カテゴリ:生きもの( 86 )

独り進歩ジウム

 一昨日の就寝前。
 いつものようにベッドに寝ながら時代小説「居眠り磐音江戸双紙」の20巻目を読んでいると、いつになくふたりがキャッキャとはしゃぎながら、逃走犯と追手役を交代しては8畳洋室の空間を最大限活用して走り回っていた。
 あんまり走り回るものだから、エネルギーが有り余ってるのだなと解釈した私は、部屋の温度が急激に下がるのも致し方なし、と部屋のドアを開けることにした。猫が走り抜けられるように、爪とぎをドアストッパー代わりに挟むと、まずくーちゃんがトトトトッと廊下に出ていった。うずらも数秒後に、こちらは一目散に廊下を出てすぐのところにある階段を走り下りていく気配。
(うっひゃ~、寒い!)私は慌てて布団に潜り込み、廊下から容赦なく入り込んでくる冷気に負けじと再び文庫本を手にした。
 が、間もなく分厚い布団を介して、足もとと腹の上に重みを感じた。
「なんだ、もう戻って来たんかい」
 私は部屋の中にふたりが戻っていることを確認すると、廊下の電気を消してドアを閉めた。もともと部屋から出たがらないふたりだが、部屋の外のあまりの寒さに耐えられなかったようだ。
 かくして、ふたりの捕り物が再開する中、私は江戸時代にワープしたのであった。
「イデ!」
 顔面と左手に鋭い衝撃を受け、私は上体を起こした。
「何をするんですか!」
 となぜか丁寧語で悪態をつきながら、鼻梁から少なくとも流血はしていないことを確かめホッとしつつ、左手の親指の付け根の下3cmの手のひらから流血していることを確認してハッとした。
 1階の洗面所の鏡で顔を確認しながら推理した。
 ベッドの端からジャンプしたうずらの前足は、私が手にしていた文庫本の上(その真下は私の顔面)に着地し、後ろ足は文庫本を手放して宙をさまよっていた私の左手の腹を捕らえつつ踏み台に使われたようだ。目撃したわけではないが、こういう瞬間的無意識の暴力は、ほぼ100%犯猫はうずらなのだ。なぜなら、くーちゃんはわざとゆっくりと私の腹の上を踏みつけて歩いてみたり、どっしりと私の胸の上に箱座りしてこちらを観察する、意識的な「御覧あさ~せ」タイプだからだ。
 文庫本のお陰で、顔面は痛みの割に無傷であったが、皮の薄い手のひらにはくっきりとうずらの爪痕が刻まれ、血が出ていた。
 水道水で洗い流してティッシュで圧迫して止血したあと、消毒スプレーを噴霧した。
 そして、懲りずに小説の続きを読みながら、
(日曜になったらふたりとも動物病院に連れていって、爪を切ってもらわねば)
 と決意したのだった。
 で、今朝。
 起床してすぐにフレンドリー効果フェロモン「フェリウェイ」を仕掛けた。お恥ずかしい話、朝とか言いつつ、起きたら10:26だった。
 あぶねーあぶねー。おちおちしてたら動物病院の午前の部が終わっちまう。
 前回は、捕獲30分前にフェリウェイをコンセントに差した。時間が短かったからだろう、うずらの凶暴性は前より少しマシになった程度で、相変わらずコブラだった。
 今回は、コンセントに差し込んでから遅い朝食を済ませたり身支度したりで、優に1時間は揮発させた。部屋中友好フェロモンで満たされていたに違いない。
 私がキャリーバッグや洗濯ネットを手に部屋に入ると、いつもなら殺気づくふたりが、「嘘~~~ん」という表情で、さてどうやって逃げようかしらと品よく思案しているのだった。
 あのうずらが、シャーシャー言わなかった。これをフェリウェイ効果と言わず何と言おう。
 おかげで、ふたりともそれなりに抵抗したので、それなりに手間取りはしたものの、いつもの半分以下の時間&恐怖感で捕獲に成功。
 玄関までキャリーバッグを運んで行ったところで、ふと思った。
(いつもよりずっと穏やかに捕獲できた今、私自身が爪を切るのもアリなのではないか?)
 そう、これまで私以外の誰にも爪を切らせなかった初代飼い猫マイを筆頭に、迎える猫という猫の爪を自ら切ってきた私。うずらとくーちゃんという強敵を前に、爪を切ることが出来ない自分の不甲斐なさに、どれほど傷つき情けなく思ったことか。
「私、自分で切ってみる!」
 思わず叫んでいた。
 試験期間中なので、自室で勉強してる(と信じたい)ムスコが、「え”」と不思議な声で応えた。ヤツは少し前、まさにくーちゃんを捕獲している最中、突然私の部屋を開けて、「朝飯出来てる?」と訊いた。
「フライパンにできてるよ!」
「なに、猫捕まえてんの? どっち?」
「白黒! くーちゃん! ふたりとも医者に爪切りに連れてくの!」
 ムスコは私の手元を見た。遊具のトンネルに逃げ込んだくーちゃんを捕らえるため、トンネルの一方の出入り口を壁に押し付け、もう片方の出入り口にネットを被せ、じりじりと蛇腹状のトンネルを折り畳み、縮めているところだった。
「ほんとに猫、こん中入ってるの?」
 ムスコが信じらんねーという顔で言うので、私も冷静になって手元のトンネルを凝視した。
 トンネルの縦幅は、今や25cmほどまで折り畳まれ縮まっていた。しかし、はみ出ていいはずの白黒の毛がまったく見えない。
 ムスコがトンネルの上からわしわしと素手で確認した。トンネルはぺしゃんこになった。
「入ってねー!」
 ギャハハギャハハと大笑いしているムスコの腰を小突きながら、私も笑った。
「いつ逃げたの~? さっきまでちゃんと入っていたのに、あんたが邪魔するから~」
 イリュージョンをやってのけた引田天くーは、ドレッサーの椅子の下に、仲良くうずらと一緒にくっ付き合うようにして隠れていた。
 フェリウェイのフレンドリー効果、侮りがたし!

 そんなわけで、一度玄関まで運んだキャリーバッグをえっちらおっちら部屋に戻すと、まず手ごわいうずらをネットに入れたまま床に引っ張り出した。
 ネットごと抱っこして、動物病院で先生がやるように、狙いを定めた足の近くにファスナーの開け口をうまいこと移動させ、片方の前足のみ引き出した。
 フェリウェイとネットの助けを借りて、難なく5本の爪を切ることができた。続いてもう片方の手。次にアンヨ。途中いやいやをするうずらの額をネットの上から撫でて、バスタオルを顔にかけて視界を塞ぐと、観念したようにおとなしくなった。
(足の爪は4本だよね? 狼爪と呼ばれるのが退化してるから、4本でいいんだよね?)
 切り残しがないように、何度も1本1本確かめ、無事に両手両足を切り終えた。

 お次は引田天くー。意外とくーちゃんの方が手こずった。
 くーちゃんは後ろ足からスタート。
 まん丸の身体に似合わず、アンヨは小さく可愛い。うずらより1周り半ほど小足である。
「くーちゃんは爪まで小さいんだねぇ」
 それでも気力と体力がある分、くーちゃんは何度ももがく。
 動かれるとくーちゃん自身が怪我をしてしまう。
「ごめんなさいね、ごめんなさいね~」
 キレると怖いくーちゃんを崇め奉り、額をゆっくり撫でてはご機嫌を取った。

 ヤッター!
 上級者向き野生猫ふたりの爪切り、とうとうやり遂げやした!
 もちろん、目標はネットなしで切れるようになること。
 まあ、ネットに入っていた方が当猫たちが落ち着くというのもあるから、あまり無理はしないでおくか。
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爪切りを終えた直後のうずら。一気に10歳老けてしまった。痩せてるくせに団子に見えるのは、ストレスで毛が総毛立ってふくらみ、固まっているせい。
ムスメがこの画像を見て「なんだ? いつものうずぴの顔じゃない!? ガーフィールドみたい」と笑った。耳を伏せていないのがせめてもの救い。額のコブラ柄、今回は出る幕なし。胸中何を思っていることやら・・・。


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同じく、爪を切り終えた直後の若返った感のあるくー様。背後のベランダに残る雪のように真っ白な白い毛。太っているくせにスッキリ。ネットに入れられ爪を切られた屈辱より、解放され自由を得たという直近の喜びからか?


 

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by vitaminminc | 2018-01-28 13:55 | 生きもの | Comments(2)
 今日、うずらとくーちゃんをどうぶつ病院に連れていった。
 受付には女医さんがいた。
 うずらのワクチン接種とふたりの爪切り。そして健康診断のため、ふたりの血液検査をお願いしたところ──。
「何か気になることがありますか?」
 と訊かれた。
 水を飲む量が増えている旨告げると、今度は一日にどのくらい飲んでいるか問われた。
「2匹一緒なので正確なところはわからないんですが、1日に200ccほど減っています」
「2匹で200?」
 女医さんはくすっと笑って、1匹がまったく飲まなくて、片方だけが飲むならともかく、両方で200ならちっとも多い量じゃないと言った。
「夜中に水を飲んでいる音がして目を覚ますと、結構長時間飲み続けていたりするので──」
 いや、ちょいと待て。よくよく思い出してみたら、それがある晩はうずらであり、またある晩はくーちゃんであったり。
「どうしますか? 血液検査、受けますか?」
「200ccくらいなら心配するほどではないんですよね?」
「どんどん痩せてきたというのでなければ。もっとも、痩せてきたらすでに発症してることになりますけど」
 うずらは細マッチョだが、痩せる一方というわけではない。小食ながらゴハンも欠かさず食べている。
 私は少し神経質になり過ぎているようだ。血液検査はもう少し様子を見てから決めることにした。
 そして、コタローが先月22日に亡くなったことを報告して、その節はお世話になりましたと礼を述べた。
 女医さんはやさしい笑顔で頷くと、受付カウンターから素早く出て、くーちゃんのキャリーバッグを持ち上げた。
「そっち(うずら)持って入って」
 と私とうずらを診察室に招き入れた。
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 診察台に上がったうずらの体重は3.55kg。今回も捕獲時コブラ化したのとはうって変わり、仮死状態に近く微動だにしない。
 あっという間に注射され、あらよっと言う間に両手両足の爪を切られた。しばらく聴診器をあてられていたが、問題なしということでバッグにカムバック。
 お次はくーちゃん。うずらより骨格は一回り小さいのに、体重は4.75kg。
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「餌の量は決して多くないんですけど、遊び食いするうずらの分も隙あらば食べてしまうので──」
 私の説明にもただ笑うだけ。特にああしちゃいけない、こうしちゃいけないの指導なし。
 くーちゃんはいつになく嫌がってネットに入ったままずるずる逃げようとしたが、女医さんは独りで手足の爪を切ってのけた。
「はい、お疲れさん! うずらちゃんはワクチンを打ったから、3日間くらいは安静にしてあげて」
 
 商売っ気ゼロ。この病院を主治医に選んでよかったなあ。改めて思った。

 帰宅。心をフレンドリーにしてくれるフェロモンに満ちた部屋がふたりを待っていた。
 出かける時、例のフェリウェイをコンセントに差し込んでおいたのだ。


 話は変わるが、先日読売新聞の「人生案内」を読んで、少なからず違和感を覚えたことを話したいと思う。
 「人生案内」は、読者の相談に回答者が答えるもので、私の愛読書の一つである。いや、むしろ生活欄のココとテレビ番組欄を読むためだけに新聞をとっているといってもいい。
 その日の見出しは「愛犬の死 悲しく体調崩す」というものだった。
 私もコタローを失ったばかり。他人事ではない。

 相談者は60代後半の独り暮らしの女性。15年近く飼ってきた愛犬2匹を相次いで病気で亡くした悲しさから体調を崩しているという。
 そしてこのままではダメだと思い、また動物と暮らしたいと考えているが、娘が反対しているそうだ。
「ペットより先にお母さんが死んじゃうかもしれないじゃない! それにワンコ2匹が死ぬまでにいくらかかったと思ってるの? 軽自動車が買えたわよ? 今のお母さんの経済状況ではとてもじゃないけど、無理無理!」(←この口語は私の脚色)
 息子は相談者の精神状態を気にかけ、猫を飼ってはどうかと提案。
「猫ならさ、散歩に連れてく必要ないんだから、お母さんに万が一のことがあっても餌やりとトイレの掃除くらいオレが面倒見てやるよ。猫にすれば?」(←同上)
「けど、あの子(娘)猫アレルギーでしょ? 猫なんか飼われたら自分とマゴが遊びに行けなくなるって。意地悪で言ってるわけじゃないのよ、ワンコが死んだ時のお母さんを見てるのが辛かったんだって言うのよ」(←同上)
 息子と娘のどちらの気持ちもよくわかり、心の整理がつかないというのが相談者の悩み。

 今回の回答者はノンフィクションライターの最相葉月さん。
 実は、違和感を覚えたのは「回答」の方なのだ。
 私はいつもならこの方の回答に異を唱えることはない。が、今回は少々チガッた。
 もう、全文口語にしてやるべ。
「他人事とは思えないわ。我が家にも人間なら80歳近い老猫がいるの。
 この子がいなくなったとして、次の猫を迎えられるだろうかと想像するだけで不安になる。
 私の母が病気で猫を手放したのが、今の私とちょうど同じ年齢の時だったから。
 最近の猫は、室内で飼えば20年前後生きる子もいるのよ。
 一方自分はいつ倒れてもおかしくない。
 最後まで面倒を見られるかわかったもんじゃない。
 それは飼い主として無責任だと思うのね。
 猫って抱きかかえて爪を切るだけでも簡単なことじゃないし。
 それにおおむね腎臓が弱くて、治療を望むなら医療費がかかるわよ。
 悲しみが癒えないのはわかるけど、幸いお子さんたちは貴女のことを気遣ってくれてるじゃない。
 その思いに感謝して、これからは長期旅行やボランティアとか、ワンコがいた時にはできなかったことを楽しみなさいよ。
 ペットを飼うのはもちろん自由よ? 
 でもこれだけは忘れないで。
 貴女は2匹を愛し、最期まで心を尽くして世話をした。
 彼らは十分幸せだったでしょう。
 今も、これからも、貴女を天国から見守ってくれているはず」

 いつ死んでもおかしくないって、最相さんアナタいったいおいくつなの?
 調べたら、まだ50代半ばにも達していないではないか。
 もしや病を抱えていらっさる?
 なのでアナタには敢えて何も言わない。
 ただね、コレだけ読むとね、夢をあきらめなければならない人や、里親を探している人の嘆きが聞こえてきそう。

 ──医療費がそんなに? 現役引退したらワンコかにゃんこと暮らしたいと思っていたけど、とても無理か。 
 ──全国紙で、猫のリスクだけ説かれちゃった。猫との暮らしがどんなに素晴らしいか、ではなく…。
 
 念のため、若いムスメにも読ませて感想を聞いてみた。
「70代後半ならともかく、60代後半じゃまだ若いよ」
 とムスメは言った。
 まだまだ人生これから。ペットと仲良く暮らしたっていいじゃない。70前の人に、今からペットを飼うのは無責任と言うのは酷過ぎる。
 決して簡単なことではないけれど、動物のためのボランティアはどうだろう。保護犬・保護猫の一時預りなら20年飼うことにはならないし、施設に出向いて世話をする道もあると思うのだが。
 ペットの医療費は確かにかかる。大気汚染など環境の変化によるのか、昔より犬・猫の体質そのものが弱くなっているように感じる。医療が進歩して、栄養バランスにすぐれたフードも出回って、ペットの寿命は格段に延びたけど、昔のわんにゃんの方が逞しかった。少なくとも、私が保護した犬・猫に関して言えば。
 でも、自分のやれる範囲で頑張れば十分だと思う。
 日々愛情をもって接すれば、それで十分だと思う。
 ワンコやにゃんこには人間みたいな打算などないから、愛情は必ず伝わる。
 これは経済的にゆとりのない自分に言い聞かせているのだが、佐藤愛子さんだって著書「九十歳。何がめでたい」の中で、まったく違う表現で書いている。
『グチャグチャ飯』という話。
 実は、何度もあらましを書いてみたのだけど、原文を損なってしまいそうなので止めた。
 短いエッセイです。
 本屋さんで立ち読みしてください。ハタキをかけられる前に読み切れます。
 ぜひぜひ! 読んでください。

 若くなくたって、忙しくたって、金持ちじゃなくたって、動物と一緒に暮らせる。
 ワンコもニャンコもやさしい。
 生きている時も、死んじゃってからも。
 自分にできる範囲でいいんです。
 精いっぱい愛情を注げられるなら、それでいいんです。
 彼らはちゃんとわかってくれる。
 彼らにはちゃんと伝わります!
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by vitaminminc | 2017-12-09 17:49 | 生きもの | Comments(3)

唸牙城

大切な家族の一員たるコタローを亡くし、心は喪に服している。
が、人間界の習わしだから仕方ない。
いい加減年賀状をつくらねばと思い、頭の中でぼんやりとデザインを描いてみた。

愕然とした。

そうか。そういうことになるのか。

コタローは、私がつくる年賀状に一度も登場しないまま逝ってしまった。

一回も我が家で年を越せなかったということだ。

いかに短命だったかを思い知らされ、悲しさとか寂しさよりも、悔しさが牙をむき、みぞおち辺りで唸り続けている。

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by vitaminminc | 2017-12-06 17:40 | 生きもの | Comments(2)

星のコタロー

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猫用に用意された骨壺。
小さい方のサイズにすっぽり収まりました。
骨壺を入れる袋を選ぶとき、子どもたちは白毛が多かったコタローのイメージに合わせ、白地にしてはどうかと言いました。
白地に金糸の流線柄が施された、人用でもよく目にするような、オーソドックスで雅なデザイン。

「コタローはまだ子どもだったから──」私は、星柄の袋に目がいきました。「本当は白地の方がいいのだけど」
空色の袋の、星の顔に目が釘付けになりました。
「私はこれがいいなぁ」
ふたりの子どもは、一番コタローの面倒を見てたんだからとあっさり譲ってくれました。

係の人が、袋にコタローを入れて持ってきてくれました。
実際に骨壺が中に入ってみると、見本よりずっと可愛いねとムスメが褒めてくれました。
「この星の顔、コタローの写真の中に、似てるのがあるんだ─」
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私はスマホを取り出して、該当するコタローを見せました。
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ムスコがコタローの顔を見てくすっと笑いました。
「コレどこで撮ったの?」
「2階。ソフトケージの横」
コタローは、ソフトケージの屋根に上るのが好きでした。
この顔は、まさにそれを企んでいます。
メッシュ加工された天板は、ハンモックみたいにボヨンとしなって楽しいのです。
痩せてるくせに暑がりのコタローには、通気性のよいメッシュ素材が心地よかったのでしょう。


誰に先立たれても、遺された者はみな後悔に苦しみます。

消し忘れた留守電のメッセージ。
「こちら○○ペットクリニックです。先日検査に出した、コタローちゃんの腫瘍の結果が送られてきました。それによると─」

去勢手術を受けるついでに、額の上にあった小さなコブを切除してもらった時のものです。
小さかったので外見上問題はなかったのですが、良性であっても後に悪性になる可能性は否めません。
それで、一度の全身麻酔で去勢と同時に小さな頭のコブも切除してもらったのでした。
腫瘍は心配するようなものではありませんでしたよと、検査結果を送付する前に、いち早く病院が電話をくれたのです。

──こんなに早く逝ってしまうなら、痛い思いをさせなきゃよかった。
──痛い思いをさせたストレスが病気の引き金になったのではないか。


10月に撮ったコタローの動画。
薬の力を借りてではありましたが、久しぶりに頑張ってマンマを食べています。

この時私はすごく嬉しくて、コタローが死ぬなんて考えもしませんでした。
ようやく回復の兆しが見えたとふるえるほど喜んでいました。

──もっとどうにか出来たんじゃないか、この時は薬が効いて、こうしてなんとか食べられたのだから。
──薬が効かなくなったのなら、別の薬をもっと強く望んでいればどうにか出来たんじゃないか。

ただ、コタローの身体に穴を開けて、チューブで流動食を強制給餌することだけは選択肢にありませんでした。
先生も勧めませんでした。初期の段階で、食欲不振に対する療法の1つとしてチラッと挙げはしましたが。
私がコタローの身だったら、餓死する方を選ぶから。


それにしてもこんなにひ弱な身体で、どうやってコタローは冬を越せたのかな?
ちょうど生後2、3カ月。小さな身体で、どうやって寒さを乗り越えられたのかな?
先生は、母猫やそれに代わる猫に守られていたのだろうと言っていたけど、不思議でなりません。
猫なのに、寒さには耐性があっても、暑さには耐性がなかったのでしょうか。
発症したのは、夏でした。

悔やんでも悔やみきれないし、悩んでも答えは見つからない。
星柄に似ているコタローの顔が、梅の花に見えてくるだけです。寒い季節に咲く、梅の花。
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by vitaminminc | 2017-11-26 09:49 | 生きもの | Comments(2)

コタローがいっぱい

なまえを呼ぶと駆けてきたコタロー
階段を転げ落ちるようにおりてくコタロー
流水を上手く飲めず鼻に浴びてたコタロー
じっとこちらを見ながら踏み踏みしていたコタロー
テーブルに飛び乗り損ね尻から落ちたコタロー
お風呂に入りたくてドアの前で待機していたコタロー
冷凍室を開けるたびに飛んできて冷気をカキカキしたコタロー
やせっぽちの猫のくせに暑がりだったコタロー
家族みんなを分け隔てなく好きでいてくれたコタロー
毛が薄いせいかブラッシングが苦手だったコタロー 
猫じゃらしがヘビみたいに動くのが好きだったコタロー
乾燥肉球のため床や廊下で滑ってばかりいたコタロー
いつも誰にでも抱っこさせてくれたコタロー

ひ弱ながら元気だった頃のコタローがいっぱい
頭がガンガンするくらい頭の中にコタローがいっぱい

保護してからたった7ヵ月なんて信じられない
もっとずっと長いこと一緒にいた気がする
何年も何年もそばにいてくれた気がする

コタローの亡骸と一緒に眠ることが今一番の慰め

幼い子をたったひとりぼっちで逝かせてしまいました
頭を撫でて「それじゃ出掛けてくるからね」といって
部屋を出ようとしたら、コタローが頭をもたげ、
口をパクパクさせました
水が飲みたいのだと私は思いました
いつもは拒む水をコタローはおとなしく受け入れました
水を含ませた脱脂綿で汚れた顎を拭いてあげることもできました
少し目を細めて気持ちよさそうな表情を見せました



冷たくなってもドライアイスを抱えていても
コタローはあたたかいです
死んじゃってからもやさしい子です
どうしてこんなにやさしいのか
同じ部屋で眠ってるだけで気持ちが落ち着きます



明日の火葬には家族揃って立ち会います










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by vitaminminc | 2017-11-24 22:20 | 生きもの | Comments(2)

追いつかない

とんだ痴れ者です。

20日(月)、コタローは診察台に上がることも出来ませんでした。
こわばった私の両手が握り締める、キャリーバッグの中でうずくまったままでした。
バッグの上にはバスタオルをかけて、人の目に触れることはありませんでした。

受付担当ではなく、女医さんが応対してくれました。
少し困惑した表情で、「今日(きょう)はどうされました?」と訊きました。訊きながら、次の言葉を選んでいるようでした。
「血が混じったヨダレが出るようになったので─」
と私は新たな症状のことを訴えました。
─先生、コタローはやっぱりただの歯肉炎だったんだと思います。その証拠に、こうして出血まで始まったのだから。歯肉炎がだいぶ悪化しちゃったみたいなんです。
『あら、じゃあやっぱりお口のトラブルだったんだ』という私が望む反応を寄越す代わりに、女医さんは、これまで見てきた中で一番やさしい目で、真っすぐ私を見ました。
「今は、もう、どうしてあげることもできないの」
噛んで含めるように言うのでした。
「ステロイドが効かないというのは、もう、身体が勝てなくなってるの。ステロイドを注射してからまだ一週間しか経ってないのに出血が始まったということは、つまりはそういうことなの」
─ステロイド? そういえば、ステロイドを注射してもらったっけ。あれはいつだった? そうだ、おかーさんがうちに来た翌日。打ってもらったのだっけ。
「でも、少しでも炎症を抑えてもらえないかと思って─」
食い下がる私に、女医さんは辛抱強く説くのでした。
「もう薬ではどうにもならないの。この子にとって負担になるだけ。昭和天皇が亡くなる前、毎日のようにその日の下血量がニュースで流れてたの、覚えてます? あれは、もう手の施しようがない状態だったの。病気に勝てなくなると、身体のいろんなところから出血するものなの」
私は咄嗟にオットの死亡診断書の文字を思い出しました。病名は別にありましたが、直接の死因はその病気が引き金となった、『出血性ショック』と書かれていました。病理解剖の結果、(免疫力がゼロになり)ありとあらゆる臓器から出血していた旨、説明されました。

「居ても立ってもいられなくて─」
自分でも不思議でした。頭で理解しているはずなのに、なんで自分はこんな風にずっと受付の前に立っているんだろう。
「気持ちはすごくわかります。でも、もう長くないから、暖かくして、見守ってあげて。好きな物だけ食べさせて」
「全然食べられません」
─『食べられない』から始まって、食べられないままなんです。
「なら無理にあげなくていいから。貴女だってすごく気持ち悪いのに、無理やり食べさせられるのは辛いでしょう? 食べ物なんか見るのも嫌だと思う」
「水はあげてもいいですか?」
「もちろん」
「あの、シリンジで。嫌がるけど」
「嫌・が・ら・な・け・れ・ば。嫌がるなら無理にあげなくていい。猫は飲まず食わずでも一週間くらい平気で頑張っちゃう動物だから。暖かくだけしてあげて」
ハイ、ワカリマシタ、ソウシマス、アリガトウゴザイマシタ─たぶんそんなことを言って、ようやくオカンは受付を去ったのです。
コタローのオカンは、いつからこんなに聞き分けが悪くなったのでしょう。
受付を待っている人はいませんでしたが、待合室には診察を待つ患ニャや患ワン、そのご家族が何組かいて、ずっと私と女医さんのやり取りを聞いていたに違いありません。
帰る背に感じました。振り返って見ることはできませんでしたが、みなさんの視線が、絶対とても、温かかったです。

「なんだよ、コタロー、死んじまうのかよ」
土曜の晩、FIPの可能性が大きいことと、FIPが不治の病であることを説明しても、「何を言ってるのかさっぱりわからない」「頭が真っ白だ」と理解することを拒んでいたムスコでしたが、月曜の「もう長くないって」という私の言葉は嫌でも理解したようでした。

火曜の朝。健気にも、コタローがトイレでウンチをした痕跡がありました。立ち上がるのもやっとの身体で、よくトイレに入れたものだと思います。
先週金曜の晩、わずかながら口にできたマンマ。それが、黒っぽいどろっとした物体に変わっていました。
今まで見たことのない色と形状から、トイレを使えなくなるのは時間の問題だろうと悟りました。
コタローが現在寝ている場所のすぐ脇にトイレを移動させ、コタローに使用しているミニホットカーペットを含め、オシッコシートを敷き詰めました。

仕事から帰ると、ムスコから報告を受けました。
「コタローがトイレに入る手前で力尽きたみたいで、床にオシッコしてた。拭いといた」
すぐに眠眠に使用して余っていた紙おむつをコタローに穿かせ、ホームセンターまでおむつの買い足しに行きました。
「どんどん悪くなる。速いな」
改めてムスコが言いました。
「コタポ・・・」指先でコタローの額を撫でるムスメ。

転々と鮮血を帯びた薄茶色のシミが残るシートを交換する以外、何もしてあげられない自分が情けないです。
血液交じりの、濁ったヨダレ。ひどく汚れた顎を柔らかい布できれいに拭いてあげたいのに、出来ません。
真っ赤に爛れて腫れていて、触れること自体、拷問にしかなりません。
女医さんに言われたように、ただ見守るだけ。

お雛様みたいにやさしく可愛かったコタローでしたが、苦痛で目が吊り上がり、キツネのお面をつけているような面立ちになりました。
瞬膜が開いたままで、どこを見ているのか、見えているのかさえわかりません。
ピンク色だった鼻は薄いグレーにくすみ、肉球は、怖いくらい白くなりました。白い肉球になってしまいました。
名前を呼んでも、ほとんど反応しなくなりました。


気がつくとネットで「笑気ガス」を調べている有様です。


気持ちが全然、追いつきません。









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by vitaminminc | 2017-11-22 11:22 | 生きもの | Comments(0)

FIPの可能性大

昨日の夕方。
また一段と症状が深刻化したコタローを病院に連れていった。
「こうして診ても口の中は赤くなってない。口内炎というより、気ちが悪いんでしょう」
と大先生。
「セミントラも嫌がる?」
女医さんに聞かれ、
「暴れて抵抗するようになったので、てっきり口が痛いのかとばかり。前はむしろシリンジで飲ませると喜んで舐めてたのに」
「困ったねぇ。どう思う?」
と大先生が女医さんを見た。大先生の診立てが、キー・ガスケル症候群から別のものに変わったのだと私は悟った。
「FIP?」
女医さんが言うのを大先生は否定しなかった。
「FIPというのは─」大先生が私に向き直って説明してくれた。「猫伝染性腹膜炎のことですが、お腹あたりが(腹水や胸水がたまって)ブヨブヨしちゃう湿性型はわかりやすいんですよ。この子はおそらくドライタイプ。正直、ドライタイプのFIPは診断が難しい。血液検査をしても、グレーが多くてね」
「グレー?」
「野良だった子は殆どが猫腸コロナウイルスを持っています。それが体の中で変異して、FIPを発症するかしないかの問題。もちろん発症してれば詳しい血液検査でわかりますよ。ただ、わかったところでどうすることもできない。だから敢えて血液を調べましょうと私は言わない」 
ただ病名を絞り込む、それだけのために、コタローの貴重な血を1滴だって無駄にしたくない。
「検査は受けないでいいです。薬はないってことですよね?」
「対症療法しかありません」
私はコタローを覗き込み、「ずっと気持ち悪かったんだね、かわいそうに」とつぶやいた。
女医さんが薬の棚を見上げて大先生に言った。
「姫マツタケ、出してみましょうか。でもまた嫌いなものが増えちゃうだけかな。ストレスになるかな」
「姫マツタケって、アガリクスみたいなものですか?」
「あげてみる?」
「コタローみたいになってる子によさそうですか?」
「1匹だけだけど、ピンポイントに効いた子がいました」と大先生が答えた。「もう、腎臓も肝臓もやられてて、長くはもたないだろうと思ってたような子だったんだけど、復活しましたね。今もふつうに暮らしてるそうですよ」
「あげたいです、コタローにも」
女医さんが棚から小さな袋を取り出して、私に手渡した。
「ただ、恐ろしく高価なんですよ」と大先生。「こういった類いのはみんなそうだけど、中でもこれはね」
「え…どのくらいですか?」
女医さんが答えてくれた。わずか30mlの小瓶に対し、諭吉っつぁんを1人差し出すと、野口くんが2人と小銭になって戻ってくるらしい。
「それはサンプルだから、無料で差し上げます。顆粒タイプのもお試しで1袋ついてるけど、猫はリキッドタイプ(←人がスポイトで与える)じゃないとダメみたい、自分からは食べないから」
帰宅するや否や姫マツタケをググった。医療機関でのみ取り扱いとなっているが、楽天でネット購入できることがわかった。しかも、2000円近く安く。
先生、裏切ってネットで買わせていただきます。生活かかってるもんで。
コタローに与えられるかどうかが問題。
膝掛けにくるんで抵抗できない状態にして、コタローの口の横からまずは1滴たらし入れた。
「カカカカカッ」
初めての味に、口を三角に開いて奇妙な声をあげる。
すかさずもう1滴。
今度は必死の抵抗の末、逃げられた。
本来であれば、コタローの体重だと1日に合計12滴は与えなくてはならないが、初日は2滴に終わってしまった。
病院で、安定剤のホリゾンと腎臓薬セミントラは毎日続けるよう言われたが、その正しさを痛感している。
なぜなら、体を襲うあらゆる不快感に、じっとうずくまり耐えているコタローが、短時間ながらも体を横たえて目を閉じ眠れるのは、ホリゾン服用後、2、3時間だけなのだ。
ほんのわずかまんまを舐めて、水を飲めるのも、その間だけ。

1日1日と、どんどん悪くなっている。
面立ちがすっかり変わってしまった。 
辛くてカメラを向けられない。
まだ1歳だなんて信じられない。
コタローではない、別の猫の世話をしているような気がする。
すごく高齢で、弱っている重病の猫。
私のそばに寄ってくることもない。
移動するのは、トイレに入る時くらい。
いい子だね。ちゃんとトイレの場所がわかるんだね。

女医さんに、病院で話したっけ。
「すごくたくさん食べてたんです、うちに来た当初は。カリカリを1粒ずつ、庭から点々とまいて、玄関ドアを開けた中までまいて、それで捕まえられたくらいで─」
いつもクールな女医さんが、やわらかい目をして、口元だけ泣き笑いみたいに少し歪めて、黙って頷いていた。
「もう、何でもいいから食べられるもの探して」と女医さんが言った。
「食べないことには体力がね」と大先生も言った。
「私が前に飼ってた猫は─」と女医さんが、「あれ何だっけ、魚の─カワハギだ。カワハギが突破口になった」と教えてくれた。
「カワハギですか?」
「そう。この際、猫の体に良くないと言われてるものでも構わないから、塩分も気にしなくていいから」
「人間も─」と大先生。「なんにも食べられなくなった病人でも、アイスクリームは口にした、とかあるでしょ?」

今夜あともう1回、姫マツタケエキスを4滴与えたい。
そうすれば今日1日の使用量をクリアできる。
今はまだホリゾンの力で横になって休んでいるから、もう少しあとになってから。

「薬=ストレスを与えている」というのが、なんともツライ。
コタローは、私が近づいただけでストレスを感じてるだろう。
あ、頭を起こした!

姫マツタケ様、コタローの体の中で大活躍してくれることをひたすら祈ります!








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by vitaminminc | 2017-11-19 17:39 | 生きもの | Comments(0)

キー・ガスケル症候群?

コタローの病気がほぼキー・ガスケル症候群であることがわかった。
病名はついたけれど、原因(神経毒)はいまだに解明されておらず、従って特効薬もない。
水が飲めなくて脱水症状に陥ったら輸液、食べられなくなったら強制給餌、目が乾ききったら点眼薬といったように。
キー・ガスケル症候群の諸症状の中で、コタローの症状と合致しているのは、「食欲不振」「元気がない」「瞬膜が出っぱなし」の3項目。
不幸中の幸いで、コタローは前回処方された自律神経調整剤の残りがまだ少しあるので、薬のチカラでわずかながらも毎日餌を食べている。
瞬膜も、一日中出っ放しとまではいかず、気づくと出ている時間帯がある、という感じ。

5日の朝、我が家の猫を3匹まとめて病院に連れていった。
コタローは本来ならワクチンの接種月。とても受けられるような健康状態ではないので、相談のため。
うずらとくーちゃんは、限界まで伸び切った爪を切ってもらうため。

この日の担当は女医さん。動物第一主義が高じて飼い主に厳しい。しかもせっかち。だからのんびり屋の私とは相性が悪い。
コタローを診察台の上に置くや否や、女医さんが険しい声で訊いた。
「今日は?」
「コタローのワクチンの─」
このあと私はこう続けるはずだった。「接種の月ですが、こんな状態なのでもちろん注射はなしで連れ帰ります。今日は相談に来ました」
けれど話を最後まで聞かずにまくしたてられた。
「ワクチン!? どうしてそんなに無理してまでワクチンを打ちたいの? もちろん予防のためでしょうが、こんなに痩せ細って弱っているのに、ワクチンを打ったりしたら、逆にワクチンにやられちゃう!」
「いえ」ようやく説明させてもらえる。「このようにワクチンを打ってもらえるような状態じゃないので、一応相談させていただきたくて」
そして、1/2錠だとコタローには強すぎたので、1/4錠にして飲ませたこと、量を減らしただけ食べられる量も減ったこと、薬服用後は顎の筋肉がおかしくなるのかやたら歯ぎしりしながら噛むこと、薬を飲まないとどうにもこうにも食べないこと、比較的機嫌はよく天使みたい(←すみません、親バカで)なことなど。
女医さんは気の毒そうな声で言った。
「薬がなくなっても、何とかして少しずつでも食べさせないとね。もうワクチンは(打たないで)いいでしょう。外とかに出してないでしょ? なるべくストレスを与えないようにしてあげて」
「ハイ」
「もしも身体によい変化が訪れて、たくさん食べられるようになって、体重が元に戻ったらワクチンを受けに連れて来て」
「ハイ」

うずらを捕まえるのはいのちがけだ。なぜならうずらが死に物狂い(←文字通りコレ)で抵抗、反撃してくるから。
それでも、猫ちゃん用フレンドリー・フェロモン「フェリウェイ」の効果か?
いつもならコブラのごときシャーッ!!(マジ怖い)とゲッ!!という威嚇砲(マジ超コワイ)を連発し、鎌と化した爪を炸裂させ流血騒ぎとなるのだが、この日はゲッ!!一発のみだった。
とはいえ、正気を失ったいきものほど恐ろしいものはなく、こちらの心臓はバクバク。
診察台の上にうずらをのせて、端的に説明した。
「うずらは超ビビリで捕まるまでは凶暴ですが、病院では固まります」
その通り、これ以上小さくなれませんというところまで縮こまって動かなかった。
女医さんは、介助なしで、慣れた手つきで両手両足の爪を切ってくれた。

くーちゃんは、この日キューブ型ハウスの中でまどろんでいるところをハウスごとネットに入れられた(笑)
あとで私が器用にハウスだけネットから取り出し、ネットに入ったくーちゃんをキャリーバッグに入れた。
いつもなら捕まったあとは寡黙になるくーちゃんが、この日は往路車中で鳴いていた。
オシッコがしたかったらしい。
診察台の上にのせる時、いち早く女医さんが失禁に気づいた。
そして、新しい新聞紙と尿取りシートを持ってきて、キャリーバッグの中に敷いてくれた。
私は端的に説明した。
「くーちゃんは、スイッチが入ると凶暴になります。以前ご迷惑をおかけしました。前科者です」
女医さんはちょっとだけ苦笑して、やはり介助なしでくーちゃんの両手両足の爪を難なく切ってくれた。

本日は2匹分の爪切り代1080円也。

女医さんは私にコタローを任せると、自分はうずらとくーちゃんのキャリーバッグを両手に持ち、駐車場に停めてある私の車まで運んでくれた。
猫にはやさしいが、飼い主には厳しい、を撤回。
たぶん、両方にやさしい。

コタローに根気強くマンマを食べさせる。必要に応じて手遅れにならないよう、その都度病院の手を借りる。
諦めずに、ガンバルしかない。
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赤い縞々はエビちゃんの蹴りぐるみ。元気にキックする姿が見られなくなって、早3カ月以上。とても悲しい。










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by vitaminminc | 2017-11-06 22:43 | 生きもの | Comments(2)
皿の底だった。



ようやく光が見えた。実際、皿の底は銀色に光っていた。
エサを入れたのちに見るそれは、本当に久しぶり。
食欲不振による初診が8月上旬。コタローの食欲不振は3ヵ月近くも続いていたのだ。

先週金曜日。
体重を測ったら、2500gしかなかった。
すぐに病院に連れて行った。

「う~~~~ん。困りましたね」と先生もため息。「ステロイドは効かなかったと」
「病院から連れ帰った直後は若干増えましたけど、劇的といえるものではなくて、前回輸液していただいた後と似たようなもので─」
そう。ほんの少し、食べる量が一時的に3口だったのが5口に増えた程度。ステロイドが効いたというよりは輸液のおかげ。
その輸液にしても、痛い思いをした割に「食欲が回復した」とは言えないのだ。
「食道狭窄症でも食べられなくなるけれど、それだと必ず吐いたりするからねぇ」
「全然吐かないです」
「ウンチは?」
「食べる量が微々たるものなので、それでも2日に1回はちゃんとしたのが出ています」
「う~~~ん。となるとやはり胃腸ではないな」
「救いは、こんなに食べられないのに、常に機嫌だけは良さそうなんです。しっぽをぴんと上に立てて、ゴロゴロ言いながらおでこをこすりつけてきたり─」
私の説明を聞いて、先生の目がキラ~ンと輝いた気がした。
「拒食症ですね」
要するに、内臓疾患ではなく神経系の疾患ということだ。猫にもあるんかい、拒食症!
食いしん坊すぎて飼い主を悩ませるワンちゃんが多いのとは対照的に、猫は食べな過ぎて飼い主を悩ませる動物。先生は明快に説明してくれた。
「先生、実は私、藁にもすがる思いでネットで食欲不振で検索して、猫のフェロモンまで買い求めたんですよ。コンセントに差して揮発させるタイプの─」
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「フェロモンね、以前は3種類出ていましたけど、2種類はもう製造中止になってますね。今残ってるのはフレンドリーになるタイプ」
「え? フェリなんとか(←フェリウェイ)って、食欲不振には効果ないんですか?」
「ない(←言い切り)。とにかくフレンドリーになるタイプですね」
「じゃあもともとフレンドリーなコタローには必要なかったんだ。ほかの凶暴な2匹に使った方がいいかしら」
「うん。そっちに使ってみるといいかもしれないね」
なんてこった! 5000円も投資して必要のないフェロモンを入手するとは。ま、うずらとくーちゃんに使って仲良くさせるか。
フェリウェイは、飼い主に噛みついたり、多頭飼いで喧嘩が絶えない猫、発情期で気が荒ぶっている時などに有効とのこと。

「先生、何とかならないでしょうか。栄養失調になる前に、もう、なんでも試せるものは試したいです! 拒食症に効く薬、ありますか?」
先生は穏やかな笑みを浮かべ、「食欲増進剤のようなものはあります。試しますか?」と言った。
「ホリゾン。これは食欲不振に効きます。自律神経に働きかける薬ですね」
「注射ですか?」
「いや─」先生は実物を見せてくれた。「錠剤です」
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「え? 錠剤は飲ませられないかも─」
「簡単に水に溶けますよ」
「ならシリンジで与えられますね」
「1日1錠。半分に割って、朝晩1/2ずつあげてみてください」

早速金曜の晩、1/2錠を水に溶いて、コタローに与えた。
コタローはシリンジで飲ませられた後、「心外だ」という顔で、何度もまずそうに舌なめずりしては口中を清めていた。
そして、服用後10分も経たないというのに、なんと! エサが入ったお皿に顔を突っ込んだではないか。
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カリカリをガリガリ歯ぎしりさせながら、音を立てて食べ始めた。
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食欲不振による初診が8月7日。この食いつきっぷり、かれこれ3ヵ月以上目にしていなかった光景。
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入院して点滴を受けた後に少し食欲が出るには出たが、皿の底が見えるには至らなかった。
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私は嬉しくて嬉しくて、とにかく嬉しくてたまらず、そばでずっとコタローの名を呼び続けた。
自然にそうなってしまい、自分でも止まらなかった。悪夢にうなされ、何度も目を覚ますくらい、ずっと気に病んでいたから。

コタローが、生きようとしている! 自律神経調整剤の力を借りてではあるけれど。

ところが、もりもりエサを食べ、ゴクゴク水を飲んだ後、コタローは突然酔っ払いに変身した。
おっととと、おっととと─四肢の踏ん張りが効かず、千鳥足状態。目も完全にイッチャッている。
そのうち、へなへなと床にへたり込んだ。
病院での先生の説明は、こうだった。
「眠くなる成分が入っているから、もしかしたら1日中ずーーーっと寝てばかりいる感じになるかもしれません」

睡魔に襲われているのか? コタローを抱き上げて、寝床に移した。
素直に横たわったものの、すぐには寝なかった。
イッチャッテる目で、くだを巻くのだった。
目を閉じてからも、猫以外の何かが乗り移ったように、しばらくブツブツと寝言をいっていた。
みんなで思わず笑っちゃえたのは、コタローの呼吸がいたって正常だったからだ。
それでも心配になり、【猫 ホリゾン】でネット検索したら、コタローと同じように食欲不振が続いた末にホリゾンを服用した猫ちゃん(17歳♂)のブログにたどり着いた。
その子は1錠服用した15分後に、驚きの食欲回復が見られ、やはり同じように酩酊状態に陥ったとのこと。
まだ診療時間内だったのだろう、飼い主さんが病院に問い合わせると、先生の答えは「効き過ぎたようですね。2時間くらいで元に戻りますよ」だったそうな。

そうかそうか。体重だけみればコタローは子猫と同じ。だからコタローの先生は1錠ではなく1/2錠ずつ飲ませるよう指示していたのだな。
翌日からは、さらに半量─1/4錠ずつ朝晩2回、1日1/2錠に変えてみた。
与える量が減った分、食べる勢いや量が実にわかりやすく減りはしたけど、3回のうち1回は若干酔っ払いに変身する。
服用後は必ず食べてくれるわけだし、コタローには今の量が妥当な気がする。
これで縮んだ胃袋が元に戻って、自律神経のバランスの崩れも修復できたら万々歳だ。
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写真は本日午前中に撮った1枚。

そんなわけで、コタローは只今腎臓の保護薬セミントラ(←おそらくこれは一生)と、自律神経の調整薬ホリゾンを服用中。

追伸:フェリウェイをうずらとくーちゃんがいる部屋(つまり私の寝室)で使ってみた。
穏やか&フレンドリーになるというより、2匹にそれぞれ「わけもなく多幸感に包まれる」症状が出て、元気に遊びまわり、飛びまわっている。
お陰で私は夜中の騒音で睡眠不足。安眠妨害以外のなにものでもない。
このフェロモン、くーちゃんを迎え入れた直後、情緒不安定になったうずらにこそ使ってあげるべきだった。。。。
そうしていたら、あるいはベッドを尿まみれにされることもなかったかもしれず。自分の知識欲の無さがうらめしや。
高価なフェロモンゆえ、ワクチン接種などで病院に連れて行った日にだけ使うとするか。





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by vitaminminc | 2017-10-29 14:55 | 生きもの | Comments(0)

お助けロイド

今日は、うずらとくーちゃんのゴハン事情について語るつもりでしたが、急きょ予定を変更してお送りしますです。
考えてみたらふたりのマンマは、くーちゃんのマンソン劣頭条虫事件以来ずっとロイヤルカナン消化器サポート(可溶性繊維)。それにコタローの食べ残し(腎臓にやさしい高齢猫用フード)が加わっただけ。語るほどのものではござ~せん。

くまのぬいぐるみのような足をしたくーちゃんと、カメラを敵と思い込んでいるうずらの近影を挟みつつ(神経質なうずらはなかなかカメラでキャッチできないので1枚のみ)、内容はまたしても虚弱体質王子・コタローに関してであります。
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本日夕方、コタローを病院に連れて行きました。
仕事から帰ってコタローのマンマ皿を見たところ、朝入れたまんま(マンマだけに)でした。
こりゃアカン!
コタローを抱っこして体重を計測。
ふ、増えている!(私がな)
これだとコタローの体重が5000gはあって欲しいところ。が、コタローをおろして測り直した我が体重、心まで重くなりました。
んなこたどーでもよい。
差し引き計算したコタローの体重、悲しいことに、2600gを下回ろうとしておりました。
もう手に負えません。
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今回は、私自ら先生に頼みました。
「ステロイドを試したいです」と。
前回先生は言っていました。コタローの食欲がこのまま戻らないようであれば、ステロイドを試すのもありと。
インターネットで下調べしたところ、自己免疫疾患による食欲不振にステロイドはかなり有効らしいです。
また、先生に副作用について訊いたら、次のように教えてくれました。
ステロイドの副作用はずっと続けた場合に生じるものであって、今回のように単発的に与える場合はまず心配ないそうです。それに、人間よりも犬の方が、犬よりも猫の方が、ステロイドの副作用は少ないというデータがあるとのこと。
不思議なことに、ステロイド(いわゆる免疫抑制剤)は、猫の身体と相性がいいようなんですね。
安心しました。
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薬剤入りの輸液はことのほか皮下で凍みて辛いので、先生は少しでも痛みが和らぐよう、希釈の意味も込めて(?)今回もたっぷり輸液してくれました。
投入したステロイドは2種類。速効性タイプと、じわじわ長く効くタイプ。
コタローは3本の注射器が空になるまでの間、じっと耐え抜きました。強いなぁ!
頑張ったのだから、ステロイド治療が功を奏して、もりもり食べられるようになるよ、きっと!
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帰宅してしばらく経つと、ヤケ食いみたいにカリカリを音を立てて食べました!
すごい! 速効性ステロイドの威力でしょーか。久しぶりに耳にする快音です。
でも、だいぶ胃が小さくなっているようで、勢いの割に、食べられた量はまだちょっとだけ。
これからじわじわタイプのステロイドに助けられて、徐々に食欲が増えていくことでしょう。







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by vitaminminc | 2017-10-13 23:09 | 生きもの | Comments(0)

日々の暮らしに「ん?」を発見


by みん子