何度もトイレに起きなくて済むようにはなったが、今回のように長時間眠れたのは本当に珍しいと自分でも驚いていた。
「みん子ちゃんが寝る前にお布団(乾燥機で)を温めてくれたおかげかしらね」
ブランチを食べたあと、母のために録画しておいた高野山と空海のテレビ番組を見せながら、母の爪を磨いた。
年輪のように深く刻まれた、母の爪の縦じわ。
やすりで擦ってもなかなか平らにならなかった。
「もっとゆっくりしてってほしいんだけど、明日仕事があるから」と私は詫びて、母を車で送る時間であることを伝えた。
一度車に乗ってから、母は紙パンツを穿き忘れていることを私に告げた。
「でも大丈夫」と母は言う。
「大丈夫なわけないでしょう。2時間かかるのに、もつはずない。渋滞するかもしれないし、絶対に穿いて」
「前に大丈夫だったことあるもの」
「絶対大丈夫じゃないから。途中でトイレに行きたいと言われても、急に停まれないんだよ」
「そうかしら」
「何を根拠に大丈夫っていうの? 押し問答している間に穿いてくれればいいものを」
「前に大丈夫だったから」
「大丈夫じゃないってば! 車の中でお漏らししたら、新車買ってもらうからね!」
母が吹き出し、ようやく車を降りることに同意した。
これだけで10分のロス。
前に、私が古いカーナビにだまされて、大した距離でもないはずなのに、なかなか目的地にたどり着けないことがあった。
その時の母の機嫌の悪くなりようといったらひどいものだった。
カーナビをぼろクソにけなし、新しいカーナビとやらを買ったらどうなのと息巻いた。
そして、「ああ、トイレに行きたい」を横で連発され、運転していても気が気でなかった。それに懲りてカーナビを新調したと言っても過言ではない。
あの日の悪夢をケロッと忘れ、「前は大丈夫だった」と真逆のことを頑固に言い張る母。
でも、もう91チャイなのだ。憎めるわけがない。
今回の母は、実家に送り届けるや否や、勝ち誇ったように言った。
「平気だったわよ」
「何が?」
「1回も(紙パンツの)お世話にならないで済んだわよ」
そりゃ、ほとんど眠っていたからですよ、おかーさん。。。
「ああ、本当にいい2日間だった! ありがとう」












可愛い母を降ろし、埼玉に帰る道中、私はいつも切ない。
























[PR]
by vitaminminc | 2017-11-15 14:09 | 人間 | Comments(0)

ラブレター

b0080718_07500349.jpg
 愛するみん子ちゃん

 お手紙嬉しく拝見しました。
 「はじめまして・・・」お手紙書くのは初めてよネー。自分乍ら筆不精だったなあと反省しております。
 七月十一日~十三日は本当にありがとう。幸せをしみじみ味わったせいか、あの日から夢見が善くなりました。
 毎晩、何故か? どうしてか? 大掃除して、せっせとコンクリートを磨いている夢ばかり見て、疲れて情けなくなっていました。
 ところがです。
 みん子ちゃん、孫みん(←ムスメの名)ちゃんがきてくれてから、夢が陰から陽にガラッと変身したのです。
 物事に積極的で明るく、美しい夢を見るようになりました。嬉しい嬉しい事です。
 ありがとう!
 今日は早速朝から鳥がゆ、昼は焼きビーフンを頂きました。美味しくて、ほっぺたが落ちそうです。
 では又、これからは、せっせとラブレターを書きたいと思っています。
 お体には充分気をつけて、皆さん、仲良く元気でお暮し下さい。
 
  九月十日                  みん子母
 みん子様


 先日、91歳の母から届いた書簡である。
 原文をそのまま転記したので、一部訂正あり。私とムスメが帰省したのは、7月ではない。8月11日~13日の誤り。

 母から手紙を受け取ったのは、本人が言うとおり「初めて」とは言わないまでも、年賀状を除いたら、母の娘となって以来、通算一、二通程度。
 敬老の日用に、レンジで加熱しただけで簡単に食べられる中華粥や焼きビーフンを贈ったのだが、その礼として手紙をしたためてくれた。

 亡父は結構筆まめな人で、字もなかなか達筆だった。母は文章を書くのが苦手で、自分があまり字がきれいでないことに劣等感を抱いていた。もっとも私が知る限り、母の字は決して下手などではなかった。小学校に入学した時、学用品に書いてくれた名前なんかも、むしろ「きれい」だった。
 なぜそんなに引け目を感じていたのかよくわからない。ただ、書き慣れた文字を書く父より劣ると自認していたのは確かだろう。
 
 働き盛りで多忙を極めていた40代~50代、母は毎晩寝る前のペン習字を欠かさなかった。ペン習字といっても倹約家の母のこと、日ペンの美子ちゃんみたいな通信教育を受けていたわけではない。
 どこで調達したやら、ひらがなのお手本のようなペラ紙を横に置いて、それを見ながら広告の裏や不要になった紙に書いたり、お手本を紙の下に敷いてなぞったりをひたすら繰り返していた。
 「お父さんの字はほら、一字一字が上手いわけじゃないのよ。字配りが良いのね」
 と、母はゴミ箱から拾いでもしたのか、父の書き損じをながめてしみじみ言ったものだ。
 絵心もあった父は、字に置いてもバランス感覚に優れていたのかもしれない。それに比べて母の字は、一字一字は何年もペン習字を続けていただけにきれいなのだが、文にすると少なからず稚拙な印象を受けた。
 (ひぃぃ。PCが固まって編集機能が無効になってしまい、急遽スマホにて続きをしたためておりますです)
 母の字は、几帳面なくらい、一字一字がすべて同じ大きさで、それが敗因だったように思う。
 文(ふみ)を書くのが苦手だから字がぎこちないのか、字がぎこちないから文を書く気が失せるのか。
 結局、何年も何年も独学で続けたペン習字の成果は、生かされることなく幕を閉じたのだった。

 ここ3年くらいの間に母の聴力は著しく衰えてしまった。電話をかけても会話にならないのは日常茶飯事。最近じゃその電話の呼び出し音も聞こえないらしく、いつかけても出ないので、2階に同居している兄に母の安否を問う始末。
 私は父に似て筆まめな方なので、母の日以降はもっぱら電話ではなく手紙を書くようにしている。
 ある日、私はふと疑問を覚えた。私だけが手紙を書いて、母が「手紙着いたわ」と電話を寄越す。その電話に私が何を言おうが母の耳には聞き取れない。「ごめんなさいね、何を言ってるか聞こえなくて。でもお手紙嬉しかった」と母が締め括る。
 これではキャッチボールになっていない。頑なに返事の手紙を寄越そうとしないのは、握力が弱っていてペンが握れないからなのだろうか。それを確かめる意味もあって、私は手紙に書いた。
 「たまにはお手紙くださいな。昔、生欠伸を噛み殺しながら、あんなに毎晩ペン習字を続けていたじゃありませんか。勿体ないですよ」
 そのあと受けたのが、電話ではなく冒頭の手紙だ。
 驚いた。思っていたよりずっと筆跡も確かで、内容もしっかりしているではないか。91歳が書いたとは思えない。
 ムスメも同様の反応。
 「ご高齢の顧客の中にはペンさえ握れなくなってる方もいるからね。おばあちゃん凄い。若いね!」
 ムスコにも見せてみた。
 「まあ。なんて綺麗な字なのでしょう」⬅ムスコはクソ汚い悪筆。
 母上。貴女は私にラブレターを書くために、毎晩あんなに一生懸命ペン字を習っていたのでしょう。
 貴女の字は、かつて父が書いていた、伸び伸びとした字とは違います。どこか慎ましやかで、少しぎこちないれど、私の目には相変わらず綺麗。
 とてもとても懐かしい字です。またお手紙ください。
b0080718_10073442.jpg
 
 










 

[PR]
by vitaminminc | 2017-09-18 12:29 | 人間 | Comments(0)

家を出てから帰るまで

服を裏返しのまま着ていたことに
気づかなかった。
朝は二人の子どもが一緒だった。
職場のフロアには今日は11人いた。
みんな気づいたら遠慮会釈なく
笑いながら指摘してくれるはずなのに
なぜ?
裏か表かわかりにくい服なのかというと
まったくそんなことはない。
胸元のボタンからしてアウト。
一目見て裏返しとわかる。
まあ自分を筆頭に、家族、同僚、みんな揃って見逃したわけだけど。
これもやりきれない蒸し暑さのせいなのか?
仕事の帰りに寄ったドラッグストアでは
買い物客や店員のうち、何人かは気づいたに違いない。

だって、裏返しってことがすごくよくわかるんだもの。
普通なら。



[PR]
by vitaminminc | 2017-06-30 01:03 | 人間 | Comments(2)

朝っぱらから独り言

b0080718_06015556.jpg
私がカメラを手にしただけで
シェルターに逃げ込むうずぴ
だからうずぴの写真はいつも
マジおんなじ感じ

b0080718_06010760.jpg
おやじ座りして毛繕いする↑
↓乙女なくーちゃん
b0080718_05413470.jpg


b0080718_06013096.jpg
やせっぽちのコタロー
寝姿が変
後足だけ座布団敷いてるし


今日はだんはんの祥月命日
なので
今日も東京の東端まで
お墓参りに行ってきやす

仏壇前でも詫びたけど
墓前でもお詫びせねば

落下させて怪我を負わせた上に
油性マジックで
傷を誤魔化したこと

だんはん的には
後者に対して
怒り心頭のはず

ごめんなすわゎい!!
血が出ている擦り傷を
見るにしのびなく
絆創膏で蓋をするかの如く
思わずマッキーで入れ墨を

ほらね、早死にすると
ろくなことないでしょ
生きてりゃ妻の奇行も
阻止できたろうに
さぞや歯痒いこってしょう

こどもたちは元気にしてるよ
まあ、私を筆頭に
みんな仕事で疲れちゃいるけど

ムスコなんか
課題の多さを嘆いてるくせに
バイト掛け持ちして
単位落とさないように
見守ってやって
身代り地蔵になってやるとか

ぉおっと(夫)‼
落としたのは、あたいかい!?










[PR]
by vitaminminc | 2017-06-23 06:51 | 人間 | Comments(0)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by みん子